「看護師って言われているほどもらってない…」
「私の収入は少なすぎるかも?」
「労働に見合っていないような…?」
と思われている方もいらっしゃると思います。
今回は、看護師の収入の裏事情に潜入していきます。
病院勤務の看護師の給与
ここでは、病院勤務の看護師の給与水準について調査した結果を表にまとめました。
病院の規模によって給料が異なるので下の表を見比べてみましょう。
▼「企業規模計(10人以上)」に勤務する看護職員の給与
区分 | 年齢 |
勤続 年数 |
給与額 (超過労働分む) |
年間賞与・ その他特別給与額 |
年収 |
---|---|---|---|---|---|
全体平均 | 38.8 | 8.8 | 34万9,300円 | 86万7,400円 | 505万9,000円 |
~19歳 | – | – | – | – | – |
20~24歳 | 23.5 | 1.5 | 27万9,300円 | 42万9,200円 | 378万0,800円 |
25~29歳 | 27.4 | 4.0 | 32万0,200円 | 78万5,000円 | 462万7,400円 |
30~34歳 | 32.6 | 6.3 | 34万5,400円 | 84万4,800円 | 498万9,600円 |
35~39歳 | 37.5 | 6.9 | 35万3,160円 | 84万5,800円 | 508万3,720円 |
40~44歳 | 42.4 | 10.2 | 35万9,000円 | 96万9,700円 | 527万7,700円 |
45~49歳 | 47.3 | 14.0 | 38万1,200円 | 104万9,800円 | 562万4,200円 |
50~54歳 | 52.1 | 14.9 | 39万1,300円 | 116万7,600円 | 586万3,200円 |
55~59歳 | 57.8 | 15.6 | 39万4,900円 | 90万5,500円 | 564万4,300円 |
60~64歳 | 61.9 | 21.3 | 36万4,600円 | 97万2,700円 | 534万7,900円 |
65~69歳 | 66.2 | 16.6 | 32万5,300円 | 45万4,300円 | 435万7,900円 |
70歳~ | 76.5 | 22.5 | 38万900円 | 0 | 457万800円 |
▼「企業規模計(1,000人以上)」に勤務する看護職員の給与
区分 | 年齢 |
勤続 年数 |
給与額 (超過労働分む) |
年間賞与・ その他特別給与額 |
年収 |
---|---|---|---|---|---|
全体平均 | 35.4 | 7.8 | 35万7,700円 | 95万円 | 524万2,400円 |
~19歳 | – | – | – | – | – |
20~24歳 | 23.4 | 1.4 | 28万400円 | 46万5,200円 | 383万円 |
25~29歳 | 27.4 | 4.1 | 34万1,300円 | 85万5,100円 | 495万700円 |
30~34歳 | 32.6 | 7.4 | 37万1,900円 | 101万8,300円 | 548万1,100円 |
35~39歳 | 37.5 | 7.2 | 34万9,200円 | 97万4,400円 | 516万4,800円 |
40~44歳 | 42.4 | 12.1 | 40万4,200円 | 124万1,000円 | 609万1,400円 |
45~49歳 | 47.6 | 12.6 | 41万7,500円 | 128万5,300円 | 629万5,300円 |
50~54歳 | 52.1 | 18.6 | 41万4,000円 | 125万9,800円 | 622万7,800円 |
55~59歳 | 56.8 | 13.0 | 40万9,900円 | 126万2,900円 | 618万1,700円 |
60~64歳 | 62.0 | 23.0 | 36万4,200円 | 88万3,300円 | 525万3,700円 |
65~69歳 | – | – | – | – | – |
70歳~ | – | – | – | – | – |
勤続年数や年齢、管理職かどうかによって給与額は変わってくるものですが、こういった看護師の収入の調査はあまりないので、多少は参考になるのではないかと思います。
ご自分のお給料と比べて、いかがでしょうか?
