保護者との付き合いに苦手意識を感じている保育士は少なくありません。特に経験の少ない若い保育士の場合は、ほとんどの保護者が年上なので対応に気を遣いますね。子どもよりも大人の方にストレスを感じている人もいるのではないでしょうか。
逆に保護者側から言えば、「保育士との付き合い」にストレスを感じている人もいます。保育士の態度に「イラッ」「ムカッ」としたり、考え方や姿勢に何か疑問を感じたり、きつい言葉に傷つき落ち込むことも!保護者は保育士に対していろんな感情を抱えているのです。
お付き合いがうまくいかないと、保護者の方ばかりに欠点や落ち度があるように感じてしまいますが、実は保育士の方にも改善すべき問題があるかもしれません。
今回は「保護者の立場になって考えること」を保育士が意識できるよう「付き合い方のポイント」をお伝えします。
苦手な保護者がいる!でも相手の立場になってみれば分かることもある!
保護者にもいろんな個性があるだけに、その中には「苦手だなぁ」と感じる人もいるでしょう。保育士を責めたり、持論をまくし立てたり、わがままだったり。でも、それが「その人の全てではない」という「別の視点」を持つことも、対人職である保育士にはとても重要なことです。
苦手だと思う保護者の立場になって考えてみましょう。表面的には見えない「心の奥」にはどんな気持ちが隠れているのでしょうか。
下記のようなタイプの保護者には「心の奥にある感情」に応えることが必要です。
保護者だって緊張している
初めての入園であれば、ほぼ100%の保護者が緊張していると言っても過言ではありません。「どんな先生なんだろう」「うちの子はやっていけるだろうか」と心の中は不安でいっぱいです。
不安を抱えているとますます緊張が高まり、通常ではしない言動をしてしまうこともあります。早口で多弁になったり、逆に無口になったり、やたらと卑屈になるなど、何らかの変化があります。そのような「表面的な状態」だけを見ていると、保育士は誤解したままで苦手意識を持ち続けることになります。
子育てに自信がない
自分の子育てに自信がもてなくて悩んでいる保護者も多くいます。特に、初めての子育てだと迷うことだらけ!これでいいのか不安ばかりで、子育てに疲れてしまっている印象を受けます。
子育てにストレスがある保護者は、なんとなく沈んだ印象があり伏し目がち。保育園では他の親子が立派に見えてしまい落ち込むことも多くあります。
人にどう見られているかを気にするので、「先生は自分をダメな親だと思っているのではないか」という気持ちを保育士にぶつけることもあります。「自分はダメなお母さん」と強く思いこんでいて、何を言っても素直に聞いてくれないので、保育士は「やりづらさ」を感じます。
不安があるから攻撃的になる
心の中に不安があると、それをかき消すために攻撃的になる人がいます。保育士のあげ足を取って批判する保護者は、心に不安やストレスを抱えていることも多くあります。
このようなタイプの人は、他の保護者まで巻き込んで保育士の悪口を吹聴することもあります。小さな不満が増幅して怒りに変わり、保育士を悪者にしてしまうことで満足感を得ています。
しかし、本当のストレスは違う所にあるのかもしれません。怒りをぶつけたい相手がいるのに、素直にぶつけることができないから、代わりに保育士を攻撃している可能性もあるのです。
自分自身を振り返ってみて「自分を知ること」が大事!
気になる保護者のどんな所が苦手だと感じるのか、整理して考えてみると付き合い方のヒントが分かってきますよ。まずは下記について振り返りをしてみましょう。
自分を振り返るためのポイント
- 初めに苦手だと感じたのはいつか?きっかけは?
- どんな所が苦手か
- 自分はどんな反応(対応)をしているか
- 相手がどう変わったら苦手意識がなくなるか
- 自分に努力できることはあるか
自分の苦手意識を掘り下げて考えることは、より深く自己理解するための糸口にもなります。保育士には自分の気持ちを整理して考える時間が必要です。
子どものことを考える時にも、まず内省をしてみることでより良い対応ができるようになるカモ!
