介護施設内では、介護職員をはじめとして看護職員や機能訓練指導員、栄養士など様々な職種のスタッフが活動しています。
その中で特に利用者の生活を支える土台となっているのが、介護職員と看護職員です。
特別養護老人ホームでは人員配置の基準として“利用者数に対し介護職員と看護職員の合計が3:1”とするように定められています。
これは他の職種と比べて最も多い数であり、まさに施設の大黒柱と言えます。
人員配置上、合算してカウントされるこの2職種ですが、実はその業務内容は全く違うものになっていることをご存知でしょうか?
特にこれから転職を考えている方にとっては、なかなか理解が難しい所もあるかもしれません。
そこで今回は、介護施設で介護職員や看護職員が担っている業務内容について、改めて考えていきましょう。
そもそも、介護施設とは?
まずそもそも介護施設とはどういった施設なのか、確認していきましょう。
介護施設は病院とは違い、身体的・精神的になど介護が必要になった人が通う、もしくは暮らす施設であり、病気の治療を目的としている施設ではありません。
利用者がより良い暮らしを送るための施設なのです。
一言で介護施設と言っても、利用の目的などによって対象施設が異なりもします。
介護施設それぞれの特徴など、詳しくご紹介していきましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、65歳以上の高齢者で、身体もしくは精神的に障害があり常に介護が必要な方が生活を送る施設です。
主に介護を受けながら日常生活を送ることを目的とした施設のため、医師の常駐はありませんが、看護師の常駐は義務付けられています。
特別養護老人ホームの中には、地域密着型特別養護老人ホームといった入居定員が29人以下の小規模な施設もあります。
サービス内容は、特別養護老人ホームと同様ですが、小規模なので家庭的な雰囲気が特徴です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護が必要でありながら、利用者にリハビリなどを行い、ゆくゆくは在宅へ切り替えることを目的とした施設です。
自宅に戻ることを前提とし、機能訓練などを行います。
介護や生活面のお世話を受けることは可能ですが、あくまで一時的なものです。
医師の常駐や看護師の常駐が義務付けられていて、リハビリに力を入れているので、理学療法士などが多いのも特徴の一つになります。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、介護と治療の両方を必要としている人が入所する施設です。
長期的に療養するため、生活をしながら治療をしていくといった形になります。
しかし2012年以降介護保険法改正によって新しい施設として、介護療養型医療施設を開設ることができなくなりました。
2018年には新しく介護医療院に役割は網羅され、同じ介護と治療を平行して受けることが可能です。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護は、認知症の高齢者を対象に少人数で共同生活を送る地域密着型施設です。
認知症の進行を防ぐ目的でリハビリなどを行い、利用者同士協力しながら家事をします。
また、認知症の専門的な知識を持ったスタッフが対応しているので、利用者に合わせたケアを行うことが可能です。
小規模多機能型居宅介護
デイサービスを中心にサービスを提供している施設ですが、状況に応じて利用者の自宅へ訪問、利用者が施設に宿泊(ショートステイ)することも可能です。
利用者の状況に応じて、信頼しているスタッフのまま受けるサービス内容を変えることができるので、本人や家族の精神的な負担を軽減することができます。
中には、訪問看護を加えた介護と看護一体型の「看護小規模多機能型居宅介護施設」もあります。
通所介護(デイサービス)
デイサービスは、宿泊・居住はなく自宅から通いながらリハビリや生活のケアを受けることができる施設です。
習い事と同じ感覚で受けることができるので、楽しみにデイサービスを楽しみにしているという方も少なくありません。
デイサービスと言っても、18人以下の小規模体制で食事や入浴、レクレーションを行う地「域密着型通所介護」や、認知症の高齢者を対象にした「認知症対応型通所介護」とおった地域密着型のデイサービスもあります。
サービス付き高齢者向け住宅
60歳以上であれば入居可能なサービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が居住することを目的とした、高齢者専用の住宅です。
主に介護を必要とする人が入居する施設ではないため、自分の生活は自分で送ることができます。
