ほめることは指導の基本中の基本。大人でも、ほめられると前向きにやろうという気持ちになりますよね。子どもならなおさらです。日常の中で「できた→ほめられた」の経験を積み上げることで、子どもたちはぐんと伸びていきます。
それに、子どもは短期間の間にどんどんとできることが増えていく時期です。この伸びる時期に子どもをたくさんほめて、保育士も子どももニコニコ笑顔で成長できる毎日にしましょう。
ほめ方次第で、子どもが悪い方向へいってしまうこともあります。まずは、悪いほめかたと、その共通することをを少し見ていきます。
悪いほめかた3パターン
おだてるようなほめ方
ほめていれば上手くいくからと、むやみに「えらいね」「かしこいね」などを使って何でも子どもをほめると、子どもは「あれ?そうでもないのにな。」と、ほめてもらえることが嬉しくなくなる場合もあるのです。
子どもはがんばった!と思えるときにほめてもらうと、「分かってもらった」と嬉しくなります。ほめられることも子どもにとって大事な刺激のひとつ。むやみに乱用することは避けましょう。
他の子どもと比べるほめ方
「~~くんよりもよくできたね」などの他人と比較するほめ方は、比較された子どもをけなしていることになります。そして、子どもはそういったトゲのある考えを吸収していき、何か良いこと、悪いことを考える時でも「他の人がやってないからいいや」と他人任せになってしまいます。
大人が出した課題にそってのみほめる
このパターンは、「これできるかな?」と課題を出して、子どもができたら「すごいね!」これもやってみようか!とほめます。しかし、子どもができないと「できてないね、だめだね」と子どもの自分で考えたことを認めず、結果だけを見てほめるタイプです。
これでは、子どもはほめられることは評価なんだと認識して、ほめられるために何かを頑張るようになってしまいます。自分なりに頑張って、大人からほめられて「認めてもらった」と実感するはずが、逆になってしまうと、人の目ばかり気にして行動をする、頑張るようになり子どもの主体性がなくなってしまいます。
そして、これら悪いほめかたに共通することは1つです。それは大人にとって都合が良い行動をしたときにほめるということ。
このことは一見保育士なら当たり前。考えなくても分かるように思えますが、保育士が「~ができた、~をしてくれた」という目線だけでほめていると、いつの間にか大人の都合の良いときにほめているケースも珍しくありません。
大事なことは、子どもの目線にたってほめることです。
“子ども目線”は、全ての保育行為に関する基本ですが、言うのは簡単でもやってみると難しいもの。そこで、ほめる視点をポイントごとにまとめて解説していきます。
上手なほめ方のポイント4つ
ほめるときは心を込めて、具体的にほめよう
さて、どちらが子どもの心に響きやすいでしょうか?
口だけで「すごいね」というだけでは、せっかく良いところに目をつけられても、もったいないです。ほめるときはしっかりと抱きしめたり、「~できるようになったね、やったね」と子どものひとつひとつの出来事を共有するようにしましょう。ほめ上手の第一歩です。
他人ではなくて、過去の自分と比べよう。成長をほめる
(いつも帰りの用意に集中できなかったが、今日はすぐに帰りの用意を終わらせられた子どもに対して)
昨日の自分と比べてほめられること、できるようになったことを保育士と共有して喜べること、これらは子どもにとって、挑戦する力を沸かせるもとになります。同時に、継続してきたこと、続けてやってきたことをほめられると子どもは「今までずっと見守ってくれていたんだ」という気持ちになって、とても嬉しい気持ちになります。
頑張った自分を認めてくれるから、もっと頑張りたくなる。やってみたくなる。このサイクルが主体性を生み出してくれるのです。
その子なりに頑張った姿をほめる
一生懸命頑張っている姿は保育士の目にもよくとまりますよね。そして、その姿から感動することもあります。たとえできなくとも、子どもの努力を認めてあげたいものです。
子どもは一生懸命遊びます。泥の感触が楽しいと感じた子どもなら、水を汲んで泥をつくることを楽しく感じ、ずっと遊んでいるかもしれません。
頑張ることとは、ただ単に与えられたことを一生懸命頑張ることだけではなく、子どもが素敵だな、楽しいなと思ったことをやり続ける遊びこんでいる状態もさします。
そういったときは子どもに共感して「頑張って遊んでいるね、楽しいね!」と保育士が共感しながら、子どもの行動を促していくと、子どもも心を開いて自分だけの遊びから友達ともやってみよう、先生ともやってみようと広がりやすくなっていきます。
集団をほめて、仲間思いのクラスに
集団をほめることで、子どもたちが自分のクラスの友達に対して仲間意識を芽生えさせる1歩になります。子どもたち同士、友達を大切にしようと考えるには、集団をほめることが大切です。
保育士はその忙しさから、現場に流されることもあります。個人の頑張り、できたことや手伝ってくれたことなどをほめることは良いのですが、どうしても気になる子をほめがちです。
また、もとから出来ている子、手のかからない子については関わる頻度が少なくなってしまったり、ほめ忘れてしまうこともあります。
保育士自身も集団をほめるという意識をもつことで、常に全体をバランスよく見ることができるようになっていきます。意識や視点づくりは行動から。行動を全体向けにすることで、自然と意識はついてきます。
考えてみよう、ほめられることを目的に子どもが動く
さて、ここでちょっと注意点をお話しします。子どもの中にはよく、ほめられることを目的に動く子どももいます。保育士にとってほめられるような、片付けや整頓などをして「やったよ!」と、よくアピールをしてくるのです。
保育士はいざ、そういった子どもに出会ったとき、どうすればいいのでしょうか?
「きっと~~しては駄目、○○しなさいと大人の評価を気にしているんだろうな」と思いつつも、「否定するわけにもいかないし、どうやって伝えれば」と頭を悩ませるときもあるのではないでしょうか。
ただ、その度に「ありがとうね」と声かけし過ごしていても、一向に様子は変わらないでしょう。こういった子どもは、自分の考えに自信がない・大人の注目をとにかく惹きたいこんな可能性があります。
なので、特別扱いはせず、周りの子どもの良いところを一緒にほめるようにしましょう。
「Aくんは○○が上手だね」「Bちゃんはいつも面倒みてくれるね」など、周りの子どもの良いところに興味をもたせるようにもっていくと良いでしょう。
主体性はほめられることから
人は誰しも「昨日の自分よりも素敵になれたらいいな」という願いを無自覚にもっています。もちろん子どもも同じです。ほめられて認められたと実感すると、自分で考えてやってみよう!という主体性がどんどん育っていきます。
上手なほめかたとして、子どもが自分なりにがんばったときに、具体的に心をこめてほめることが基本となります。これは案外難しく、子どもの心を観察できていないと、失敗することも多くあるでしょう。
きっと悩んでしまうこともあると思います。しかし、これを読んでがんばろうと思ったあなたは、一人の先生として、子どもに向き合おうとしているということです。私はそれはすごく偉いと感じます。
子どもも保育も先生も1歩ずつ成長していくものなので、大丈夫です。めげずに1歩1歩成長していきましょう。