保育士の一年は行事の連続です。
日常の業務だけでも忙しいのに、行事の準備があると毎日がドタバタ!
慌ただしく、あっという間に過ぎていくのが保育士の一年なのかもしれません。
多くの保育園では、ほとんどの年間行事が共通しています。
行事の内容によって保育士の業務は左右され、スケジュールの忙しさにも大きく影響します。
今回は「保育士の年間スケジュール」を、園で行う行事と共にご紹介します。
保育士が常に忙しい3つの理由
毎日忙しく、業務がハードと言われる仕事はたくさんありますが、そうしたものの代表格として保育士を思い浮かべる人も多いでしょう。
では保育士は具体的にどういった点で忙しい仕事なのでしょうか。その内容について紹介します。
1.保育以外にも幅広い仕事をこなさなければならない
保育士と言えば子供のお世話がメインの仕事と考える人は多いでしょう。
それも間違いではありませんが、実は保育士には他にも幅広くたくさんの仕事があります。
たとえば保育日誌や連絡帳の作成といった事務作業から、職員会議への参加や保護者への対応、必要な壁紙の製作など雑務は多く、さらにそれらを日中の保育業務の中で空いた時間を使ってこなさなければなりません。
もしも勤務時間中に終わらせることができなければ残業をしたり、家に持ち帰って作業を続けることも必要になります。
研修を受講しなければならない場合もある
一口に保育士と言っても、その内訳には様々な役職や資格が存在しています。
一例として平成29年度から
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダー
といった中堅役職が新設され、それぞれ役職に見合った高待遇も受けられるようになっていますが、この役職に就くためには各自治体で行われている「キャリアアップ研修」というものを受講することが必須となります。
こうした講習は最低でも15時間以上は必要で、そのために日数も3日程度確保する必要があります。
忙しい日々の業務の中でこうした時間も作らなければならないのです。
2.一年を通して行事やイベントごとが多い
後述する「保育園の4月から3月まで年間スケジュールを紹介」で詳しく解説しますが、各保育施設は学校と同じように一年単位でスケジュールが組まれており、一般的な入園式・卒園式などの他にも、運動会や遠足、お泊り保育など様々な行事があります。
季節ごとにも
- 七夕
- プール開き
- ハロウィン
- クリスマス会
- お正月
- 節分・豆まき
- ひな祭り
など多くのイベントを行うのが通例で、一か月に複数のイベントが必ずあるという状況です。
日常の業務に加えてそれらの準備や後片付け、衣装作りなども必要となるので、一年の間で息抜きをできる月は無いと言っても過言ではありません。
3.保育士不足で一人ひとりの負担が大きい
保育士の現場は常に人手不足に悩まされているのが現状です。
さらには社会的にも共働き世帯が増加の傾向にあり、保育施設の需要は高まり続けています。
こうした状況を受け、国では保育士の配置基準を定めて労働環境改善に努めています。
保育園は『児童福祉法』という法律によって、子供の年齢ごとに以下の表のような基準で必要な保育士の数が定められています。
年齢 | 保育所人員配置基準 |
---|---|
0歳児 | 3人につき保育士1人 |
1歳、2歳児 | 6人につき保育士1人 |
3歳児 | 20人につき保育士1人 |
4歳児以上 | 30人につき1人 |
上表の数字はあくまで最低のラインであり、仮に基準を満たしていても現場では実質的な人手不足となっているのが現状です。
そのため足りない部分は現在の人員でカバーすることになり、それだけ一人当たりの負担は大きくなっているのです。
保育園の4月から3月まで年間スケジュールを紹介
保育園の行事とは主にどんなものがあるのでしょうか。
また、行事にあたって保育士の仕事とは?
園によって時期や内容は違いますが、多くの保育園で行っている行事を月ごとにご紹介します。
4月
新入園児の泣き声があちこちから聞こえてきます。
初めての入園が不安で、親子共に離れがたい朝が続きます。
子どもはもちろん保護者の対応にも気を配る毎日です。
■入園式
保護者や在園児も出席し入園したことを祝います。
在園児は歌や出し物を披露!
