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ツラい知覚過敏…予防や治療は自宅ケアがカギ!?
知覚過敏が引き起こされるメカニズムや原因、治療法、予防法を、わかりやすく紹介します。
冷たいものや温かいものを口にした時、「キーン」としみるような痛みが走る知覚過敏。症状が重たくなれば、エアコンによる風にまで敏感に反応して苦痛を味わう事もあります。常時痛みが続くむし歯とは異なり、知覚過敏は刺激を受けた時だけという一時的なものですが、事あるごとに痛みに見舞われるのは辛いものですね。
知覚過敏はとても身近な症状ですが、その原因や正体を正しく理解できている方は少ないのではないでしょうか?そこで今回は、知覚過敏が起こるメカニズムや原因、治療法や予防法などをわかりやすくまとめました。快適なお口のコンディションを守るヒントにお役立てください。
知覚過敏の原因
むし歯でもないのに歯がしみて痛む知覚過敏の原因を知るためには、歯がどのような構造で成り立っているのかを理解しておく必要があります。
私たちの歯には、表面から「エナメル質」、その下に「象牙質」、さらに内側には「歯髄」という神経が存在しています。ご存知の通りむし歯や知覚過敏などによる痛みを感じているのは歯髄(神経)の部分なのですが、通常はその上を象牙質やエナメル質に覆われている為しみて痛みを感じる事はありません。知覚過敏とは、なんらかの原因により冷たい食べ物などによる刺激が歯髄まで行き届いてしまう事で起こります。
知覚過敏は、象牙質が露出する事で引き起こされます
それでは、なぜ刺激が歯髄にまで行き届いてしまうのでしょうか?
刺激の伝達には、象牙質にいくつも空いた「象牙細管」と呼ばれる穴が関係しています。なんらかの原因からエナメル質に傷が入ってしまった時、その下の象牙質や象牙細管が露出した状態になります。歯髄は象牙質に覆われてはいますが、象牙細管の穴が無数に空いているので隙間なく密閉されているわけではありません。したがって、象牙質が察知した刺激は穴を通って歯髄にまで行き届いてしまうのです。
「痛みを感じるのは歯髄(神経)」ですが、象牙質が露出した時点で知覚過敏はスタートする…というわけですね。この事から、知覚過敏を正式名称で“象牙質知覚過敏”と言い表すこともあります。
象牙質が露出してしまう原因は
それでは、なぜ象牙質が露出してしまうのでしょうか?その原因はいくつか考えられます。以下に、歯が削られて知覚過敏となってしまう原因を紹介します。
間違った歯の磨き方がエナメル質を削る事につながる
「健康な歯を保つために、毎食後にきちんと歯を磨いています!」という方へ。歯の磨き方によっては、その習慣が知覚過敏の原因となっているのかもしれません。エナメル質に傷をつけるもっとも多い原因は、この“間違った歯の磨き方”だと言われているのです。以下のポイントに心当たりのある方は、ぜひ歯の磨き方を見直してみてください。
- 硬い歯ブラシを使用している
- ゴシゴシと力を入れて磨いている
- 歯磨き粉をたっぷりと使用している
大理石ほどの硬さを誇るエナメル質も、硬い歯ブラシで力任せに磨くケア方法を毎日継続する事で削れてしまいます。さらに、歯磨き粉は“研磨剤”です。研磨剤とは削り・研ぎ・磨くのに使用される硬い粒や粉の事で、つまりヤスリだという事。ヤスリで毎日削り続けているとなれば、ダメージを受けないわけがありませんね。知覚過敏の原因と予防において、歯の磨き方は非常に大きなカギとなっているのです。
食事から摂取する酸が歯の表面を溶かしている
歯の表面を覆うエナメル質は私たちの体の中でもっとも硬い組織だと言われています。ところがその反面、酸によって溶けやすいという弱点を持っているのです。歯の表面が酸によって溶かされてしまうことも知覚過敏の原因の一つ。「酸で歯を溶かすような習慣は持ってないよ!」と思われるかもしれませんが、私たちが毎日行っている食事のシーンでも歯は酸に晒されています。
私たちの口の中にはむし歯菌(ミュータンス菌)が存在していて、むし歯菌は食べ物の糖分を元に酸を作り出し歯を溶かします。これを「脱灰(だっかい)」と言い、脱灰が進行すると症状はむし歯へとステップアップしてしまいます。この脱灰に対し、今度は唾液に含まれるミネラルが中性の状態へと引き戻しダメージを受けた歯の修復を行います。これを「再石灰化」と言い、口内の環境は脱灰と再石灰化を繰り返す事で健康的なバランスを保とうとしているのです。
しかし、歯が酸に晒される原因はそれだけではありません。ドレッシングや果物、お酢などなど、私たちは日常的に◯◯酸と名のつく様々な酸を口にしていますね。これらのようにpHの低い食品や飲み物を頻繁に摂取する習慣によって再石灰化が追い付かなくなってしまうと、脱灰が進み歯はどんどん溶かされてしまうのです。酸性の食べ物によって歯が溶けてしまう現象を「酸蝕歯(さんしょくし)」と言います。
噛み合わせが悪い人は、知覚過敏になりやすい!?
