現在、クレジットカードのIC化が進み、日本でもカード払いのできるお店が増えてきましたが、決済比率は2015年段階で15.7%です。
アメリカ57%・イギリス29%・韓国62%と比べるとその比率はまだ低く、カードよりも現金で支払う人が多いのが日本の特徴です。
「クレジットカードのIC化って本当に安全なの?」
IC対応化が難しくて何となくセキュリティに不安を感じ、カードの利用に前向きになれない人が多いのが現実です。
ここでは、そんな人のために、クレジットカードのIC化について解説します。
IC対応のクレジットカードの安全性を理解すれば、便利なキャッシュレスの決済ができるようになりますのでぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
2020年までに日本国内のクレジットカードの100%IC化が目標
2016年4月「2020年までにクレジットカードの100%IC化を目指す」と経済産業省が発表しました。
2020年といわれてピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、背景にあるのは東京オリンピック・パラリンピックの開催が関係しています。
日本ではまだまだカード決済よりも現金決済の比率が多いと言われていますが、他の先進国ではクレジットカードで支払うことがスタンダードです。
オリンピック期間中は海外からたくさんの観光客の訪日が予想されます。
クレジットカードが使えず買い物ができないと、外国の方にとっては不便で仕方ないでしょう。
そのためキャッシュレス決済の環境整備を急ぐ必要がでてきたということです。
しかしクレジットカードがただ使えればいいかというとそうではありません。
磁気タイプのクレジットカードは簡単に情報を入手することができるため悪用されやすく、実際に世界でも被害が多く問題になっています。
そのため外国では磁気よりも安全なIC取引の決済が普及しています。
そこで、外国人観光客が安心して日本でショッピングできるように、クレジットカードの100%IC化がスタートしたのです。
クレジットカードの比較
クレジットカードには大きく分けて次の2つに分類できます。
- 磁気カード
- ICカード
磁気カードがこれまでの主流でした。
そして2020年に向けてIC対応カードが使える環境が増えていくことが予想されます。
それでは、まず両者にどのような違いがあるのかについて、以下で詳しく見ていきますね。
磁気ストライプクレジットカード
磁気ストライプのクレジットカードは、現在日本における主流です。
お手持ちのクレジットカードの裏面上部に、黒いラインが入っていませんか?この黒いラインは磁気ストライプ(磁気テープ)といい、ここにカード情報が記録されています。
磁気ストライプクレジットカードで決済する際には、店舗にある端末にカードをスライドさせます。
端末(カードリーダー)では磁気ストライプからカード情報を読み取って、決済が行われます。
磁気ストライプはコストが安く世界中で普及しています。
磁気テープのカードで決済した場合、最後領収書にサインをして手続きは完了します。
磁気ストライプは、クレジットカードだけではなく、ポイントカード、プリペイドカードなどいろんなカードに使われているんだよ。
言われてみるとそうだね!気になる人は財布を確認してみよう!
ICチップ搭載クレジットカード
ICタイプのクレジットカードは、カードにICチップが埋め込まれています。
お手持ちのクレジットカードの表面左上部に、金色の四角いチップが埋め込まれていませんか?これこそがICチップです。
ICチップにカード情報が登録されています。
同じく情報が記録されている磁気ストライプと比較すると、圧倒的に多いデータを格納可能。
ICタイプのカードで決済する場合には、レジにある端末にクレジットカードを差し込みます。
そして最初に登録した暗証番号を入力することで決済が完了します。
- 接触型
- 非接触型
- ハイブリッド型
読み取り機に直接差し込んでカード情報を読み取る。最もポピュラーなタイプでキャッシュカードやクレジットカードなどで使われている。
読み取り機にかざすだけでデータを読み取る。「Suica」「PASMO」「nanaco」「Edy」などがある
接触型と非接触型の両方を組み合わせたカード。
磁気カードはスキミングによる偽造被害が深刻
クレジットカードのIC化を急いでいる背景には、カードの不正利用の増加があります。
平成28年の不正利用による被害額は141億円近くで、その中でも偽造カードの被害額は31億円弱。
