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同僚の給与の「見える化」が、働き方や社内にもたらす影響は?

同僚の給与の「見える化」

IT業界で働いている人のみならず、全く関係のない業界で働いている人でも、インターネット事業として初めての株式店頭を公開した『GMOインターネットグループ』を知らない方は、今やほとんどいないでしょう。
東証一部上場企業で、多くの社員を抱えているのにも関わらず、毎年インターネットを駆使した様々な事業を動かしてきたほどのフットワークの軽さで毎年多くの収益を上げており、その社風も『成長できそう』『何でも挑戦できそう』と話題を呼び、IT業界を希望する求職者からも絶大な人気を集めています。

そんな同社の特徴として挙げられるのが、同僚の給料の見える化という人事考課(同社では、『ガラス張り』と呼ばれています)。これは、自分を含めて同社に所属している同僚や役員の実績と報酬が社内ポータルサイト上で公開され、このサイトを利用すれば、誰でもいつでも他社員のお給料を把握することができるというシステムです。

一見、トラブルばかりが目立ってしまいそうに思われがちなこのガラス張りシステムですが、GMOインターネットグループはこのシステムを採用したことで、社内の生産性や、一人一人の責任感が向上したと言われています。

一体、このガラス張りのシステムを採用する企業にはどのような目論見があり、このシステムによって発生するメリット・デメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。今回の記事では、それらについて詳しくご説明します。

同僚の給料を「見える化」、企業の目論見は?

社員の給料体系を、社内システム上で全社員に向けて公開するということは、恐らく一般的にほとんどの企業では、どちらかと言うと「実施したくない」ことでしょう。実際に、このテーマについては多くの働く社会人からの賛否両論が上がっており、このシステムを採用しているGMOインターネットグループに対しても、『暴挙だ』という声も少なからず上がっているそうです。

しかし、それでもなぜGMOインターネットグループは、このシステムを採用するに至ったのでしょうか。

それは、全社員から自分の実績や給料を見られるという事実を把握することで、社員側は自分の報酬に見合う貢献をしなければならないという責任感や意識を持つようになります。また、企業側は、社員に対して正当な評価をしているということを、実際の社員のお給料という数字を使用して、証明することができるのです。

社員への影響について

まず社員への影響についてですが、これは主に役員・役職者に対する影響が大きいと言われています。

日本は元々海外のような成果主義の評価体制ではなく、企業に長く所属する中でどんどんとお給料が上がっていく年功序列の評価体制でした。今でも『1社に長く勤める』ということが正義という風潮がまだ、多くの求職者の中で残っているのも、この年功序列によって作られた『1社に長く勤めることが正義』という風潮が、時代を超えて今も尚受け継がれているという部分にあります。

そのため、特に古くから続く大企業では、今は成果主義の評価基準が採用されているという企業であった場合でも、その評価基準が採用される前に役員や役職者になった方は、以前までの年功序列の評価基準の際に、『企業に長く在籍していた』という事実だけを功績だと評価され、役員や役職者に昇級したという役員や役職者も少なくはありません。

なので、実際に何か能力的・もしくは企業に与える数値的な実績(わかりやすくお伝えすると、売り上げや販路拡大など)を出し、企業に貢献していない、そうした力を持っていないのにも関わらず、企業の中で見てくれのリーダーシップを発揮し、戦略を立てたり、企業の経営方針を作ったりしているのです。

そうした社員に対し、実際に現場で活躍し、企業に大きな数値的貢献や販路拡大などの貢献をしている社員からは、評価基準やお給料の面で、非常に多くの不平・不満が相次いで発生してます。

もちろん、元々は成果主義ではなく、年功序列が当たり前だとされていた日本全体の評価基準という大きなベースがあったがために、その時代は『長く所属すれば役員になれる』というルールがあったので、現役員・役職者はそのルールに倣い、評価され、昇級したまでです。

