社会人としての研修や職能開発などの場面で、「コーチング」という方法が活用されるようになってきました。「聴く、質問する、承認する」ことによって行うコーチングを、子育てにも活用しようという動きが活発化しています。
子どもには、多くの可能性や能力が眠っています。しかし、子ども自身が自ら伸ばそうとしなければ、いつの間にか失われてしまうことも少なくありません。それを引き出して伸ばすためには、子ども目線で寄り添い、サポートしていくことが大切です。
子どもと向き合いながら能力を引き出せるように、専門的な知識や技術を身につけることは、保育士としてのキャリアアップを考えるうえでも重要です。それを持っていることを認定する資格に、「チャイルドコーチング」という資格があります。
今回は、保育現場のなかでも子どもが自ら成長する力を育てたいときに役立つ「チャイルドマコーチング」を紹介します。
チャイルドコーチングってどういう資格なの?
チャイルドコーチングは、子どもがもっている潜在的な能力を引き出し、その成長を促す仕事です。社会人の人材育成などで行われているコーチングの方法を基本として、さらに育児にかんする知識、共感を重視したカウンセリングスキルが必要になります。
保育士もチャイルドコーチングと同じように子どもとかかわります。ただ保護者から預かった子どもを保育する保育士に対して、チャイルドコーチングは子どもの潜在的な能力を引き出すのが目的であり、大きな違いともいえます。
チャイルドコーチングの活動内容
実際に保育現場を見ていると、活発な子どももいれば、寡黙な子どももいます。好奇心旺盛な子どももいれば、無気力で無関心な子どももいます。チャイルドコーチングは、子ども一人ひとりの性格を理解し、そのコミュニケーションに活かすことができます。
とくにストレスやトラブルを抱えている子どもに接する場面で、チャイルドコーチングとしての専門的な知識を活かすことができます。その子のストレスやトラブルの原因を突き止め、効果的なアプローチができるようになります。
またスポーツや習い事を熱心に取り組んでいる子どもにも、チャイルドコーチングは効果的です。コーチングの基本である「聴く、質問する、承認する」という接し方が、子どもがもっている力を引き出し、自ら成長する力をつけるのに役立ちます。
チャイルドコーチングのスキルは、保育園に通う子どもに限らず、乳幼児から高校生までを対象にしています。保育士だけでなく、学習塾やスポーツスクールの講師などでも活かせる資格です。
日本では、チャイルドコーチングは国家資格ではありません。民間団体が認定する講座を受講し、試験に合格すると「認定資格」として取得することができます。
チャイルドコーチングが保育現場で役立つ場面は?
チャイルドコーチングの取得をとおして、子どもが潜在的にもっている能力を引き出す知識や技術を学び、自らの保育スキルの幅を大きく広げることができます。「保育する」ことを目的とする保育士では気付けない視点で、子どもたちと接することができるようになります。
保育現場でのかかわりでは、子どもが自分の力で学びたい、成長したいという気持ちを引き出すことができます。積極的に自分のことを話せるような聴き方をすることで、子どもが安心して保育士とかかわろうとします。
さらに子どもが自ら取り組んでいることを認めることで、子どもはしっかりとした自己肯定感をもつことができます。これらを積み重ねていくことで、子どもの能力を引き出せる保育となります。
ただ比較的新しい認定資格ということもあり、チャイルドコーチングが浸透していないことも少なくありません。保育士の就職や転職のときに、履歴書に書くことができる資格ではありますが、応募する園によっては大きなアピールとならないこともあるようです。
チャイルドコーチングは保育現場以外でも役立つの?