手作りのプレゼントを贈ることもあります。
新入園児は入園式の翌日から慣らし保育があるので、完全に慣れるまでは落ち着かない日々が続きます。
5月
気温も上がってきて、晴れの日には外遊びをすることが多くなってきます。
保育士は、園庭の清掃・点検、おもちゃや砂場の洗浄・消毒など、子どもに危険のないよう安全&衛生管理には特に気を配ります。
■保育参観日
新入園児の保護者にとっては、子どもの様子が見られるドキドキの一日。
保育士は保護者に声をかけて、子どもの様子をできるだけ多く伝えます。
親子ゲームやふれあい遊び、親子で行う製作など計画を立てて、子どもも親も楽しい時間を過ごせるよう演出します。
■親子遠足
保護者と一緒に大型バスでレッツゴー!
子どもがのびのびと走り回れる高原や大きな公園では、レクリエーションやミニ運動会、簡単な親子ダンスなどを計画します。
園によっては、動物園や水族館、牧場などに出かける場合もあります。
保育士はレクリエーションの準備や、雨天の時の対策などを万全にしておきます。
6月
行事の日以外にも、天気が良ければ近くの公園などにどんどん出かけます。
出発から園に帰ってくるまで安全管理を怠らず、体調不良や疲れはないか子どもたちの様子を気にかけます。
■歯科検診
「医師に診てもらうだけ」ではないのが保育園。
保育士は、歯科検診をきっかけに「健康」を意識した保育を取り入れます。
大きいクラスの子どもは虫歯について学び、歯の磨き方を教わります。
絵本を読んだり、絵を描くこともあります。
■園外保育
バスに乗って、野山や大きな公園などに出かけます。
お弁当を持って行くのでそれぞれの荷物の点検や、帰りは忘れ物がないようにチェック!
体の調子を崩している子どものケアも行います。
7月
保育園も夏本番!
水遊びやプール遊びは毎日のように行います。
保育士は衛生管理を忘れずに行い、周辺に危険物が落ちていないかこまめに点検!
また、とびひや水いぼなどプールを通した感染症を防ぐ配慮もしています。
■七夕会・夕涼み会
行事としての七夕をどんなふうに計画するかは保育園しだい。
七夕会と夕涼み会を一緒に行う園もありますね。
保護者も集まって七夕の夜空を眺めたり、笹の葉を持ってみんなで歌を歌ったり。
金魚すくいやクジ、綿あめなど、縁日のような七夕会もありますね。
行事の内容によっては、保育士が準備するものが増えていきます。
■お泊まり会
年長児にとって一大イベントのお泊まり会!
宿泊先は保育園によって違うので、必要なものを前もって運ぶこともあります。
担任保育士は1~2か月前から準備がスタート!
スケジュールを決めたり、保育に使うものをそろえたり。
「お泊まり会の導入」としての保育も計画し、保護者への説明会も行います。
お泊まり会終了後は写真や動画を整理して、保護者に楽しかった思い出を披露します。
8月
園生活だけではなく、地域のお祭りやイベントで夜も大忙し!
家族と出かけることも多い季節、子どもにとっては楽しい毎日が続きます。
お盆の時期にはほとんどの子どもが休みますが、保育園は開園しています。
職員は交替で出勤し、少数の子どもの保育を行います。
■夏祭り
地域の祭りに参加する園、縁日のような催しや盆踊りを行う園、オリジナルの山車を作って運行する園など、保育園の夏祭りは沢山のパターンがあり、どれもみんな楽しいですね。
当日まで保育士は準備やリハーサルで忙しく、本番はあっという間にやってきます。
9月
空にとんぼが飛ぶようになると、保育園もそろそろ秋へとシフトチェンジ!