そのため、その時代に合ったルールを守りながら、現ポジションを築かれたという正論的な側面でいうと、年功序列によって昇級された現役員・役職者たちは、何も悪いことはありません。しかし現在、特にIT業界に関しては、テクノロジー発祥の地・米シリコンバレーの影響も大きく受けているということもあり、アメリカ式の成果主義の評価基準がほとんどの企業で採用されてますし、その採用基準が当たり前に感じている若年層の社員からすれば、過去の風潮・ルールに倣っているとはいえ、悪い言い方をすれば大きな貢献をせず、会社に所属していただけで役員・役職者になった社員に対する不満というのは、大きく出てしまうのです。

今、IT業界にあるほとんどの企業では、成果主義の評価基準が設けられています。そのため、年功序列の時代に役員・役職者になった社員であった場合でも、企業に対して大きな貢献ができなければ、それ相応に評価は下がってしまい、結果的に企業はその社員の給料を下げざるを得ません。

一般的な社員に比べても給料額が高く、その水準に合わせた生活(マイホームの購入、妻子を養うなど)を送っている役員・役職者にとっては、給料を落とすということはすなわちその生活を維持することができなくなってしまうということになるので、現評価基準の元、正当な働き方・貢献の仕方をしなければならない、ということになります。

他の社員に自分の実績や給料が公開され、それに対して不平・不満を言う社員の声がもし、人事部の責任者や代表の耳に入れば…ということを考えると、役員・役職者はもちろん、他の一般的な役職のない社員も含めて、『給料に見合う貢献をしなければならない』という意識を持つようになり、率先的に企業に貢献しようと動き出すのです。

企業の誠意証明について

上記のように、簡単に言えば『自分たちは現場で大きな実績を出して会社に貢献しているのにも関わらず、なぜ上で踏ん反り返っている役員や役職者たちのほうが、給料がいいのか?』という若手社員のフラストレーションについて、企業は度々対応に追われることがあります。

特に多くの企業の場合、こうした全社員の給料を見える化するガラス張りのシステムを採用していないため、数字を用いた正論や根拠ある説明を社員に対してすることが難しく、中には『立場を使って社員を畳み掛ける』という、社員からの信頼を一番損なってしまう力技に出てしまう企業も、数多く存在します。

その結果、社員の中でそうした不誠実な企業の対応に、さらに多くのフラストレーションを溜め込んでしまい、最悪の場合、社員の退職という結果を招いてしまうことになります。せっかく若い人材を採用することができたのにも関わらず、こうした理由で若い社員が定着しないという企業も、少なくはありません。

しかし、自分を含め、同僚や役員までの実績やお給料をポータルサイト上で公開することによって、なぜこの社員にはこれだけの給料が支払われているのかについて、そうした不満を持った社員に対しても、しっかりと数値的根拠を用いた説明をすることが可能になるのです。

企業側もただ、立場を利用した力技の強行突破をすることもなく、社員にしっかりと納得してもらえるように努められますし、社員側も『なぜこの人がこの給料をもらっているのか』についてのしっかりとした論を聞くことができれば、納得してくれることも多くあります。

もちろん、それでも納得しない社員については、最終的に自分が望んだ評価基準と、会社が採用している評価基準に折り合いがつかないという理由で、退職という選択を取られる方もいるかもしれませんが、企業が極力そうした事態を防ぐために創意工夫をした結果そうなってしまったのであれば、社員の希望に従うしかありません。お互いのミスマッチをどちらかが我慢したまま働き続けるということは、どちらにとっても幸せなことではないからです。

ただもちろん、こうしたシステムを採用し、実績や給料の内容を公開することで、さらにモチベーションを高める社員も存在します。何をすれば昇給・昇格するのかという評価基準が明確であれば、そこに向かってブレることなく進むことができますので、お給料を上げるために何をすればいいか、役職をもらうためには何をすればいいかがはっきりとわかり、そこに向かって一直線に頑張ろうとする社員もいます。

前者の説明では、社内からクレームが上がった際の保険的役割について中心的にお伝えをさせていただきましたが、そうした守りの側面だけでなく、社員のモチベーションアップという側面も兼ね備えているのです。

デメリットばかりだと思っていたけど、実際にガラス張りのシステムを採用している企業には、こういった目論見があったカモ!では実際、もっと掘り下げたメリットやデメリットは、どういったものがあるのかな?

