子どもを寝かせるためのコツや工夫は沢山あり、その子に合ったものを考えるのも保育士の大事な仕事です。いろいろ試してみて、子どもが気持ちよく寝つく方法が見つかればとても嬉しいものです。
今回は、寝かしつけのコツと工夫を中心にお伝えします。寝かしつけの一番大事なポイントは何でしょうか。記事の中にも答はありますよ!
子どもがなかなか寝ない!寝かしつけがもっとうまくなりたい新任保育士のために!
新任の保育士にとっては、お昼寝タイムもプレッシャーです。必死に寝かしつけをしても、子どもは簡単に寝てくれません。添い寝をしながら「仕事がいっぱいあるから早く寝てくれればいいな」と強く願う日々が続きます。
先輩保育士が添い寝をすると、すぐに寝てしまうことも不思議ですね。「同じようにやっているのに、どうしてすぐに寝てくれないの?」新任保育士が自信を失うのはこんな時です。
若い新任保育士にとって「子どもを寝かしつけること」は未経験、うまくいかなくて当然です。寝かしつけが得意な先輩保育士だって、新人の頃は眠らない子どもを前にタメ息をついたこともあったはず。
寝かしつけは慣れることでコツが分かってくる事もあります。
寝かしつけのコツ&工夫にはどんなものがある?
子どもがスムーズに眠れるように保育士ができる工夫と配慮、そして寝かしつけのコツをご紹介します。
部屋の明るさやBGMなど、お昼寝に適した環境作りをしたいですね。子どもの睡眠を妨げるものがあれば、保育士は何らかの工夫や配慮をする必要があります。
自宅では本人に合わせて環境を変えることが可能ですが、保育園は集団生活なので個別の対処には限界があります。それでも保育士が最善を尽くすことで、子どもは「先生が○○してくれた」と満足します。
音楽
お昼寝中のBGMを選ぶ場合は、スムーズに睡眠へと導入できるようなものを吟味しましょう。
専用の音楽やオルゴール曲など、お昼寝用に制作されたCDは沢山あり、多くの保育園で利用されています。どれもゆったりとしたテンポの優しいメロディーばかりで、心も体もリラックスできそうです。
子守歌を歌う
BGMを流さない場合は、保育士が子守歌を歌うことも効果があります。トーンは控えめにして、抑揚が少ない歌い方をしてみましょう。単調に歌うことがポイントです。
オススメの歌は、やはり定番中の定番「ゆりかごのうた」ですね。歌詞を全部覚えていなくても大丈夫!一番の歌詞だけ繰り返し歌っても構いません。他にも、定番といえば「ブラームスの子守歌」や「江戸の子守歌」があります。どれでも、保育士が歌いやすいものを選ぶといいでしょう。
また、昔からなじみのある童謡も入眠には効果があります。「七つの子」や「赤とんぼ」など、ゆったりした美しいメロディーは心を穏やかにします。歌わずにハミングをするだけでもOKですよ!
ホワイトノイズ
テレビのザーザー音のような単調な繰り返しをする雑音のことを「ホワイトノイズ」と言います。ホワイトノイズは「安眠」「リラクゼーション」「集中力を高める」などの効果があり、子どもだけではなく大人にも広く愛用されています。
ホワイトノイズを使った寝かしつけは、海外で多く行われています。赤ちゃんが胎内で聴いていた音に近いと言われており、年齢の低い子どもには特に効果があります。
睡眠導入用のCDにはホワイトノイズを集めたものもあり、波の音、雨の降る音、せせらぎなどの音を聴くことができます。好みのものを選んでBGMとして流してみるのもいいですね。
部屋の明るさ
お昼寝の時はカーテンを閉めて、部屋を暗くするのが一般的です。但し、「暗いのがイヤ」と怖がる子どももいるので配慮が必要です。明るい所に布団をしき、「先生がそばにいるから大丈夫だよ」と声をかけることで、子どもは安心して眠れるでしょう。
子どもが安心できる安眠グッズを持たせることも効果があります。抱きしめたり握りしめることで、リラクゼーション効果が得られ、気持ちよく眠ることができますね!
