今やITは現代社会に必要不可欠な存在であり、さらにモノのインターネットと呼ばれるloTが2016年に黎明期を迎え、IT化の加速が予想されています。
技術の急激な進歩により、IT業界では慢性的な人手不足が続いています。今後はさらに新しい技術開発や設備投資によるIT業界における人手不足の深刻化が危惧されているのです。
セキュリティー対策を担当するエンジニアが、2020年の東京オリンピックの時点で4万人不足するという説もあります。IT業界においては、エンジニアの育成が急務であり、これについては国家レベルでの取り組みが必要だと考えられるでしょう。
中途採用に積極的なIT業界は、これまでにない空前の売り手市場となっています。
IT業界ではどのような人材が求められているのでしょうか?
企業が中途採用者に求めるのは、「即戦力」としての能力です。新卒者を採用して教育する余裕のない中小企業では、即戦力として転職者を積極的に採用しています。十分なテクニカルスキルとヒューマンスキルを有する人材であれば、IT企業での転職に成功する可能性は高いといえるでしょう。ではIT業界では、具体的にはどのような人材や職種が求められているのでしょうか。
IT企業が人材に求めるものは?
IT業界では、即戦力としての能力が求められます。特定分野に関するスキルや知識はもちろんですが、さらに幅広い知見を有する人材が必要とされているのです。IT業界では他業種(医療・金融など)のクライアント企業や、さらに社外のスタッフと共同でプロジェクトを進めていくことになります。様々な業界における知識や経験は、IT業界においても強みとなります。
転職者に対しては特にコミュニケーション能力やリーダーシップといった「ヒューマンスキル」が求められます。ただし、この能力は「テクニカルスキル」とは異なり、資格などでアピールすることが困難です。まずは様々なプロジェクトに積極的に参加し、転職の際にアピールできる十分な実績を積み上げておくといいでしょう。
ヒューマンスキルは「要件定義につながる力」です。これはITアーキテクト・webディレクター・インフラ構築・システム開発など、いずれの業務を担当する場合にも重要だといえます。「挨拶ができる」「会話ができる」ことはあたり前であり、さらにシステムの開発を依頼したクライアント企業や、自分が構築したシステムを実際に利用することになるユーザーとのコミュニケーション能力が必要とされるのです。
実際に、クライアント企業やユーザーと打ち合わせをすると、無茶な要望や思い付きを提案されることがあります。これらを体系化されたものに整理してまとめる能力が、要件定義となります。さらに、まとめ上げたものをクライアント企業やユーザーに説明して承認してもらうことが必要であり、要件を固めたという合意の成立が欠かせません。
コミュニケーション能力を高めましょう!
コミュニケーションにおける会話はキャッチボールに例えられますが、ITエンジニアにはキャッチボールが苦手な人が多いようです。ITエンジニアには理論的な考え方をする人が多く、ロジカルな説明が優先して話が長くなりがちで、回答を後回しにして余計な説明を続けたり、聞かれていないことを長々と説明することがあります。
難しいIT用語が多いシステム開発における打ち合わせでは、説明はより簡潔であることが必要とされます。相手のITへの理解度、相手の置かれた状況や立場、説明に残された時間などの各種の条件をしっかりと把握して、適切なタイミングで適切な回答を行うことを心がけてください。
コミュニケーション能力は、日常会話においても高めることができます。普段から自分の意思を簡潔に伝えることや、相手の要望をしっかりとくみ取ることを考えるようにしましょう。
リスクマネジメントへの関心が高まっています!
近年においては、情報システムにおけるリスクマネジメントや、セキュリティへの関心が高まっています。これは、官公庁や大企業において、情報漏えい事件が頻発していることがきっかけとなっているようです。
さらに、マイナンバー制度が2016年に開始されたことも理由のひとつだといえるでしょう。従業員の個人情報については厳重な管理が必要とされ、さらに、情報漏洩事故が発生した場合には、企業の責任が問われることになります。安全管理措置やリスクマネジメント・セキュリティ対策は現代企業における最重要事項となっています。
ITエンジニアには、リスクマネジメントやセキュリティに関するスキルが必要とされます。実際に、ITリスクマネジメント業務経験者や、情報セキュリティスペシャリストの有資格者を募集する求人が増加しているのです。ネットワークエンジニアのスキルはITリスクマネジメントにも役立ちますので、今後のキャリアアップを考える人にとって有力な選択肢のひとつだといえるでしょう。
売り手市場であっても転職は簡単ではありません!
