愛情が豊かになり、精神的な成長と同時に仲間意識も強くなるのが5歳児!クラスメートそれぞれの個性を認め、お互いの良い所をどんどん見つけていけるような雰囲気を作りましょう!大人の言葉ひとつが、仲間に意識を向けるきっかけになることもあります。保育士は「良き理解者」になり、その子の良さを誰よりも知っていることが大切ですね。
今回は5歳児にスポットをあて、年齢の特徴を通して「保育&接し方のヒント」をご紹介します。
5歳児ってどんな特徴があるの?何ができるようになる?
遊びも表現も人間関係も充実し、園生活を心から楽しんでいる様子が見られるのが5歳児です。考える力や判断する力と共に「自分を抑える力」もついてきて、大人っぽさすら感じられる時期でしょう。
自分なりに考えて判断するようになる
物事の善悪について考えるようになり、「間違っている」「ずるい」など自分でダメだと思うことを言うようになります。友だちに対して「いかに間違っているか」を説得することも!それは大人に対しても容赦なく、親や保育士を厳しく批判することもあります。
相手の立場や事情を考えることができるので、相手が困るような行動をしないように意識できます。人の気持ちを察し、代弁したりサポートをすることもできます。
自分を抑えることができるようになるので、気持ちを爆発させることも少なくなってきます。トラブルになっても、やみくもに感情をぶつけて興奮するのではなく、落ちついて話をしようとします。
友だちとの関わりが濃密になる
友だちへの愛情が深まり、同じことを喜び、泣いている相手の痛みが分かるようになります。友だちのために自分が我慢することも!相手の気持ちにも耳を傾けることができます。仲間意識は更に高まり、友だちだけに話す秘密も増えてきます。
友だちの自宅に遊びに行ったり、自分の家に呼んだり、保育園以外でも関わりを持つようになります。相手の家族や、相手が大切にしているおもちゃなどに触れることで、相手との関わりが更に深まることをとても喜びます。共有する思い出や秘密が増えて、友だちと一層仲良しになります。
全身の運動能力がますますUP!
全身運動が更にスムーズになり、縄跳び、鉄棒運動、球技、マット運動などができるようになります。個人差はありますが、運動が得意な子は小学生並みの能力を発揮します。
そして、リズムに合わせて動くことができるようになっていきます。保育士が弾くピアノを聴いて自在に体を動かします。速いリズムの曲にもついていけるようになり、アップテンポの曲に合わせて踊ることができます。
文字への関心が高まる
文字に興味を持ち、絵本や幼児雑誌、テレビやチラシなど身の回りにある文字を読もうとします。保育園や自宅に貼ってある五十音表などを友だち同士で見たり、文字を読んで言葉の意味を楽しんでいることも!自分が言いたい言葉を文字に表すことも少しずつできるようになります。
文字への関心が高まると言葉遊びがますます楽しくなりますね。「しりとり」はもちろん「頭文字が同じ言葉」を集めたりすることもOK!「あ」の付く言葉は何でしょう?とクイズを出すと、必死に考えて沢山の答を言います。
音楽や造形に親しみ表現の幅が広がる
好きな歌の替え歌を作ったり、身近なものをリズムに合わせて叩くなど、音楽を好きなようにアレンジして遊びます。一部のフレーズだけを気に入ってその部分だけを繰り返し、子ども同士でかけ合いを楽しむ様子も見られます。子どもの個性によって音楽の楽しみ方が違うのも5歳児ならではです。
素材にもいろいろな種類があることを知り、材質の違いに気づき造形に取り入れようとします。廃品の活かし方についても幅が広がり、大がかりで複雑なものを作ろうとします。共同制作では意見を出し合ってイマジネーションの世界を共有し、作品に愛情を持つようになります。
動植物に興味をもつ
動物・生き物・植物に触れ、特徴や育ち方の違いに興味を持ちます。飼育や栽培を通して育っていく様子を観察し、成長を楽しみにすることで愛情を持つことができます。命の大切さや「はかなさ」も動植物に触れることで経験します。
5歳児になると、身近な食べ物が「命あるもの」から作られていることを理解します。野菜の種まきや収穫を経験し、農家の人の苦労にも心を寄せることができます。
共同で使う場所・ものを大切にしようとする意識が高まる
保育園への親しみが増し「自分の居場所」という意識が高くなります。保育園について知っていることが多くなり、新入園児や新任保育士には得意げになって案内をします。共同で使うものを大切にし、年下の子どもには「そこを引っ張ると壊れるから気をつけて」など注意を促すことも!トイレを清潔に使おうという意識が高くなり、排泄の後もきれいに処理できるようになります。
私物の管理ができるようになってくる
「寒い時はもう一枚着る」「暑くなれば脱ぐ」など、寒暖に応じて自分で衣服の調節をします。汚れた衣服を袋に入れたり、新しい着替えと入れ替えたり、保育士に手伝ってもらわなくても自分で行います。個人差はありますが、自分の道具箱を管理して整頓するようになります。
5歳児にはどんな配慮が必要?保育で気をつけるべきポイントは?
まずは子どもが「お互いの良さ」を発見できるよう、クラスの雰囲気作りは大切カモです。保育士自身もひとりの人間として「相手の良さ」を意識できるように心がけましょう。
子どもたちがお互いを認めることができるように配慮する
運動能力を始め、様々な面で個人差が出やすい5歳児!できる子が「いい子」で、できない子が「ダメな子」という価値観を持たないよう、それぞれの素晴らしいところを認め合うクラスにしたいものです。結果や数字だけで「人の優劣」を決めてしまわないよう、保育士自身が意識をもって子どもたちに関わることが大切です。
小学生になれば、結果や数字で優劣を決められることが多くなります。だからこそ、保育園では「お互いを認める」という経験をしておく必要があります。子どもにとって保育園は「人間関係の原点」でもあり、相手の価値を認めるという心を、幼児期に「種まき」することはとても大切なことなのです。
朝や帰りに「お話し会」を行い、ひとりひとりピックアップ!