これは不正使用の約1/5を占めます。
そのカード情報を空のカードに書き込めば偽造カードが出来上がるんだ。
これがスキミングと呼ばれる犯罪で、正式な所有者になりすまして、不正にクレジットカードのショッピングなどができてしまいます。
磁気ストライプは瞬時にデータを読み取ることができます。
つまり磁気ストライプカードはスキミングによる偽造カードの被害に遭いやすいのです。
一方ICチップ搭載のカードであれば、情報量が多く暗号化されているのでスキミングが困難になります。
暗証番号を入力しないと決済は実行されませんからカードの不正利用が難しくなるのです。
このようなスキミングによる偽造カードの被害は世界中で発生しています。
各国でセキュリティ対策が進められる中、日本の対応が遅れてしまうと、犯罪集団は日本をターゲットにしカードの偽造被害が集中するかもしれません。
そうならないためにも、急いでクレジットカードのIC化を進めていかなければならないのです。
スキミングの手口には、ATMの現金引き出しやレストランの会計時、警官や銀行マンに成りすまして堂々とカード情報を盗んだりと様々あるんだ。特に海外の方が被害が多い。
知らない間に、多額のお金が使われると思うとゾッとするね。カードのセキュリティも大事だけど、「簡単にクレジットカードを人に預けない!」「怪しいお店ではクレジットカードは使わない!」など自己防衛も重要だね。
クレジットカードのIC化のメリット
従来の磁気カードからICチップを搭載したものに変えることで、いろいろなメリットが期待できます。
ここではICカードのメリットについて、
- スキミング対策
- なりすましが困難に
- 外国でも使いやすく
の主要な3つのポイントに絞って、それぞれ見ていきますね。
ICはスキミング被害にあいにくい
ICタイプのクレジットカードの最大の魅力は、セキュリティの高さです。
磁気カードの場合、磁気ストライプにカード情報が搭載されています。
磁気テープに書き込めるデータ量はICチップに比べて少なく、スキミングする機械があれば1秒足らずでカード情報をごっそり抜き取られます。
一方ICチップがついていると、まず収納できる情報が圧倒的に増えます。
加えてこの情報は暗号化されるので、スキマーを通せば簡単に情報を抜き取れるものでもありません。
このため偽造カードの被害に遭うリスクが磁気ストライプと比較すると、IC対応カードは格段に低くなるので安全性が高くなるのです。
磁気カードを使い続けるのは危険だね。。
磁気ストライプのみのクレジットカードを利用している場合には、ICチップ搭載のカードに変更した方が安全だよ。
署名から暗証番号に変わるので本人のなりすまし利用の防止
磁気ストライプの決済方法は、領収書にサインをすることで完了しますね。
しかしこのサイン、クレジットカードの裏面と見比べて詳しくチェックされることはまずないでしょう。
つまり偽造カードでも本人に成りすまして、簡単に決済出来てしまいます。
一方ICチップ搭載のクレジットカードは、本人確認を暗証番号で行います。
たとえカードが紛失・盗難被害に遭って、第三者が不正に使おうとしても暗証番号が判明しない限り、そのカードは利用できません。
しかも暗証番号は4桁のため、そう簡単に知られることはありません。
海外の旅行客に柔軟に対応できるようになる
外国人観光客の中で、キャッシュレスで気軽にショッピングできるクレジットカードを使う方は多いです。
従って、カード払いのできないお店が多いと、外国人観光客は自分の買いたいものが買えず不便に感じてしまいます。
外国人旅行者の決済の利便性を向上することは、販売機会の損失をなくすことにつながるのです。
ICチップのカードの場合、端末にクレジットカードを差し込んで暗証番号を入力すれば決済完了します。
このように手軽に安全にショッピングできるので、外国人観光客も日本で買い物を楽しめるでしょう。
日本は観光立国を目指している最中。
その中で観光のインバウンドを減らさないためには、ICチップのカードを普及させ、安心安全にショッピングできる環境を整備することが必要なのです。
欧米なんかは「コーヒー1杯」でもカードを使うって言うもんね。カード払いが普通になってきてるんだね。
だけど、スキミングの被害の影響で外国人観光客は、磁気カードの利用には不安を感じているんだよ。だから、クレジットカードのIC化は進めていかなければならないんだ。
ICチップ搭載クレジットカードの注意点
ICチップのクレジットカードは磁気ストライプと比較してセキュリティが高く、安心して使用できるメリットがあります。
