人材不足が問題になっている保育士ですが、「育児の経験を保育士の仕事で活かせる」という面で、ブランクのある保育士が復職を目指すことが増えてきました。
一般企業では出産後や子育てなどで空白期間があった後に職場復帰することにメリット・デメリットが存在しますが、保育士においてはどうなのでしょうか。
そこで今回は、保育士として職場復帰する際のメリット・デメリット、不安要素やその対処法などについて詳しくご紹介していきましょう。
この記事を読むことで、安心してスムーズに復職する方法がわかるようになるので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
国を挙げて保育士の復職が期待されている
保育士の需要は年々高まっていますが、一方で結婚や出産といったタイミングで保育士を辞めたまま、資格はあるものの現在仕事はしていない、いわゆる潜在保育士も多くおり、その復職が望まれています。
そんな潜在保育士の復職について紹介します。
待機児童の増加で保育士の需要は常にある
今や夫婦の共働きも当たり前の社会となり、子供を預かってもらうことのできる保育園を求める家庭が多くあります。
しかし保育園の供給は未だ間に合っておらず、保育園に通うことのできない、いわゆる待機児童は増え続けているというのが現状です。
その状況を少しでも改善するために、保育園の働き手である保育士の存在は常に求められていると言えるのです。
「潜在保育士」の現場復帰が強く求められている
資格を持ちながら今は保育士として働いていない潜在保育士は全国で100万人近くいるとも言われており、慢性的に人手不足に悩んでいる現場では、その復職が強く求められています。
復職しない理由には様々なものがあると思いますが、そうした人たちが働き手となることで待機児童などの問題を解消するための助けになる可能性があるとして、現在期待が高まっています。
保育士に復職をする4つのメリット
保育士として復職をする際にどのようなメリットがあるのか、ポイントを4つ挙げてみました。
- 即戦力として期待される
- 出産・育児の経験やスキルを有している
- 好待遇な労働条件で働ける
- 復帰支援策や補助制度を活用できる
上記したポイントについて、それぞれ具体的に解説していきます。
1.即戦力として期待される
まず、何よりも大きなメリットは即戦力として期待されるという点です。
現在、国として潜在保育士の復帰を積極的に求めている状況であり、保育の現場における貴重な経験をもつ保育士が、即戦力として非常に期待されています。
仮にブランクが長い場合であっても、実務の中で発揮される保育経験が貴重な戦力になります。
2.出産・育児の経験やスキルを有している
産後や子育てなどからの保育士復帰は、「出産・育児の経験がある方にしか知らない知識やスキル」があるというところで大きなメリットになります。
これは転職活動の際に強みとなるため、転職の難易度は総合職と比べて低いでしょう。
また出産・育児を経験した方が保育士へ復帰すると、0歳クラスの担任になるケースが多いようです。
これは「出産を経験している保育士さんに預けられる」という点が、保護者や保育園にとってイメージが良いことが理由に挙げられます。
2歳、3歳になると保母さんの言葉を理解できるようになり、きちんと知識のある保育士さんたちであれば出産・育児の経験がない方でも安心できます。
しかし自我が芽生え始める6ヶ月前後までは、育児の経験がある保母さんに任せた方がより安心できるのが保護者の本音ではないでしょうか。
出産・育児経験のあることで子供たちの伝えたいことや気持ちをより分かってくれるため、保育園や保護者からの信頼を得られる可能性が高いです。
そのため「以前よりも働きやすさを感じる」という点が産後の保育士復帰におけるメリットではないでしょうか。
3.好待遇な労働条件で働ける
保育士の離職率低下に歯止めをかけるため、現在保育士の待遇改善が積極的に進められています。
