「デザイナーズブランド」と聞くと一流のファッションデザイナーが自身の感性とデザイン力を持って商品を作り出し成長をしているアパレルブランド、というイメージが定着しています。
しかしアパレル業界は流行り廃りが早く、機動力に富んだ経営が必要なことから企業自体の起業・廃業も多い傾向にあります。それはデザイナーズブランド企業にも言えることで、最先端・気鋭のブランド企業というイメージこそあれど安定した利益獲得と経営を行っている企業は少ないのです。
一方、外資系ラグジュアリーブランド企業はと言うと、創業からの歴史が長く認知度が高いので安定した顧客獲得・維持が可能です。新規・既存両顧客共にブランドへの信頼は厚く、利益も安定しています。
かと言ってその安定感に経営陣が満足しているかというとそうではなく、先見の目を持って次のトレンドを予測し、市場調査やマーケティングにも余念がありません。常に満足することなくハングリーというわけです。
ここまでの話を聞くと国内のデザイナーズブランド企業は不安定、外資系ラグジュアリーブランド企業は安定、といったイメージを持たれることでしょうが、一概にそれだけが各々企業の性格全てではありません。
今回は国内デザイナーズブランド企業と外資系ラグジュアリーブランド企業のそれぞれの持つ働く上での待遇のメリット・デメリットを紹介します。
日本国内デザイナーブランド企業の特徴とメリット
「日本国内」とあるので当たり前のようですが職場が日本国内にあることが多く、勤務地も国内なので就職・転職した場合に通勤しやすい職場で働けるということがメリットの一つとして挙げられます。
生産工場や原料調達に関わる職種に就いた場合は海外出張も考えられますが、基本的な勤務地は国内のことが多いでしょう。中小企業が多いので国内のあちこちにオフィスを置くことは少なく、本社を東京や大阪、福岡といった大都市に置く企業が多いです。
デザイナーや経営陣含め、従業員が若いことが多く企業の風通しが良いこともメリットです。上司と部下、部署と部署の距離が近いので提案もしやすくコミュニケーションが取りやすいことが特徴です。
従業員数が少な少数精鋭で運営することから自身の仕事により企業が動いていることが実感しやすいでしょう。もちろん良し悪しの場合もありますが、目標が見えないままボンヤリと仕事をするよりも「自分がこの会社を作っているんだ!」と感じながら働きたい野心家の方には良い職場です。
国内デザイナーズブランドで働くことのデメリット
国内デザイナーブランド起業はトレンドを意識しながらもデザイナーの個性を反映した商品を扱います。そのためテーマによって売上げ、利益は大きく左右されます。大手アパレル企業ブランドよりも利益が安定しないため従業員の待遇は良いとは言えません。ボーナスはなく、従業員数が少ないために一人当たりの仕事量が多く、作業があがるまでは帰ることが出来ずサービス残業は当たり前。その他の福利厚生も社会保険や厚生年金に加入できない体制の企業も多くあります。
外資系ラグジュアリーブランド企業の特徴とメリット
外資系ラグジュアリーブランドは世界に販路を持つことで作り上げた強力な組織基盤、社員の雇用体制、圧倒的なブランド力、常に追い求める商品の質が魅力です。
企業としての規模のメリットから人材も豊富で数字の分析力、トレンドを追うのではなく作り出すデザイン力も高いことが特徴です。まさにファッションを牽引する存在と言えるでしょう。
外資系ラグジュアリーブランド起業で働く従業員の満足度は国内のアパレル企業のものとは比べ物にならないほど高く、離職率も低いです。しっかりとした人材育成プログラムが確立されていて、高価な商品を扱うに足る人材を作り上げる手練手管を知り尽くしていると言えます。
商品だけでなくサービスを提供するための研修、カスタマーサービスの向上のために投資を惜しみませんし、そのための余力も持ち合わせています。
外資系ラグジュアリーブランド企業で働くことのデメリット
企業自体が強大で従業員数も多いことから自身の仕事が企業にとってどのような影響を与えているのか分かりにくいということがあります。MDやマネージャー、デザイナーレベルのポジションにまでなれば企業を動かしている実感を得ることが出来るかもしれませんが、一店舗の販売員や事務職員ですとなかなか難しいでしょう。
実力主義、即戦力を掲げる外資系企業ですから運よく就職出来たとしても自身に課された仕事を全う出来なかった場合は冷遇されてしまいます。
給与が極端に減ったり無理難題を押し付けられたリということは無いでしょうが、ポジションを変えられたリ降格させられたりは日常茶飯事です。常に緊張感を持って仕事をする必要があるのでゆっくりと自分のペースで仕事をしたい、という方には向かないでしょう。
自分がどのように働きたいかが大事
これまで述べてきた内容をご覧になって、待遇だけで言えば外資系ラグジュアリーブランド企業に軍配が上がることでしょう。仕事をするからには給与は高い方が良いでしょうし、福利厚生などを含めた就労環境は整えられている方が良しとする方は多いでしょう。
ですが人生の半分近くの月日を人は就労することになります。つまり仕事は人生の時間の一部分という訳です。
自分自身で企業を動かしているという実感、やりがいを得たいという方なら断然国内のデザイナーズブランド企業をオススメします。最初は厳しい環境にへこたれそうになるかもしれませんが、その分体力面や精神面だけでなく仕事の効率的なこなし方も洗練されていくことでしょう。
額こそ違えど給料をもらうなら待遇ではなく、どのような仕事の仕方が出来るのかといった点で職場を考えるきっかけにしてみてください。