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「むし歯」ってどんな病気!?基本的な知識をわかりやすく紹介

誰でもリスクのある「むし歯」について、原因や治療方法、予防などについてをわかりやすく説明します。
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むし歯は、子どもから大人まで老若男女が関わる大変メジャーな病気です。しかし「むし歯の原因や予防について、詳しく知っていますか?」と聞かれれば、「う〜ん…?」となる方も少なくはないでしょう。お口は、生命活動の基本である“食”を行う重要な器官です。そうでなくても、「食べる事が大好き!」という方も多いはず。むし歯とは、そんな“食べる”という機能さえ危険にさらしかねない恐ろしい症状である事を忘れてはいけません。そこで今回は、原因や治療法、予防などなど、むし歯にまつわる基本的な知識をわかりやすく紹介します。

むし歯ってどんな状態のこと?

むし歯とは、口の中に残った食べ物の糖分をエサにむし歯菌が酸を作り出し、その酸で歯のカルシウムとリン酸が溶けてしまった状態。少し難しく「齲蝕(うしょく)」と呼ばれる事もある歯の症状です。軽度のものであれば痛みも感じませんが、進行すると激しい痛みが伴うことも。また、痛みを避けるために片方ばかりに偏った噛み方をするなどして骨格のバランスが崩れ、肩こりや腰痛、消化不良などの症状を引き起こす原因にもなる歯科疾患です。

歯周病と何が違うの?

むし歯によく似たお口のトラブルに「歯周病」があります。同じようなイメージを持たれがちな2つですが、これらは原因菌や症状の起こる場所、進行具合などが全く異なる病気です。以下に異なるポイントを紹介します。

むし歯

  • ミュータンス菌などによって引き起こされる
  • 歯が溶けていく病気
  • 進行が進むにつれ痛みが増していく

歯周病

  • プロフィロモナスジンジバリス菌など嫌気性菌によって引き起こされる
  • 歯茎・歯根膜・歯槽骨など、歯の周辺組織が溶けていく病気
  • 最終的に歯が抜け落ちるまで痛みを感じないケースが多い

いずれもお口の中で引き起こされる症状ですが“歯”に起こるむし歯に対して“歯の周辺組織”におこるなど、全く別の病気である事がわかりますね。

むし歯の原因とは…

むし歯の発生は、以下4つの原因が絡み合って引き起こされます。

  • むし歯菌
  • 食べ物(砂糖や炭水化物)に含まれる糖質
  • 歯の質
  • 時間の経過

私たちの口の中には数百種類もの口腔常在菌が存在しています。その中でもむし歯を引き起こす原因として最も重要な役割を担っているのが、ご存知ミュータンス菌。食べ物に含まれている糖質や唾液と絡み合ってプラークとなったミュータンス菌は、歯の表面で糖を発酵させ酸を作り出します。むし歯とは、歯を形成している成分のカリウムやリン酸がミュータンス菌によって作られた酸により溶かされてしまう事で起こります。

以下に、むし歯が発生・進行していく2つのステップをわかりやすく説明します。

プラークの発生

歯磨きのテレビコマーシャルなどでお馴染みの「プラーク(歯垢)」というキーワード。歯の表面に付着したネバネバの物体を指しているのですが、なんとなく“食べカスが残ったもの”という印象を持っている方も多いでしょう。ところが、実際にはもっとおぞましい存在です。

プラークとは、口の中に残った食べ物のカスや唾液、むし歯の原因菌が混ざり合ってできた物質。歯と歯茎の境目などに白っぽい黄色のカスが溜まった経験はありませんか?それがまさしくプラークです。少し汚い言い方をすれば「歯クソ」と呼ばれる汚れで、食べ物のカスではなく「バイ菌の塊」だと言えるでしょう。1mgのプラークの中には、約300種類(数億~10億個)もの細菌が棲みついていると言われています。

プラーク(歯垢)と歯石との違い

歯垢とよく似たものに、「歯石」というものがあります。2つの違いは、そのネーミングの通り硬さだと言えるでしょう。歯石は硬く、プラーク(歯垢)のように歯ブラシでのケアで除去することはできません。

プラークをそのままにしておくと、唾液の中のミネラルと混ざり合って硬くなり歯石になります。歯石になってしまうまでに掛かる時間はたったの2日。ほんの少しの間ケアを怠っただけで、プラークは硬く落としにくい存在に姿を変えてしまうのです。歯石は歯肉炎や歯周炎の原因にもなるので、プラークの状態のうちに除去するケアで予防してください。

