自己破産の手続きを開始すると「破産者」となり債務者とは違う扱いになります。
「破産の手続きをしてから復権までどれくらいかかるの?」
「自己破産をすると、働くことができない仕事があるって本当?」
破産者の職業によっては、一時的に仕事ができなくなってしまいます。あくまで一時的なもので、復権すれば元の生活に戻れるようになります。
ここでは、自己破産の復権について解説し、復権のパターンや要する期間、その後の生活にどんな影響を与えるのか紹介していきます。
自己破産の申立てを検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
自己破産すると、様々な法律の制限を受ける
借金の返済が難しくなったときの最終手段の1つが「自己破産」です。
自己破産をして借金を帳消しにするには、破産の申立て(破産手続き開始書の提出)をします。無事、破産手続きが正式にスタートすれば、財産をお金に変えて債権者に分配されます。
- 破産手続きとは、借金の返済ができない代わりに財産を換金して処分すること
- 破産手続きが開始すると、給料の差押えなどの強制執行ができなくなる
しかし、破産手続きが開始すると、債務者は「破産者」となり、破産者は以下の法的な制限を受けることになります。
- 移住制限
- 通信の秘密制限
- 資格制限(一部の仕事ができなくなる)
…etc
「移住制限」は、破産者が自由に引越しをすることができなくなります。ただし、裁判所の許可が下りれば居住地を変えることができるのです。
「通信の秘密制限」は、破産者宛ての郵便物は、いったん破産管財人が受け取ります。破産管財人は郵便物の内容をチェックするのです。
「資格制限」とは、破産者である間は、一部の仕事につくことができなくなる制限です。
- 弁護士
- 公認会計士
- 宅地建物取引主業者(宅建)
- 質屋
- 古物商
- 警備員
…etc
このような法的な制限以外にも、自己破産をすると国が毎日発刊している「官報」に個人情報が記載されます。
復権とは?
このような破産手続きで生じる制限は、永遠のものではありません。破産手続きが終了すると、「居住制限」「通信の秘密制限」は解除されます。しかし、全ての制限が解除されるわけではありません。
自己破産は「破産手続き」と「免責手続き」の2つのプロセスがあり、同時並行で進められます。「破産手続き」は所有財産を処分することであって、借金の返済義務を無くすわけではないのです。従って、借金をゼロにするには「免責手続き」で許可をもらう必要があります。
復権には2パターンある
復権には「当然復権」「裁判による復権」の2通りあります。ほとんどのケースが「当然復権」ですが、ここでは、それぞれの特徴を解説していきます。
当然復権
破産手続き・免責手続きが終了して、免責許可が確定したら自動的に復権します。
しかし、自己破産の手続きをすれば、100%免責が認められるわけではありません。
- 財産を意図的に隠していた
- 浪費癖やギャンブルなどで作った借金
などが発覚すると、免責許可が認められないことがあるので、念の為覚えておきましょう。
また、資格制限に該当する仕事をしている人は、免責許可の確定までどれくらいの時間がかかるのか気になりますよね?
「当然復権」で、免責許可が認められなかったとしても破産手続きから10年経過すると、自動的に復権します。
裁判に復権を申し立てる
裁判所に「復権を認めてほしい」と申し立てる復権のことです。こちらは「当然復権」で免責許可が下りなかった場合の例外的なケースです。
免責許可が確定しなければ、破産者であり「資格制限」は有効のままです。しかし、破産者が残った借金を全て返済できたので、破産者から一般人に戻してほしいと裁判に申し立てることができるのです。
もちろん、何もしなくても破産手続きから10年経てば復権します。しかし、それよりも早く借金の問題が解決したときなどに利用する制度といえるでしょう。
復権の手続き・確認方法はない
自己破産の復権のほとんどが「当然復権」です。つまり、破産手続きを開始したら自動的に復権が決まるということです。復権をするために特別な手続きは必要なく、復権したことを確認する方法もありません。
あえて確認する方法があるとすれば、身分証明書になります。
復権することで得られる効果
破産手続きがスタートすると、勝手に引越しをおしてはいけないなどの法的な制限を受けた破産者になります。免責許可が決定し「復権」すれば破産者から一般人に戻ることになるわけですが、復権によってどのような効果があるのでしょうか?
ここでは、復権によってもたらされる効果について紹介します。
資格制限が解除される!