住宅はすべてバリアフリーで、医療や介護の有資格者が日中は常駐しているため、生活相談などのサービスも提供しています。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が自立した生活するための住居施設です。
サービス付き高齢者向け住宅とは違い、入居条件に年齢制限がないため、体に不安があり一人暮らしが難しいので、早めに入居しておきたいといったこともできます。
養護老人ホーム
65歳以上の高齢者で、経済的理由など生活に困窮している方を対象に入居生活をする施設です。
自立した生活を送ることを目的とした施設のため、施設内で介護や治療といったサービスを受けることはできません。
また、数ある介護施設の中では、身体的・精神的・経済的に困窮している高齢者を対象にした施設のため、高齢者の最後の砦とも呼ばれています。
経費老人ホーム
軽費老人ホームは、養護老人ホームほどではないが、低所得者である高齢者を対象にした入居施設です。
60歳以上の高齢者で、身体的な理由などによって自立するのが難しいなどといった方が入居します。
基本自立を目的とした施設なので、生活における簡単なサポートはしてくれますが、介護を受けることはできません。
介護施設での介護職員の仕事内容
では、今までご紹介したような介護施設では実際どんな仕事を行っているのでしょうか。
まずは、介護職員の仕事内容からみていきましょう。
必要な資格
無資格であっても、介護施設で募集される“介護職員”として応募し、就職できれば介護職員として働けます。
しかし、中には介護職を一から教える労力を割くよりも、介護の基本をすでに知っている有資格のみ募集している施設も少なくありません。
そうした場合、初任者研修は最低ライン、実務者研修修了者はそこそこ、介護福祉士を持っている場合は優遇されるといったように、持っている資格の内容も重要視されます。
より上位の資格を持っている方が、就職では有利だと覚えておきましょう。
仕事内容
介護職の仕事は主に次の7つのような利用者の介助です。
- 着替え
- 食事
- 服薬
- 排泄
- おむつ交換
- 運動指導・見守り
- 入浴
利用者に合わせた介助を行うので、その人の癖や性格、どこまで一人でできるかなど理解する必要があります。
介護職は、利用者が日常生活を滞りなく遅れるように手助けをする仕事です。
介護施設での看護職員の仕事内容
病院であれば看護職員の仕事内容も想像がつきやすいですが、介護施設での仕事についてはわからないという方もいますよね。
ここからは、看護職員の仕事にふれていきましょう。
必要な資格
准看護師は行う業務が限られるため、看護師が優遇される点に触れる。
看護職員になるためには、看護師もしくは准看護師の資格が必要です。
ただ、准看護師の資格では施設で行うことができる業務が限られてしまうため、看護師が優遇されることがほとんどになります。
仕事内容
施設での看護師の仕事は、介護職では行えない次の6つのような医療行為が主になります。
- 検温やバイタルの測定
- 薬の管理
- 感染予防や胃瘻などの管理
- 痰の吸引
- 応急処置
- 入浴介助
- 通院の付き添い
病院とは違い、注射など手技を行う機会は少なく、入浴介助など介護の部分も行うのが特徴です。
また、施設では状況が厳しい利用者を相手に治療することが少なく、仕事の目的としては、利用者の健康を維持するという内容になります。
ただ高齢者が主になるので、急変にも迅速に対応できることも大切です。
介護職員でも行うことができる医療行為とは
介護の現場では医療行為を迫られる状況も多くあり、2012年に介護職員による一部の医療行為が認められるようになりました。
そこで、介護福祉士や介護職員に認められている医療行為についてお話ししましょう。
医療行為ではないとされている類似行為
医療行為に見えても、医療行為と定められていない次のような類似行為があります。
- 服薬介助
- 軟膏の塗布(褥瘡の場合は除く)
- 座薬を入れる
- 目薬を差す
- 体温測定
- 自動血圧測定器で測定
- 酸素濃度測定器の装着
- 軽い傷の処置
これらの行為は、介護職員でも認められている行為です。
ただし、利用者の安全や状態を考慮して行う必要があるので気をつけましょう。
医療行為ではあるが異常がない場合にできる行為
医療行為として定められている中でも介護職員が行える行為は主に次の5つです。
- 耳垢や爪の清潔を保つ
- 歯ブラシや綿棒による口腔のケア
- ストーマのパウチに溜まった排泄物の除去
- 体位保持
- カテーテルの準備
以上のような医療行為は、利用者に異常が見られないときのみ行うことができます。
また、医療行為の中には本人もしくは家族の同意、医師や看護師の指導を必要とするものあるので注意が必要です。
特定条件下の下で行う医療行為
