子どもが善悪を判断できるためには叱ることも必要です。
しかし、叱ると聞くと、あまりいいイメージは浮かんでこないですよね。もちろん、必要なときには大人として叱るのですが、基本的に叱られたい子どもはいませんし、叱りたい保育士もいないと思います。
現状子どもの現場では、子どもを叱ることはよくあることです。叱る指導はどうしてするのでしょうか。その狙いとは、主に子どもが活動に真剣に、緊張感をもって取り組むためにあります。危険なことや善悪を知らせるために叱ることもあります。
理想としては子どもを叱らずに保育を進めていきたいですが、現実はそうもなかなかいきません。子どものやりたいことをしたいとき、個人としては良くても、安全上の問題でさせてあげられないということは多く、保育士の悩むところではないでしょうか。
今回は叱ることにスポットを当てて、叱る場面と叱る時のコツ、悪い叱り方とその理由、叱らないために覚えておきたい技を解説していきます。
どんな時に叱るの?叱る場面と叱るときの言葉
明らかに危険な時
カモ「ああ!危ない!すぐに降りるカモ!!」
危ないことをする子どもの気持ちとは、危険だと分かっていないことです。それか、分かっていても好奇心が勝ってしまうときがほとんどです。危ないことをすることが「かっこいい、こんなこともできるんだ」と思っている子どももいます。総じて共通することは、その後どうなってしまうか、先の危険を感じられてないということです。
そういったとき、まずは子どもに気づかせるために毅然とした態度でしっかり目を見て叱りましょう。
そして、何故危険かを目を見て話します。
カモ「大けがをして病院へいって、大変なことになるカモ。そうなったらお母さんも○○くんも、先生もみんな悲しいカモ。」
こう言い聞かせて、子どもが「大変なことになるところだった」と危険が分かるように指導していきましょう。
真剣に取り組むべきときにふざけてしまうとき
Aちゃん「ねーこれが○○でさ・・・うふふふふ」
こんなときも同じです。まず、子どもに気づかせるために、毅然とした態度でしっかり目をみて話します。
そして、理由を説明します。
叱り方は基本的にこの流れになります。保育士が静かにするべきときに大きな声で子どもを注意しては、それは本末転倒になってしまいます。大きな声で伝えるか、静かな声で諭すように伝えるかは場面次第で変えるようにしましょう。
悪い叱り方!「~してはいけない」 「はやく~して」 「きちんと~して」「またやってる」
「してはいけません!」
これはただ単に禁止しているだけで、何をしてよいのか、何でだめなのかを説明していないので、子どもには伝わりません。してよくない理由やどうすればいいのか解決策を加える必要があります。
「いそいで!はやくして!」
これは子どもを急かしているだけで、子どもからすれば、大人の都合になんで合わせないといけないの?という気持ちになります。
「なんでできてないの?きちんとして!」
きちんとってどうすればいいのさ・・・という子どもの声が聞こえてきそうです。この言葉からは、子どもからすれば見放されたような気持ちにもなってしまいます。できて当たり前でしょう?というメッセージに聞こえ、子どもの挑戦したい気持ちを止めてしまいます。
「またやってる、前もいったでしょ!」
これは大人の感情をただぶつけているだけで、子どもにとっては逆効果です。前もいったよねと言われて、ますます面白がって子どもは調子にのってしまうときもあります。
子どもによっては、言われることを恐れて、失敗や悪いことをしても言わないようになってしまうこともあります。そして、大きな事故や失敗をして、とりかえしのつかないことにもなりかねません。
これらは悪い叱り方の代表です。しかし、ついつい使ってしまうのですよね。共通することは、全て命令口調だということと、指示が曖昧だということです。
子どもはそれぞれの未発達ながらの世界観や思いをもって行動します。それをただよくないからと大人の論理で制限されると、成長にはつながりません。
もしも、大人が「やりなさい!」と言ってその場できちんとできていたとしても、それはただ従っているだけで、その怖い先生がいなくなったらできなくなるといったことは良くあることです。
もし、使ってしまったようなときは、どんな場面だったか?どんな状態だったか?考えてみるようにしましょう。そうすると、良い叱り方に変えられるようになっていきます。
悪い叱り方をしてしまっても、それに気づくことが一番大事なんですね。
できるだけ叱らないために
そもそも、叱る場面を減らしていくことが、保育士にとっては大事です。子どもを叱らないためには、子どもに教える技をたくさんもっておくことと、子どもがどれほど理解できるか、やれるかを把握しておくことです。今回はそのうちの基本となる考え方を紹介します。
望みすぎない
子どもは発達によって、保育士の指示が理解しにくいときもあります。
例えば、まだ身体の感覚が未発達な子どもは、色々ぶつかってみたり、高いところから飛んでみたり、身体に刺激を自分で与えていきます。十分に刺激が感じられて初めて、力の調節を学んでいくのです。
じっとできない子どもに、「じっとしなさい」と言ってませんか?もしかすると、じっとできないどうしようもない原因があるかもしれません。
望みすぎないためには、子どもの問題だと思う行動を常に「なんでするんだろう?」と考えてみることです。笑ってしまうような子どもなりの可愛い理由も見えてくるときもありますよ。
見たらすぐわかる!指導の仕方を
想像してみてください。あなたは初めての場所で、大きな駅にいます。分かれ道は5つも6つもあり、どっちにいけばいいのか分かりません。しかし、駅には「渋谷→」のような看板があります。これを辿っていけるとなると、とても安心ではないでしょうか。
子どもにとっては尚更です。大人に言葉だけで言われても、きちっと想像できないことも多くあります。
子どもが見てすぐわかる指導を用意しましょう。
例えば、トイレのスリッパををばらばらに脱いでしまうなら、足マークをつけることも良いでしょうし、約束を伝えるときは、絵に描いておくと子どもたちにとって分かりやすいでしょう。
分かるから出来る、出来たら楽しい!を目的にすると、叱ることも減っていきます。
子どもにさせることは、「優しくたくさん」できることを基本にその子にとって難しいことををさせても、「今度したい」とは思えません。
かといって、簡単すぎるのも・・・すぐに飽きてしまいます。ちょうどいいとこ考えるのって、難しいですよね。
子どもたちにとってちょうど良い難易度と量。
プロならこだわりたいことですが、これにピッタリ合わせることは本当に難しいのです。知識があっても、経験が必ず必要になってきます。すぐに読めたら現場の先生は苦労していません。
そのため、まずはこう考えましょう。途中で難しくて諦めてしまうかもしれないものと、簡単だけど確実にたくさんできるもの、どっちをするべきか?
さて、どっちが子どもたちにとって良いでしょうか?もちろん後者ですよね。簡単でできたから、次もう少し難しいことをやってみるほうが、子どもたちの気持ちとしては楽ですし、保育の流れとしても自然で心地よいものです。
極端な話ですが、折り紙ひとつとっても、4歳児でも折り紙に触れたことがない子どもたちは、まず折る動作を覚えるところから始める必要があります。「半分になったね」「三角につくると家みたい!」こんな小さな世界を大切に、やさしくたくさん無理のない保育で、ガミガミ叱る必要のない、保育を目指してみてくださいね。