歯並びが悪いと歯の噛み合わせが悪くなり、本来は全体に分散するはずの力が局部的にかかってしまう可能性が考えられます。一定の場所ばかりにダメージが集中し、次第にその部分のエナメル質が削れてしまう事につながるのです。したがって噛み合わせの悪い人は知覚過敏のリスクが高くなりがち。この場合、治療法は歯列矯正となるでしょう。
歯ぎしりの習慣が毎晩歯を削っている
精神的なストレスや疲労により寝ている間に歯ぎしりをしてしまう方も、知覚過敏のリスクが高くなってしまいます。たかが歯ぎしり…と侮ってはいけません。歯ぎしりによって歯や歯茎が受けるダメージは数トンにものぼるといわれているので、歯ぎしりの癖が改善されない限りは毎晩歯の表面が削れ続けてしまう事に…。ストレスを溜め込まない工夫や、マウスピースなどを使用した治療で歯ぎしり対策を始めてみてはいかがでしょうか。
むし歯や歯周病による刺激で知覚過敏が起こる
むし歯によって象牙質が露出すると、知覚過敏のような痛みを伴います。むし歯の場合は飲み物や食べ物による刺激ではなく、「何をしていても痛い」という症状が出るので少しニュアンスが異なるでしょう。歯医者で適切な治療を受けてください。また歯周病によって歯茎が下がる事で、その下の象牙質が露出し知覚過敏を引き起こすケースも考えられます。
年齢を重ねると歯茎が下がってしまう
歯周病でなくても歯茎が下がる事があります。ズバリ原因は「老化」。10歳年齢を重ねるうちに、2mmほど歯茎が下がってしまうと言われています。痩せてしまった歯茎が、知覚過敏の原因となるケースも少なくありません。
歯医者で受けた治療が原因になる事もある
歯医者で受ける事のできる以下の治療が、知覚過敏の原因になるケースが存在します。
- 歯石除去
- むし歯の治療
- ホワイトニング
上記では、歯周病や加齢などの原因から歯茎が下がってしまった場合、それまで覆われていた象牙質が露出して知覚過敏になってしまうと紹介しました。ところが、歯茎が下がり露出した部分(歯と歯茎の境目)を歯石が覆い隠しているために象牙質の露出を免れている事があるのです。その場合、歯石を取り除く事が象牙質を露出させる事につながります。とはいえ、付着してしまった歯石は除去しておくに越した事はありません。何度も歯石除去を受けるうちに知覚過敏の症状が和らぐ事もあるので、歯石は定期的に除去してもらいましょう。
むし歯の治療では歯を削るので、歯髄が刺激を受ける事や噛み合わせによって痛みを感じる事も考えられます。治療後も痛みがある場合は医師に相談してください。症状によっては、さらに治療を行う必要があります。
また、歯を白くするホワイトニングで使用される薬剤が知覚過敏を引き起こる事もありえます。この場合の症状は一過性のものなので、治療中に症状が現れた際には一旦治療をお休みするなどの調整を行ってください。治療が完了すれば、知覚過敏の症状もなくなります。もしも治療終了後も痛みが継続している場合は、別の原因から引き起こされている事を意味しています。
歯が折れると知覚過敏になる!?