「むし歯菌が作り出す酸」VS「唾液の作用で行われる再石灰化」

ミュータンス菌はプラークの中で、食べカスに含まれた糖質をもとに乳酸などの酸を作りだします。酸の量が増えてくると、口の中のpHは酸性に傾き(具体的には、プラーク中のpHが5.5を下回ると)歯の表面部分を溶かし始めてしまいます。しばらくこの状況が続くと、今度は唾液の作用によって口の中のpHがアルカリ性に戻り溶けてしまった歯の修復がスタートするのです。

私たちの口の中では、酸によって歯が溶かされる「脱灰(だっかい)」と唾液の作用で歯が修復される「再石灰化」が繰り返し行われていて、このサイクルによって常に健康な状態に保たれているのです。ところが、ミュータンス菌が作りだす酸が再石灰化を上回ってしまった時、歯の修復は追いつかずむし歯の発生・進行が始まります。むし歯とは、再石灰化が脱灰に負けた時に引き起こされる症状なのです。

自然治癒できるむし歯が存在する!?

一般的に、歯は自然治癒する事はないと言われています。ところが近年では、この常識を覆す歯のパワーが明らかになってきました。上記では「むし歯が作りだす酸に再石灰化が負けて、歯が溶けてしまう」と紹介しましたが、私たちの口の中ではこれと逆の状況(再石灰化が酸に勝つ)も起こりうるのだそうです。

歯の検査で耳にする「C1」や「C2」という言葉は、むし歯の深さを分類したものです。C(カリエス)の後に続く数字は1〜4まであり、数字が大きくなるにつれてむし歯が深く進行している事を指しています。

  • C1…歯の表面(エナメル質)まで進行したむし歯
  • C2…象牙質まで進行したむし歯
  • C3…歯髄まで進行したむし歯
  • C4…歯冠部まで進行したむし歯

C1の前にはむし歯になる一歩手前の「C0」という段階があります。症状は、歯の透明感が失われ白くなったり色素沈着などが起こります。もしもC0の状態である場合は、再石灰化がむし歯菌が作り出す酸を上回る勢いで歯の修復を行う事ができれば、むし歯が自然治癒できてしまうケースも存在するのだとか…!デンタルケアアイテムのコマーシャルやキャッチコピーで目にする「再石灰化を高める…」というフレーズには、こんな意味があるのですね。実際にクリニックでは、C0の患者さんに対して“フッ素を塗布するだけ”という治療を行うケースも珍しくありません。

ただし再石灰化によって自然治癒できるむし歯は、まだ歯に穴が空いていない状態に限ります。ひと目で「むし歯だ!」と分かるほどの症状がある場合は、自然治癒を目指さず歯科で適切な治療を受けるようにしてください。

唾液はむし歯を食い止める重要な存在!

私たちの口の中を潤わす唾液は、口にした食べ物と混ざり合って飲み込みやすくするだけでなく、含まれた消化酵素で食べ物を消化させる働きを持っています。しかし、それだけではありません。唾液には脱灰(だっかい)によって歯から溶け出てしまうカルシウムやリン酸が含まれていて、食後の酸によって脱灰したこれらミネラルで歯を補修する働きを担っているのです。

唾液は口の中の唾液腺という場所から分泌されます。唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺が左右に3対存在しているのですが、この付近は唾液による働きかけを盛んに受ける事ができるのに対して、そうでない場所(唾液腺から遠い場所)は唾液による作用が行き届きにくくむし歯リスクが高くなってしまいます。

さらに、唾液の量や持っている力は人それぞれ。再石灰化に十分な唾液が分泌されていないケースや、唾液自体にむし歯を予防するパワーが不足している場合は、口の中はむし歯になりやすい環境へと変わってしまいます。よく噛んで食事をとる事やたくさんおしゃべりをするなど、唾液がたくさん分泌される工夫を始めてみましょう。

むし歯の治療法について…

むし歯の治療は、症状の進み具合によって異なります。また、選択するクリニックによっても違ってくる事もあるでしょう。ご自身の症状や進行度に合わせて、ベストな治療法を勧めてくれる歯科医に出会いたいところですね。上記でも触れたとおり、むし歯の深さはC0〜C4で分類されていて、むし歯直前の「C0」ではフッ素を塗布して自然治癒を促す治療が行われています。患者さんにダメージの残らない優しい治療法だと言えるでしょう。