保育士の待遇に対する問題は、全業種の給与と比較しても今なお課題が存在するものの、平均年収はこの10年前後で大幅に上昇しています。
また、保育士のハードな業務負担をICTシステムによって改善しようという動きも各地の保育園で増えてきています。
このような、日々アップデートされる労働環境で働くことができる可能性があるのもメリットといえます。
4.復帰支援策や補助制度を活用できる
上でも述べた通り、現在国や自治体は潜在保育士の復帰を強く求めている状況です。
背景として、待機児童問題や保育士不足が喫緊の課題であるという現状があります。
そのため、積極的な政策が打ち出されており、様々な復帰支援策や補助制度が活用できます。
例えば、「保育士就職準備金貸付」という保育士への再就職費用を一部無利子で貸付してくれる制度や、「保育所復帰支援事業」という未就学児の保育料を一部無利子で貸付してもらえる制度があります。
復職する際は、これらの復帰支援策や補助制度を活用することができます。
保育士復帰をする3つのデメリット
経験のある保育士の復帰も大いに望まれるところではありますが、もちろんメリットばかりではありません。
復帰を考える保育士が注意しておくべきデメリットを解説します。
1.仕事内容の割に給料が安い
保育士を取り巻く環境は、改善の努力はされているものの未だ十分であるとは言い難い状況にあります。
小さな子供を預かるという責任の大きい立場であり、その仕事内容も多岐に渡り、そして実質的な拘束時間も長い。
そうした苦労の割には賃金の改善はまだ追いついていないとも言われています。
2.責任の重さを感じるようになる
上でも少し触れましたが、まだ物心もつくかつかないかという年代の子供は非常に不安定さがあり、病気や事故など、場合によっては命に関わる場面にも向き合わなくてはならいこともあるかもしれません。
また精神の面でも、倫理や道徳が形作られていく年齢の子供を預かるだけに、自身の言動による影響も気にかける必要があります。
3.時間に追われ子供との触れ合いが減る
一度保育士を退職している人には、結婚や出産によって環境が変わったという人も多いでしょう。
そんな現在では、独身の頃と違って仕事と家庭や子育てとの両立も必要になってくるはずです。
復職を考えるくらいなので、子供からまったく目が離せないという状況ではなくなっているかもしれませんが、少なくとも成人するまでは触れ合いも大切にしたいところ。
しかしそうした機会も仕事によって減ってしまうかもしれません。
保育士復帰をする際の4つの不安要素とその対処法
保育士復帰を希望する際に、不安要素がいくつか存在するため悩んでいる方もいるでしょう。
ここでは、その不安点をいくつかピックアップし、対処法を解説します。
1.家庭や子育ての両立が難しいのでは…
これは保育士だけに限らず、出産を経験した働く女性のほとんどが共通して抱く不安要素ですが、家庭や育児と仕事の両立が難しいのではという課題です。
中でも保育士は拘束時間が長く、仕事内容も簡単ではありません。
一度保育士を辞めて復帰をするという状況ですので、その難易度がより高く感じてしまうかもしれません。
対処法
対処法としては、まず育児との両立を確立できるように、自分が希望する条件をしっかりとまとめておきましょう。
勤務日数や勤務時間、通勤時間などをしっかりと計画し、希望通りの働き方ができる場所を見つけることがまず重要です。
2.退職時よりも待遇が厳しいのでは…
保育園の現場においても、最近では知識や技術面で様々なアップデートが行われています。
そのため、退職後からブランクが長くなった場合に自分が戦力になれるのか不安を感じてしまうことがあるようです。
また、待遇面でもブランクが長い場合に復職後の条件が厳しいのではないかと思ってしまうようです。
対処法
ブランクが不安であるという場合には、セミナーなどの研修を受講するのが有効です。
復職後の現場についていけるような知識や技術をあらかじめ身につけて、能力をアップデートしておけば大きな武器となります。
3.よい人間関係を築けるのか不安…