こちらの調査には主体設置別(国・公立・私立・医療法人など)、病床数別、さらに新卒看護師の給与額も掲載されていますので、ぜひ一度ご覧ください。
病院以外に勤務する看護師の給料
看護師の職場は病院だけでなく、保育園やクリニック、介護施設などと多岐にわたります。
病院以外で勤務する看護師の給料水準を、勤務先ごとに解説します。
保育園(保育園看護師)の給料事情
保育園児たちの健康チェックや具合が悪くなったときの看護や付き添い、感染症予防対策などを行うのが保育園看護師です。
私立・公立ごとの保育園看護師給与水準を下の表にまとめました。
※カッコ内は平均勤続年数。賞与込みの数値。
私立 | 公立 | ||
---|---|---|---|
常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 |
月給34万0,142円 年収408万1,704円 (12.3年) |
月給24万8833円 年収298万5,996円 (9.8年) |
月給39万6,931円 年収476万3,172円 (12.4年) |
月給20万8,389円 年収250万0,668円 (5.1年) |
出典:内閣府 | 令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】
常勤の月収は34万円~40万円、年収は408万円~476万となり、公立保育園勤務の看護師のほうが給料が高いです。
公立の保育園に勤務する場合は、地方公務員扱いになり、給与も自治体の水準に従っているため高くなっているのだと考えられます。
非常勤の保育園看護師は私立の方が高くなっていますね。
病院勤務の看護師より給料が低いのは、日曜日や祝日は休みのほか夜勤がないためです。
クリニックや診療所の給料事情
街のクリニックや診療所で働く看護師は、日勤のみ、シフト制勤務の場合がほとんどです。
クリニックや診療所で働く看護師の給与水準は、月収で25万円以上、年収は380万円以上になっています。
夜勤による手当がつかないことと、病院と異なり固定給が低いことから、病院よりも給与水準は低めです。
介護施設や介護サービス関係の事業所の給料事情
介護施設や介護サービス関係の事業所で働く看護師の場合、勤務先によって給与水準は異なります。
正職員(フルタイム) | 臨時職員等 | |
---|---|---|
特別養護老人ホーム |
月給29万6,884円 年収356万2,608円 |
月給23万4783円 年収281万7,396円 |
介護老人保健施設 |
月給32万3,536円 年収388万2,432円 |
月給22万0,713円 年収264万8,556円 |
出典:日本看護協会:特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書
正社員の場合、月収で30万円前後、年収で350万円~400万円が目安となり、特別養護老人ホームより介護老人保健施設に勤務する方が給料が高くなります。
夜勤をともなう施設で働く場合は夜勤手当がつき、月給は夜勤ありの病院とほぼ同じ給与水準となります。
ただし、全体的に病院勤務の看護師より給料が低いです。
これは介護職はボーナスが出ない傾向があるためだと考えられます。
介護労働安定センターの調査によると、介護職の2割くらいの方が「賞与はない」と回答しています。(参照:介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書)
病院勤務の看護師より1~2割程度年収が低くなると考えておきましょう。
保健所や保健センターの給料事情
保健所は公務員の身分となるので、その給料水準は平均して年収は350~400万円ほどになります。
一般的な病院勤務より低い傾向があります。
市町村保健センターの場合も公務員の身分となるので、給料水準は同様に年収は350~400万円ほど。
一般的な病院勤務の夜勤手当が無い分給料は少なくなりますが、その分仕事の負担は少ないのが特徴です。
産業看護師(企業勤務)の給料事情
産業看護師の給与に関する調査結果のサンプルはありませんが、一般企業に勤務する社員の給与に従うことになります。
国税庁が毎年調査している全国の民間給与実態統計調査を見ると、給与所得者の平均年収は436万円となっています。
企業規模や業種によって違いがあるとは思いますが、看護師資格を保持していることを加味すると、目安年収は450万円前後であると推測されます。(出典:国税庁 令和元年分民間給与実態統計調査結果)
治験医療機関(CRC)の給料事情
治験医療機関で活躍する看護師は、治験コーディネーター(CRC)として働くことになります。
治験を受けた患者のケアや、治験データの収集や薬剤師、医師などとの連絡調整などが業務内容です。
治験医療機関でCRCとして働く看護師の給与水準は、月収で30万円強、年収で370~430万円です。
(参照:マイナビコメディカル)
ただし、昇給率が高く長く働いてスキルを蓄積していけば年収500万円以上にもなります。
訪問看護の給料事情
自宅で介護や看護を受けている患者さんの元を訪問するのが、訪問看護師です。
訪問看護師の給与水準は、月収25~35万円、年収420~500万円になります。(参照:日本看護協会)
訪問件数に応じて給料が上乗せされる勤務先で働いた場合は、件数をこなせば年収500万円以上も可能です。
夜勤はありませんが、緊急呼び出し(オンコール)の場合に手当がつきます。
訪問看護のニーズが高くなっているため、近年給与水準も上がってきています。
献血、検診ルーム看護師の給料事情
献血ルームや献血バスで勤務する看護師は、献血看護師と呼ばれています。
受付や献血した人の看護、採血などがおもな業務です。
献血看護師の給与水準は、公的なデータはありませんが、求人情報を分析すると月収25万円前後、年収380~400万円くらいと推測されます。
夜勤がないため、夜勤のある病院や介護施設の看護師と比較すると給料は低めになります。
医療機器メーカー(クリニカルスペシャリスト)の給料事情
クリニカスペシャリストとして、医療機器メーカーで勤務する看護師もいます(「フィールドナース」とも呼ばれます)。
クリニカスペシャリストとは医療や看護の知見を活かして営業活動のサポートをするのが業務です。
クリニカスぺスペシャリストとして働く看護師の給与水準は、月収30万円以上、年収500万円以上と夜勤ありの病院と同額またはそれ以上が期待できます。
営業活動に携わって売上に貢献すればするほど高い給与が見込める働き方です。
以上病院以外で働く看護師の給与事情について紹介しました。
病院以外で働くことのメリット・デメリットについては以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
新卒看護師、病院以外に就職できる?おすすめの就職先を解説
看護師のお給料の特徴【筆者の実録コラム】
看護職の給与には、ある特徴が存在していることをご存知ですか?