以下に、C1から各ステップで行われる治療の内容を簡単にご案内します。

C1(エナメル質まで進行したむし歯)への治療

C0で行われた自然治癒を促す治療では追いつかない程度に進行が進んでいます。とはいえ、まだ症状は軽度なので通院も2回程度で完了させる事が出来る段階。1回目の通院でむし歯部分を削り空いた穴の型を取ったら、2回目の通院で用意された詰め物を入れて完了します。

C2(象牙質まで進行したむし歯)への治療

エナメル質の奥の象牙質まで進行したむし歯です。行われる治療の内容はC1と同じものですが、象牙質は溶けやすい特徴があるのでC2以降は症状が一気に進んでしまう事が多い点と、歯髄付近まで進行が進んでいる場合は痛みを伴う事もあるので、迅速に治療を行わなければいけません。

C3(歯髄まで進行したむし歯)への治療

歯髄まで進行したむし歯で、何もしていなくても激痛が続きます。C1やC2までの治療とは異なる内容で、なおかつ5日ほどの通院が必要となるので、歯医者へ足を運ぶ事がストレスになってくるラインなのではないでしょうか。

まずはむし歯部分を削り取り、針状の器具で歯髄を取り除きます。歯髄が残ってしまうと感染症の原因にもなりうるので、レントゲンや歯髄の長さの測定でチェックしながら行います。歯髄の中に薬剤を入れて消毒を行い、最後に用意された被せ物を入れて固定します。

C4(歯冠部まで進行したむし歯)への治療

激しい痛みに襲われるむし歯はC3までで、C4では歯冠部まで溶けて歯髄も死んでしまうので痛みを感じなくなります。歯質がわずかに残っている状態なので、その量によっては被せ物の土台に出来る可能性もありますが、不可能れあれば入れ歯やブリッジ、インプラントなどで補う治療が行われます。

むし歯を予防するには…

むし歯を予防する上で重要なポイントは以下の3つです。

  • プラークを口の中に残さないこと
  • ミュータンス菌に感染しないこと
  • 糖分を摂りすぎないよう気をつけること

むし歯の発生は、食べ物に含まれているミュータンス菌や糖質、唾液が混ざり合ってできたプラークの発生がトリガーとなって引き起こされるトラブルです。したがって、プラークが口の中に残らない環境を整える事がとても重要!くわえて、プラークの元となるミュータンス菌や糖分へのアプローチも大切ですね。以下に、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。

ミュータンス菌に感染しない!

毎食後の歯磨きを欠かさない方が存在する一方で、「歯なんて適当に磨いてるだけだけど、今まで一度もむし歯になったことがない」という羨ましい人もいらっしゃいますね。むし歯の原因菌であるミュータンス菌は、すべての人の口の中にいるわけではないのです。ミュータンス菌を持っていない人は日本人の約3%ほど存在すると言われていて、彼らは特別なケアをしなくてもむし歯になることがありません。

生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、ミュータンス菌が存在していないことをご存知でしょうか?赤ちゃんはママからのキスや、スプーンの使い回し、硬いものをママが噛み砕いて与える…などの原因により、2歳前後までの間にママからミュータンス菌を移されてしまうのだとか…!逆に赤ちゃん期に周りの大人が気をつけてあげることができれば、その子は一生むし歯とは無縁に暮らしていくことができるのです。すでにミュータンス菌を保有している大人にしてみれば「イマサラそんな事を言われても…!」な情報ですが、これからママ・パパになる方には是非実践していただきたい、最も抜本的なむし歯対策だと言えるでしょう。

プラークを口の中に残さない!

プラークをクローズアップして見てみると、むし歯菌が過ごしやすい環境で気持ち良く暮らしている状態。むし歯を予防したいのであれば、プラークを口の中に残さない習慣を身につける事が重要です。食後の歯ブラシも有効ですが、じつは歯ブラシだけではすべてのプラークを除去できていません。デンタルフロスや糸ようじなどを併用して、プラークを口の中に残さないケアを行いましょう。歯と歯のスキ間に残ったプラークを100とした時、歯ブラシのみで61%しか除去できていなかったプラークがデンタルフロスを加えたケアに切り替える事で85%にまでアップするというデータも存在しています。

糖分を摂りすぎないよう気をつける!