ブランクが長い場合、保護者や同僚との年齢に差ができてしまい、よい人間関係を築けるのか不安に思うこともあると思います。
特に保育士は、子供の命を預かる仕事であり、より一層保護者や職場の保育士との良好な関係が求められるので、とても不安に感じてしまう方もいるでしょう。
対処法
良好な人間関係を築くために重要であるのが、年下の先輩に対してしっかりと敬意を払えるかというポイントです。
復職後は、同僚の保育士さんがほとんど年下ということもありえますが、その現場における勤続年数では先輩にあたります。
ですので、
「自分の方が知っている」
「自分の経験上こっちの方が正しい」
など、敬意を欠いた態度は禁物です。
挨拶や礼をしっかりし、新人のような気持ちで挑むことが円滑な人間関係を築く一歩です。
4.職場環境や業務の負担がどれくらいなのか不安…
育児と仕事の両立による負担が、退職前の負担と比較してどれくらいなのか不安という方がいらっしゃると思います。
復職自体はできたものの、家庭や育児に追われて過労になってしまい心身に影響をきたしてしまっては大変です。
このバランスが自分に保てるのかが不安となり、復職のネックとなっている方もいるでしょう。
対処法
まず、どの勤務形態がライフスタイルをバランスよく保てるのかを考えましょう。
フルタイムで働くのであれば、福利厚生・入所できる保育園・家族のサポートなど、何かあった時の体制が整えられているかを確認しましょう。
それが難しいのであれば、ある程度時間の融通が利くパート・派遣という選択肢もおすすめです。
保育士が復職前に準備すべき7つのこと
保育士として復職する前に確認・準備しておかなければいけないポイントが何点かあります。
その中でも特に重要な7つのポイントを以下で解説します。
1.保育士証を用意する
最初に保育士証があるか確認しておきましょう。
平成15年(2003年)の児童福祉法改正により、保育士として働く際の証明書がそれ以前とは変更されています。
改正後は、都道府県知事に申請を行い「保育士証」の交付を受けることが必須条件となりました。
また、保育士証の発行は申請から2ヶ月前後かかってしまうので、手続きを行っていない方は早めに済ませておきましょう。
2.希望の勤務条件を明確にしておく
家庭との両立を考える場合に、希望の勤務条件を明確にしておくことが重要です。
フルタイムの正社員として働きたいのであれば周囲のサポートが必須ですので、未就学児がいる場合は入所できる保育園の確保、不測の事態に備えて家族がサポートできる体制はあるのか、勤務先の福利厚生の内容などを確認しておきましょう。
それが難しいのであれば、派遣やパートを視野に入れるのも選択肢です。
スムーズな転職活動を進めるためにも、自分の環境に合わせた希望の勤務条件を明確にしておきましょう。
3.保育や子育てに関する最新情報をインプットしておく
保育の現場では、日々情報のアップデートが行われており、ブランクがある場合は復職前に対応できるようにしておきましょう。
自分だけの情報収集に不安がある場合は、保育士の復職支援研修やセミナーに参加することをおすすめします。
また、これまでに培った基本的な保育知識の復習も有効です。
4.運動をして体力をつける
保育士は体力勝負の仕事です。
復職するにあたって保育の現場で働く体力に不安があるという方もいるでしょう。
ですので、事前に体を働く態勢に慣らしておくことが重要です。
基礎的なジョギングやストレッチ、発声練習など、無理のないところから少しづつ体力をつけていきましょう。
5.復帰前に子どもの預け場所を見つけておく
また自分の子どもがまだ小さいという方は、復帰前に子どもの預け場所を必ず見つけておきましょう。
勤務後にお迎えが間に合う時間かどうか、希望の勤務先からどのくらいの距離かなど、事前に調べて効率よく働ける環境を作ることがおすすめです。
6.公立保育園と私立(民間)保育園のどちらを働く場にするのかを決める
公立の保育園は土日をしっかり休めるうえ、仕事を持ち帰らないところが多いので働きやすいことで人気です。