同僚の給料を「見える化」する、そのメリットは?

同僚の給料を見える化することによって起こるメリットというのは、どういったものがあるのでしょうか。ここでは、主に社員という立場から感じられるメリットについて、3つご紹介をさせていただければと思います。

実績に対する評価がどれほどか、把握することができる。

これは、ガラス張りのシステムを採用される上で、一番に感じることができるメリットです。実績というのは、大きく2つの側面から評価されることが一般的です。

1つは、経済的な実績です。
新規開拓、既存顧客の深耕営業による売り上げのアップ、新しい販路の拡大など、企業の売り上げという目に見える数字の側面からの評価になります。成果主義を取り入れている多くの企業については、一般的には経済的な実績に対しては、明確な評価基準があります。

例えば、新規顧客の開拓で、新規顧客の獲得によって売り上げが何円計上できればどれくらいのインセンティブが付与される、新規顧客の開拓を1ヶ月に何件できればいくらインセンティブが付与されるなど、それぞれ数値で表すことができる明確な評価基準を設定している企業がほとんどになります。

そのため、経済的な実績に対する評価については、ガラス張りのシステムを採用していなかったとしても、評価基準が明確に記載されている社内資料を読めば、把握することができるのです。

もう1つは、非経済的な実績です。
非経済的な実績というのは、例えば社内・チーム内でリーダーシップを発揮した結果、その場の生産性が上がった、社内・チームのメンバーの人間関係が良くなった、覇気が戻った、コミュニケーションを多く取るようになったなど、実質的な企業に対する売り上げという側面の貢献にはなってはいませんが、対象によっては売り上げよりも向上させることが難しい側面に対する貢献のことを指します。

実はガラス張りのシステムを採用された場合、この非経済的な実績に対する評価がどれくらいか、という側面に関する評価基準が、明確になるというメリットを感じることができます。

というのも、こうした非経済的な実績を出すことは簡単ではありませんが、例えば営業のように直接的に企業の売り上げなど、目に見える貢献ができない内勤の社員も取り掛かることができる貢献の部類になるのです。
ただ、企業の売り上げなどの経済的・数値的といったわかりやすい評価基準がなく、大抵の場合はぼんやりと評価されている風に見られ、企業は大いに助かったと太鼓判を押していたとしても、社員は評価を実感することができず、企業と社員の間に満足度のギャップを生んでしまうことになるのです。

しかし、給料という部分だけでなく、なぜこの給料になったのかという裏付けをするための実績も公開されるということで、どの非経済的な実績が給料に影響したのかを把握することができます。
また、それは自分が出した非経済的な実績だけでなく、他社員の非経済的な実績による給料の変動の様子も拝見することができるので、経済的な実績のように、直接的な数字を用いた貢献ができない職種の方については、これが給料アップの手立てについての情報収集ツールになるのです。

給料に対する不公平が、自然となくなる。

こちらは、前述させていただいた中でも少し説明をさせていただきましたが、全社員の給料や実績を公開することで、給料に対する不平・不満が自然となくなっていくということも、メリットの1つになります。

特に、こうしたガラス張りのシステムを採用した際に、一番影響を受けるのは、役員や役職者など、通常の役職のない社員よりも高い給料をいただいているポジションの社員になります。
特にそうした役職のない社員は、役職者になろうと現場で必死に実績を出し、どんどん積極的にリードマイセルフで行動しようとします。
その分、本人もそのステージに見合った正当な評価を受けることはもちろんなのですが、それでも現場で働く役職のない社員は、『現場で経済的な実績を出している自分たちが一番会社に貢献をしている』という考え方を強く持っており、そんな自分たちよりも経済的な実績を出せていない役員・役職者に対し、その給料をもらっている正当性を見出せないため、人事に問い合わせ、社内でクレームを起こしているのです。
もちろん、ガラス張りではなく不透明な評価基準の企業である場合、役職のない末端の社員は『予想』という不明確な情報を頼りにそうした暴挙に出るため、企業側からの力技に負けてしまい、何も言えなくなってしまい、自分の中で消化されないフラストレーションをどんどん溜め込んでしまうことになるのです。

