日本の文化や歴史、街並みが好きな外国人の方はとても多く、2017年4月に日本を訪れた外国人は257万人と言われ、前年の同時期に比べて23%も増えているほど、日本に訪れる外国人の方は多く見られるようになってきました。もちろん旅行だけではなく、留学で日本を訪れている外国人もおり、中には就業を目的として訪れている外国人も多く見られます。その数は91万人(平成27年10月時、厚生労働省調べ)にも及びます。
就業目的で日本に来ている外国人の中には「ファッションが好きだから、ファッション・アパレル業界で働きたい」と言う人も少なくありません。しかし外国人が母国ではない異国の日本で働くということは、簡単なことではなく、様々なトラブルや困難と向き合わなければならないこともあります。
今回は外国人が日本で働く上で、気をつけておきたい事前準備、企業を選ぶポイントや働く上での注意点など、詳しくご紹介していきましょう。
まずは就労ビザ(在留資格)が必要!
外国人が来日する場合、母国で発行される「パスポート」と日本国外務省が発行した「ビザ」が必要になります。これらは観光や留学などの目的で日本に滞在するための許可証明とした役割をもっていますが、これだけでは日本で働くことはできません。
そこで日本で働く際に「就労ビザ」という在留資格が必要になります。実は就労ビザにはいくつか種類があり、種類によって就業できるお仕事が限られているのです。
ファッション関係は、ファッション・デザイナーやファッションに関わる海外業務、広報宣伝に従事することができる「人文知識・国際業務」という種類のものが該当します。しかしこれらの中に「アパレル販売員」という職種は含まれておりません。実はアパレル販売員の許可が含まれている就労ビザはなく、基本的には永住権を持っている人、もしくは日本国籍を持った配偶者がいる人に限られてしまいます。
しかし「永住権は持っていない・日本国籍の配偶者がいないが日本でアパレル販売員をしたい」と望む人は就労ビザを専門に取り扱いをされている行政書士といった専門家の力を借りることをおすすめします。「アパレル販売員」では、どうしても就労ビザが降りることは難しいので専門家の知識を借り、申請を手伝ってもらうのがいいでしょう。
初めから「正社員」で就業できるケースは少ない
外国人を従業員として雇い入れるとき、アルバイトでなければ雇用主に様々な負担がかかってしまいます。就労ビザの関係やコミュニケーション、感覚の違いなど、日本文化と違う環境で育った外国人は日本人ばかりの環境でうまくやっていけるのか…という点で、懸念することが予想されます。
正社員の雇用については、採用するまでの活動費や採用後の保険関係や給料面など、どうしても多くの費用がかかってしまい、それだけに企業としても人を雇用する際は非常に慎重になってしまいます。そこで日本での就業経験がない外国人を起用することは、日本人を雇用するよりもリスクを取るという覚悟が必要になってしまうのです。
まずは契約社員や派遣社員から、キャリアを始めよう!
まずは契約社員や派遣社員といった雇用形態で就業し、日本での就業経験という実績を作ることをおすすめいたします。その中でも契約社員より派遣社員での就業からスタートするほうが、より就業開始時期が早くなる可能性が高くあります。
なぜかというと派遣会社の場合は雇用先が派遣先会社ではなく、派遣元の派遣会社になるので、派遣先のアパレル会社での直接雇用ではなくなる分、保険関係や雇用手続き関連を派遣会社のほうが担ってくれるため、アパレル会社からするとリスクもあまりなく外国人の方を従業員として受け入れやすいのです。
直接雇用ではなく正規の雇用ではないという点においては、物足りなさや煩わしさも感じられるかもしれません。しかし上記のケースでも「日本のアパレルショップで働いたという実績」を作ることで、正社員への転職を試みる際には非常に有利な武器となります。
しかし外国人の場合、どうしてもこうした壁にぶつかってしまい、なかなかスムーズに働くことが難しいので、少し遠回りになってしまうかもしれませんが、こうした方法を取り入れ、手堅い手順を踏んで行くことが結果的に1番の近道になるのです。
派遣社員でも契約社員や正社員になれる可能性はある!