私立・民間の保育園でも条件・待遇が良いところ場所があります。
公立の保育園は倍率が高く、厳しいのではと感じる方は民間の保育園でしっかりと職場見学をしておくのがおすすめです。
保育士は求人の種類が幅広いため、自分のライフスタイルに合わせて職場を選びましょう。
7.生活リズムを取り戻す
保育の現場に復帰するにあたって、早寝・早起きなどの規則正しい生活リズムを取り戻しておくことも重要です。
上でも述べた通り保育の仕事は体力勝負ですので、復職する際は体力と同時に万全の状態で働ける生活習慣を整えておきましょう。
保育士の復職・再就職には求人数の多い転職サイト利用がおすすめ
潜在保育士の中には復職の気持ちはあるものの、改めて職場を探さなければならないハードルの高さに、少し抵抗を持っているような人もいるかもしれません。
そうした人には、求人数も種類も豊富な転職サイトの利用がおすすめです。
ここでは中でもおすすめの保育士転職サイトを3つ紹介します。
1.保育士ワーカー
保育士ワーカーは保育士の転職を専門とするサイトの中でも大手とされるものの一つです。
業界トップクラスの求人数を誇っており、全国に15カ所の拠点を持っているため都市圏・地方どちらに在住している人にとっても転職しやすいとの評判です。
また求職者と求人側の双方を同じ担当者で対応しているため、双方の行き違いによるミスマッチを防ぎやすいといった特徴もあります。
保育士ワーカー公式サイト:https://hoikushi-worker.com/
2.保育士バンク
保育士ワーカーと並ぶ業界大手の保育士専門転職サイトで、やはり全国に拠点を展開しているので地方在住の人でも利用しやすくなっています。
また豊富な求人にはブランクや初心者歓迎のものが多く、復職の不安などを軽減しやすい職場が多く掲載されている点も特徴です。
登録すると紹介してもらえる非公開の案件も多く、口コミなどでも高い評価を得ています。
保育士バンク公式サイト:https://www.hoikushibank.com/
3.マイナビ保育士
人材紹介大手のマイナビが保育士に特化して運営している転職サイトであり、多くの転職サイトを運営する中で培われてきたノウハウを生かしたサポートの手厚さや信頼性の高さが特徴です。
全国11カ所にある拠点は大都市圏が多く、地方での転職にはやや弱さもありますが、都会での転職を目指す人にとっては逆に強みにもなっています。
口コミでは求人の質が高いとの評価も多く、好待遇を求める人におすすめです。
マイナビ保育士公式サイト:https://hoiku.mynavi.jp/
保育士の復職に不安な方は、まずはパートタイムで慣れたら正社員を目指すのがおすすめ
以前とは環境も異なっている上に、しばらく現場から離れていた場合は慣れるまである程度時間がかかることでもあります。
もしもそうしたことが心配であれば、まずはパートタイムなどで仕事に慣れてから、少しずつ働く時間を増やしていくのも一つの方法です。
子どもがある程度大きくなってから正社員を目指すということもできますので、正社員に対して焦らず、現実的にどのくらい働けるか自分自身で理解しておく必要があります。
近年では働き方の多様化も進んでいるので、自身の状況に合った働き方を選択していくのがおすすめです。
まとめ
今回は、保育士の復職に関するメリット・デメリットや上手に復職するためのコツなどを解説しましたが、いかがでしたか?
復職する際には色々な不安要素はあるものの、事前準備を怠らずに行えば、現在ではすんなり現場に復帰できる環境が整っています。
多少のブランク期間があっても、保育士ニーズが非常に高いので難なく復職できるでしょう。
また、出産や育児という人生において大きな経験を経た方は、保育士としてのキャリアアップを目指すきっかけにもなります。
自分が親という立場になり、子供を預けにくる保護者たちはどんな状況、気持ちで利用しているのかを親身になって考えましょう。
復職に迷っている方は、この記事を参考にご自身に最適な保育施設を探してみてくださいね。