「好きな遊び」「好きなもの」などを質問していきます。いつもの友だち以外のクラスメートをよく知る機会になり、意外な共通点を見出して仲良くなったりします。本人の負担にならない程度に「自分のことを語る機会」を設けましょう。
交通ルールを知る機会を作る
危ない場所や触ってはいけない道具など、安全への意識は高い年齢です。4歳児までは「あぶないって言われた」「先生がいけないと言うから危険」といった受動的な意識でしたが、5歳児になると「なぜ危ないのか」を理解した上で能動的に危険を意識します。危険についての理屈が分かるようになるのです。
園内の安全管理はもとより、園外の危険についても意識できるよう保育に取り入れていきます。入学後はひとりで通うことを頭に置いて、散歩しながら交通ルールなどを知る機会を作るようにしましょう。
5歳児にどう関わればいいの?接し方のポイント
どの子どもに対してもフラットな立場で接し、「あなたを受け入れている」という気持ちを伝えることが大切です。子どもは「自分がどう思われているか」を気にするので、保育士の態度や言葉がキーポイント!
また、ひとりひとりの「変化」に重点を置きましょう。前の自分と比べてどれだけできるようになったか、それが大事!「変化=成長」をクラスみんなで喜びます。結果や数字はどうあれ、お互いの成長に拍手を贈る!認め合い、喜び合うことが基本です。そんな雰囲気作りができるよう、保育士は普段の言葉がけや温かさのある態度を心がけましょう。
また、「お母さんから何聞いたの?」「先生、聞いてどう思った?」など、保育士がどう思ったかを聞くこともあります。自分にとっては恥ずかしいことを、親が言うのではないかとヒヤヒヤしています。
いずれにしても、「良いところ」「できるようになったこと」を話しているのだと具体的に教えて、本人が安心できるように配慮します。
5歳児・担任保育士の「お悩みあるある」って、どんなこと?
「自分は他の保育士より怒りっぽい」と感じている、または誰かにそう指摘を受けた保育士は必見!
「自分はよく子どもを怒っている」という保育士は、自覚があるだけラッキーといえるでしょう。もしかしたら自分を変えるチャンスかもしれません。まずは自分自身を見つめ直してみることから始めてみましょう。
そこで自己理解を深めるためには、自分の傾向を整理してみましょう。以下で上げる質問項目をもとに、自分自身がどう考えているのか考えてみてください。
【質問1】
どんな時に怒っていますか?思いつくまま全部挙げてください。
【質問2】
質問1の中で「怒るほどのことではなかった」と思うことはどれですか?
【質問3】
自分はどんなことにイライラしますか?何に腹が立ちますか?
【質問4】
大きな声を出して怒った時の子どもたちの反応はどうですか?どう感じたでしょうか?
【質問5】
自分はどうすれば良かったと思いますか?
【質問6】
自分が子どもの立場だったら、どう思うでしょうか?
また子どもたちはどう感じたのか、相手の立場になってみることも必要なこと。イライラや感情的になっている点については、自分のストレスや不満についても考えてみることが大事になります。根本的な原因は、仕事以外にあることも多いのです。
必要があれば叱ることも大切ですが、大きな声を出して怒らなくても伝わることの方が多いことを忘れずに。自分は怒りやすいということを意識して気をつけるだけで、接し方や対処が少しずつ変わっていきます。自分をよく知ることが最大の「対策」かもしれません。
5歳児の保護者が求めること「文字や数字を教えてほしい!」
就学前ともなると、保護者はあれもこれも「できるようにならなければ」と焦り、「うちの子はまだできない」と悩みます。文字や数字については「保育園で教えてほしい」と求める保護者も多いようです。
しかし「保育園は文字や数字を教える学校ではない」ということを伝えたいところですが、保護者も気持ちが追いつめられているでしょう。そこで、保育園で行っている「文字や数字に関する活動」について説明しましょう。たとえば下記のようなことです。
- 名前の記入が必要な時は子どもが書くようにしている
- 「あ」の付くものを集めるなど言葉遊びを取り入れている
- 五十音表を貼ったり、黒板に歌詞を書くなど、環境に文字を取り入れている
- 手紙のやりとりを通して文字に興味を持たせている
- 数をかぞえたり、数字を書く機会も生活や遊びに取り入れている
先に、保育園で行っている「文字や数字に関する活動」を知ってもらった上で、家庭でもできることについて助言をします。本人が嫌がらないように工夫や配慮が必要なことも伝えます。また卒園児の例もいくつか話して、「今のままでも大丈夫」ということも必ず伝えましょう。焦りすぎや先走りは、決して子どものために良くないことにも気づくことができればいいですね。
保育士は登降時の関わりや連絡ノートなどを通して、保護者の悩みをしっかりと把握し「助言」や「励まし」を行うようにします。また、懇談会などで「就学前の悩み」を取りあげることで、「悩んでいるのは自分だけではない」と少し安心できるかもしれません。
子どもの行動や意思に委ねてみるのも大事!
5歳児は時に保育士をリードするような行動を行います。活動の流れを子どもたちに任せてみるのも、担任としての醍醐味!大人が思いもよらない方向に進み、面白い結果につながります。子どもたちの発想に驚かされ、表現の「チカラ」に敬服しますね!
子どもたちを信じて、任せて、見守ることができるのは「良い理解者」だからこそ!信頼関係のあるクラスを目指して、保育士はいくつになってもブラッシュアップしていきたいものですね!