しかし、ガラス張りのシステムを採用している企業である場合、その役員・役職者の給料はいくらなのか、そしてそれをもらう正当性になる実績はどういったものを出しているのかということが一目瞭然になります。
そのため、実績を上げていれば何もないものの、もしも年功序列でそのポジションになった社員で多くの給料をもらっているのであれば、現場で活躍する末端の役職のない社員からの大きなバッシングを受けることが目に見えています。
もちろん、不透明な企業であれば力技を使うことができるのですが、こうも明確に表されてしまうのであれば、そのような力技を利用することができません。
末端の社員であっても、その不満に賛同する者がいれば、その影響力はどんどんと大きくなり、減給や給料見直しになる可能性もあるのです。
それを避けるために、全社員に給料や実績を公開することで、今までは怠慢で貢献もあまりしてこないままで高い給料をもらっていた社員も、貢献するために動かざるを得なくなります。
そしてそれが積み重なることで、末端の社員からの不平・不満の声は、自然になくなっていくのです。

実はこれは、社員側(特に末端の役職のない社員)のメリットだけに留まらず、企業側のメリットとしても挙げられるものになっています。
役職のおかげで高い給料をもらいながらも、それに見合う貢献ができていない社員というのは、企業にとってはお荷物になってしまいます。
そうした社員が、末端の社員の暴挙による給料への影響を避けるために、企業に対して何か貢献できることはないかと考えて行動するということは、企業にとっては末端社員の不平・不満を失くしながらも生産性を高めることができるという、非常に都合の良いことなのです。

自分の実績をアピールすることができる。

こちらの項目については、自己満足に値するメリットにはなってしまいますが、ガラス張りのシステムで自分の給料が公開されるということは、それに伴う実績も公開されますので、全社的に自分の実績をアピールすることができます。
他の社員の方が気になってあなたの実績を覗いた時に、あなたが企業に対してどれだけの貢献ができたのか(経済的・非経済的を含む)ということを、目の当たりにします。
あなたの実績を覗いた方が同僚なのであれば、同僚に対して自分の出した実績を見てもらうことで優越感に浸ることができるでしょうし、部下思いの役員や役職者であれば、その実績を見てあなたに対して応援や激励の連絡をくれることもあるでしょう。

褒められて嫌な気持ちになる人は、基本的にはいないはずです。
自分の実績をアピールし、優越感に浸ることで、『また来月もこんな気持ちを実感したいから頑張ろう』とモチベーションを高め、意識をより高められる人もいます。
もし、褒められることで伸びるタイプだと自分で把握している方であれば、こうしたガラス張りのシステムが、モチベーションや意識を高める材料になることもあるのです。

同僚の給料を「見える化」する、そのデメリットは?

メリットについて3つご紹介をさせていただきましたが、もちろんこうしたシステムを採用するにあたっては、メリットに感じられるものばかりではなく、併せてデメリットも存在します。
こちらでは、メリット同様、デメリットについても3つのポイントに沿ってご紹介をさせていただきます。

同僚との評価の差を思い知らされる。

こうしたシステムを採用するにあたり、大抵このシステムを利用する層は、入社すぐから2年前後
の役職のない末端の社員になることがほとんどです。
そして、そうした社員がこのシステムに倣い、給料や実績を調べる対象は、大きく2つです。

1つは前述した通り、役員・役職者になります。
この層の社員は経営層ではないので、経営方針などを考えることの重要さ、大変さを理解しておらず、現場で働く自分たちが『売り上げ』という最も大切だと思い込んでいる部分の価値を企業に対して提供し、貢献していると思い込んでいます。
そこの部分では当たり前に自分たちよりも劣る役員・役職者に対し、不平・不満を感じ、申し出るための情報収集として、こうしたシステムを利用し、必死に役員・役職者たちの給料をチェックしようとします。

