ITエンジニアというと仕事が大変そうなイメージがあります。連日のように帰宅が深夜とか休日出勤とかの話も聞きますし、遊ぶ暇が無いので給料を使う暇も無い、ひどいところでは時間外手当がろくに出ないなどのケースも耳にします。
ITエンジニアの仕事に興味があり転職を検討しているという人でも、こうしたIT業界の苛酷な噂を聞くと二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。
SEやプログラマーは本当にそんなに辛い労働環境なのか?本当に家に何日も帰れないのか?それはどこのIT企業も同じなのか?ここでは、こういった疑問に対して回答をまとめてみました。
結局のところはケースバイケースであり、悪い噂は耳に付きやすいという側面もあります。いたずらに噂に左右されることなくキャリアを積めるよう転職活動の参考にしてみてください。
IT業界の3Kとは?
IT業界は3Kなどと言われています。一昔前は3Kと言えば「きつい・汚い・危険」のことで土木作業などについて言われていましたが、IT業界の新3Kは「きつい、厳しい、帰れない」の3つです(諸説あります)。
ITエンジニアは辛いと言われますが、それは「帰れない」の言葉にあるように長時間労働の問題が大きいです。長時間労働が続くと心身共に疲弊して仕事をきつく感じます。その上納期が厳しいので時間外に作業して間に合わせるしか無くなるのです。
なぜITエンジニアの労働環境は苛酷なのか?
ITエンジニアの労働環境が苛酷となる理由としては、「人の替えが効かない」「人を増やせば早くできるものではない」「担当者が時間をかければ達成できる」という性質のものだからです。
人の替えが効かない
ITエンジニアの仕事は「この人でないとできない」という性質が高い仕事です。これを属人性が高いなどと表現します。
ITエンジニアの仕事はモノ作りやシステムの運用などですが、これは完全にマニュアル化できない部分があります。想定される範囲内での保守ならマニュアル化できますが、想定外のトラブルに当たったり、また顧客の要件にそってシステムを新しく作るときなどマニュアルよりも各人のスキルが物を言う世界です。
また作業の分担が難しく、今日はAさんがここまでやったので明日はBさんがその続きをやる、という形はとれないことが多いです。仕事を引き継ぐには膨大な情報をやり取りせねばならず、伝達ミスのリスクもあります。それなら分かる人が全部やってしまえとなることが多いのです。そのため、1人の作業量が増えて長時間労働につながってしまいます。
人を増やせば早くできるものではない
前述の属人性の高さとも関連しますが、ITの仕事は人を増やせば早く終わるものではありません。よく言われるのが「妊婦を2人連れてきても妊娠期間が半分になるわけではない」という例えで、分担できる作業ではないものは人を増やしたところで早くなりません。
また分担可能な仕事であっても、IT関連の作業は決まった仕事を繰り返すものではなく、各人の仕事をすり合わせ調整しながら進める必要があります。そのため人が増えるとこのすり合わせが難しくなり、より多くのコミュニケーションが必要となり、かえって手間が増えることが多いのです。そのため人数を増やしてもそれほどは生産性が上がらず、むしろ調整が上手くいかずに悪化するケースもありえます。
無理に人員を増やして生産性が悪化してしまうと、できる人への負担は増えるばかりという悪循環に陥り、ますます労働時間が長くなったり職場の雰囲気が悪くなることもあります。
担当者が時間をかければ達成できる
ITエンジニアの仕事の多くは、時間をかければ達成するものです。客先での作業などはこのタイミングで無ければ進められないというケースもありますが、多くは自分のペースに合わせて作業時間を費やせば完成します。
逆に言えば達成させるためにどんどん自分の時間を注ぎ込みがちになるのが、ITエンジニアの仕事です。プログラムを完成させるにはひたすらもくもくとプログラミング作業を続ければ良く、残業や休日でも可能なので、時間外労働が発生する構造になります。
特に最近はITの発展により時間や場所の制約が少なくなっているので、かえっていつでもどこでも作業をしなければならない状況に陥りやすいのです。
状況はIT企業によっても異なる
前述のようにITエンジニアの労働環境は苛酷になりやすい構造です。ですが、これは企業によっても異なりケースバイケースと言えます。
IT業界というのは比較的新しい分野であり、仕事の効率化を進める余地がまだまだあります。ベンチャー企業などノウハウが無いまま少人数で仕事をまわして無理をするところもあれば、逆に効率化を進めて残業を少なくしているところもあります。これがまた効率化を進められるスキルのある人に頼るという側面もあるのですが、とにかく企業によっては必ずしも3Kではありません。
大手IT企業の場合ノウハウを蓄積しやすいので、労働環境の改善に取り組んでいるところも多いです。もちろんこれも大手ならどこも同じなわけではありません。
転職の際には労働環境改善への対策もチェック!
IT企業の中にはフレックスタイムを導入していたり、また在宅やリモートでの仕事を認めていたり、個人がそれぞれの事情に合わせた働き方ができるよう制度を整えているところもあります。転職を希望する際には求人情報でこうしたところを確認しましょう。
ITというと最先端の分野で何でもコンピュータがやってくれるようなイメージがありますが、実際にIT業界を支えているのは人です。人材を大切にしている企業は労働環境の改善にも力を入れていますし、残念ながら人材が使い捨てのようになっている企業もあります。人材を大切にする企業文化のところは3Kなどではなく働きやすい職場になっています。
転職の際にはこうした働きやすい職場であるかを確認しておかないと、苛酷な職場で後悔することにもなりかねません。転職エージェントはある程度は内情を知っているので、相談してみるのも良いでしょう。仕事がきついかどうかといった漠然とした質問よりも、残業を減らすような仕組みが構築されているか?などのように企業として対策がおこなわれているかをチェックするのがポイントです。