破産手続きが終了すると、移住制限や通信の秘密制限などが解除されましたが、資格制限という職業上の制限は残ったままでした。つまり、破産者のままだと一定の職業につくことができないわけです。
しかし、免責許可が確定して復権すると、職業上の制限がなくなります。
つまり、弁護士、公認会計士、宅建業者、警備業の方で破産者になってしまった人も復権すれば、法的には仕事をすることができるようになります。
信用情報機関の金融事故情報は削除されない
復権すれば、法律上、破産者ではなく一般人になります。しかし、法律上の制限がなくなってもなお、信用情報機関に記録された自己破産したという事故情報は消えません。
一生、事故情報が残るわけではありません。
カードローンやクレジットカードを提供する金融機関は、審査をするとき必ず信用情報機関にアクセスして申込者の信用をチェックします。
事故情報があれば審査に通過することはありませんので、自己情報が削除されるまでの間は、クレジットを利用することも新規にカードを作ることもできなくなります。
復権後、破産者名簿に記録が残るのか?
破産者名簿とは、役所で管理されている自己破産者のリストのことです。しかし、自己破産をしたら必ずしも名簿にのるわけではありません。
9割以上の人が免責決定されるので、破産者名簿に記載される人は、自己破産者の中でもごく一部です。
また、破産者名簿は非公開なので、第三者に見られてしまう心配はありません。
復権後のカードローンの申込の注意点
自己破産で借金がゼロになり、復権で制限を解除できれば元の生活に戻れます。しかし、法的に回復したというだけで、破産した事実は信用情報機関にデータとして残ります。
ここでは、復権後のカードローンの申込みの注意点を解説します。
自己破産後は最低5年はカードローンやクレカは作れないと考えておこう
復権してもすぐにカードローンやクレジットカードは作れません。自己破産をすると、個人信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に事故記録として残ります。
事故情報は永遠に残るわけではありません。
- クレジットカード系のCIC、消費者金融系のJICCの登録期間は5年
- 銀行系の全銀業は10年消えない。
申し込む前に、信用情報を開示して事故情報の有無を確認しよう
破産記録がいつ削除されるか正確には分かりません。事故情報が信用情報から消えないことには、どんな審査に申し込んでも落ちます。
しかし、自分の信用情報を確認する方法があるのです。
クレヒスがないことが審査通過を妨げる原因になりうる
自己破産の記録が消えれば、事故情報のない良い信用情報と考えてしまいがちです。しかし、ローンやクレジットの利用履歴が全くない状態は、審査にプラスに作用しない可能性があるのです。
クレジットヒストリーがないまま30代後半になると、なかなかクレジットカードやローンの審査に通らないことが知られています。
信用情報に問題がないのに審査に落ちる場合は、「自社ブラック」の可能性あり
信用情報から破産記録が消えているのに、審査に落ちてしまうことがあります。特に、過去に利用したことのあるカードローン会社の場合に可能性が高くなります。
利用者の信用を判断するのに、個人信用情報機関に登録されたデータだけを参照するわけではありません。会社独自で保有しているブラックリストもあるのです。
ローンを返済できなかった人に再び融資をするのは業者にとってリスクがあります。迷惑をかけた人ととして、記録を残しておくことは普通のことでしょう。
従って、自己破産の原因になったキャッシングの会社には申込をしないほうが無難です。また、その会社が保証会社として入っている銀行系のカードローンも難しいでしょう。
申込みを同時にたくさんしてはいけない
個人信用情報から事故の記録が消えていればいいかというと、他にも考えるべきことがあります。
カードローンの申込に関する情報(申込日、商品名、本人特定情報など)は、信用情報機関に記録され6ヶ月は消えません。
申込みブラックは「お金に相当困っているのか?」「他の会社でたくさん断られている条件の悪い利用者なのか?」といったマイナスの印象を審査担当者に与えてしまうのです。良いイメージをもつ担当者はいないでしょう。
破産から明けて申し込む際には、慎重にひとつずつ申し込んだほうが無難です。
まとめ
自己破産の復権と破産後の影響について解説しました。
自己破産は借金を帳消しにする一方、債務者は「破産者」となり法的な制限を受けることになります。その制限を消失して一般人に戻ることを「復権」といいました。
- 復権には「当然復権」と「裁判に申し立てる復権」の2通り
- 破産者の約9割が復権のための特別な手続きが必要のない「当然復権」
- 復権すれば、仕事をする法律上の制限はなくなる
- 信用情報機関の自己破産データは、復権しても削除されず5~10年残る
破産した事故情報が残る以上、カードローンやクレジットの審査に通過することはありません。自己破産後にローンやカードを作るならば、信用情報から事故情報が削除された後にしましょう。