ぬいぐるみ
子どもが手に持てる程度の大きさが適しています。「今日は誰と一緒に寝る?」と、好きなものを選べるようにします。
最初から子ども全員にぬいぐるみを持たせる必要はありません。スムーズに眠れない様子が見られるようになってからがベストなタイミング!「ひとりで眠れないならお友だちと一緒に寝る?」と、子どもに声をかけてみましょう。
ふわふわボール
スポンジ素材のものや、柔らかいゴム素材のものなど、感触が気持ちいいボールは安眠グッズになります。ボールを握って感触を楽しむうちにウトウトしてきて、いつの間にか眠ってしまいます。
お気に入りのタオルなど
なかなか寝つかない子どもの場合、家庭で愛用しているお気に入りのタオルなどを持ってきてもらうのも効果があります。自分が家で使っているものを手にすることで安心し、ゆったりした気持ちで寝ることができます。
本人オリジナルの安眠グッズは、主にタオルやぬいぐるみであることが多いですね!赤ちゃんの頃から使っているもの、愛用しすぎてボロボロになっているものなど、本人の思い入れは強く手放せないものなのです。
落ちついた気分になれるスキンシップは入眠効果も大きいですね。触れ合うことが心地よいだけではなく、保育士の体温を感じることで子どもが心から安心することができます。
どんなふうにスキンシップをするのが好きなのか、安眠ポイントは子どもによって違います。本人に確認しながら行うようにしましょう。同じ動きをゆっくりと単調に繰り返すことで、子どもは「うとうとモード」に変わっていきます。
手をにぎる
保育士が子どもの手を包みこむようにしたり、指と指を絡ませたり、握手をしたり。握りながら指や手のひらを軽く押すのも、いい刺激になって眠りを誘いますね。
ボデイタッチ
保育士の手が与える優しい刺激で、子どもは心からリラックスします。どんな部分をタッチするかは、子どもに合わせます。頭をなでる、おでこをなでる、眉間を指でさする、頬に手をあてるなどのボデイタッチは、保育園でもよく行われています。
触られるのが嫌な子どももいるので、一方的に行うのではなく、「気持ちいい?」と確認しながらタッチするようにしましょう。
トントンする
寝かしつけの王道といえば「背中トントン」ですね。背中を一定のリズムでトントンと触れます。
子守歌を歌いながら、同時に「背中トントン」を行う保育士も多いですよ。
トントンする場所は背中だけではなく、肩や腰、お尻で行うこともあります。トントンされて気持ちがいい場所は子どもによって違います。
手足をさする
手のひらや手首、または足首など、さすられることでリラックスします。軽いタッチで静かにゆっくりとさすっていきます。BGMに合わせると、リズムが一定になるので入眠しやすくなりますね。
手足をさすると身体が温められ、まぶたが少しずつ重くなっていきます。保育士の手の温かさを直に感じることができるので、子どもは安心して眠れます。
保育士が寝かせることだけにこだわると、子どもにもその気持ちが伝わってしまい、ますます眠らないという悪循環になってしまいます。時には発想を転換させて、意識を変えてみることも大切ですね!
「早く寝かせなきゃ!」と気負わない
保育士は、子どもたちが寝ている間に「やりたいこと」がいっぱい!連絡帳や事務作業、設定保育や行事の準備、職員会議やミーティングなど、控えている仕事が沢山あるのです。
なにしろ、お昼寝の時間は限られています。その短い間にどれだけ仕事ができるかは大事なこと!子どもたちには一刻も早く寝てもらって、とにかく仕事を片づけたい!そんな思いで焦ってしまいますね。
すると子どもは敏感なので、保育士の気持ちを察してしまいどんどん目が冴えていきます。
保育士はゆったりとした気持ちで、子どもに向かうようにしましょう。そのためには「寝かせなきゃ」と気負わないこと。「寝なきゃ寝ないで仕方がない」と意識を切り替えると、保育士の気持ちも楽になっていきますね。
離れて様子をみる
添い寝をしてもなかなか眠らない場合は、本人のそばをいったん離れてみるのもいいでしょう。
「先生ちょっとお仕事してくるね」など一声かけて離れると、子どもはそのことが気持ちの切り替えになって「おやすみモード」に変換することもあります。
トイレに行ってみる
おしっこが出るかどうかに関わらず、「ちょっとトイレに行こうか」と誘ってみます。トイレに行くことが気分転換になるので、部屋に戻るとあくびが出てすぐに眠ってしまうこともあります。
布団の並べ方を変えてみる
いつもと違う布団の並べ方をすることで、なんだか新鮮な気持ちになりますね。前より新しい場所の方がお気に入りになることもあります。
無理に寝なくてもいい
なかなか眠れない子どもにとって、お昼寝の時間はプレッシャーです。時には「眠くなかったら寝なくてもいいよ」と一声かけるのも大切!お昼寝が嫌で登園拒否になる子もいるのです。
また、4~5歳児になると体力がついてくるので、眠くならない子どももいます。担任保育士は「眠くならない子ども」への対処を工夫する必要がありますね。無理に寝かせようとせず、お昼寝タイムの過ごし方を考えましょう。
保護者に家での様子を聞いてみる
家庭では子どもの睡眠状況はどうなのか、保護者から情報をもらうことも必要。寝つきはどうか、愛用している安眠グッズはあるかなど、本人に合った対応をするためにも情報収集は大切です。
お昼寝前に読む絵本については、内容を充分に吟味する必要があります。わくわくドキドキするような楽しい内容の絵本は気持ちが高揚してしまうので、寝る前に読むものとしては適していません。
ストーリーの流れがのんびりしていて、どちらかと言えば単調な繰り返しのものは心が落ちつき穏やかになります。ちょっと退屈なぐらいが眠気を誘いますよ。
低年齢の子どもが見る絵本の中には、最後に主人公が眠ってしまうものも多くあります。睡眠に導入しやすく、多くの保育士がお昼寝前の絵本として利用しています。
なぜ眠れないの?こんな理由もあるから要注意!