行事もますます多くなってきます。
■敬老会
高齢者との交流会を行います。
歌やお遊戯を披露したり、高齢者と共に遊んだりします。
保育者は「人見知りをして緊張している子ども」を把握し、寄り添うことで安心できるようにします。
前日までに、歌やお遊戯の練習はもちろん高齢者へのプレゼント作りも行います。
■いもほり遠足
バスで畑に出かけて、じゃがいもを収穫します。
掘ったじゃがいもは園で調理してみんなで食べたり、お土産に持ち帰ります。
保育士も一緒にじゃがいも掘りを手伝い、消極的な子どもには介助するようにします。
じゃがいも以外の野菜やくだものを収穫する園もあり、時期も地域によって違います。
10月
いよいよ運動会シーズン!
お遊戯やリレーの練習が始まります。
練習ばかりで子どものストレスがたまらないよう一日のスケジュールを配慮します。
■運動会
園庭または学校などのグラウンドで行います。
当日は保護者も参加して楽しい一日に!
プログラムの計画から、衣装や小道具の準備、お遊戯や競技の練習など、保育士は1か月ほど前から運動会モード全開!
準備に追われる毎日が続きます。
■ハロウィン
子どもと保護者そして保育士も仮装をして、ハロウィンパーティーを楽しみます。
園内の飾りつけやお菓子の袋詰め、ゲームの計画など前日までに準備します。
11月
11月から12月にかけてビッグイベントが続きます!
保育士にとっては準備に忙しい毎日ですが、行事はバラエティー豊かで楽しいものばかり!
ひとつひとつを経験して、子どもも保育士も大きく成長する時期です。
■園外保育
秋の野山や果樹園などに出かけ、紅葉を楽しんだり、りんご狩りや栗ひろいなどをします。
保育士は後日、楽しい思い出を活かした絵画や製作を計画し表現活動につなげます。
■保育参観
参観の後には、保護者が気になっていることなど育児相談も行います。
保育士は子どもの成長がわかる作品などを準備しておきます。
■収穫感謝祭
家庭にある野菜を集め、収穫感謝の会を行います。
保育士はどのようなイベントにするか事前に話し合い準備をしておきます。
園によっては子どもが調理をして、カレーパーティーをすることも!
12月
発表会とクリスマス会を合わせて「クリスマス発表会」を行う園もあります。
園で行うか、大きなホールで行うか、それによって保育士の負担も違ってきます。
■発表会
お遊戯、劇、オペレッタ、歌、器楽合奏などを園児が披露します。
保育士は衣装などの準備を行い、毎日のように練習を行います。
■クリスマス会
歌を歌ったりゲームを楽しみます。
クリスマス会の最後には必ずサンタクロースが登場して、子どもたちもテンションアップ!
クリスマスの飾りつけやプレゼントの袋詰めなども保育士が行います。
■もちつき
もちつきの会場設営を行い、食器などの準備をしておきます。
一人ずつもちをつく場面や、もちを丸める作業では、子どもの様子を見ながら必要に応じて保育士が介助するようにします。
1月
雪の降る地域では、園庭に出てソリ滑りや雪遊びをします。
保育士は子どもが遊びやすいように雪かきをしたり、かまくら等を作ることもあります。
■作品展
一年の成長が良く分かるようにPOPなどを作って飾りつけ、作品をひきたてるようにします。
作品展ではテーマを設けて、みんなでひとつの大きな作品を作ることも!
保育士のセンス次第で保育園はミュージアムのようになりますね。
2月
この時期はバレンタインデーもあるので、子ども同士でチョコのやりとりをすることもあります。
園によって考え方も違いますが、トラブルがないよう保育士は配慮が必要です。
■豆まき会
保育者または他の職員が「鬼」に扮装して、子どもたちを追いかけます。
子どもたちは手に持った豆をぶつけて「鬼」を追い払います。
鬼の被りものや豆入れは、製作として事前に保育に取り入れます。
「鬼」が怖くて泣き出す子どもがいるので、保育士が寄り添ってフォローします。
■園外保育
寒い地域ではスケートやソリ遠足に出かけることもあります。
スケート場やスキー場では、怪我や事故がないよう隅々まで気を配ります。
子どもたちの服装についても、前もって保護者に注意事項を伝えておきます。
3月
保育園は、幼稚園のように「年度の切り替え期間」がないので、3月31日まで園児は通常通り登園します。
翌日はいきなり新年度!