食べ物に含まれている糖分はミュータンス菌によって酸に変えられ、その酸によってむし歯が発生・進行していまいます。糖分の取りすぎがむし歯の原因となっているのであれば、予防策にはズバリ糖分を取りすぎないこと!また、硬い食べ物や、よく噛んで食べる習慣によってプラークの数を減らす事が出来ると言われています。唾液には歯の修復(再石灰化)を行うパワーがあるので、おやつにはスルメや昆布をチョイスして、糖分の取りすぎを抑えながら唾液分泌を促してみてはいかがでしょう。

また、むし歯の原因には一人一人異なる歯の質も関わっています。例えば幼い子どもの乳歯や、生えたての永久歯などはむし歯に弱い歯として知られていますね。むし歯に負けない丈夫な歯を育むためには、栄養バランスの取れた食生活やフッ素配合の歯磨き、デンタルフロスによるプラークコントロールなどが有効です。「食生活でむし歯予防〜?」と思われるかもしれませんが、美しい歯の根底には健康が欠かせません。毎日コツコツと、むし歯に負けない歯を育てていきましょう。

食事の回数を増やさない!

上記でも紹介した通り、私たちの口の中では酸によって歯が溶かされる「脱灰(だっかい)」と唾液の作用で歯が修復される「再石灰化」が繰り返し行われています。食事によって酸性に偏った口内の環境も、唾液の働きかけによっておよそ30分〜1時間ほどの間に健やかな状態(中性)へと戻る事ができるのです。しかし、食事のたびにpHが酸性へ傾いてしまう事は避けられません。食事の回数が多くなれば、それだけ歯は酸性の状態へ晒される機会が増え、むし歯リスクはアップするでしょう。

寝る前の食事やおやつは禁止!

寝ている間は唾液の量が減少してしまいます。寝る前に食事をしたのに、歯を磨かず寝てしまう…。そんな生活スタイルは、寝ている間じゅう歯を危険にさらしてしまう行為だとも言えるでしょう。上記(“食事の回数を増やさない!”)にも共通して言えることですが、食事は1日3食、決められた時間にメリハリをつけて摂ることをオススメします。

キシリトールガムって何がいいの?

「甘いものを我慢できない!」という場合は、キシリトールという選択肢があります。キシリトールとは、果物や野菜に含まれている天然の甘味料。菌によって発酵されることがないので口の中で酸にならず、さらに歯の再石灰化(酸の中和)を促す作用を持っている点や、ガムで摂取することで唾液の分泌が促進されるなどのメリットから、むし歯を予防することができると言われています。フィンランドのユリビエスカ保健所による研究では、1日10gのキシリトール摂取を2年間続ける事で、むし歯の予防効果は4年間持続する事が分かっています。したがって、摂取を中断しても効果が続くという事!たかがガム…と侮らず、甘いものを口にしたい時の打開策としてうまく活用してみてはいかがでしょうか?

フッ素を使ったむし歯の予防について…

フッ素とは、歯を強化してくれるミネラルのひとつ。歯を溶かす酸への抵抗力をアップさせ再石灰化を高めるので、むし歯に負けない健康的な状態へと導いてくれる作用を持っています。

フッ素をむし歯予防に使用する方法としては、⑴濃度の高いフッ素を年に数回ほど歯に塗布する方法と、⑵フッ素入りの歯磨きを使用する方法などがあります。前者⑴の方法は一般的に歯科医院で行われますが、後者⑵は自宅で毎日行う事が可能です。歯磨き粉に配合されたフッ素は濃度が低いので⑴と比較して高いむし歯予防効果は期待できないイメージを持たれるかもしれませんが、少量のフッ素で毎日行う方が再石灰化の進行を進める事ができると言われています。

また、気をつけておきたいのは「フッ素を塗布してもむし歯リスクはゼロにはならない」というポイントです。歯磨きでのケア方法や食事のスタイルなどによってはフッ素の効果だけでは再石灰化の促進が間に合わず、むし歯になってしまう事もありうる事を十分理解しましょう。フッ素だけに頼らない予防を心がけるようにして下さい。

むし歯は“食”生活習慣病!?

私たちの口の中には、本来数多くの細菌が存在しています。しかし、細菌がいたからといって必ずむし歯になってしまうわけではありません。食事によって脱灰が起こってしまっても、再石灰化によって元どおりになろうとする働きが備わっているのです。問題は、細菌が増えやすい状況を長く継続してしまうスタイルや、頻繁に酸性に傾いた環境にさらしてしまう習慣だと言えるでしょう。食事のあり方やケアの方法を見直して、ぜひ正しいむし歯予防をスタートさせてみてはいかがでしょうか。

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