スポーツや事故などで歯が折れてしまうと、象牙質を露出させる原因になる事も。この場合歯が欠けている事はもちろん、歯にヒビが入り知覚過敏の原因になるケースも考えられます。
知覚過敏の治療法
「キーン!」と痛む知覚過敏は、一刻も早く治したいですね。知覚過敏の治療は症状の重さによって異なります。以下に、治療の方法を症状ごとに紹介します。
「冷たいものがしみるな〜」と感じ始めた軽度の知覚過敏であれば、歯の磨き方を改善する事で治療を目指す事が可能です。まずは、普段使っている歯ブラシの硬さを見直してみましょう。
上記(原因)でもお話ししましたが、硬い歯ブラシを使ってゴシゴシ磨く方法は厳禁です。ソフト(柔らかい)タイプの歯ブラシで、歯と歯肉の境目などにプラークが残らないよう丁寧に磨きましょう。また、日本で一般的に使用されている3列タイプの歯ブラシに加えて、ピンポイントなケアができる「ワンタフトブラシ」を併用する事もオススメします。
歯磨き粉は使用しなくても問題ありませんが、使いたい場合は研磨剤入りの歯磨き粉の使用も避けるようにしてください。研磨剤を含まないものか、あるいは低研磨性の歯磨き粉をチョイスするようにしましょう。
「歯ブラシの毛先がしみて痛い!」と感じる段階まで進行している場合は、専用の歯磨き粉にシフトして知覚過敏の症状を抑える治療を始めてみましょう。市販されている「知覚過敏防止歯磨き」には象牙細管の穴を塞ぐバリアになる薬用成分が配合されているため、上記で紹介した治療にプラスするだけで知覚過敏の症状改善が期待できます。
知覚過敏防止歯磨きでも症状の改善がみられない場合は、自宅ケアから歯医者での治療にステップアップする事をオススメします。露出してしまった象牙質にフッ化物が配合された薬によるバリアを張って、歯を刺激から守る治療が行われます。このバリアによる効果は永遠ではありませんが、剥がれてしまう前に再石灰化でエナメル質が修復され症状がなくなることが期待できます。
③のバリアでカバーしきれない場合などは、レジン(樹脂)や歯科用セメントなどのコーティング剤を使用して歯を刺激から守る治療が行われます。このコーティングも長期的に効果が継続するわけではありませんので、定期的に磨り減った分を補修していくことになるでしょう。また③同様に、コーティング剤が剥がれてしまう前に再石灰化により修復され症状がなくなることが期待できます。
ここまでの治療でも改善が期待できないほど重度の知覚過敏である場合は、神経を取り除いて痛みを感じなくさせる治療が行われます。痛みを感じるものがなくなるので症状はなくなりますが、神経を失った歯は変色やもろくなったり、むし歯リスクがアップしてしまうリスクを秘めています。これまで以上に気を使いながら使っていく必要が出てくるでしょう。
その他の治療法について…
その他の治療法として、レーザーによる治療が行われることがあります。露出した象牙質にレーザーをあてて刺激が伝わらないようにする方法です。とはいえ、知覚過敏へのレーザー治療については歯医者さんごとに見解が分かれており、さらに使用している機材や出力の大きさにも異なりがあります。全ての歯医者でおこなわれている事ではありません。またレーザーによる治療では保険が適用されないケースもあるので、治療を受ける前に費用や回数についての相談を受けておきましょう。
上記でも紹介した通り、知覚過敏の原因には歯周病などの様に別の病気が関わっている事も考えられます。その場合、原因となっている病気や問題点の改善が先決。歯周病やむし歯の治療の他に、マウスピースを使った歯ぎしりの改善などが行われることもあります。また、知覚過敏による痛みが強い場合は消炎鎮痛剤が処方されることもあります。
知覚過敏の予防法
知覚過敏を予防するときには、以下の3つが大きなポイントとなります。
- 正しい歯の磨き方を心がける
- 食べ物や飲み物に含まれる◯◯酸に注意する
