SIer(システムインテグレータ)にSEとして勤務する人の中には、web業界への転職を希望する人が多いようです。
Web業界はトレンドの移り変わりが激しく、競争が激しいのが特徴です。
人材にも柔軟性や高いコミュニケーション能力が求められる傾向があり、アピールできる長所や実績があるかどうかで転職の幅が大きく変わってきます。
今回はSIerとWeb系の違いや転職に成功(失敗)する人の特徴について紹介していきます。
SIerとweb業界の違いは?
web業界について簡単に説明すると、「便利なサービスをインターネットで提供する」業界だといえるでしょう。
それでは実際にどのような便利なサービスを提供しているのでしょうか。
web業界が提供するサービスとしては、以下のようなものがあげられます。
web広告 | webページ内に表示される各種広告を提供するサービス |
---|---|
Eコマース | インターネットを利用して様々な商品の購入ができるサービス |
SNS | 様々な相手とインターネット上でコミュニケーションができるサービス |
キュレーション | 利用者が欲する各種の情報をわかりやすくまとめて発信するサービス |
一方SIerでは、システム要件を顧客の要望に基づいて定義し、設計・構築・導入を行うことになります。
同じITであってもWEB業界とは大きく異なるといえるでしょう。
SIerとweb系を比較すると、以下のような違いをあげることができます。
▼SIerとweb系エンジニアの違い
Sier |
・顧客の要望通りに開発 ・確実性を重視(ウォーターフォール開発) ・ディレクション能力が必要 ・ベテランが担当 |
---|---|
Web系エンジニア |
・自社で開発 ・スピード重視(アジャイル開発) ・プログラミングスキルが必要 ・若手が担当 |
SIerではシステムの完成度を高め、誤動作がなく確実に動くことが必要とされます。
一方、web業界ではまずリリースをして、その後ユーザーの声を取り入れながらアジャイル(修正)を行うことが一般的です。
また、SIerではコードを書く機会が少ないのに比べ、web業界ではコードが書けるというスキルが必要とされます。
SIerでは分業化が進んでいるため、業務全体の一部のみに関わることが多くなっていますが、Web業界では業務全体に関わることが多いようです。
web業界には自由でカジュアルな雰囲気の企業が多く、比較的若い人が多いということも大きな特徴だといえるでしょう。
web業界で必要とされる人材の条件5つ
現在SIerで仕事をしている人にとって、web業界は
「コードを書けることが必要」
「スピードが重視される」
など、条件の異なる新しい業界だと感じられるかもしれません。
それでは実際にweb業界への転職を実現するためには、どのような条件を満たすことが必要とされるのでしょうか。
1.アジャイル開発への理解が深く、柔軟性とスピード感を持って取り組める人材
アジャイル開発は大まかな使用と要求に基づき、短いサイクルで開発を繰り返すのが特徴です。
開発期間が短く、仕様変更などにも対応しやすいというメリットがある一方、開発の方向性がブレやすいという難点もあります。
顧客の細やかなニーズに答えるためには、柔軟性・スピード感と全体を見渡すバランス能力が求められます。
アジャイル開発中心でビジネスを行っている企業も珍しくないため、経験や実績、トラブルへの対処能力などバランス感覚の高さはアピールポイントになっています。
2.顧客との交渉やチームでの仕事に対応できるコミュニケーション能力を有する人材
設計開発能力が高くても、顧客の要望をしっかりと引き出し、周囲に正確に伝える能力がなければムダな作業が増えてしまいます。
顧客のリテラシーが高いとは限らないからこそ、交渉に強いかどうかも重要になります。
顧客の要望を現実的な予算や工数に落とし込むことや、チーム全体の作業量を把握した上で可否をきめる判断能力が必要になることは珍しくないからです。
チームに所属する一人一人にある程度のコミュニケーション能力が求められるだけでなく、キャリアップを目指すのであれば必須のスキルになることに理解が必要です。
3.サーバサイドシステムを開発したことのある人材
サーバサイドのシステム開発に携わる人間は希少で、それだけ付加価値が高くなります。
経験の有無で関われる案件の幅が大きく変わるため、積極的に実績を積める職場を探し、キャリアアップに利用するのも方法になります。
中長期で自分のキャリアを構築する上で重要な要素になる場合もあるため、意識しておくのがおすすめです。
また、サーバサイドシステムに関わらないのであれば、自分の専門性を磨くなど別な面で長所を伸ばしていく必要があります。