もう1つの対象は、同僚です。
特に自分と同じ時期に入社した同僚に対しては、給料の額はどっちの方が上かということが、同僚と自分の実力を測る手段として見られることが一般的です。
もちろん人によって能力の差や、勤務場所などの市場の差がありますので、同じ時期に入社した同僚であっても、成績や評価に差が出ることは当然のことではあります。
しかし、同僚に対してそこまで複雑に、かつ冷静に考えることはできず、『給料が高い方』が価値のある人間、という、シンプルで間違った指標で比べてしまう方がほとんどです。
そしてその時、同僚の方が自分よりも大きな実績を出し、給料を多くもらっているデータを目にしてしまった場合、同僚との実力の差や価値の差を感じ、劣等感に苛まれ、モチベーションや意識の低下に繋がってしまうのです。

もちろん、よっぽどの負けず嫌いであればここで再熱し、『負けてられるか!』と奮起する方もおられますが、そうでない場合、これが原因でどんどん成績を落としていってしまい、自信が底をついてしまう方も少なくはありません。
それが原因で『自分にはこの仕事は向いていないのかも・・・』と思い込み、最悪の場合退職を希望する社員も出てくることはありますので、その側面で見ると、このシステムはデメリットに感じてしまうのかもしれません。

自分の給料を知られることに対する嫌悪感

これは、非常にシンプルです。
どんな方であっても、自分の給料額を同僚や同じ社内の方に、明確に開示されることを心底好む方はいません。

給料というのは、どうしても会社員の中では、価値の指標のひとつになります。
営業職など、現場に出て売り上げを作る職業の方に関しては、目に見える経済的な実積を出し、それをアピールしたり、同僚と競い合ったり、貢献した分のプラスアルファの収入を得やすいということから、こうしたガラス張りのシステムにポジティブな意識を持つ方も、他の職種の方に比べると少なくはありません。

しかし、役職のない末端の社員の中でも、内勤の社員に関してはどうでしょうか。
内勤の社員は、経済的な貢献をすることが難しく、基本的に非経済的な貢献が中心になってくるのですが、やはりどうしても、経済的な貢献に比べると貢献度合いが低くなり、貢献した側と評価した側の気持ちにギャップが生まれやすくなります。
また、もともと内勤の社員の給料ベースというものは低く設定されていることがほとんどなので、他の社員に情報を覗かれた時に、『内勤はこんなに給料が低いんだ』『内勤って、給料これだけで生活していけるの?』といった哀れみを感じられるのではないか、と考えてしまい、それが『恥ずかしい』『悔しい』『腹立たしい』といった負の感情をもたらしてしまうのです。

もちろん、これは内勤の社員だけに限ったお話ではありません。
たくさん頑張っているのに、自分の思い描く評価に足らない評価がされていて、給料に理想の金額が反映されていなかった場合、『こんなに貢献したのに、ここまでしか給料が上がっていない』『他の人から、あんなに頑張ってたのにこれだけかよって思われていたらどうしよう』と不安を覚えるのは、誰でも同じです。
自分の給料が公開されるということは、そうした不要な気を遣ってしまい、負の感情を引き出してしまうきっかけにもなってしまうのです。

求職者からの、求人応募率の減少。

これは、現場ももちろん感じてしまうデメリットになりますが、主に企業側が強く感じるデメリットになるでしょう。

前述した通り、人は好き好んで同じ会社で働く社員に対して、自分が月いくらの給料をもらっているのかを公表したいとは思わないものです。
むしろ嫌がる方のほうが一般的なので、求人票にこうしたガラス張りの評価基準システムを採用していると記載しただけでも、応募率はグッと下がってしまうことが安易に予想できます。
もちろん、評価基準が明確になるというメリットを伝えているか、そしてその伝え方によって、自分の給料の公開よりもそちらの要素の方が大きく上回れば採用に至りますが、『どうしても給料は知られたくない!』と希望すれば、応募には至らないでしょう。
もし、自社にとって条件が揃った非常に欲しいと思える人材が、自社求人に興味を持ってくれたとしても、このシステムを知って応募を見送るという可能性は非常に高くなり、このシステムを採用していることが、優良人材採用を妨げる原因にもなってしまうのです。

