連続32時間勤務が、月に3回。1カ月で休みはゼロ…そんな生活は考えられますか?これは、2007年に発表された日本医療労働組合連合会の「勤務医」調査結果です。特に、ひと月で休みがゼロ…は医師全体の3割にも上るのには驚きカモ?
日本の病院数は8,471施設、クリニックは101,099施設。(2016年1月現在)毎年4,000人医師が増加しているのに対し、病院は前年より4施設減少、クリニックは46施設減っています。
高齢患者が増加する中、病院は減り、医師は増加…なのに、現実は激務に追われる勤務医師が増え続けているのはなぜなのでしょうか?
ここでは、ブラック病院と呼ばれる医療施設の実態と、ブラック転職にならないための”秘策”をご紹介していきます。
当直が”無給扱いだった”奈良県立奈良病院の裁判事例
2013年2月、最高裁判決で医師2人に約1,540万円の「時間外割増賃金」の支払いを命じられた奈良県立奈良病院(奈良市)。
この病院では、産科医の当直てを”一律2万円”と定め、分娩がない深夜待機は非労働時間として無給状態にしていたのです。
夜勤専従の看護師でさえ3万円の専門手当が付く時代、産科医という”職性”は分娩時間以外が休憩=無給、という論理がまかり通っていた公立病院…。これは医師の時間外労働には人件費がかかる…一般常識にようやく追いついた事例といえるカモ。
執刀医が次々と患者を死なせる、群馬大学医科大学の事例
2016年に外部の事故調査委員会が最終報告書を出した群馬大学医学部附属病院の死亡事故問題。2007年から14年に渡って肝胆膵分野の手術で64人もの術後死亡が判明しました。
問題はそのうちの30人が後に解雇された男性医師の担当執刀であったこと。 この事例は、群馬大学の特定医師の執刀スキル問題だけでなく、医局同士で人間関係のトラブルが複雑に絡まった”医療現場が修羅場と化していた”現実が暴露されました。
金儲けに走り、患者の診察もおろそかにした大阪・安田病院の事例
1997年に社会を騒然とさせた、安田病院(系3病院)事件。生活保護患者や高齢者を積極的に受け入れ、診察せずに診療報酬を受け取る大掛かりな詐欺事件として経営者が逮捕されました。医師は定員の40%しかおらず、病院職員が患者を虐待するなど信じられない状態でした。
医師や看護師の多くは70代以上の高齢者で、就職先が見つからない。そんな人材が多く、退職できない事情がありました。
そのため、ワンマン経営を正す正義感は追いやられ、経営者の蓄財の手先となってしまいました。患者が食い物にされた事件としては、史上最悪の詐欺事件として知られています。
ブラック病院には、いくつかのタイプがある
この3例はいずれも”ブラック病院”としてマスコミに公表されました。ただ、その内容はそれぞれ特徴があることが分かります。奈良県立病院の場合は「医師報酬が著しく低い」という点。
群馬大学医学部付属病院の場合は「特定医師の技量が低く」「組織防衛が医療技術の向上を妨げていた」という点です。
最後の安田病院は「診療報酬制度を悪用した詐欺」という点と「患者の人権を破壊」した点がブラック行為と呼べるでしょう。そのほかにも「同族経営の悪弊による、特定勤務医の追い落とし」といった病院も存在します。
つまり、ブラック病院には様々な形があり、その全てが勤務医の正常な医療行為を脅かすものに発展しているカモ。
ブラック病院は、トラブルが連鎖する
研修医として赴任した病院がブラックだった…というケースはよく聞く事例です。ただ、学生から社会人に移行することは社会の厳しさを体感する”痛み”を伴います。
体力的・精神的に限界を感じつつ医師全員が成長を遂げていくはずです。が、その時点での過労死が止むことがないのも事実カモ。
もう一つの問題は、若い医師が思い切って転職した先でのブラック化です。初任地での様々ないじめや人間関係のトラブルからの独立を目指して転職するはずが、再びブラック病院に勤務することになってしまう悲劇。
その多くは「病院情報」をよく調べないままの転職カモ。給与の条件は良いが、残業が非常に多かった…上司に当たる指導医が非常に不親切で、スキルアップが望めない…院長の私用に付き合わされ、休日も自分の時間がほとんどないなど。
また、特定の勤務医がセクハラを繰り返し、看護師と医師とのコミュニケーションが悪い…実は、ちょっとした条件違いやコミュニケーションの未熟さ、職場環境の風通しの悪さといった諸々が連鎖反応をおこしてインシデント、アクシデントへの道を突き進んでしまう可能性も少なくないのカモ。
ブラック病院を避けて、安全な病院に転職するには?
病院情報を詳しく調べる…とはいっても、忙しい毎日でそれを行うことは物理的に困難カモ。もし転職を考えていても、候補病院の情報は「人づての噂話」か「ネット情報」、あるいは知り合いのMRに聞く情報といった程度でしょう。学会では皆良い話ばかりしかしないのが通例です。
転職で大事なことはなんでしょうか?まずは病院の経営状況。きちんと報酬が出るかどうかはここがポイントです。そして経営の動き。院長や理事長がどういった人なのかは最もリサーチしておくべきです。
診療科の情報はもっと大事になるカモ。自分が採用された場合のポジションや、人間関係。看護師の数や働きぶり。来院患者数や入院患者の数。執刀医ならば執刀症例の多さは気になるでしょう。
また、医師や看護師などの職員をトラブルから守ってくれる部署があるかどうかも忘れてはいけません。モンスターペイシェントからの被害を防ぐための人材を雇用しているかどうか、これは安心して勤務できるかどうかの瀬戸際でもあります。
このような点をしっかりと調べてから、転職に踏み切ることがブラックに関わらない大事な条件カモ。
まとめ
過労が続いているブラック病院の勤務医問題。あるいは、病院内でのコミュニケーション問題や病院の経営問題など、勤務医にふりかかかる難題は尽きません。大規模病院でも個人病院に於いてもブラック病院、ブラック医師の存在はなくなることはないカモ。
ですが、ブラック病院は病院全体の一部に過ぎません。どの病院も多かれ少なかれ小さなトラブルが付きものです。その中で、いかに自分に合った”非ブラック”病院を探し、望み通りの医師人生を送るかは大きな課題と言えます。
医師がブラックな環境で働き続けることは、社会にとって大きな損失。転職を決意した時点で病院情報に詳しい専門家のアドバイスを聞くことが必須と言えるカモ。