会社の社会保険に加入している人は給料から天引きされるので関係ありませんが、国民健康保険は加入者が自発的に支払いをしなければなりません。
「支払うのが厳しいから、保険料を払わなかった。滞納を続けたらどうなるのだろうか?」
保険料を払えない理由は人によって違うと思いますが、国民健康保険料の納付は義務です。ですから、滞納を続けたらそれ相応のペナルティーを受けることになります。
ここでは、国民健康保険料を滞納したらどうなるのかを説明し、滞納をした場合どう対応すべきか解説をします。
国民健康保険を滞納して困っている人は、この記事を読めば、滞納を続ける怖さや、滞納したとしてもどう行動すべきか分かりますよ。ぜひ参考にしてみてください。
目次
国民健康保険料を滞納したらどうなる?
納期限を過ぎても保険料を支払わなければ滞納になります。
まずは、「滞納するとどうなるのか?」大まかな流れは次の通りです。
- 督促状や電話などで未納保険料の支払い催促
- 短期被保険者証の交付(切り替え)
- 被保険者資格証明書の交付(切り替え)
- 高額療養費などの保険給付の停止の恐れ
- 財産の差押え(滞納処分)が下される
滞納する期間が長くなればなるほど、厳しい状況になっていくのが分かるかと思います。
ここでは、滞納後のフローを各ステップごとに詳しくみていきます。
①. 督促状の送付などで未納保険料の支払いの催促
滞納したら最初に督促状が送られてきます。これはどの自治体も同じです。
督促状で送付される未納保険料の納付にも、当然期限が設けられています。ですから督促状の納期限を過ぎても納付されなければ、当たり前ですが役所は催促を続けてきます。
督促状で支払ってもらえない場合には、催促の仕方も変わってきます。はがき・郵便物で未納を知らせることはもちろん、電話がかかってきたりもします。自治体によっては、役所の職員の方が直接滞納者の自宅を訪問して保険料を徴収するケースもあります。
②. 短期被保険者証の交付(切り替え)
督促状や役所からの直接の催促にも応じない場合には、滞納者の所持している国民健康保険証が使えなくなります。
そして、通常の保険証よりも有効期限の短い「短期被保険者証」に切り替えられます。
- 保険証なので、通常のもの同様に医療費の自己負担は3割のまま
- 有効期限は3ヶ月や6ヶ月など、自治体によって違う
滞納した場合の具体的なペナルティの1段階目です。期限が短く設定されているので、切り替わってもすぐ期限を迎えるようになっています。
短期被保険者証は、見た目は普通の国民健康保険証とほとんど変わりません。交付年月日と有効期限を見たときの差を見れば、短期被保険者証であることは分かります。
どれくらい滞納すれば短期被保険者証に切り替わるのか?
自治体によって違います。どの程度滞納をしたら「短期被保険者証」に切り替えるかといった判断基準は自治体独自で決めています。
ですから、役所の公式サイトにも「短期被保険者証」に切り替えることがあると記載はされていますが、未納期間が〇〇日を経過したら交付するといった具体的な期間が記されていないことが多いのです。
③. 被保険者資格証明書の交付(切り替え)
短期被保険者証に切り替えても未納が続く場合、「被保険者資格証明書」に切り替わります。大きな違いは保険証ではなくなるということです。
3割負担の支払いに慣れていると、医療費を全額で自分で支払うのは精神的にも厳しい金銭的負担でしょう。
「被保険者資格証明書」で医療費を全額支払ったら、その領収書を持って後日役所に行きましょう。未納分の保険料がある場合には、その支払いに充てられます。
もし、滞納分の保険料を相殺することができれば、3割の自己負担額を差し引いた上で余った金額の払い戻しが受けられます。
④. さらに滞納が長期化すると、保険給付の停止の恐れ
「被保険者資格証明書」に切り替わっても保険料の未納が改善されない場合には、自治体にもよりますが特別療養費や高額療養費といった保険給付の全額あるいは一部の支給が停止する可能性があります。
もし、給付が止められてしまったら、医療費の負担が増えるわけですから大変になるでしょう。
⑤. 財産の差押え(滞納処分)が下される
保険料を滞納し続けたら最終的には、財産の差押えが実行されます。何度も催促をしても納付されない場合は、強制的に徴収するしかありません。
何を差し押さえられるかは、滞納した保険料の総額に相当する財産になるでしょう。主に、給与、預貯金、生命保険などがあり、それらでカバーできないようであれば不動産なども対象になるでしょう。
給与の差押えなら会社に通知がいくでしょうし、預貯金の差押えなら口座から強制的に引き落とされます。例えば、口座が差し押さえられて、残高が0円になっていたらどうですか?