ただし派遣として採用されたアパレル販売員のお仕事だったとしても、意欲や結果次第では契約社員・もしくは正社員といった直接雇用で受け入れていただける場合もあります。派遣社員として働くことが必ずしも遠回り、とは言えません。意欲や結果を出し、評価してもらうことで社員としての道を作ることもできるのです。
外国人が日本のファッション・アパレル業界に転職する上で気をつけたい3つのポイント
海外展開しているブランドか「外資系ブランド」を取り扱っている企業を選ぶ
日本にあるアパレルブランドは日本発で日本でのみ展開しているブランドか、日本発で海外でも展開しているブランド、海外発で日本でも展開しているブランドか、この3つの中のいずれかになります。応募先に選ぶ企業は、日本発で海外でも展開しているブランド、もしくは海外発で日本でも展開しているブランドのいずれかにすることをおすすめしております。
なぜなら外国人の方を雇用するにあたり、「なぜ外国人労働者を雇用する必要があるのか?」という理由を会社が見出していない限り、外国人の方を雇用する必要性がないからです。例えば日本発で日本でのみ展開しているブランドに関しては、お客様はほとんど日本人の方ばかりで、且つブランドイメージなどに合わないのであれば、外国人の方を雇用する必要性というのは見出されません。
一方、日本発で海外でも展開しているブランド、もしくは海外発で日本でも展開しているブランドであれば海外のお客様に認知されていることになり、外国人観光客が多く来店されるので、そうしたお客様に適切な接客をするためにも英語など語学で施せる外国人労働者は、重宝されます。
また海外進出ブランド、外資系ブランドはスタイリッシュなイメージを持っているため、一般的に日本人よりもスタイリッシュに見える外国人アパレル販売員として迎え入れる方がブランドイメージを保ちながら、ハイレベルな店作りを叶えやすいということがショップ側の本音です。こうした理由もあり、応募する企業に関しては海外展開されているブランドか外資系ブランドを取り扱っている企業を選ぶことで、採用確率はグッと上がるでしょう。
自国の文化・ルールを主張しない
国によって様々な文化や常識が存在します。自国で当たり前の常識や文化として受け入れられていたことでも、日本では非常識なことや文化として受け入れられていないこともたくさんあります。
また働き方に関しても、海外と日本とでは色濃く違う部分があります。それは評価基準についてです。海外では基本的に成果主義となっており、若くても結果を出していればすぐに管理職まで出世することができます。反対に年齢やキャリアがあっても結果を出せないままであれば、出世をすることはできません。
日本の企業も成果主義をうたう企業は近年増えていますが、まだまだ年功序列制度が色濃く残っている企業があることも事実です。成果主義だとうたっておきながらも実態は年功序列制度という企業も、少なくはありません。海外のそうした根っからの成果主義が当たり前の状況で日本の企業に就職した場合、そこが年功序列制度を取り入れている古い体質の企業であれば、当然不服に思ってしまうでしょう。
自分よりも成績が悪い方が少し先輩というだけで上司になる、といったようなことが起こった時「自分の国では…」と思い、時には声を大にして主張してしまいかねないこともあるでしょう。しかし日本という国で働く以上、「郷に入っては郷に従え 」という言葉があるように、日本という国の文化や習慣、常識に従わないといけません。そこに不服を感じ、耐えられないのであれば日本で長く働くことは難しいでしょう。
ただ年功序列制度を取り入れている企業も、だんだんと少なくなってきております。特にアパレル販売員など、成果が数字として見えるような業種であれば、数多くの企業が成果主義を取り入れ始めています。事前に就業前に確認を取っておくと良いでしょう。
ビジネス用途の日本語を、しっかり覚えておこう
いくら海外進出しているブランドや海外から日本に進出しているブランドであり、且つ外国人観光客の数が年々増えている昨今であってもアパレルショップの所在地が日本である限り、お客様の割合で1番多いのは日本人です。そのため日本語での接客がほとんどになるので、アパレル販売員だけでなく接客業に従事するのであれば、日本語の接客用語や正しい敬語、マナーなどに関してはマスターしておく必要があります。
外国人だから海外のお客様が来店した時だけ接客をお願いしよう…ということは、あり得ないことです。当たり前ですが一般的な日本人のお客様が来店された時も、接客はお願いされるのです。
特に日本だけに留まらず海外が関わるブランドというのは、そのイメージを非常に大切にしているため下手な接客やマナーのない販売員によって、そのブランドイメージを落とすことを非常に懸念に思われています。もちろん外国人だけではなく、日本人の従業員に対してもそう思っているのです。
いくら外国人の方だと言っても一度店頭に立てば、もう接客のプロです。契約社員や派遣社員とは言えども、アルバイトではないため「外国人の方だから、仕方ないか…」とはなりません。販売員は、そのショップやブランドの看板になることを忘れずに正しい日本語やマナーをマスターし、しっかりとお客様をおもてなしすることで、お客様からの評価も会社からの評価も上がるでしょう。
日本のファッション・アパレル業界での、外国人のキャリアアップはあるのか?
外国人が日本のファッション・アパレル業界でのキャリアアップを叶えることは、とても難しいことではありますが不可能ではありません。日本のファッション・アパレル業界でのキャリアのスタートは、いずれも「アパレル販売員」という立場からが一般的だからです。もしくは本社勤務になると営業職からキャリアを始められる会社もあるため、難易度が高くなります。
外国人が日本のファッション・アパレル業界でキャリアアップした先の立ち位置としては、やはり在留資格の「人文知識・国際業務」にも含まれていた、ファッション・デザイナーや、ファッションに関わる海外業務、広報宣伝の業務になってきます。
外国人を日本のアパレル会社に雇用する最大のメリットとは、海外の文化や常識をすでに根本から理解し、スムーズなビジネス英語を理解しているという点の他ありません。日本のマーケットではだんだんと人口が減ってきているアパレル業界で、ある程度の立ち位置にいるアパレル会社にとって海外進出は避けて通れない道にもなってきている状況です。そうした中で外国人の従業員が窓口となり、海外の販路を築いていただければ、企業としてこんなにも助かることはありません。
まとめ
まず外国人という立場で日本のファッション・アパレル業界以外でも、就業するということは簡単なことではありません。在留資格を取得しなければならず、アパレル販売員として従事することは通常より高いハードルを越えなければなりません。お金を払って専門家に相談することが必要になってくるでしょう。
こうした問題に関しては、外国人派遣や転職を中心とした転職エージェントに相談することも視野に入れると良いでしょう。転職エージェントはプロですので、きっと今までにあなたと同じような悩みを持たれている外国人の方に、アドバイスをされてきた経験があるかもしれません。