- 定期的に検診を受ける
以下に、その内容をわかりやすく解説します。
正しい歯の磨き方を心がける
むし歯や歯周病、知覚過敏の予防に欠かす事ができないのは、ズバリ「歯の磨き方」。知覚過敏の原因として大多数を占めると言われている歯磨きを見直す事は、効果的な予防方法だと言えます。磨き方は1本1本の歯を優しく・プラークが残らないよう丁寧に行ってください。ゴシゴシ磨いてエナメル質にダメージを与えない事に注意しましょう。
また、歯を磨くために必要なアイテム選びもとても重要です。
歯ブラシの選び方
歯の表面にダメージを与えないためにも、歯ブラシはソフトタイプを選ぶようにしてください。とくに歯磨きで力が入りがち…という方の場合は、なおさら柔らかい歯ブラシを選ぶ事でエナメル質への負担を軽減させる事をオススメします。また上記(治療法)でも紹介しましたが、一般的に広く使用されている3列タイプの歯ブラシに加えて「ワンタフトブラシ」を使ったケア合わせて行うようにしてください。
ワンタフトブラシとは、毛束が一つだけの歯ブラシの事。磨き残しがちな場所へもピンポイントでケアできるメリットから、歯と歯の間、複雑な形の奥歯、歯と歯茎の隙間などなど…3列タイプの歯ブラシではできなかった行き届いた歯磨きを行う事ができます。
歯磨き粉の選び方
スーパーやドラッグストアで販売されている歯磨き粉のほとんどには研磨剤が配合されています。研磨剤とはヤスリの事!毎日のケアで歯を削ってしまう事が、知覚過敏の原因となっているのです。知覚過敏を予防するためには、使用する歯磨き粉を見直す事が必須だと言っても過言ではありません。
研磨剤を含まないものや、低研磨性の歯磨き粉、症状がすでに現れているのであれば知覚過敏防止歯磨きがオススメです。あるいは、歯磨き粉を使用せずにブラッシングのみでケアしてもいいでしょう。
食べ物や飲み物に含まれる◯◯酸に注意する
◯◯酸を含む食品には、思いの外様々なものが存在しています。例えばお酢を含んだドレッシングや、ワイン、炭酸飲料、スポーツ飲料、果物にも酸が含まれていますね。中には健康に良いと言われる食品も少なくはありません。適度に摂取しながら、歯へのダメージを考慮するバランスが重要です。酸を含む食べ物や飲み物を摂取しすぎない事、あるいは長時間ダラダラと食べ続けない事を心がけてください。
また食後すかさず行われる歯磨きがエナメル質にさらなる追い打ちをかけてしまう事も。食事で摂取した酸によってダメージを受けたエナメル質は傷つきやすく、知覚過敏の原因になりかねません。食後は少し時間を空けてから歯磨きをする事や、いつも以上に優しく磨く事を心がけるようにしましょう。
定期的に検診を受ける
「正しい方法でケアしたつもり…」、「ケアアイテムの選び方もこだわっているつもり…」でも、自宅で行う自己流のケアには限界があります。磨き残しで口の中に残ったプラークは、わずか2日ほどで歯石に変わってしまいます。歯石になってしまうと、歯磨きで除去する事はできません。ときには専門家の目線から問題点をあぶり出してもらう事も重要です。知覚過敏以外にも、口周りにはむし歯や歯周病などのトラブルリスクが潜んでいるもの…。定期的に検診を受けて、トラブルの早期発見・早期治療に活かしましょう。
辛い症状も、日々のケアで治療・予防が可能!
「冷たいのは歯にしみるから苦手なの…」と、しばしば知覚過敏を体質のように捉えている方がいらっしゃいます。しかし知覚過敏はれっきとした病気で、そこには原因や予防法が存在しているのです。知覚過敏は体質ではありません。日々の心がけや症状次第では、予防はもちろん治療も自宅ケアで行う事が可能なのです。正しいケアの方法を知り、ぜひ知覚過敏とは無縁の快適なお口のコンディションを目指してみてはいかがでしょうか?
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