求人応募率が下がってしまうということは、人材不足で喘いでいる現場が、いつまで経っても救われないということにもなり兼ねません。
ただでさえ人材不足で悩んでいるのに、現場にいつまで経っても人材が補給されなかった場合、現場の社員からのクレーム発生、最悪の場合は退職を希望される、ということもあり得るでしょう。

どうしても、システム自体が賛否両論、どちらかというとマイノリティになるので、このシステムを採用することで、求人応募も少なくなれば、既存の社員が会社を離れてしまう…ということになる可能性も出てきてしまうのです。

ガラス張りの評価基準システムを導入することで、企業の生産性が上がるというメリットはあるけど、人材不足に悩んでしまうという可能性も否めないという部分は、少し考えものカモ。メリットとデメリット、どちらの方を大切にするかというのは、個人の価値観によって左右されそうです。

希望する企業が、このシステムを採用していた時に考えたいこと。

もし転職活動をしていく中で見つけた気になる企業が、こうしたガラス張りの評価基準を採用しているという場合は、上記にあるメリット・デメリットのどちらにあなた自身が価値を感じるのか、優先するのかということを考えなければなりません。

メリットは、前述させていただいた通り、『実績に対する評価がどれほどか、把握することができる』『給料に対する不公平が、自然となくなる』『自分の実績をアピールすることができる』ということです。
一方のデメリットは、『同僚との評価の差を思い知らされる』『自分の給料を知られることに対する嫌悪感』『求職者からの、求人応募率の減少により、退職者が出た時は現場が一気に忙しくなるかもしれない』ということです。
もちろん、メリットはどれも魅力的に感じるかもしれませんが、デメリットはどれも正直、尻込みしてしまうものが並んでいるように感じるでしょう。

あなた自身の中で、これらのメリット・デメリットが『受け入れられるのか』『受け入れられないのか』という部分をしっかりと考えた結果、『受け入れられる』ものが多ければ応募してもいいとは思いますし、この中で『どうしても受け入れることができない』という項目が1つでもあるのであれば、応募することは避けておいた方が無難だと思います。

もし、将来に独立・起業など何かしらの願望がないのであれば、基本的には『できるだけ長く働ける会社』を探すことになるかと思います。
長い社会人人生の中で、どうしても受け入れられないと思っている要素があるのにも関わらず、気になっているから、給料が良さそうだから、憧れの企業だからという安易な気持ちで応募し、入社をしてしまうと、入社後に必ず後悔することになってしまいます。
そうした事態を防ぐためにも、必ず事前に各メリット・デメリットに対して感じる価値観を整理しながら、応募するかどうかを決めるようにしてください。

見える化されていたとしても、入念に調べる社員は、正直少ない。

今回、GMOインターネットグループが適用したことで話題となった『社員の給料の見える化』についての、企業側の目論見やメリット・デメリットについてご紹介をさせていただきました。
ここまでメリット・デメリットなどについてもお話をさせていただきましたが、ほとんどの社員はこうしたシステムにあまり強いこだわりを持っておらず、導入されたところで話題になるのは最初だけで、毎月誰かの給料をチェックしている社員というのは、ほとんどいないということが現実です。

それでももし、こうしたシステムに苦手意識がある、実際に受けたいと思っていた企業がこのシステムを採用していたけど、応募するかどうか悩んでいるということであれば、一度転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
転職エージェントは多くの企業の特徴や社内システムに精通しているので、実際にこうしたシステムが導入された企業の社内の状況や社員の声なども教えてくれるでしょうし、それでもどうしても苦手意識があるのであれば、同じようなお仕事で、見える化のシステムを採用していない企業を紹介してくれるはずです。

ただ、IT業界の企業は、ユニークなシステムや福利厚生を好んで採用しがちな傾向が強く見られます。
もし、どうしてもIT業界で働きたいということであれば、『全社員の給料や実績の見える化』だけでなく、他に自分にとって受け入れられないシステムや福利厚生を採用していないか、という部分についても、チェックしておいた方が無難でしょう。