園には年間を通したスケジュールがあり、4月の年度始めから3月の年度末までが保育士の一年となります。
ゆえに退職については年度末をメドに考える保育士が圧倒的に多いのも、保育園に勤務する者としては当たり前の認識だからでしょう。
そんな中、年度末ではない時期に退職したいと考える保育士にはどんな事情があるのでしょうか?
今回は、保育士が年度途中で辞めることについて考えてみましょう。
年度途中の退職はできる?できない?
保育園を年度途中で辞めることは本当にできるのか?
結論から言うと、保育士が年度途中で退職することはもちろん可能です!
基本的にはいつ辞めても保育士の自由なのです。
退職は「必ず年度末まで待たなければならない」ということはありません。
保育士が辞めたいと思う時期に辞めることができます。
年度途中で辞めるということは責任を果たせないことだと自覚しよう
保育士は年度始めに「一年間、子どもたちの保育を全うすること」を前提に担任となります。
年度途中で辞めることは「自分の責任を放棄すること」になるということで、そこをきちんと自覚することが必要です。
真面目で誠意のある保育士ほど、「辞めたい気持ち」と「担任としての責任」の板挟みになって悩みます。
辞めた方がいい状態なのに無理をしてしまうのは、責任を全うできない自分を許せないからかもしれません。
辞めたい保育士に必要なのは「責任を果たせない自分」を認めること。
辞めたい時に辞めるためには「良い自分」ばかりではいられないことを認識することが大切です。
誰に何を言われても辞めると決めたらもう揺らがない!年度途中で辞める保育士には「覚悟」が必要なのです。
その後ろめたさを乗り越える覚悟は必要ですね。
年度途中で退職してしまうよくある理由8選
一年の途中で辞める保育士にはどんな事情があるのでしょうか?
よくある理由を8つ挙げてみました。
1.急病
自分が病気になり、勤務を続けることが難しいと判断した時。
また、家族の病気で看護を余儀なくされた時。
このような場合は仕方のないことですね。
2.結婚
結婚が急に決まり、仕事を辞めた方がいいと判断した時。
ただし、結婚することになったからといって、すぐに退職しなければならないようなことではありません。
退職するタイミングを間違えると、周囲から無責任だというレッテルを貼られるので注意しましょう。
3.妊娠・出産
妊娠したことが判明し、仕事を続けるのが難しくなったため。
出産後、仕事と育児の両立が難しいと判断した時はどうしても保育士を辞めなければならなくなります。
4.転居
家族の事情で他の都道府県、遠方へ転居する場合も今の仕事を辞めなければなりません。
5.介護
親または義父母の介護が理由で仕事を辞めざるを得なくなる場合もよくある理由の一つです。
6.激務による過労・ストレス
業務が多すぎる職場環境では、保育士がゆっくり休む時間もなく常に疲れています。
そんな毎日が続くと、心身の状態が悪化して仕事に行くことが困難になります。
保育士は体調を崩したことがきっかけになり、「もう限界」「もう無理」「辞めたい」と思い始めます。
このまま年度末まで勤務しても、心も体も持たないだろうと見通しを立てた時に退職を決意します。
7.人間関係の悪化
保育士が抱える「深刻な人間関係のストレス」とは、周囲からのイジメや同僚とのコミュニケーション不全に陥ることによるものが多いです。
苦手な同僚がいるだけならまだ我慢できますが、嫌がらせや言葉の暴力などイジメが悪質になってくると、仕事やコミュニケーションを取る気力が無くなってきます。
イジメに耐えているという状況は心身を傷つけ、体調を崩し、最後は園に行くのが苦痛になってしまいます。
そうなると、回復するためには「ストレスから解放されること」が必要になり、退職するしかないと心を決めます。
8.良い待遇を求めて転職したい
保育士は「高収入」が望める職業ではありません。
大抵の人は、業務の多さや責任の重さに見合わない収入に我慢しながら仕事を続けています。
自分の将来を現実的に考えた時、もっと「高収入・好待遇」の職場に移ることが必要だと感じている保育士は沢山いるでしょう。
できるだけ早く職場を替えたいと考える人は、勤務を続けながら求人情報をチェックしている人も多く、チャンスさえあれば時期に関わらず転職したいと考えています。
問題はストレスや労働条件が原因の場合です。
どんなふうに退職理由を伝えるか、じっくり考えることが必要かもしれません。
年度途中に保育士を辞めるメリット・デメリット
年度の途中に退職することのメリットは何でしょうか?