4.Web系技術(HTML/CSS/JavaScript/データベースなど)や知識を有する人材
Web系技術は汎用性が高く、それだけビジネスに結びやすいのが特徴になります。
技術者からすればちょっとしたサービスが高額な仕事に繋がるケースも珍しくないため、付加価値の高さをアピールするのにも向いています。
専門的な知識や開発経験があれば更にプラスになるため、積極的に取得するのがおすすめです。
よく使われる分技術の移り変わりが激しい分野でもあるため、学習意欲の高さを示すのにも向いています。
5.最先端の技術知識を常に学習できる人材
SIerでは分業化が進み、仕事には高度な専門性が求められますが、web業界では様々な仕事をこなすための幅広い知識や経験が必要とされます。
自分の専門分野にだけ詳しければよい訳ではなく、常に類似する分野や新興の技術などに影響を受けるためです。
ビジネスを取り巻く環境の理解は重要で、常にどんな技術が生まれ、どのように変化しているかを把握する必要があります。
指示されたことのみを実行する人材は価値が低く、常に学習してスキルアップをしていく人材が評価されます。
スキルと学習意欲の高さは評価に直結する要素になるため、常にトレンドを学ぶことも大切になっています。
web業界では上記の条件を満たす人材が必要とされていますので、自分を高めて少しでも近づけるように頑張りましょう。
SIerからWeb系への転職に失敗する人の特徴6つ
同じIT系の業種ではありますが、求められるスキルや経験が異なることもあり、苦戦している方は珍しくありません。
ここでは、失敗する人に多い特徴を見ていきましょう。
1.そもそものスキルが不足している人
Web系に求められるスキルは、意外と高水準です。
自ら進んで技術知識を得て、アウトプットできなければなりません。
サーバサイドエンジニアであればJavaやPHP、Pythonといったプログラミング言語を習得する必要があります。
フロントエンドエンジニアは、CSSやPHP、UI/UXの知識も要求されます。
これらのスキルが不足していると転職では厳しい状況になります。
2.自分の技術向上に関心がない人
ITは凄まじい速度で進化していますが、WEB系も例外ではありません。
SIerだと下位レイヤーで開発に携わっていると、スキル向上がなくてもそのまま一定のレベルで労働できるように設計されています。
古くて伝統的な言語しか使用しなかったり、自動化が進まない特殊な環境で働いていると、現状の能力に満足して技術向上を怠ってしまうことになりかねません。
次々と登場する新しいソリューションや技術知識にキャッチアップしていく姿勢が大切です。
3.転職活動の準備不足が顕著な人
SIerからするとWEB業界はカジュアルに見えるかもしれませんが、油断は禁物です。
転職に向けて準備を怠ると、色々な面で苦戦し、確実に採用されません。
例えばIT系の経験ありとして、これまでとは違う開発環境なのに、いきなり実戦投入されて困っている人も中にはいます。
転職を考えると、まず、面接試験をパスするためにも準備は欠かせません。
その上で一歩進んで、採用後を見据えて入念に計画するのが好ましいと言えます。
4.興味のある技術がない、自分で試さない・アウトプットしない人
一般的な傾向として、WEB系の仕事は属人化しやすいとされます。
このため、マニュアルがあればできる作業は当然として、自分にしかないできない仕事を探すことが重要です。
その点で、興味のある技術がなかったり、自分から進んでチャレンジ・アウトプットをしないと転職では不利でしょう。
回ってくる仕事をこなす、と言う受け身なスタイルでうまくいかない時は、積極的に行動する必要があります。
まずは、特にニーズが豊富な分野からリサーチするのがおすすめです。
5.向上心なしにSIerに30歳過ぎまで居座っている人
ビジネスキャリアにおいて20代から30代は大切な時期です。
もし、SIerの立場に満足して30歳を過ぎまで特に何もしてこなかったなら、思い付きでWEB系に転職しても成功確率は高くないでしょう。
30歳を超えた人は業界転職市場で敬遠されがちです。
余程の経験や技術力がない限りは、「将来的な伸びしろがない」とレッテルを貼られて20代の採用が優先されます。
6.恵まれた環境ゆえの高収入であることに危機感を感じない人
大手で働いているSIerだと給与水準が高いところも多いです。
そのため、高収入だからと油断して、危機感が薄れている人は珍しくありません。
「会社の看板あっての高収入」だというのを「自分の能力で勝ち得た収入」だと勘違いしてしまいがち。
実際は環境に恵まれていることを見逃してしまっている人が多いのです。
このため、職場が変わっても自分ならうまくいくと、根拠のない自信をもって転職する人もいます。