「高給取り」のイメージがある看護師ですが、前述した給与水準を見ると実は基本給はさほど高くないのがわかります。
これは夜勤手当や残業手当、役職手当などが加算されてはじめて、それなりに良いお給料をもらえるということだからですね。
※参照:公益社団法人 日本看護協会「看護職の仕事と給与の特徴」
なお基本給は、勤続年数に応じて上がっていくものですが、上がり方は一定ではありません。
新人看護師の早期離職を防ぐために、一年目だけは基本給を高めに設定しているところもあると聞きます。
パートの仕事だと、基本給は永久に固定ということさえあります。
夜勤が減る→月給が減る
病院の経営状況や患者数、または看護配置によって、1か月あたりの夜勤数が変動することがあります。
夜勤手当は収入の要になっている看護師にとって、夜勤が1回でも減ってしまうのは痛手です。
筆者はかつて2交代制の病棟勤務だったのですが、病院の経営状況のせいなのか師長が変わったせいなのか、月に4~5回はあった夜勤が月3回に減りました。
当時私は夜勤手当がいくらかということは知りませんでしたが、基本給は上がったはずなのに月給が1万円ほど少なくなってしまったことを覚えています。
看護師の給料が頭打ちになる4つのタイミング
基本給が毎年すこーしずつ上がるにしても、「お給料が頭打ちになった!」と思うかもしれないタイミングが何度かあります。
どういう時期にその様になるのかを具体的にご紹介していきます。
(1)2年目以降
1年目は基本給が高い上、徐々に夜勤や残業時間も増えて、どんどんお給料が増えていくのを実感できます。
しかし2年目からは、夜勤や残業が爆発的に増えることはありません。
勤続年数によって基本給は少し上がったとしても、1年目ほどお給料アップを実感できないかもしれません。
(2)出産適齢期
産休・育休を取得したり、退職したりすると勤続年数のカウントがストップします(産休・育休の場合はカウントされるかもしれません)。
特に退職・転職した場合は、以前の職場の勤続年数は消滅し、別の職場で新人としてスタートすることになります。
過去の勤続年数は配慮してもらえる可能性がありますが、多少はお給料が減るでしょう。
(3)30代後半~40代
2年目以降と同じ原理で、お給料の激増はありません。
もし役職につけば、その手当が出るかもしれませんが…。
(4)師長クラスの管理役職に就いた時
師長になると管理職手当が付くようになるのですが、それまで付与されていた超勤手当が付かなくなります。
「師長になる前の残業をしていた時の方がもらえる給与が高かった。」
という話もしょっちゅう聞きました。
労働基準法によると、「管理監督者に対する時間外および休日労働に対する手当支給の義務は定められていません。」とのこと。
(参照:公益社団法人 日本看護協会「看護職の仕事と給与の特徴」)
業務前の情報収集や休日出勤に費やした時間には超過勤務手当が付く
「始業時間よりも早めに出勤して、情報収集や準備をしておくのが当たり前」
「研修や病棟カンファレンスの時は、休みでも出てくるのが暗黙の了解」
という職場も少なくないと思います。
自分の職場の正式な始業時間を知らないという方もいるかもしれません(筆者はそうでした)。
ただし、労働基準法では「業務上必要な業務前の情報収集や研修などは業務とみなされ、超過勤務手当をつける必要があります。」と定められています。
(※参照:公益社団法人 日本看護協会「看護職の仕事と給与の特徴 」)
「あまりにも業務時間外に働いている対価が少ない…」
と感じている方は上長に相談してみましょう。
急にすべての超過勤務に手当を付けてもらうのは難しいと思いますが、あまりにもひどい場合や納得がいかない場合は、転職を考えても良いかもしれませんね。
看護師のボーナス支給時期
一般企業や官公庁を含め、ボーナスは一年に二回、夏と冬に支給されるところが多いようです。
年一回支給のところもあれば、年三回のところもあります。
ちなみに国家公務員の場合、法律により夏は6月30日、冬は12月10日の年二回の支給と定められています。
これを基準に一般企業は7月初旬、12月初旬の支給としているところが多いようです。
職場によっては、春(年度末)のボーナスを合わせて三回になるところもあります。
いつのボーナスが最も高額?
