1歳児クラスは集団で食べる姿も遊ぶ姿もほほえましく、保育士だけが見られる「かわいい光景」のひとつ。
保育室のほのぼのとした雰囲気は、保育園の「癒しスポット」でもあります。
そんな1歳児クラスですが、担任ともなればそんな呑気なことは言っていられません。
自我が芽生えて歩き出し、自分の興味の向かう方向にトコトコと動き回る様子は目を離せません。
保育室のあちこちで泣き声があがり、感情のぶつかり合いが盛んに見られます。
今回は1歳児にスポットをあて、年齢の特徴を通して「保育&接し方のヒント」をご紹介します。
1歳児の特徴4つ。何ができるようになる?
まずは、1歳児の特徴についてお伝えするしていきましょう。
月齢によって発達に違いがあり、また個人差も大きいので、1歳児の特徴はあくまでも目安として考えることが大事です。
それでは具体的に見ていきましょう。
1.歩けるようになる
自由に歩くことができるようになるので、行動範囲が広がります。
歩くまでに時間がかかった子どもでも、いったん歩けるようになると活動的になり部屋中を歩き回ります。
安定して歩くようになると、手や指先の動きが発達してきます。
何かをつかんだり、絵本をめくることができるようになるので、遊びの幅もぐんと広がりますよ!
2.会話ができるようになってくる
保護者や保育士の言うことが理解できるようになってきます。
と、同時に、
- したいこと
- 欲しいもの
- やりたくないこと
など自分の気持ちを伝えようとします。
「あっち いく」など二語文で話すことが多くなり、大人と簡単な会話ができるようになります。
また、友だちや保育士の名前を覚え、遊びの中で相手を呼ぶようになってきます。
3.人とかかわりたいという気持ちが強くなる
歩き回ることができるようになって視界が広くなり、自分以外の人間に強い興味を持つようになります。
保育園では、気になる友だちに近寄って行く様子や、他の子どもが持っているおもちゃなどを欲しがる様子も多く見られますね。
特に好きな友だちや先生がはっきりしてくるのもこの時期です。
4.自分から働きかける
それまでは「受け身」の赤ちゃんだったのが、自由に歩いて能動的に行動しようとします。
目についたものに進んで近づき、自分の手で確かめてみるという「働きかけ」をするようになるのも1歳児。
見るもの全てが目新しく、触ったり、時にはかじったりしながら遊んでいます。
1歳児に必要な配慮とは?保育で気をつけるべき4つのポイント
1歳を過ぎると成長のスピードと共にできることも増え、新しいことをどんどんやり始めるていきます。
子どもたちから目を離さず、それぞれの行動パターンを常に把握していることが1歳児の保育では最も大事なことです。
ここでは、1歳児の保育で必要になる4つの配慮について、それぞれ具体的に説明します。
1.ケガをしないよう安全管理に気を配る
動きが活発になるにつれて、動き回る範囲がどんどん大きくなっていきます。
加減がわからず勢いあまって転ぶことも多いのが 1歳児。
保育士は子どもの行動を先回りした安全管理が必要になるので、常に環境には目を光らせて危険のないように注意します。
2.健康管理に気を配る
1歳児は体調が変わりやすく、一日を通して健康状態を把握することが重要!
感染症にもかかりやすいので、室内外の衛生管理にも気を配ります。
機嫌が良くない時や落ちつかない行動の時は、身体にも何らかの不調がある可能性を忘れずに!
1歳児は自分の不調を自覚して言葉で訴えることができないので、保育士が行き届いた体調管理をすることは病気の予防にもつながります。
3.自由に遊べるような環境設定を行う
様々なものに興味を持ち、自分の体を自由に動かして行動を始める時期。
1歳児は「探す」「見つける」「遊んでみる」の繰り返しを楽しみながら成長していきます。
遊ぶ場所はスペースを広めにして、子どもが好きな遊びを選べるようにおもちゃや遊び道具を置きます。
全員の子どもが見渡せるよう障害物は避けたいもの!