保護者が不愉快に感じるNGワードって?あなたは大丈夫?
保育士がよかれと思って言ったことでも、保護者にとっては「不愉快に感じる言葉」があります。保育士の言った言葉に対して反論や苦情を言うのは少数の人!だから、我慢している保護者の方が圧倒的に多いと思われます。下記のNGワードは保育園でよく聞かれるもの。保護者側の言い分も含めてご紹介します。
1.「子ども同士ではよくあることですから」
保護者の気持ち
友だちとケンカして顔を引っかかれたそうです。男の子同士のトラブルは仕方ないと思ってはいても、顔の傷を見ると親としてはやはりショックです。先生も軽く謝っただけで、あとは「よくあることなので」の繰り返し。信頼して任せているのに誠意が感じられませんでした。
保育士は何故「よくあること」と言ったのでしょうか。確かに子ども同士のケンカはよくあることですが、ケガの謝罪とは「問題の本質」が違いますね。
保育園でお預かりしている限り、子どものケガは保育士の責任です。大事なお子さまに傷をつけて帰すことをもっと真剣に謝罪することが大切です。この場合「よくあること」とは保育士が言うことではありません。その一言で「責任逃れ」のような不誠実さを感じてしまい、不信感が生まれます。
2.「もっとスキンシップをとってください」
保護者の気持ち
子どもが保育士に甘えて離れないそうで、「親のスキンシップが足りないから保育園で甘える」と言われました。忙しい中で自分なりに精一杯やっているつもりだったのでショックでした。
子どもは先生が好きだから甘えているかもしれないし、それを受けとめるのが保育士の仕事では?と思いましたが、ベテランの先生で言い方も断定的なので逆らうのをやめました。
子どもの様子がいつもと違うのであれば、「お家で何かありましたか?」と聞いてみることが大切です。
「甘える=愛情不足=スキンシップすべき」という保育士の決めつけによる言動は、保護者の心を傷つけます。
たとえば「今日はいつもより甘えんぼでしたよ」と報告するだけでも、保護者は「昨夜は事情があって添い寝ができなかったんです」と気づくことができます。
家庭の事情もあるので、一方的に「スキンシップ不足」と決めつけるのは早計です。
3.「お家でも注意してください」
保護者の気持ち
子どもが先生の言うことをきかないそうで、家でも注意してほしいと言われました。子どもに事情を聞いてみると、本人なりの言い分があるようで「先生は自分の話を聞いてくれない」とも言います。何だか先生の方にも落ち度はありそうで、こんな人に子どもを任せることに不安を感じます。
自分の思い通りにならないからといって保護者まで巻き込んでしまうのは、決して良い結果を招きません。子どもとの関わりがうまくいかないことを全て子どものせいにして、親に問題を丸投げしているような印象を受けます。
子どもとの関わりがうまくいかないのは「自分に責任がある」と認めること。そして、振り返りや内省をしながら真剣に向き合っていくことが保育士に必要な姿勢です。
4.「今日も食べませんでした」
保護者の気持ち
うちの子は食が細く好き嫌いも多いです。給食を「完食する」ということがないので、先生はそれが気に入らないのかも!お迎えの時や連絡帳でいつも「食べないこと」を指摘されます。親もそのことは分かっているのだから、何度もわざわざ言わなくてもいいのにと腹が立ちます。
食べることが苦手な子どももいます。苦手なことを毎日のように「がんばって」と言われ、実はストレスを抱えていることも少なくありません。給食が嫌で登園をしぶるのもよくある話です。
保育士の中に「よく食べる子どもは良い子」「食べない子どもは問題児」といった価値観があると、子どもが食べないことに苛立ちを感じます。保護者に「食べませんでした」と報告することで、自分の感情をぶつけているのかもしれません。
5.「今日は○○しました」
保護者の気持ち
連絡帳に書かれているのは「今日何をしたのか」だけ。それしか書かれていないので、自分の子どもの様子については全く分かりません。先生が忙しいのは分かりますが、たったこれしか書けないのなら意味がないのでは?どう返事を書いたらいいかも分かりません!