現在のIT業界は、慢性的な人手不足が続く売り手市場であり、このような状況は転職を希望する人にとって大きなチャンスだといえるでしょう。ただし、IT業界は商品のライフサイクルが短く、トレンドの浮き沈みが激しい業界であるため、転職者にとっても厳しい業界になります。
IT業界はベンチャー企業が群雄割拠して一獲千金を目指す混沌とした状況であり、様々なIT企業が厳しい競争を繰り広げています。たとえ、大手企業であっても、余分な人材を雇う余裕はありません。使えない人材は最初から採用しない方がマシだと考えられているのです。
売り手市場だからと安易に転職活動を始めると、その後厳しい状況に直面して戸惑うことになります。ITエンジニアの転職については、くれぐれも慎重に検討しましょう。次は、IT業界への転職で陥りがちな、様々な失敗例をご紹介します。
年齢を重ねると転職のハードルは高くなります!
新卒で企業に入社した直後に転職を希望する人は、高い意識を持って自身のキャリア構築に取り組む人か、あるいはどこに行ってもうまくいかない人のいずれかになります。IT企業では、若くて将来性のある前者のような人材を積極的に採用しています。
ただし、入社直後は仕事を覚えることに必死で、さらにその後は様々なプロジェクトを任せられるため、転職を検討する余裕がない人が多いようです。転職を検討する人の年齢は様々ですが、やはり30代以降が中心になります。30代になると社内における自らの立場や先行きなどが見えてくるため、「このままでよいのだろうか?」と考えて転職を検討するのでしょう。
ただし、30代の転職希望者には、それまで在籍した企業のやり方が染みついているため、使いづらいと考える企業が多いようです。20代の転職希望者と比較をすると、伸びしろや柔軟性や適応力に欠けると判断されるため、転職活動のハードルが高くなり採用は難しくなります。
社内での評価が転職でも評価されるとは限りません!
30代になると、在籍する企業の独自のカラーに染まっていることが多くなります。どの企業においても通用する普遍的なスキルを身に付けていれば、転職では有利に評価されますが、実際にはその企業内においてしか通用しないスキルであることが多いようです。このことが、企業の担当者に30代の採用を躊躇させる大きな原因となっています。
社内で役職に就き一定の評価を得ている人は、自分の評価が社外でも通用すると考えがちになります。ただし、社内での評価はあくまでも社内のものであり、転職で評価されるとは限らないのです。特定の企業に長期間在籍した人の場合、実際に転職活動に取り組んでみると自分の評価の低さに驚くかもしれません。
プロ野球のFA移籍選手や助っ人外国人選手には常に結果が求められ、結果が出せなければ解雇されてしまうことになります。転職者は企業から「即戦力」としての働きが期待され、それ相応の実力を発揮することが求められるのです。
30代の人が転職を成功させるためには?
自分のキャリアを見直して再確認しましょう!
まずは、自分のキャリアを見直して、しっかりと再確認しましょう。面接では担当者に自分のキャリアを説明することが必要になります。説明に曖昧な部分や不明確な部分があれば、採用を検討する以前に選考の対象外とされてしまうでしょう。
面接でキャリアをアピールするためには、具体的な実績や数字を提示するのが有効です。自身のキャリアの棚卸を行って、これまでに何をしてきたのか、自分は何ができるのかを明確にしましょう。
自分のスキルを客観的に評価しましょう!
ITエンジニアとして特定の企業に長く勤務していると、知らず知らずのうちに「井の中の蛙」になってしまう可能性があります。転職市場における自分の価値を知るためには、自身のスキルを客観的に評価することが必要です。
エンジニア同士の勉強会や交流会があれば、積極的に参加して自分のスキルを確認してみましょう。また自分のスキルに合致する求人の状況を、転職サイトを活用して調べてみるのも良いかもしれません。
転職を希望する理由を明確にしましょう!
企業では、大きな金額と労力を使って採用活動を行います。転職希望者に対して、スキルや経験はもちろんですが、さらに「すぐに辞めてしまわないか」どうかが厳しくチェックされるのです。
自社で長期間働いてくれるのか・すぐに転職をしてしまわないかどうかを見極めるために、面接では転職の理由を質問されることになります。なぜ転職をしたいのかを突き詰めて考えて、担当者に明確に説明できるように準備しましょう。転職を希望する理由は、採用を大きく左右する重要なポイントになります。
空前の売り手市場の現在は、転職を成功させる大きなチャンスです!
実際にIT業界で転職をした人のデータによると、転職で年収がアップした人は3割程度、前職と同程度の年収の人が5割程度となっています。全体の8割程度の人は年収をダウンさせることなく、転職に成功しているのです。
IT業界は現在、空前の売り手市場であり、転職を希望する人にとっては大きなチャンスだといえるでしょう。また転職市場の情報を自ら調べて検討することは、現在の勤務先における自分の価値を高めるためにも、また近い将来に転職を成功させるためにも、いずれの場合にも役立つはずです。
IT業界で働く人は、今後のキャリアプランをじっくりと考えて、将来の選択肢のひとつとして転職を検討してみてください。