チャイルドコーチングは、子どもがもっている潜在的な能力を引き出す専門家ですから、保育現場以外にも活躍の場があります。むしろ「保育する」ことが目的である保育園でない方が、チャイルドコーチングとしての知識や技術を活かせるかもしれません。
チャイルドコーチングの資格だけで活動するケースでは、子どもたちに直接コーチングすることができます。さらに、チャイルドコーチングの講師になることができます。専門的に学びたい人に教えたり、ワークショップなどを開いたりします。
多くのケースでは、他の資格や就いている職業と組み合わせて活動します。たとえば、子ども向けの習い事やスポーツスクールなどの講師としてチャイルドコーチングのスキルを活用します。技術面にくわえて、メンタル面もケアしながらの指導ができます。
学習塾の講師も、チャイルドコーチングのスキルを活かせる仕事のひとつです。なかなか学習意欲の湧かない子どもに対して、その原因を探り、適切な指導を行うことができます。未就学児から高校生までが対象の資格なので、幅広い年代の子どもたちに活かせるでしょう。
院内保育や福祉施設などにいる子どもたちは、見えないストレスを抱えていることがあります。こういったケースでも、「聴く、質問する、承認する」スキルに長けたチャイルドコーチングのスキルが大きな力になります。
チャイルドコーチングを取得するためには?
チャイルドコーチングの資格を取得するためには、それを認定する団体の講座を受講し、試験に合格する必要があります。合格率は公表されていませんが、自宅受験も可能なことから、平均合格率約20%の保育士と比較しても、取得しやすい資格といえます。
講座の受講方法
講座は自宅などでの勉強を中心に行う「通信」が中心で、スクーリングもあります。受講期間は団体によって異なりますが、通信では1~4か月の自宅学習で試験を受けることができます。また、講座を受講するために必要な資格は、基本的に誰でも受講することができます。
試験内容
試験内容には、各団体の講座で学んだことが出題されます。保育士試験のように、一般的な出題傾向を示すことができません。ただ、コーチングの基本である「聴く、質問する、承認する」こと、育児やカウンセリングの知識などが出題されるようです。
試験対策のコツ
試験対策のコツとしては、通信教育がメインとなるので、途中で勉強がおろそかにならないように、勉強する習慣をキープしましょう。テキストを丸暗記するのではなく、各講座のカリキュラムに従って、なぜそうなるのかを理解するように勉強を進めましょう。
試験では筆記試験またはweb試験が行われます。また筆記試験以外の試験(実技試験など)は行われません。
チャイルドコーチング認定団体の問い合わせ先は?
気になる方、取得を検討している方に向けて、チャイルドコーチングを認定している主な団体の問い合わせ先を紹介します。
日本能力開発推進協会
日本能力開発推進協会では、日本能力開発推進協会認定チャイルドコーチングアドバイザー資格を取得できます。あらかじめ認定講座を受講し、すべてのカリキュラムを修了すると受験資格が得られます。認定講座についても、あわせて紹介します。
受講期間 約4か月
受講費用 36,000円(税別、別途受験料として税込5,600円)
受講条件 特になし
formie
formieでは、formie認定チャイルドコーチングマイスター資格を取得できます。Web教材で学べるので、スマートフォンやタブレットを活用して、スキマ時間を学習に充てられるのが特徴的です。
受講期間 約1か月
受講費用 36,000円(税込、試験料込)
受講条件 特になし
チャイルドコーチングを取得して、子どもの能力を引き出す保育を
チャイルドコーチングは、子どもの潜在的な能力を引き出すスペシャリストです。子どもを日常的なストレスから解放し、安心感や自己肯定感を与えます。比較的新しい認定資格なので、認知度はそれほど高くありませんが、保育関係者を中心に注目を集めています。
保育士がチャイルドコーチングを取得することで、子どもが自ら成長する力を身につけられるようなかかわり方ができるようになります。保育技術の幅を広げられるため、保育士や幼稚園教諭のスキルアップに向いている資格ともいえます。また乳幼児から高校生までと幅広い年代の子どもたちに活用できるため、保育以外でも習い事や学習塾などでも活かせる資格です。
資格取得にかかる期間が短くて約1か月、長くても半年程度であり、比較的短期間で取得できます。また、保育士として働きながら、通信教育を活用して取得することもできます。高い合格率とこの資格を活かせる場面の多さを考えると、取得を検討したい資格のひとつです。