SIerからWeb系への転職で成功する人の特徴5つ
一方で、SIerからWeb系への転職で成功する人にはどのような特徴があるのでしょうか。
5つの特徴があるので、転職成功させたい方は、ぜひチェックしましょう。
1.プライベートでも新技術に触れてアウトプットしてる人
Slerは雛形になるソースコードが用意されていることも珍しくなく、技術の更新なども比較的ゆっくりとした速度で進みがちです。
しかし、Web系は顧客の満足度を高めることが非常に重要なため、常にスピード感を求められます。
プライベートでも自らに課題を課して新技術を学び、アウトプットをするなどスキルアップをしていないとスピードのギャップに驚いてしまうケースも多いのです。
似たジャンルでありながら、スピード感がまったく違うという認識は必須になります。
2.Web業界の人と積極的に交流して情報収集に当たっている人
Web業界はトレンドの移り変わりが激しく、現場の環境も大きくかわることがあります。
実際にWeb業界で働く人と交流することも大切で、業界の温度感や苦労、成功事例など触れることはプラスになります。
転職する業界の情報に明るいことは明確な武器になるため、積極的な人脈構築を行っていくのがおすすめです。
情報の交換として、相手にもSlerの情報を渡していけば交流も楽になります。
3.年齢がまだ20代の人
Web業界は競争が激しい分、若手の人材も不足しがちです。
特に20代は仕事を覚える速度が早く、仕事の振り方次第でさまざまなスキルを吸収し、将来的な戦力としても期待できます。
中長期で働ける人材はどの企業も欲しがっているため、若さも武器になるのです。
30代になるとある程度の開発実績や経験が問われることになるため、年齢以外の付加価値をしっかりと磨く必要があります。
4.Webのプロダクトに敬意を持っている人
SIerとWeb系は類似する部分が多く、ライバルとしてお互いを敵視したり、見下したりする人材がいるのが特徴です。
仕事自体に偏見を持っている人が多いからこそ、Webのプロダクトに敬意を持てる人材はそれだけ好印象になります。
転職を希望する場合は、希望する企業のプロダクトの良いところを探し、志望動機などに織り込むことは必須になります。
Web業界全体を見回した上で、魅力を見出し、経緯を持てる人材であればさらに評価は高くなるのです。
5.”指示待ち人間”ではない、自主性のある人
Web系の仕事はエンドユーザーが消費者になることが珍しくなく、評価が数字に表れやすくなります。
指示待ちでは顧客のニーズを引き出し、改善や改良のサイクルに結びつけるのが難しいことも多いのが現実です。
積極的に課題を見つけ、改善できる人材はそれだけ評価されるため、自主性を身につけることは必須といえます。
気が利く人間であれば、それだけ使い勝手が良い人材と認識され、評価がプラスになります。
web系技術を学べるサイトや役立つ資格
web業界への転職を成功させるためには、具体的にはどのような技能を身に付ければよいのでしょうか。
また役立つ資格はあるのでしょうか。
具体的に紹介します。
web系技術を学べるサイト2選
web業界で評価される技能としてはHTML・CSS・各種Webプログラミング(Java, PHP, Ruby)に関するものがあげられます。
ただし、これらを系統立てて学ぶことは、なかなか大変かもしれません。
専門学校などで学ぶ方法もありますが、忙しい人は手軽に学ぶことができる初心者向けの学習サイトを活用してみましょう。
1.ドットインストール
ドットインストールは3分動画でマスターする、初心者向けプログラム学習サイトです。
WordPress入門 、HTML入門 、iPhoneアプリ開発入門 など、321レッスンを4,773本の3分動画で提供しています。
2.Progate(プロゲート)
Progate(プロゲート)は、プログラミングをwebで学ぶことができる初心者向け学習サイトです。
web関連言語としてHTML・CSS・Rubyなどを学ぶことができます。
さらに体系的な学習に取り組みたい人は、資格の取得にもチャレンジしてみましょう。
web業界で評価される資格としては、以下があげられます。
web系で役立つ資格3選
1.HTML5プロフェッショナル認定資格
HTML5プロフェッショナル認定資格は次世代のWebプロフェッショナルのスキルの向上を目的として、WebページやWebアプリケーションの構築・設計・デザインに関するスキルや知識などを、公平かつ中立的な立場で認定する新しい資格です。
2014年にできたばかりの資格ですが、web業界への転職では高く評価されます。
2.webクリエイター能力検定
