住宅ローンには変動金利と固定金利があります。
市場金利がまだ低いままの状況において、変動金利を選びますと、当初は低金利です。ですが今後の経済状況によって急激に金利が上昇する可能性もあります。
その点、固定金利であれば、当初高めに見えても、完済まで金利が変わりませんから、安心の度合が高いものです。
低金利の固定金利住宅ローン、常に人気の高い「フラット35」についてご案内します。
目次
フラット35とは?
かつて住宅金融公庫という組織がありました。フラット35は、その住宅金融公庫が扱っていた、一般住宅融資の流れを汲んでいます。
すなわち、当初から公的な性質が高いものですので、各金融機関が独自に開発するローン商品とは、この点で根本的な違いがあります。現在でも、半官半民のローンです。
住宅金融公庫は、公庫廃止の流れを受けて現在では独立行政法人の住宅金融支援機構となっています。この行政系機関が、民間の銀行等、金融機関と共同で提供するのがフラット35です。
銀行と国が提携した住宅ローン商品
フラット35が人気なのは、長期固定金利でありながら低金利を実現している点です。この金利は、半年前の(10年もの)国債の金利と連動して決まります。
投資家から「住宅金融支援機構債券」により資金を集めているため国債よりもわずかに金利が高く、リスクもやや高い債券となっていますが、経営を考慮する必要が薄く、そのため民間の金融機関にはないシンプルな仕組みとなっています。
フラット35の融資条件
審査時間 | 2~3週間程度 |
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年率 | 団体信用生命保険加入の場合、1.360%~2.010% |
遅延利率 | 14.5% |
限度額 | 8.000万円 |
申込条件 | 80歳までに完済 申込時70歳未満で日本国籍または永住許可者、特別永住者 ※親子リレー返済の場合は、70歳以上も可 |
保証人・保証料 | 不要 |
返済方法 | 元利均等毎月払いまたは元金均等毎月払い ※ボーナス払い(借入額の40%以内で1万円単位)併用可 |
フラット35を扱う金融機関の広告を見ますと、金利が業界最低水準というような内容が目につきますが、実際は一緒です。多くの金融機関において、最低金利を採用しているからです。
フラット35については、金融機関は代理店のような役割しか果たしていません。ローン契約が成立すれば、直ちに金融機関はローン債権を住宅金融支援機構に売却できますので、金利で儲ける必要がありません。ただし、事務手数料は銀行の収益になりますので、この点多少の差が出ます。
「フラット35」では、団体信用生命保険つきのプランが基本となっています。加入者に死亡・後遺障害等の事象が発生すると、その後の返済が不要となりますので、家族に負債を残したくないと考える人なら加入するとよいでしょう。
フラット35のメリット
金利を追求しますと、どうしても変動金利の商品になることが多いものです。繰上げ返済を多用するつもりなら、当初の金利が低い変動金利も悪くない方法です。
ですが返済が長引くと、市場の変化で金利が上昇するなど不確定要素が増えてきます。
その点、固定金利は安心です。変動金利よりは金利が高くても、固定ですから市場が急変動しても気になりません。まして、フラット35は低金利です。さらに保証料不要、繰上返済手数料不要というのも大事なメリットです。
住宅ローンを申し込む人が、最初に検討するのも当然でしょう。
勤続年数が短くても借入可能
住宅ローンに限りませんが、ローンを組む際には、貸す側は借り手の返済能力を確認します。
勤続年数の短い人は、通常はローンを組めません。どんなローンでもできれば勤続1年程度は欲しいところですが、高い買い物となる住宅ローンの場合はさらに長く、2~3年ほど勤続要件が求められます。
この点、国策に基づくフラット35の場合は大きく違っています。勤続1年未満の人であっても、会社の発行する給与証明書があれば、審査を受け付けてもらえます。
長く勤められそうな会社に就職したのを機に、家を持ちたいという人には朗報です。
産休中・育休中の借入も可能