家具の配置にも気を配りましょう。
子どもがのびのびと遊べることと、安全第一であることが環境設定のポイントです。
4.友だちとのかかわりに気を配る
友だちの行動が気になり、同じことをしようとして自分から関わろうとします。
特に相手のおもちゃが気になり手に取ろうとして、嫌がる相手とトラブルが多くなるのも1歳児の傾向。
相手を「押す」「引っ張る」「叩く」などの行動も多くなります。
保育士は注意をもって見守りながらタイミング良く介入し、友だちとの関わり方を少しずつ伝えていくことも大切です。
1歳児への接し方・関わり方の3つのポイント
何でもやりたいという気持ちが強くなるけれど、自分でできないことがまだまだいっぱいある1歳児。
思うようにならないと、かんしゃくを起こす子もまだまだ多いはず。
子どもの様子に合わせて「見守り&サポート」を交互にしていくのが1歳児との関わり方です。
ここでは、そんな1歳児にどう関わったらよいのか、接し方のポイントについて紹介していきます。
1.「自分でする」という気持ちを尊重する
生活習慣は毎日のこと。「自分でできるよ」という気持ちが強まると、何でも自分でやろうとします。
大人の介助を嫌がって、時には泣きながら怒ることも!
保育士は「自分だけで頑張ろうとする気持ち」を大切にし、まずは温かく見守るようにしましょう。
たとえば着替えが完全にできていない状態でも、本人が「ひとりで着た」と満足していたら、そこまでできたことを「よくできたね」と一緒に喜びましょう。
できなかった部分は、後でスキンシップをしながら本人に気づかれないようにフォローします。
2.イヤイヤに振り回されない!
何でも自分でやりたいという気持ちと共に、「あれもイヤ!これもイヤ!」と駄々をこねる姿も多く見られるようになってきます。
1歳児は何でも「主体的にしたい」ので、自分の行動を保育士に決められることに怒っているのです。
「とにかく!あれもこれもみんなイヤ!」
一筋縄ではいかないので、手を焼く保育士も多いでしょう。
ここで大事なのは「イヤイヤに振り回されないこと」です。
子どもは「自分でやりたい=自分で決めたい」のです。
イヤイヤが始まったら、説得は難しいと腹をくくりましょう。
「イヤじゃないの」「今やらないと困るでしょ」など厳しく言い聞かせても、本人はますます混乱して追い込まれ「超イヤイヤ」に発展します。
「そっか、じゃあ、自分で決めてね」と、本人が自ら動き出すまで待ってみます。
イヤイヤするのは想定内。
だから決して動じてはいけません。
ゆったりとした態度で接します。
保育士は忙しいけれど、「待つ」という気持ちの余裕が大事。
自分自身の感情を落ちつける意味でも必要ですね。
本人が行動したら
「やってくれてありがとう」
「よかった」
「嬉しいな」
など声をかけることも忘れずに!
「さっきのイヤイヤは何だったのか?」と思うほど、ご機嫌が変わるのが1歳児の面白い特徴でもあります。
3.1歳児とのスキンシップで大切なこと
自由に歩き回るようになっても、子どもひとりひとりとスキンシップをとることは大切です。
たとえ1分でも「先生が抱っこしてくれた」という安心感に満たされます。
抱っこしながら気持ちを受けとめてもらうことで、子どもの自己肯定感がアップしていきますね。
1歳児は「安心」を土台にして、自分の世界を築き始めます。
また、体調を把握する意味でもスキンシップを心がけましょう。
1歳児は自分の不調を訴えることができないことが多いので特に必要です。
子どもの身体に触れることで、見た目だけでは気づかない不調が分かることもあります。
1歳児・担任保育士の「お悩みあるある」って、どんなこと?
