保育園では、子どもたちが健やかに成長するために学ぶのが、基本的な生活習慣です。そのなかのひとつに「食生活」があります。好き嫌いをしない、バランスよく食べる、よく噛んで食べるなど、子どものうちから正しい食事の食べ方を身につけておくことは大切です。
ここ数年、食事についての教育、「食育」が注目を集めています。子どものうちから健全な食生活を学ぶことは、心身の健やかな成長には欠かせません。家庭が中心となる食育ですが、保育園での生活で、それをサポートしてほしいという声が高まってきました。
子どもたちが健全な食生活をするための支援を身につけることは、保育士としてのキャリアアップを考えるうえで重要です。それを持っていることを認定する資格に、「食育実践プランナー」という資格があります。
今回は、保育現場のなかで食育を行う場面で役立つ「食育実践プランナー」を紹介します。
食育実践プランナーってどういう資格なの?
食育実践プランナーは、子どもたちに食育を行う専門家です。子どもたちは好き嫌いがあったり、小食気味だったり、逆に食べ過ぎがちだったりすることがあります。健康的な生活の基盤となる食生活を送れるように、保護者や保育士が食育を行っていきます。
毎日の食事のなかで、正しい食べ方やマナー、食べ物がどのようにできるのか、どんな栄養があるのかなどを子どもたちに教えることが大切です。食育実践プランナーは、子どもたちや保護者に対して、食育を行うために必要となる専門的な知識や技術を学びます。
平成17年7月に施行された「食育基本法」では、3つの柱のなかに「子ども・子育て支援(食育の推進について)」が盛り込まれました。生きるために基本となる「食」を学ぶことで、健康的な心や体を育み、健全な食生活を実践できるようにすることが求められています。
子どもの食の好みを見ていくと、甘いものが好きだったり、野菜や魚などが苦手だったりすることがあります。食育実践プランナーは、バランスのいい食事になるようなメニューづくりを行い、好き嫌いを改善しながら、健康的な生活の基盤となるような食事を支援します。
食育実践プランナーは国家資格ではありません。一般社団法人「日本味育協会」が認定する民間資格です。通信教育を活用して学び、試験に合格すると資格認定を受けられます。試験は通信教育の添削課題なので、スクーリングすることなく資格を取得できます。
食育実践プランナーには、上級資格として「マスターコース」と「プロフェッショナルコース」があります。上級資格取得のために、マスターコースでは1日間、プロフェッショナルコースでは3日間のスクーリングが必要になります。
食育実践プランナーと食生活アドバイザーの違いは?
食育実践プランナーと似たような資格に、食生活アドバイザーがあります。食育と食生活、どちらも「食のプロフェッショナル」という印象ですが、2つの資格にはどのような違いがあるのでしょうか。
食育実践プランナー
食育実践プランナーは、主に家庭のように生活に密着した食育の実践を目指します。したがってメニュー構成や食の知識にくわえ、子どもに正しい食事の食べ方やマナー、生活に密着した幅広い食育を教えるスキルを学んでいきます。
食生活アドバイザー
一方で、食生活アドバイザーは、食に関する業界で仕事をしていくうえで、必要になる知識を学んでいきます。食にかんする法律、衛生管理の方法、食材等の流通の仕組み、税金の納め方など、家庭というよりは社会人として食にかんする業界で仕事をする力がつきます。
子どもの食に寄り添い、保護者からの食にかんする相談にのることが多い保育士は、家庭的な食育実践プランナーが適しています。一見、似た印象のある2つの資格ですが、食育についてのスキルアップを目指すのであれば、食育実践プランナーの取得を目指しましょう。
食育実践プランナーが保育現場で役立つ場面は?
食育実践プランナーの取得をとおして子どもたちに実践的な食育を行うことができるため、自らに保育スキルの幅を大きく広げることができます。
保育士として保育を学ぶだけでは気付けない視点で、子どもたちの健康的な食生活に寄り添った保育ができるようになります。
食事マナーやバランスの良い食生活への改善
たとえば正しい食事の食べ方やマナーとして、食べる前には「いただきます」、食べたあとには「ごちそうさま」と挨拶をすることを教えます。これによって、食べ物をつくってくれた人たちへの感謝の気持ちをもつという意識づくりをしていきます。
好き嫌いがあったり、少食傾向にあったりする子どもには、食事が楽しいと思ってもらえるような支援が重要です。食事のときに保育士が率先して「おいしい!」と言いながら食事することで、友達や保育士と同じものを食べる喜びや楽しさを共有できるようになります。
また子どものうちから「噛む」習慣をつけることは大切です。豆腐のように、柔らかい食材では、噛まずに飲んでしまう子どもが少なくありません。そこで食育実践プランナーは、「お豆腐を噛むと、どんな味がするかな?」などと声掛けをしていきます。
子どもたちは柔らかい食材でも噛む習慣がつくだけでなく、食材を味わうことを学んでいきます。食材を味わう習慣ができると、薄味でも食材の味を楽しむことができるので、塩辛いものや脂っこいものに偏りがちな食生活を、バランスのいい食生活にすることができます。
好き嫌いを減らせる、食の伝統を伝えることができる
さらに子どもたちが感じた食材の味から、どのような食材がつかわれているのか、どのようにつくられているのかと、話を広げて教えることができます。食に対する興味をもつことができるため、子どもたちは自然と好き嫌いがなくなり、楽しんで食事をするようになります。
こうした正しい食事の食べ方やマナーを教えることにくわえて、子どもたちが食事を楽しめるようなメニューづくりも行います。専門的な知識を活かして、食べやすさや栄養バランス、アレルギーなどを考慮したメニューにしていきます。
ほかには保育園では節分や桃の節句など、伝統的な行事を行うことがあります。そのなかには、昔から親しまれてきた伝統的なメニューもあります。食育実践プランナーは、子どもたちに伝統的なメニューや食生活を教えるという役割も担っています。
食育実践プランナーは保育現場以外でも役立つの?