保育士は年度をまたいでドタバタと忙しくなります。
年度末までに書類作成をしたり、作品の整理や保育室の移動もあり、子どもの保育を行いながらこれらの業務をこなすのが保育士の大変なところです。
■ひなまつり会
ひなまつり会当日はホールに集い、歌を歌ったり、ひなあられを食べたりします。
おひなさまやお内裏さまの衣装を身につける保育園もありますよ!
保育士はひなまつり製作を計画し、ひなまつり会の内容をどうするか話し合います。
出しものをする時は事前に準備を整え、リハーサルも行います。
■お別れ会
卒園児との別れを惜しみ、思い出をふりかえったりゲームをします。
お互いにプレゼント交換もあり、保育士はその準備や出しものを練習します。
■卒園式
3月に入ると年長児クラスは卒園ムードでいっぱい!
歌や呼びかけなど卒園式のプログラムを意識した練習を行います。
前日の会場作りは大変な作業!
他の保育士たちの手を借りて行います。
これまで述べた「保育士の年間スケジュール」に大事なイベントをひとつプラス!
それは毎月行われる「お誕生会」。
保育士の出しものを行う保育園では、毎月何にしようか悩みの種だったりするかも…。
保育士が遊ぶ時間がないほど忙しい時期はいつ?
1年間のうち、保育士にとって特に忙しい時期はいつなのでしょうか?
ここでは慌しくなる時期とその理由について説明していきます。
運動会やクリスマスといったイベントが続く秋から冬(9月~12月)は最も忙しい時期
一年のスケジュールを見ると、行事がたてこんでくる「秋から冬にかけて」が、保育士にとって忙しい時期となります。
行事前は
- 室内の飾り付け
- 衣装の準備
- 台本やしおりの作成
- 出し物の準備
- 大道具制作
などやることが次から次へと出てきて忙殺されます。
ひとつが終わると次の行事が待っているので慌ただしい日々が続きます。
年度末から新年度(2月・3月)にかけては多忙を極める
また、年度末から新年度にかけてはイベントごとや卒園式、入園式が重なるため業務も通常より多いです。
特に卒園児の担任保育士にとって、3月は本当に忙しい毎日を過ごすことになりますね。
「保育士って遊ぶ時間がないのでは?」と感じるかもしれませんが、一年中ドタバタしているわけではないので、プライベートの時間もちゃんとありますよ。
但し、行事や日常業務の負担の大きさは、園によって異なります。
「いかにハードか」についても個人差があるのが保育士の現状です。
保育士の1日のタイムスケジュール
い保育士は年間を通して様々な行事やイベントがあり、概ね忙しいことがわかりました。
では1日の仕事はどのような流れになっているのでしょうか。
以下の表は保育士の1日のタイムスケジュール・業務内容です。
時間帯 | 主な保育士の業務 |
---|---|
~7:00 |
|
8:00~8:30 |
|
9:30 |
|
10:30 |
|
11:30 |
|
13:00 | お昼寝 |
15:00 | おやつ |
16:00 |
|
16:30 |
|
17:20 | 中番の保育士が退勤 |
19:30~20:00 | 園児の退園後、掃除や閉園の準備遅番の保育士が退勤 |
おわりに
保育士の一年は「年間行事」と「毎月の恒例行事」が中心。
そこに季節を意識した活動が加わっていきます。
保育士になりたての1~2年は、日々のスケジュールをこなすことで精一杯ですね。
それでも、行事を乗り越えた子どもたちの「心身の成長」を感じる時は、この仕事を選んで良かったと思う瞬間です。
保育士の年間スケジュールは、子どもの「笑顔」と「成長」に支えられているのです。