webクリエイター能力検定は、webサイトのコーディング能力とデザイン能力を認定する資格です。
ワークフローを学ぶことでwebサイトを効率的に作成することができます。
3.ウェブデザイン技能検定
ウェブデザイン技能検定は、webに関する実務能力や幅広い知識を問う資格であり、1級から3級までの試験が行われています。
いずれもwebに携わる人を対象とした国家資格です。
Web系エンジニアを目指す方におすすめの転職エージェント5選
1.マイナビIT AGENT
マイナビITエージェントは求人件数が多く、サポート面も充実しているので初心者でも安心して使うことができます。
特に20代や若手のエンジニアの利用者が多く、業界に不慣れな人や初心者でも転職先を見つけやすいのが支持されています。
キャリアアドバイザーの質も高く、具体的に相談をして自分に合った転職先を見つけることができます。
非公開や独占求人も多いために、初心者でもより高いレベルの転職を考えている人にもおすすめです。
>> マイナビIT AGENTの口コミ評判を見る2.レバテックキャリア
レバテックキャリアはITエンジニアやWEBデザイナーの転職に特化したサービスとなっており、主に経験者向けの求人が豊富です。
この業界では最大級の求人数を誇っており、更なるキャリアや年収アップを希望している人におすすめの転職エージェントとなっています。
扱っている求人は大手のものから新規ベンチャーまで幅広く揃っており、専門のキャリアアドバイザーも適切なアドバイスを提供してくれるので、納得がいく転職先を見つけることができます。
>> レバテックキャリアの口コミ評判を見る3.doda ITエンジニア
doda ITエンジニアは求人数が多いことで有名ですが、他社と違って地方の求人も多いのがメリットとなっています。
都心部では中々自分に合った求人が見つからなかった人でも、こちらのエージェントだと発見することが可能です。
東京や大阪以外の求人が多く、それぞれのエリアごとに担当のキャリアアドバイザーがいるので、そのエリアに合った相談やマッチングを考えてくれます。
Uターン、Iターン転職にも強いのもメリットです。
doda ITエンジニアの口コミ・評判ページへ4.WORKPORT(ワークポート)
総合的な転職エージェントとして人気のワークポートは、業界初心者でも大丈夫な求人が多く探しやすいのが特徴です。
実働の仕事だけではなく、営業職、マーケティングなどの色々な分野のweb系求人が揃っているので選択肢が豊富なのは大変便利。
ワークポートは業界初心者でも丁寧にサポートをしてくれる点が口コミでも評判であり、初めての転職をする際には登録しておくと役に立ちます。
ワークポートの口コミ・評判ページへ5.GEEKLY(ギークリー)
GEEKLY(ギークリー)はITやweb業界だけではなく、ゲーム業界の求人に特化しており、他の会社と違った求人を探すことができます。
ゲームクリエイターの求人も多めであり、実際にゲームを作る側から管理者の求人まで幅広く揃っているのが特徴です。
専門性の高い求人を扱っていることから、こちらのエージェントは登録から内定までが非常に素早くなっており、マッチング率が良く満足度が高い転職エージェントとなっています。
>> GEEKLYの口コミ評判を見るまとめ SIer→web系への転職を成功させるためには十分な準備が必要
SIerとWeb業界は同じIT業界ですが、必要とされる知識や実際の仕事内容は大きく異なります。
SIerでは顧客の要望に基づいてシステム要件の設計・構築・導入を行いますが、一方のweb業界では各種webサービスの提供が主な業務になります。
SIerではシステムトラブルを防ぐために、事前に何度もテストを行い、安全性や信頼性が確認されます。
一方のweb業界ではまずはリリースを優先して、その後ユーザーの声を反映した修正を行って完成度を高めていくことになるのです。
web業界では物事にスピード感を持って取り組めること、顧客との交渉やチームでの仕事に対応できるコミュニケーション能力、HTML/CSSなどのコーディング能力、様々な仕事に対応できる豊富な知識や経験、webデザイナー志望の場合にはデザインセンスなどが重視されます。
これらの能力は、専門学校や初心者向けの学習サイトを活用してみましょう。
今回ご紹介したドットインストールなどの学習サイトでは、高額な出費なしで専門知識を手軽に習得することができます。
体系的な知識の学習のためには、資格の習得も有効だといえるでしょう。
web業界への転職を目指すのであれば事前の十分な準備が必要になるため、web業界では何が必要とされるのか、web業界で働くためには何を学べばよいのかをしっかりと確認し、web業界への転職を成功させましょう。