通常の住宅ローンではまず考えられないことに、フラット35なら、産前産後休業や、育児休業、介護休業中の人でも申込みできます。
収入の継続性については必ず確認されます。勤務先から、休業期間、給付があればその支給期間、給与の金額等の証明された書類の提出が必要となります。
人生の節目にはさまざまなことがあります。出産・育児・介護など避けては通れないことで、だから休業制度が設けられています。国としても、制度だけでなく生活を支える義務があるということでしょう。民間のローンのように、「現に働いていないからダメ」と判断するようなことはないわけです。
フラット35のデメリット
フラット35は国策に伴う低金利ローンですから、多くの人が最初に検討する商品でしょう。
それでも、民間金融機関の商品とは違うさまざまな特徴がありますので、それがデメリットとして働く場合もあります。念のため気をつけましょう。
物件価値も審査対象になる
一般的にローンというものは、個人の収入に基づく返済能力を重視されます。この点、フラット35は違う特色を持っていますのでご注意ください。
住宅ローンである以上、民間金融機関のローンも、住宅そのものの価値についても審査はします。ですが、フラット35の場合そこに重きは置いていないわけです。
フラット35の審査は民間の商品と真逆で、住宅価値のほうが重視されます。だからこそ、在籍期間の短い人や、休業中の人でも審査に通るのです。この性質から、将来の価値に疑問のある物件の場合は、審査通過が難しくなるという結果にもなります。
全額分をまかなうことはできない
フラット35の特徴の一つですが、住宅購入資金すべてについてのローンは組めません。物件価格の最大9割までしかローンが組めません。
ですから、頭金が必要となっています。住宅価格の1割を自己資金で用意しなければいけません。
この点、1割分を別のローン、あるいは9割分と一体化したローンで貸し出してくれる金融機関もあります。当然ですが、フラット35の通常の金利よりは高くなります。
審査に時間がかかる
フラット35は、仮審査と本審査にそれぞれ時間を要します。
まず仮審査ですが、これは申し込んだ銀行等の金融機関がおこないます。明らかに審査に通らない人を足切りするものです。それほどの時間は掛かりませんが、当日審査結果が出るものもあれば、最大3営業日程度掛かるものもあります。
次に本審査です。これは住宅金融支援機構が行い、少々時間を要します。おおむね、7日から15日ほどです。混雑具合によるものか、合計で1か月程度要したというケースもあるようです。
急いで結果が欲しい場合には使いづらいこともあるでしょう。
フラット35を取り扱っている金融機関
フラット35を扱っている金融機関は多数あります。都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、労働金庫では、扱っている金融機関のほうが多数派です。信用組合、農協等になりますと、扱っている期間が少数派になります。
信託銀行では、「三井住友信託銀行」一行です。
ネット銀行では、「イオン銀行」「楽天銀行」「住信SBIネット銀行」の三行が扱っています。都市銀行では、三菱UFJ銀行が扱っていません(取扱廃止)のでお気を付けください。
ARUHI
ARUHI(アルヒ)は住宅ローン専門の金融機関です。フラット35の取り扱い実績では7年連続トップです。
フラット35を積極的に販売しており、他の銀行のように自社ローンのほうを勧めるようなことはありません。店舗は全国にあり、相談も受けられます。
住宅金融支援機構がおこなう審査については時間が掛かるのはやむを得ませんが、金融機関がおこなう審査については、ARUHIは迅速です。長くても4営業日程度で判明します。
フラット35の場合、通常住宅価格の9割が借入れ上限となっていますが、ARUHIでは、9割を超えるローンも用意しています。金利は1.60%、団体信用生命保険加入の場合1.80%と高くなります。
審査時間 | 最短4営業日(住宅金融支援機構の審査は別) |
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年率 | 1.16%(団信ありの場合1.36%) |