逆にデメリットはあるのでしょうか?様々な角度から考えてみました。
2つのメリット
保育士が年度途中で辞めることに多くのメリットはありません。
ひとつ挙げるとすれば、年度末を待たずに今の職場から自由になれることです。
下記のようなことを望んで辞める人が多いので、最大のメリットとも言えるでしょう。
1. 対人ストレスから解放される
人間関係に悩んできた保育士が退職を決めたのは、ストレスから解放されるというメリットのためです。
不愉快な職場からとうとう脱出!
もう嫌な上司や同僚と顔を合わせなくてもいいのです!
ずっと耐えてきて苦しい日々でしたが、ようやく辞めることができて自由になるのです。
2. 園の方針に合わせようと無理をしなくてもいい
保育士が園のやり方に納得できないまま、我慢をして働き続けるとストレスはどんどんたまっていきます。
割り切って仕事をしているつもりでも、自分に嫌気がさしてきます。
退職をすることで、もう無理をする必要はありません。
今度は自分に合った職場を選んでのびのびと働くことができますね。
4つのデメリット
自己都合により年度途中で辞めた人は、下記のようなデメリットを感じることもあるでしょう。
1. 年度途中で辞めたことが職歴としてネックになる可能性がある
保育士が転職活動をする際、面接で「何故、年度途中で辞めたのか」と質問されることがあります。
人事担当者は「長く勤められる人材かどうか」を重視するので、マイナス要因になる可能性があります。
2. 退職金が少なくなる
退職金を勤務年数で計算する保育園の場合は、年度途中で辞めてしまうともらえる金額が少なくなるかもしれません。
3. 求人が少ない
保育士が辞める時期によっては求人数が少ない月もあり、仕事を探しても自分が望むような職場が見つからないこともあります。
特に地方の場合は首都圏に比べると保育士の需要が少ないので、転職までに時間がかかるかもしれません。
4. 辞めたことを後悔する人もいる
転職活動中の保育士が不採用続きで仕事探しに疲れると、辞めたことを後悔することもあります。
「もっとスムーズに転職できると思ったのに」と、新たなストレスが生まれます。
年度途中で辞めるタイミングはいつ頃がいい?避けた方がいい時期とは
退職をするにあたって、できるだけ周囲に迷惑をかけたくないと考える保育士もいるでしょう。
こちらでは「ひんしゅくレベル高」と「ひんしゅくレベル低」の時期について考えてみました。
【ひんしゅくレベル高】辞めるのを避けた方がいい時期・タイミング
保育士がどの時期に辞めたとしても、大なり小なり周囲に迷惑をかけることは変わりません。
ただ、時期によっては「何故、今の時期に辞めるの?」と、ひんしゅくを買ってしまうこともあるのです。
4~5月
この時期は新年度がスタートしたばかりで、保育園全体がドタバタと落ちつかない状態です。
新入園児&保護者はもちろんのこと、着任したばかりの新人保育士もまだ慣れていません。
そんな時に退職を希望することは、周囲に「何故こんな時期に?」と言われてしまう可能性が高いです。
もちろん、急な事情でやむを得ず辞めるのは仕方のないことです。
ただ、辞める時期を調整することが可能ならば、4~5月に突然辞めるのは避けたいこと。
できれば3月中に退職を決めてしまった方が、年度末としてけじめがつくので周囲への影響も最小限で済みますね。
9~11月
園にもよりますが、9~11月は行事が目白押しで大変忙しい時期です。
ひとつの行事が終われば次の行事と、準備と練習に追われる毎日です。
特に大きな行事は、子どもたちと担任保育士が信頼関係をベースに乗り越えていくもの。
そんな時に突然退職をすれば、周囲は戸惑い対応に困ってしまうことが予想されます。
保育園で働く一員として、退職する時期は9~11月を避けた方が賢明です。
誰かに引き継ぐにしても、次の行事を間近に控えている状況では、後任の保育士も仕事がやりづらいのではないでしょうか。
できれば「ひんしゅくレベル高」の時期は避けて、その前後に退職するのが職場への配慮です。