親が知りたいのは、自分の子どもがどう過ごしたのか。「○○しました」だけではサービス不足!判で押したように同じことを全員に書くのも必要性が感じられません。「文章が苦手」という保育士も多いですね。その日あったことを5つの項目にあてはめてみると、文章が整理しやすくなります。
「いつ」「誰と」「どこで」「何をしたか」「どのような様子だったか」に合わせて書くと、文章がまとまりやすくなりますよ。
6.「失敗しました」
保護者の気持ち
子どもの前で「今日は失敗しちゃいました」と、おもらしの報告をするのはやめてもらいたいです。子どもが傷ついてしまって落ちこんでいます。このことを先生にどう伝えたらいいのか悩んでいます。
おもらしをしたという事実だけでも子どもは傷つくのに、保育士がダメ押しのように「失敗」と表現することでショックを受けてしまいます。保護者は「不用意な言葉で我が子を傷つけた保育士」に不信感をもちます。
そもそも、おもらしを「失敗」と表現することにも問題があります。デリケートな問題は連絡帳に書くなど、子どもの気持ちに配慮したいですね。
7.「まじ?」「ウケる~」
保護者の気持ち
保育士の言葉遣いが気になります。同じような年齢の同僚は丁寧に話しているのに、その保育士だけが馴れ馴れしい友だち口調!なんだか一人だけ浮いているようにも見えます。子どもにも悪影響だし、どうして園長先生は厳しく注意してくれないのでしょうか?
社会人としての常識に欠け、当たり前の対人マナーができない保育士。保護者は「こんな人に任せて大丈夫なのか」と不安になり、そんな保育士を野放しにしている保育園にも腹が立ちます。
言葉には「人間性や価値観」が表れるカモ!無意識に言ったNGワードには、保育士としての在り方が反映してしまいます。
もしかしてモンスターペアレンツ?と決めつける前に!
何かと文句を言う自分勝手な保護者に対して、「もしかしてモンスターペアレンツ?」と思うこともあるのでは?対応に悩めば悩むほど、保護者が「モンスター化」しているように感じてしまいますね。果たしてその保護者は本当に「モンスターペアレンツ」なのでしょうか。前記でもお伝えしましたが、苦手だと思う相手にも「見えない気持ち」があるかもしれません。
相手の心の奥について考えることは「歩み寄り」でもあります。歩み寄ることには勇気が必要!保護者とのお付き合いでは「勇気を出す」ということも大切です。保育士は高いハードルをひとつ越えることで、1ステップ成長することができます。
保護者にいつも見られている!保育士は「非言語」を意識することが大事!
非言語を意識したことがありますか?非言語とは「言葉以外のコミュニケーション手段」です。保育士は主に下記のような「非言語」によって、保護者を不快にさせることがあります。
保育士は自分の表情をその場で見ることはできません。心で思っていることが顔に出てしまっても、すぐに気づくことは難しいですね。表情は「自分の看板」でもあるので、言葉よりも先に相手に伝わります。
話している時に視線があちこち動くと、相手は「真剣に聞いていないのでは」と気になります。また、視線をこちらに向けないまま話をする人は「誠意がない」と感じてしまいます。視線ひとつで信頼を失うこともあるのです。
早口な人は情報も伝わりづらく、保護者も聞き返していいのか迷います。相手が大人でも子どもでも、ゆっくり丁寧に話すことが大切です。
口の悪い保育士は問題外!乱暴な口調はみんなを不快にさせます。
やむを得ない場合以外は、保護者の側にいって話しましょう。理由もないのに遠くから話していると、なんだか粗末に扱われているような印象を受けます。
子どものためにも保護者とは円満に!
保護者と保育士の不穏な空気を、子どもは敏感に察します。せっかく保育園に楽しく通っているのに、大人同士の事情で悲しい思いをさせることは避けたいですね。
相手の立場や気持ちを思いやる保育士には、保護者もいつの間にか心を開いています。大人がみんな笑っていれば、子どもは安心してのびのびと過ごせるのです。