ただしメリットだけかというと、決してそうではないです。
ICチップ搭載のクレジットカードでも、利用する際には注意が必要。
主に注意すべき2つのポイントについて紹介します。
暗証番号がバレて不正利用された場合、補償の対象外になる可能性がある。
クレジットカードが不正に利用された場合、原則60日以内に申請すれば、被害分は補償されます。
しかしこの補償を受けるには条件があって、利用者自身に過失のないことが前提。
ICチップ搭載のカードを不正利用されるためには、暗証番号を相手が知らなければなりません。つまり
- 暗証番号を他人に漏洩した
- 誕生日や電話番号、車のナンバーなど類推されやすいものにしていた
のいずれかでないと暗証番号を知られることはないはず。
どちらにしても過失と認定されるので、不正に使用されても補償を受けられない可能性が高いですよ。
暗証番号は第三者に知られることのないように、しっかり管理しましょう。
間違ってもメモなどで書き残しておくことのないように。
クレジットカードを発行した時点で、実は紛失・盗難保険が付帯されるんだ。万が一無くしたり、不正利用されたりしても慌てずに。
暗証番号って重要なのは分かるけど、忘れたらどうしようって思ってついつい覚えやすいものにしちゃうんだよね。。
ICチップ部分が読み取り不良になる可能性がある
ICチップで情報を高度に管理しているのですが、この部分は比較的もろい点に注意。
衝撃や高温に長時間さらされるとICチップの破損・変形の起こる可能性があります。
そのほかにもチップの表面が汚れると、端末で情報が読み取れなくなる可能性もあります。
汚れであれば拭き取れば読み取れる可能性もあります。
しかし傷や変形の場合、クレジットカードを再び使えるようにするためには最悪の場合は再発行するしかありません。
再発行手続きをして、手元に届くまで2~3週間かかり、その間カードショッピングができなくなります。
しかも新しいカードは番号など変わってしまいます。
公共料金や携帯代をカード払いしている場合には、カード情報を変更しなければならないよ!
再発行手続きって、面倒ですね。。クレジットカードは大事に使わきゃ
カードだけではなく、お店側もIC対応化しなければならない
ICカードが利用できるようになるためには、お店側の対応も必要。
現在カード利用できる店舗を見ると、POSレジといって磁気ストライプにしか対応していない機種を採用しているところが多いです。
当然このままではICチップの情報は読み込めないので、IC対応の端末を導入しなければならず、このコストをどう捻出するかが店舗の課題になるでしょう。
IC対応端末を導入するには、結構なコストがかかります。
大手の店舗であれば負担できるかもしれませんが、個人商店など小規模店舗の場合本当に導入できるかは疑問です。
せっかくのICチップも、端末が普及しないと宝の持ち腐れになる懸念もありますね。
ライアビリティシフトで加盟店側が被害の負担を負う
従来偽造カードにより不正に決済された場合、その被害額を補償するのがカード会社でした。
しかし、2015年10月以降、ICカードを利用したときに、お店がIC未対応の決済端末で決済を行って、もし不正利用が発生したのなら、加盟店がその責任を負担することになりました。
これをライアビリティシフト(債務責任を移す)といいます。
加盟店としてみれば、被害額の補償を回避するためにEMV対応に準拠した端末を導入する必要に駆られます。
従ってICカード対応の端末が普及するとみられています。
この仕様はクレジットカード大手の「Europay」「MasterCard」「VISA」の3社で決められたことから、それぞれの頭文字をとってEMVと名付けられました。
まとめ
クレジットカードのIC化に関してご紹介しました。
日本人はクレジットカードショッピングをすると情報を抜き取られるのではないかと心配しがちです。
しかしICチップ搭載クレジットカードが普及すれば、磁気ストライプよりもセキュリティは格段にアップします。
安全なカード払いができるようになれば外国人観光客の集客が見込め、「観光立国の日本」に一歩近づきます。
磁気カードはスキミングによる偽造が容易にできます。
所有するカードが磁気タイプのみの方は、この機会にぜひICチップ対応のクレジットカードに変更しましょう。
自分の知らないところでカードを使われていたなんてことがないよう、不正利用防止に有効な「IC化」はぜひしておこう
IC化は心強いけど、暗証番号の管理も重要ですね!!