【ひんしゅくレベル低】辞めるのに最適な時期・タイミング
一年のうちで「スケジュールに余裕のある時期」または「キリのいい時期」は、比較的ひんしゅくレベルが低いのではないでしょうか。
6月
新年度がスタートして2か月が過ぎ、6月になると園全体が落ちついてきます。
上司や同僚にもゆとりが出てくる時期なので、退職の申し出をすんなり受けとめる余裕があるかもしれません。
8月
8月は夏祭りなどの行事はありますが、スケジュール的には比較的余裕のある月です。
お盆には交替で休みをとるので、職員が心身共に落ちついている時期でもあります。
運動会の準備もまだ始まっていないので、辞めるタイミングとしては適していると思われます。
12月
大きな行事は12月で一段落するので、全てを終えてから辞めるのもキリがいいかもしれません。
年内いっぱいということで、御用納めと同時に退職する保育士もいます。
子どもたちや保護者にとっても、正月休みが「気持ちの切り替え期間」になるでしょう。
もし辞める時期を調整できそうなら、ひんしゅくレベルの低い時期を選んでください。
年度途中で辞めたい保育士が心にとめておきたいこと
結婚や介護など明らかな理由がある場合は、園長や主任がすぐに承諾してくれることが多いですね。
問題は退職理由が園や人間関係にある場合です。
不満やストレスをそのまま伝えるべきかどうかを、じっくり考えて判断する必要があるでしょう。
園に原因があって辞めたい場合
「労働条件や待遇面に不満がある」
「業務そのものに不満がある」
「保育観が合わない」
など、園に辞めたい理由がある保育士は、今よりも好条件の職場に移るために退職を希望します。
ただ、園長や主任に辞めたい理由をストレートに伝えると、「改善するから辞めないでほしい」と説得されることがあります。
園に引きとめられたことで、どうしようかと迷ってしまう保育士もいるでしょう。
新たな悩みが生まれ、決心が鈍り、結局は不本意なまま辞めずに残ってしまうこともあります。
退職を申し出る時、「辞めないでほしい」と言われる可能性を想定しておくと、その場で動揺することがなくなります。
どんなに引きとめられても、気持ちが揺らがないように決意することが大切ですね。
人間関係のストレスで辞めたい場合
保育士が、同僚や上司から陰湿な嫌がらせをされたり、仲間外れのような状態が続いていると、仕事に行くのがどんどん苦痛になり体調を崩すことがあります。
イジメにずっと耐えていたとしても、相手が心を改めなければ現状は変わりません。
自分の限界は必ずやってくるのです。
体調を崩した保育士が何よりも優先しなければならないのが自分の健康です。
こうなると「年度途中だから」とか言っていられませんね。
一刻も早く退職して、ストレスの原因から逃れることが必要です。
退職したいという意思を園に伝える時に「本当の理由」をストレートに言えるかどうかは、上司の人間性によります。
思いやりのある人格者であれば親身に聴いてくれるかもしれませんが、保育士の苦しみを理解してくれないことも予想されます。
保育士が退職理由を話す時は、言葉を慎重に選んで伝えることがポイントです。
言っていいことと、言わない方がいいことを整理してから話すことが大切なのです。
全てをありのまま吐き出し感情が高まって涙を流しても、問題の深刻さは伝わらないことが多く、上司は「なだめれば気持ちもおさまるだろう」と軽く受けとめるかもしれません。
話すことを事前に整理しておくことがポイントですね。
冷静に落ちついて伝えるようにしましょう。
年度途中の転職に不安な保育士は専門家に相談してみる
「年度途中だけど仕事を辞めたい」と悩んでいる保育士は、転職エージェントに相談してみることをオススメします。
保育士専門のコンサルタントが話を聴いてくれるだけではなく、退職理由の伝え方など具体的なアドバイスをしてくれます。
また、転職エージェントでは自分の希望にあった条件の職場を探し出してくれます。
保育士ひとりでは得ることのできない情報を沢山持っているので、転職活動の心強いパートナーになってくれそうです。
