重症心身障害児施設の子どもとの関わりは、肌と肌のふれあいから始まります。
子どもが自由に動くことができないだけに、保育士は全身を使って介助し、濃密なコミュニケーションの中で子どもの意思をくみとります。
重症心身障害児施設で求められるのは「子どもと愛情豊かに接することができる人材」です。
保育士の優しさが「温かい雰囲気」を作り、施設が居心地の良い和やかな場所になりますね。
今回は、重症心身障害児施設の現状や、保育士の仕事内容などについてご紹介します。
重症心身障害児施設とはどんな施設のこと?
重症心身障害児とは、知的および身体に重い障害がある子どものことです。
立ち座りや歩くことができない子や、寝たきりの子どもも多く、食事や排泄など日常生活のすべてにおいて介助が必要になります。
重い知的障害があって言葉を発することができない子どもや、常に医療的ケアが必要な子どももいます。
重症心身障害児施設とは、病院や医療センター内に併設されていて「医療ケア」が受けられる障害児施設です。
通常18歳未満の子どもが入所しますが、18歳をすぎても移行先が見つからない場合はそのまま施設に留まる利用者もいます。
そのため「18歳未満の利用者」が占める割合が減っている施設も多く、重症心身障害児施設における今後の課題でもあります。
参照:「医療型障害児入所施設の役割と課題について(公益社団法人 日本重症心身障害福祉協会)」 -厚生労働省
重症心身障害児施設が一元化によって「医療型障害児入所施設」へ名称変更された
2012年に児童福祉法が一部改正され、重症心身障害児施設は「医療型障害児入所施設」と名称が変わりました。
障害児施設が一元化されたことで、他の障害をもつ子どもの利用も可能になったのが大きな特徴ですが、医療ケアが必要な重症心身障害児の受け入れは、他の障害児施設では難しいのが現状です。
医療型障害児入所施設で提供されるサービス
医療型障害児入所施設では、各専門スタッフが協力し合い、利用者に合わせた下記のような支援サービスを行っています。
- 医療
- 療育(発達支援)
- 生活支援
それでは詳しく解説していきます。
1.医療
専門的で高度な医療を行い、医師や看護師をはじめスタッフが細やかにケアします。
医師の指示の下、日々の健康状態の確認や投薬、その他の医療行為を行います。
2.療育(発達支援)
個々に合ったリハビリテーションを行い、子どもの可能性が広がるように支援します。
お子さんは一人ひとり発達スピードが違います。
各個人の障害特性や発達状態に応じた問題解決と、将来の自立と社会参加をすることを目指す上で、何ができるのかを考えていきます。
3.生活支援
子どもが安心して過ごせるように配慮し、日常生活全般において介助を行います。
食事や入浴、おむつ交換・排泄介助、衣服の着脱のお手伝い等の業務を行います。
医療型障害児入所施設のスタッフとは?
医療型障害児入所施設で働いているスタッフは、
- 医師
- 看護師
- 保育士
- 児童指導員
- 介護福祉士
- 作業療法士
などの資格をもっています。
支援は24時間体制で行われるので、保育士も含めスタッフはシフト勤務になります。
施設によっては「非常勤職員」として、介護員や入浴介助員を雇用していることもあり、資格を持っていなくても補助業務を行います。
医療型障害児入所施設で働く保育士の業務
重症心身障害児の入所施設では、他の障害児施設と「保育士の仕事内容」が少し違います。
それは、全体的に介助支援が多く「介護の仕事に近い」ということです。
保育士と介護福祉士は仕事をシェアすることも多く、担当業務の線引きがあいまいな部分もあります。
医療型障害児入所施設で働く保育士の仕事内容
医療型障害児入所施設の保育士が担当する仕事を、下記のように2つに整理してみました。
保育士の仕事①「生活面での介助・支援」
- 子どもの様子を観察しながら食事の介助をします。
- 排泄、洗面、歯みがき、入浴、着替えなどの介助をします。
- 学校への登下校を介助し、学習の様子を観察します。
- 日光浴や散歩の介助をします。
保育士の仕事②「支援の計画や他者との連携」
- 日中の過ごしかたを工夫し、誕生会などの行事も行います。
- 保護者と連絡をとりあい、子どもがどのように過ごしているかを伝えます。
- 学校の担任教諭と連携します。
- 医師・看護師・他のスタッフと報告や連絡を行い、ケース会議等にも参加します。
医療型障害児入所施設で保育士が働くには?