1歳児の担任になって困ってしまうことは何でしょうか。
ここでは2つの「お悩みあるある」を紹介したいと思います。
【その1】乱暴な行為をする子どもにはどう対処すればいいのか
1歳児は自分の思いを言葉にできません。
だから感情があふれた時は言葉の代わりに
- かみつく
- ひっかく
- 何かを投げる
- 押す
などの乱暴な行為をすることが多く見られるでしょう。
特に友だちとの関わりでは、下記のようなことが原因となることが多いといえます。
たとえば「かみつく」という行為に至ったのはこんなことがきっかけだと思います。
- 相手に拒否された、相手が嫌がった
- 相手が持っているおもちゃが欲しい
- 相手と同じことをやりたい
- 相手に邪魔された、自分のエリアに相手が入ってきた
本人なりの理由があるのに、
「かむことはいけないことだよ」
「お友だち痛いでしょ」
「ごめんなさいは?」
と保育士が一方的に諭しても、1歳児には意味がわからないことが多いです。
それには、何らかの感情が爆発して「かむこと」に至ったのなので、保育士は感情の受け皿になる必要があえいます。
本人の気持ちが落ちついたら、「○○ちゃん痛いから、もうしないでね!」と伝えてみましょう。
【その2】絵本タイムに立ち上がる子どもがいて気になります
1歳児は会話ができるようになり、様々な言葉の意味がわかってくる時期。
絵本の中に登場する人や動物などに親しみをもったり、言葉あそびを楽しむようになるでしょう。
絵本タイムについつい立ち上がってしまう子どもには下記のような気持ちの時かもしれません。
- 絵本の登場人物の名前を言いたくてたまらない
- 次どうなるのか、何があるのか言いたくてたまらない
- 自分が知っていることが出てきて嬉しくてたまらない
いずれも大好きな絵本に親しんでいるからこその立ち上がり行動だといえます。
まず子どもに読み聞かせをする際に、あなたは椅子に座って絵本を読んでいますか?
私なら「床に座って読むこと」をおすすめします。
1歳児の目線に近づくことで、立ち上がる必要がなくなります。
子どもが指差しても、座ったままなので他の子の邪魔にならないでしょう。
また絵本を筋通りに読むことにこだわらず、途中でひとりひとりの名前を呼んで発言の機会を作るのもいいでしょう。
たとえば「○○ちゃん、うさぎさんはどれ?」と聞き、本人に指差しをしてもらうなど。
みんなで楽しむことができれば楽しいですね。
1歳児の保護者とどんなふうに関わればよいの?
1歳児は朝に泣くことも多く、保護者は後ろ髪を引かれる思いで仕事に向かいます。
特に、第一子の場合は不安も大きく、仕事中も我が子がどうしているか気になっている人も少なくありません。
心配している保護者の気持ちに寄り添い、様々なサポートを適切に行うことも保育士にとって大切な仕事のひとつです。
特に、朝の受け入れや連絡ノートは毎日のこと。
保育士が意識しなければいけないポイントは下記のようなことです。
あいさつだけで終わらせない
朝の受け入れでは、あいさつ以外にも
「今朝のご機嫌はどうですか?」
「昨日はよく眠れましたか」
など、保護者に一声かけるようにしましょう。
その日の保育で参考になることが聞けるかもしれません。
特に体調にかかわることは小さなことでも聞いておくようにします。
連絡ノートには具体的な出来事を記す【例文あり】
その日の様子を伝える連絡ノートは、保護者と保育士の架け橋のようなもの。
連絡ノートの書き方を工夫することで、より伝わりやすくなります。
たとえば、下記のAとBの書き方を見比べてみてください。
Bの方が具体的で、遊んでいる様子がイメージしやすいのではないでしょうか。
より詳しく書くと文字数が多くなり手間がかかりますが、保育園での様子を知りたい保護者にとって沢山の情報が分かれば安心できるのです。
1歳児は、楽しかったことがあっても保護者に話すことができないので、保育者が具体的に伝えることはとても大切です。
細かく伝えることで、保護者は「ちゃんと見てくれている」という実感をもち、そこから信頼も育っていきます。
まとめ
以上、1歳児の特徴や接し方について詳しく解説しました。
最後にもう一度、1歳児への関わり方のポイントをおさらいすると
- 歩けるようになって自我が生じるから慎重に接する
- コロコロ変わる機嫌に振り回されないようにする
- 慌てず、騒がず、どっしりと、ゆとりを持って接することが大事
の3つが挙げられます。
1歳児との接し方に慣れてくると、子どもたちへの愛情も深まっていきますね。
「1歳の子の扱いが難しくて悩んでいる…」
という方は、この記事を参考にして1歳児の発育を学びながら子どもたちを心身ともにサポートしてあげてくださいね。