年度途中に辞めても転職を成功に導いてくれる保育士専門転職サイトおすすめ4選
保育士専門の転職サイトを使えば、保育士が日々抱えている仕事上の悩みや転職活動に関する相談に気軽に乗ってくれます。
また、転職ノウハウやコツも教えてくれるため、転職成功率が上がるメリットもあります。
ここでは、転職を考える保育士におすすめの転職サイトを4つ紹介します。
1.保育士人材バンク
保育士人材バンクは、医療・福祉系の人材ビジネスを手掛ける東証プライム上場企業、株式会社エス・エム・エスが運営する保育士専門転職サイトです。
経験豊富な保育士から新卒者まで多様な求人を取り扱っており、転職ニーズに応えることができます。
採用後も定期的なフォローアップや相談窓口があり、円滑な採用とスタッフの定着をサポート。
保育士の転職成功をスムーズに導くサービスには定評があります。
保育士人材バンク公式サイト:https://hoiku.jinzaibank.com/
2.マイナビ保育士
人材関連の大手企業であるマイナビが運営する保育士向けのサイトであり、信頼性と実績には定評があります。
それを証明するかのように保育士の認知度は4年連続で1位となっており、保育士の間でも注目度が高いことがわかります。
求人数は2万件と業界内でも有数の豊富さで、熟練のコンサルタントが面接対策や書類の書き方まで全面的にサポートしてくれます。
マイナビ保育士公式サイト:https://hoiku.mynavi.jp/
3.保育士バンク
運営会社は医療・福祉業界においてトップのシェアを誇る企業であり、厚生労働省による医療・介護・保育分野における「適正な有料職業紹介事業者の認定制度」にも認定されるなど信頼性は疑いありません。
この制度は法令遵守はもちろんのことサービスの質も認定の基準としており、本サイトにおいてはマッチングの質の高さも高い評価を得ています。
保育士バンク公式サイト:https://www.hoikushibank.com/
4.保育士ワーカー
求人数は4万件近くという業界トップクラスのサイトであり、その中でも年間で30,000人もの転職を成功させています。
担当するコンサルタントの質が高いとの評判で、公開されている求人情報だけではわからない実際の職場の雰囲気や残業の度合い、有給休暇の消化率といった裏情報も教えてもらうことができます。
全国に拠点が15カ所もあるため、どの地方でも利用しやすいという点もメリットです。
保育士ワーカー公式サイト:https://hoikushi-worker.com/
最後だからこそ園への心遣いをしよう
どんな退職理由であれ、保育士が年度途中に辞めることで周囲に迷惑をかけてしまうことは避けられません。
同僚は自分へのしわ寄せがあればあるほど、辞めていく保育士の旅立ちを温かく受けとめられないこともあります。
辞める保育士は、自分が逆の立場になって考えてみれば、同僚の気持ちを理解できるのではないでしょうか。
ただでさえ仕事が多くてきついのに、急に辞める保育士のせいでますます大変になれば、不満のひとつも言いたくなるでしょう。
同僚や上司の気持ちを察して気遣いをするのは、辞めていく者として当然のこと。
迷惑をかけることへのお詫びと感謝は必ず伝えて社会人としても最低限のマナーを守りましょう。
できれば、円満で気持ち良く保育園を去りたいものですよね。
まとめ
今回は保育士が年度途中に辞めることをテーマに、その理由やメリット・デメリット、辞めるタイミングなどを紹介しました。
最後にもう一度、年度途中で退職する際に覚えておくべきことをおさらいすると
- 保育士は年度途中で仕事を辞めても法的には全く問題ない
- 年度途中での退職は周囲からは歓迎されない
- 子どもたちにとっても良い影響はない
- 最低限のマナーは守って退職する
の4つが挙げられます。
「心身ともに限界だから今すぐにでも辞めたい」
「迷惑をかけるかもしれないけど、自分に合う園を探したい」
そんな方は、ぜひこの記事を参考に今後の身の振り方を考えてみてくださいね。