もし、滞納せざるを得ない理由があるならば、滞納を続けるのではなく、必ず役所に相談をしましょう。そうすれば、差押えになるような事態を防げるはずです。
滞納すると延滞金が発生!延滞金の計算方法
滞納したら、そのペナルティーとして「延滞金」がかかります。延滞金は滞納期間が長くなればなるほど大きくなります。それでは、どれくらいの延滞金がかかるのか、例を交えて解説をしていきます。
例えば、東京都中野区在住で平成30年7月31日(2期分)の保険料44,510円を滞納し、平成30年11月30日に支払ったとします。そのときの延滞金を算出してみましょう。
延滞金を算出するフローは次の通りです。
- 滞納した保険料の金額(1000円未満の端数は切り捨て)を調整
- 延滞金の利率と滞納した期間を把握
- 延滞金の計算
1000円未満切り捨てなので、滞納保険料は44,510円→44,000円になります。
2. 延滞金の利率と滞納期間の算出
期間 | 利率A | 利率B |
---|---|---|
平成29年 | 2.70% | 9.00% |
平成30年 | 2.60% | 8.90% |
延滞金利率は2種類ありますが、これは滞納した期間によって適用される利率が変わります。
利率A:滞納した翌日から3ヶ月以内に適用
利率B:3ヶ月経過後翌日から納付されるまでの期間
ですから、それぞれの期間の延滞金の算出方法は次の計算式に従います。
① 滞納した保険料を3ヶ月以内に納付した場合
延滞金=滞納金額×利率A÷365日×(納付期限翌日から3ヶ月経過するまでの期間日数)
② 滞納した保険料を納付するのに3ヶ月以上かかった場合
延滞金=①の金額+滞納金額×利率B÷365日×(3ヶ月経過後翌日から納付までの期間日数)
3. 延滞金の計算
今回の例は、滞納期間が平成30年8月1日から11月30日の4ヶ月なので、上記②で延滞金が算出できます。
(44,000円×2.6%÷365日×92日間)+(44,000円×8.9%÷365日×30日間)≒ 610円
東京都中野区の場合、100円未満切り捨てなので、延滞金は600円になります。
保険料の支払いが困難な場合は、必ず役所に相談することが大切!!
保険料の支払いが厳しくなったときには、滞納を選択するのではなく必ず役所に相談しましょう。
滞納する理由は人それぞれありますが、理由によっては、未納保険料の支払い方法を、都合のよいかたちにしてもらえる可能性があるのです。
- 滞納した保険料の分割納付
- 保険料の減額
- 延滞金の免除
滞納した保険料の分割納付
未納保険料を一括で払うことができない場合は、分割にして何回かに分けてなら納付ができるという人もいるでしょう。
実際には、分割納付はできません。というのもきちんと期限を守って支払っている人もいるからです。
本来、真面目に期限を守って支払うことで医療制度を利用できるはずのものが、滞納している人がきちんと払っている人と同じように病院に通えるなんて不公平だと不満に思う人もいるでしょう。
しかし、滞納する理由がやむおえないものだと役所が判断すれば、分割納付は可能です。収入が減って経済的余裕がなかったり、援助してもらえる家族や親せきがいなかったりなど、致し方ない場合です。
「生活にただ困っている」とだけではおそらく役所も動かないでしょう。そのための根拠になる家計簿や収支が分かるものを持参して相談するのがいいでしょう。
保険料の減額・免除
このケースは支払うことができない特別な事情であることが認められた場合です。
- 災害や事故にあった
- 離婚した場合
- 会社の倒産・失業
保険料の減額や免除の制度は住んでいる自治体によって違います。しかし、滞納し続けるほうがよっぽど自分の首を絞めることになります。必ず保険料を支払えないときは役所の窓口に行って相談をしましょう。
国保の保険料納付には「時効」がある
時効はありますが、滞納日から一度も請求が無く時効成立日を迎えることが時効の条件です。滞納したら催促の連絡など役所からの命令が滞納者にいくのが一般的ですから、現実的に時効が成立するのは不可能でしょう。
時効 | |
---|---|
国民健康保険料 | 2年 |
国民健康保険税 | 5年 |
- 保険料が国税徴収法
- 保険税が地方税法
しかし、基本的には保険料も保険税も同じものと考えて差し支えありません。
国民健康保険料を滞納したまま引っ越しをしたら、未納保険料の支払いはしなくていいのか?
引っ越し時には国民健康保険を切り替える手続きが発生します。転出先では国保の脱退をし、転入先で新たに国民健康保険の加入手続きをすることになります。
国保の支払い先が変わることで、それまでの滞納の支払いをしなくても済むのではないかと思う人は多いかもしれません。しかし、国保の納付義務はなくなりませんので、引っ越し先の住所に督促や支払いの連絡がきます。当然、放置していれば、最終的には財産を差し押さえられるわけです。
延滞金は支払いが遅延すればするほどかかります。引っ越し後も滞納分の支払いが厳しいようなら、なるべく早めに役所に連絡をして相談をしましょう。
国保を滞納したまま会社の社会保険に加入したら、滞納分はどうなるのか?
社会保険に加入しても、国保滞納分は必ず支払わなければなりません。ですから、滞納を放置し続ければ最終的には差押えが待っています。
せっかく会社の社会保険に加入しても、給料を差し押さえられたら会社にも迷惑がかかるかもしれませんよ。
まとめ
国民健康保険料を滞納したときのどうなるのかを段階的に説明し、滞納した際の対処方法を解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。
- 滞納したら延滞金が発生する。
- 滞納を続けると最終的には財産を差し押さえられる。
- 滞納は放っておくのが一番良くない。必ず役所に相談して解決策を
滞納するにも、支払いが厳しくなった理由があります。その理由がやむおえない場合なら、生活に影響がでない範囲の支払い方法で滞納を解決することだってできます。
くれぐれも滞納を長期化するのではなく、連絡しづらいかもしれませんが役所に相談して滞納トラブルを解決しましょう。