ボーナス支給額は時期によって異なります。
夏・春に比べ、冬のボーナスの方が高額だというところが多いです。
「年三回のボーナス支給」と聞くとたくさんもらえるような気がしてしまいますが、年間の支給総額は年二回の職場と変わらないということも十分あり得ます。注意しましょう。
一年間の支給回数よりも、総額が重要だと言えますね。
新人看護師はボーナスをもらえる?
結論を言えば、もらえます。
しかし夏のボーナスはなしで、冬から本格的に支給されるところが多いようです。
理由は各職場で、「勤続○か月から賞与支給」と定められているからです。
4月に就職して、7月頃にボーナスを出すのは早すぎるということでしょう。
一年目の夏のボーナスは期待せず、ないものと考え、「少しでも出ればラッキー!」くらいに思っておくと良いでしょう。
そうでないと、ガッカリしたり、ボーナス払いで買ったものの支払いが出来なくなったり、生活が苦しくなったりする危険がありますから…。
看護師にも、ボーナス査定基準はある?
一般企業では、各社員の能力に応じて、ボーナス支給額を査定しているようですが、これは看護師の業界でもあります。
師長などの管理職が、個々の働きぶりを見て判断するところが多いようです。
具体的な基準は明らかにはされませんが、日々の業務遂行状況、職場への貢献度(例えば○○のことに精通しており、他のスタッフにも教育している。
認定看護師などの資格を持ち、その能力を活かしている。など)、勤務態度などを参考にしているのでしょう。
これは筆者の経験則ですが、いわゆる
「仕事ができる人」
「○○のことと言えば、□□さんに聞けばよい」
という印象がある人は、プラス査定がついていることが多いです。
査定でボーナスが上がる人がいる一方、下げられてしまう人もいるのが現実です。
社会とは厳しいものですね。
けれどもこの査定は、毎回のボーナスで更新されます。
一度プラス査定がついたからといって、次回もプラスとは限りません。
逆にマイナス査定がついてしまっても、次のボーナス時期まで頑張ったら、プラスになるかもしれません。
プラス査定してもらえたら、たくさんお金がもらえるだけでなく、「自分の仕事が認められている」と自信に繋がります。
<実例コラム>毎月のお給料をボーナスでカバー
これは筆者がある総合病院で、病棟の看護師として働いていたときの話です。
あれは私が看護師2年目くらいのことでしょうか。
同じ学校を卒業し、同じ都道府県の大学病院で、私と同じように病棟で看護師をしている友人とお給料の話になりました。
お互いに給与明細までじっくり見せあった訳ではありませんが、大体の月収やボーナスについて情報交換をしたのです。
結論を言いますと、私と友人の月収には大きく差が出ましたが、年収は同じくらいでした。
月収に大きな差があるのに、年収は同じ。
なぜでしょうか?
原因は残業手当とボーナスでした。
ボーナス支給額の増減が年収を左右する
私の職場は緊急時以外はサービス残業で、滅多に残業手当がもらえませんが、ボーナスは年三回の支給で総額も高めでした。
一方、友人のところは、残業手当は毎月きっちり支給されるけれど、ボーナスが私よりだいぶ少なかったのです。
私目線で言えば、もらえない残業手当をボーナスがカバーしているような状態でしょうか(これでちゃんと残業代も出れば最高なのに)。
ボーナスが良い・悪いだけでなく、年収の面から自分のお給料を考えなくてはいけないなと思ったのでした。
ぜひご自分のボーナスを見つめ直してみてください!
まとめ
看護師の仕事は、体力的にも精神的にも負担が大きいものです。
長く働くためには、納得のいく収入をもらえないと辛いですよね。
今一度、ご自分のお給料と労働環境を見直してみましょう!