遅延利率 | 年14.5% |
限度額 | 8.000万円 |
申込条件 | 80歳までに完済 申込時70歳未満で日本国籍または永住許可者、特別永住者 ※親子リレー返済の場合は、70歳以上も可 |
保証人・保証料 | 不要 |
返済方法 | 元利均等返済方式または元金均等返済方式 ※ボーナス月増額(融資金額の40%以内で1万円単位)返済可 |
楽天銀行
楽天銀行はネット銀行です。楽天グループを愛用している方には便利でしょう。
楽天銀行を返済口座にしますと、事務手数料が1.08%と、一般的な金額の半分というのは重要なポイントです。
申込みはネットで完結しますので便利ですが、一方で、対面で相談できる窓口はありません。ただし住宅ローン専用ダイヤルは、土日も対応しています。楽天銀行でも、住宅価格の9割を超えるローンを用意しています。金利は1.60%、団体信用生命保険加入の場合1.80%です。
審査時間 | 8~11日(住宅金融支援機構の審査は別) |
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年率 | 1.16%(団信ありの場合1.36%) |
遅延利率 | 年14.5% |
限度額 | 8.000万円 |
申込条件 | 80歳までに完済 申込時70歳未満で日本国籍または永住許可者、特別永住者 ※親子リレー返済の場合は、70歳以上も可 |
保証人・保証料 | 不要 |
返済方法 | 元利均等返済方式または元金均等返済方式 ※ボーナス月増額(融資金額の40%以内で1万円単位)返済可 |
イオン銀行
イオン銀行は新しいタイプの銀行です。住宅ローンでも業績を上げつつあります。ネットでの利用が便利ですが、全国のイオン店舗に窓口も設けられていますので、対面相談も可能です。
イオンで買い物をよくする人にお勧めできるメリットは、契約者限定特典「イオンセレクトクラブ」がついていることです。イオングループでの買い物が、常に5%オフとなります。
イオン銀行の場合も、住宅価格の90%を超えてローンを組めます。イオンプラスという名称が付いており、金利は年1.80%(団信加入)または、手数料定額のBタイプで2.00%です。
団体信用生命保険は、健康上の問題などの場合を除き、基本的に全員加入です。
審査時間 | 3~7日(住宅金融支援機構の審査は別) |
---|---|
年率 | 1.36%(団信加入)/ 手数料定額のBタイプの場合1.56% |
遅延利率 | 年14.5% |
限度額 | 8.000万円 |
申込条件 | 80歳までに完済 申込時70歳未満で日本国籍または永住許可者、特別永住者 ※親子リレー返済の場合は、70歳以上も可 |
保証人・保証料 | 不要 |
返済方法 | 元利均等返済方式または元金均等返済方式 ※ボーナス月増額(融資金額の40%以内で1万円単位)返済可 |
「長期固定金利」はメリットにもデメリットにもなる
フラット35に限らず固定金利の住宅ローンのメリットですが、それがもっとも現れるのが、将来の市場金利が上がり、住宅ローンの金利が大幅に高くなったときです。返済期間の長いローンにおいては、こうなる可能性は高いです。
ただ、現在の低金利がずっと続いた場合は、変動金利のほうが得をします。すなわち、将来の市場の金利次第で、メリットにもデメリットにも転ぶのです。
とはいえ、日本の金融市場の歴史においても、現在の低金利は異常なものだとされていますので、メリットになる可能性のほうが高そうではあります。
まとめ
固定金利なのに低金利のフラット35について見てきました。
新規だけでなく、借り換えにも利用できます。上記では触れませんでしたが、返済期間が15~20年の場合は、さらに金利が低くなります(フラット20)。
借換えの場合は対象外ですが、省エネルギー性・耐震性の高い住宅取得の際に、さらに低金利(0.3%減)で借りられる「フラット35S」などバリエーションも豊富です。
団体信用生命保険加入の場合、思ったほど金利が低くならないという意見もありますが、それなら団信に加入せずに、ご自身で生命保険に加入したほうがいいという見解も見られます。
ぜひ上手に利用しましょう。