眠れない理由には、体調が影響していることや、精神的な問題を抱えていることもあります。子どもの様子を見極め、適切に対処することが重要です。
便秘
うんちが硬くてスムーズに出ない状態が続いている時は、よく眠れないことがあります。お尻やお腹がムズムズするような違和感があることも!ガスがたまって苦しい時は「お腹が痛い」と訴えることもあります。
鼻水、鼻づまり、のどの不調
風邪気味の時や花粉症など、鼻水が大量に出たり、逆に鼻づまりに苦しんでいることがあります。のどの痛みや不快感も眠れない原因になります。お昼寝タイムにそのような様子が見られたら、適切なケアをして必ず保護者に報告するようにしましょう。
かゆい
寝る時にアレルギー性のかゆみを訴える子どももいます。特に汗をかく時期はかゆみがひどくなることがあります。お昼寝タイムでは、かゆくて眠れない子どもに寄り添い、少しでも楽になるように対応します。
不安、心配ごとがある
園生活、家庭生活、友だちとの関係など、子どもが何か気になることがあって、心配になり眠れないことがあります。子どもの表情や言動にそのような様子が見られたら、話をゆっくり聴く時間を作りましょう。子どもは自分の不安を受けとめてもらったことで安心し、ゆっくり眠ることができます。
思い出し泣き
前記の「不安・心配ごと」と似ていますが、友だちとケンカしたことを思い出して泣く子どももいます。相手に言われたことがショックで、思い出すと悲しくなってしまうのです。
また、家庭であった悲しいことを思い出して泣く子どももいます。たとえば、両親がケンカした次の日に、「昨日不安になった気持ち」をお昼寝タイムに思い出すのです。
保育士は子どもを抱っこして包み込み、しっかりと本人の気持ちを受けとめます。子どもは泣いたことでサッパリ!安心モードに変われば、泣き疲れて眠ることもあります。
生活習慣を一度に変えるのは難しい
子どもが眠れない原因として「家庭での生活習慣」が気になることもありますね。保護者に就寝時間や起床時間を意識してもらうことで、お昼寝がスムーズにできることもあります。
但し、家庭に問題があればあるほど、改善が期待できないこともあります。それは、保護者自身も生活習慣を見直す必要があるからです。そもそも「子どもの睡眠時間」に問題意識を感じていない保護者もいるので、保育士の助言に従うことが億劫だと感じる方もいるでしょう。
家庭の生活習慣については、全部を見直すのではなく「できることをひとつだけ」協力してもらいましょう。一度に多くのハードルを越えるのは、保護者にとって大きな負担!でも、ひとつだけなら実践できるかもしれません。
お昼寝で子どもが眠れるようになったら、保護者にも感謝の言葉を伝えましょう。「協力していただいたおかげで、たっぷりお昼寝できるようになりました。起きた後の機嫌がとてもいいです!」など具体的に話すことで保護者も達成感を感じるでしょう。
寝かしつけの一番大事なポイントは?
冒頭でもみなさんに問いかけをしましたが、寝かしつけの一番大事なポイントは何でしょうか?それは、寝かしつけをする保育士が大らかな気持ちでいること。大らかな態度がゆったりとした時間を作り、子どもを睡眠へと誘うのです。
忙しい保育士はやることがいっぱいあるので、子どもたちが早く寝てくれると助かりますね。だから、なかなか寝つかない子どもに対して「早く寝て~」と焦り、だんだん大らかではいられなくなってきます。保育士から「寝てほしいオーラ」が強く出ていると、子どもも目が冴えてきます。
保育士は「寝なくても、まぁ、いっか」と大きく構えることも時には大切。気持ちを切り替えることで、「寝てほしいオーラ」が「のんびりオーラ」に変わっていきます。