食育実践プランナーは、健全な食生活を育てる専門家ですから、保育現場以外にも活躍の場があります。食にかんする業界での活躍にくわえて、最近では食事に支援が必要となる医療や福祉分野での活躍が増えてきました。
料理教室
もっとも活躍しているのが料理教室の講師です。子どもたちをはじめ、家族の健康を守る母親などに専門的な知識や調理方法を教えます。毎日の献立づくりに頭を悩ませる母親は多いですが、その負担を減らしつつ家族の健康を守る食事をつくることも食育のひとつです。
医療現場
医療現場では、食事制限が求められる人たちに対する食事の支援を行います。食材に含まれる成分などの知識を教えたり、食べる量や食べ方を教えたりします。食生活を改善することで病気が快復したリ、進行を抑えたりすることができます。
介護現場
介護現場でも、食育実践プランナーが高齢者や障がい者の食事の支援をしています。とくに、噛む力や飲み込む力が弱っている人たちが、おいしく食事をとれるように、メニューや調理方法を工夫していきます。
ダイエット業界
最近ではダイエット業界でも食育実践プランナーの活躍が期待されるようになりました。偏った食生活は、肥満を引き起こすことがあります。噛むことを意識することで食事の量を減らしたり、間食をしない方法を教えたりすることで、食事面からダイエットをサポートします。
食育実践プランナーを取得するためには?
食育実践プランナーの資格を取得するためには、一般社団法人日本味育協会が認定している通信講座を受講する必要があります。合格率は約70%といわれており、平均合格率約20%の保育士と比較しても、取得しやすい資格といえます。
生涯学習のユーキャンの通信講座では、全部で6回の添削課題があります。第1~5回の添削課題を終えたあと、第6回の添削課題が資格試験を兼ねるため、自宅受験で資格取得が可能です。合格基準点以上をとることで、認定を受けることができます。
講座を受講するために必要な資格はなく、基本的に誰でも受講することができます。保育士や幼稚園教諭など、子どもとかかわる職業の方だけでなく、医療や介護に携わる方、自らの家庭で健康的な食生活を送りたい方なども受講するケースが増えてきました。
食育実践プランナー認定講座の問い合わせ先は?
気になる方、取得を検討している方に向けて、食育実践プランナーを認定している日本味育協会が認定している通信講座の問い合わせ先を紹介します。
「生涯学習のユーキャン」では、食育実践プランナーを取得できます。日本味育協会の宮川代表が講師をしています。学習につかうテキストは、資格取得後も毎日の食生活や食育に活用することができるのも特徴です。
食育実践プランナーを取得して、子どもたちと「健全な食生活」を送ろう
食育実践プランナーは、子どもたちに健全な食生活を食育するスペシャリストです。農林水産省をはじめ、保育や介護などの福祉業界を中心に、食育への高い期待が集まっています。子どもたちへの食育にかんして、食育実践プランナーは中心的な役割を担うことでしょう。
食材の育ち方やつくり方、味や栄養など、子どもたちが食に興味をもつ入り口はたくさんあるのです。食育実践プランナーは、子どもたちの食に対する興味を引き出し、健康的な食生活の基盤となる食事について、自ら学ぼうとする力を育てます。
さらに子どもたちが正しい食事の食べ方やマナーを学ぶために必要な支援を行います。専門的な知識を活かした声かけやサポートで、自然に食事する時間が楽しくなります。子どもたちがおいしそうに食事する姿は、きっと保育士の大きなやりがいになるでしょう。
資格取得にかかる期間が約6か月なので、保育園の年間スケジュールを考慮して学習スケジュールを立てるのがポイントです。高い合格率とこの資格を活かせる場面の多さを考えると、保育士としてのスキルアップを考えているのであれば、ぜひ取得しておきたい資格といえます。