ほとんどの医療型障害児入所施設で、保育士や児童指導員を雇用しています。
資格があれば求人に応募することができるので、他に必要な要件はありません。
介護に関心のある保育士は「介護職員初任者研修」で勉強をしておくのもいいですね。
採用面接でも有利になりますよ。
自分が転職したい施設(病院)のホームページをチェックしてみましょう。
保育士の募集がない場合、施設に問い合わせをしてくれる転職エージェントもあるのでオススメです。
新規開設される医療型障害児入所施設が増えているので、保育士のニーズもますます多くなっています。
待遇面が安定しているので、転職先として人気がある障害児施設になりそうです。
医療型障害児入所施設で求められている保育士のタイプ
児童福祉施設では経験のある保育士が多く働いていますが、重症心身障害児の施設では「若い保育士」も歓迎しています。
経験も大切ですが、重視されるのは「人間性」です。
温かい人柄で愛情豊かな保育士であれば、心のこもった支援ができるのではないでしょうか。
1.笑顔が優しい保育士
施設に入所している寝たきりの子どもは、毎日ベッドをのぞきこむ「保育士の笑顔」が大好きです。
笑顔が優しくて人を和ませることのできる保育士は、医療型障害児入所施設では特に必要とされています。
2.人を楽しませることが好きな保育士
サービス精神が旺盛で、楽しい演出やパフォーマンスができる保育士がいると施設が明るくなります。
子どもたちにとって「楽しい人との出会い」は、生きる力になるのです。
3.体力がある保育士
重症心身障害児の施設には「寝たきりの子ども」や「自分の身体を支えて座ることができない子ども」がたくさんいます。
学童期以降になると身体を抱えて介助するのは重労働!体力のあるタフな保育士は現場のスタッフに喜ばれますよ!
医療型障害児入所施設では「男性保育士」が向いている
男性保育士は身体が大きく力もあるので、重症心身障害児の介助に向いています。
医療型障害児入所施設で活躍している男性保育士も多く、女性保育士と協力しながら重労働をこなしています。
医療型障害児入所施設へ転職をめざす保育士が心に留めておきたいこと
医療型障害児入所施設の保育士は、どちらかといえば目立たない「ちょっと地味な存在」に見えるかもしれません。
保育園で設定保育やイベントをこなしてきた保育士にとって、医療型障害児入所施設は「やりがいを実感するのが難しい職場」だと感じることもあるのではないでしょうか。
施設で働く保育士は、看護師の医療ケアを支え、療育をサポートし、介護士と同じような仕事もこなし、実は「縁の下の力持ち」的な存在なのです。
保育士がメインではない職場で働くことは、「自分がどう動けばいいのか」を常に考えながら、周りに歩調を合わせて仕事をすることが大切になってきます。
自分がメインではない職場でも、保育士だからこそできることもあります。
それは、子どもの「小さな変化」を見つけること。
- 介助しながらしっかり見る
- コミュニケーションをとりながらじっくり見る
- どんな時でも子どもたちをしっかり見つめる
ということが「プロの仕事」だと思えれば、医療型障害児入所施設でもきっと楽しく働けるでしょう。
まとめ
今回は医療型障害児入所施設に関する基本情報と、そこで働く保育士のことについて紹介しました。
「そもそも医療型障害児入所施設に関して知りたかった」
「今後、医療型障害児入所施設で働いてみたい」
という方は、ぜひこの記事を参考にして医療型障害児入所施設についての理解をより一層深めてみましょう!