介護職員が条件付きで行える医療行為としては
- 喀痰吸引
- 経管栄養
の2つがあります。
条件としては、
- 介護福祉士として登録後、施設での実地研修をして登録
- 介護職員は「喀痰吸引等研修」を修了後、認定証の申請を行う
のいずれかを満たすことが大切です。
また、本人や家族の同意を得ていることや、医師の指示のもと看護師と連携して行うことが条件としてあります。
病院看護と施設看護の違い
ここからは、病院看護と施設看護の違いについてご紹介します。
施設での看護職員のあり方や、介護職員との連携についてなどもお話しするので参考にしてくださいね。
介護施設での看護職員の働き方
介護施設での看護職員の役割としては、医療的立場からの健康生活の維持です。
介護職員は、利用者の生活のサポートを行います。
しかし、看護職員は医療的な面による健康管理を主として動きます。
インフルエンザの予防や薬の管理、褥瘡等のケア、吸引など医療行為を含めたケアを担当するのが看護職員です。
病院と介護施設の考え方の違い
病院は、患っている部分を重要としてとらえ治療します。
そのため、介護職員と看護職員の仕事内容がきっちり分かれていることも多いです。
しかし、介護施設は“治療”を主としているわけではなく、利用者の日常生活をよりよくすることを目的とした施設です。
そのため介護施設では、職員間のコミュニケーションも重要になります。
これは介護職員の仕事だからと放置するのではなく、看護職員も利用者がクオリティの高い生活を送ることができるよう、サポートをすることもあります。
また、医師が常駐していない施設では、医療行為を行える看護師の役目は重大です。
介護施設では、医療的な面だけではなく利用者の生活面を重要視したケアが主になります。
介護施設における看護職員の強みとは
看護職員にとって介護施設で働くメリットは、業務形態にあります。
- 定時で帰ることが多いので、子育てをしながらも育てられる
- 訪問看護など活躍の場が広い
などといった部分にあります。
子育てのため一度医療現場を離れた人にとって、復帰は子供のことを考えなくてはいけません。
看護師の中には、夜勤があったり、残業が多かったりといったあまり子育てには向かない環境であることも多いです。
介護施設では定時で帰宅することが多いため、子育てがしやすいというのは嬉しいですね。
また、残業がないと自分の時間をきちんと持つことができます。
オンとオフをきっちり分けることができるので、生活環境としても魅力的でしょう。
介護施設で働く看護職員が抱える課題
介護施設での就労形態はよくても、やはり抱えている問題はあります。
- 判断力が必要
- 病院での看護職とのギャップ
といった2つは、病院で看護師をしていた経験があると、少し戸惑いを感じる方も少なくありません。
看護職員は、医療ケアに対して「どう対処するべきか」自分で判断し、行動しなくてはいけないためです。
医師から指示を受けていることがほとんどですが、緊急時など迅速な対応を求められる場合は、判断力が求められ重圧に感じることも多くあります。
また、病院での看護職員と介護施設での看護職員とでは、仕事内容が変わるため戸惑う方もいます。
病院では看護職員として入院患者などの身体的なサポートなどを行っていても、介護施設では介護職員がメインになって行います。
介護施設での看護職員は、施設全体をチームとしてとらえ動くことが大切になります。
介護職員×看護職員の連携とは
介護職員と看護職員だけでは、チームとは言えません。
介護現場では働いている職員全てがチームであり、介護職員・看護職員・作業療法士や理学療法士などさまざな分野の専門性を発揮したうえで、1人の利用者のケアに当たる必要があります。
介護職員は、利用者の生活パターンや性格など細かな部分まで把握し、利用者にとって一番ベストなケアを行います。
そのためには、健康状態などの把握が必要であり、看護職員の力がなくては成り立ちません。
また、看護職員は、医師や介護士など施設で働く職員からの情報をもとに、利用者が健やかに生活が送れるよう、連携をとることが大切です。
それぞれの情報を共有しながらケアをしていくので、職員間での連携は必要不可欠になります。
まとめ
ここまで、介護職員と看護職員の仕事の内容や介護施設の紹介などをご紹介しました。
重要なポイントは次の3つです。
- 介護職員は、利用者のニーズに合わせた介助を行うのが主な仕事
- 看護職員は、医療行為を行い利用者の健康面でのサポートを行うのが仕事
- 介護職員・看護職員だけではなく、施設全職員で蜜な連携を持ちケアしていくのが大切
「介護職と看護職の仕事の違いを確認したい」
「介護職員と看護職員で、どのような仕事をしていけば利用者にとってベストか知りたい」
といった方は、この記事を参考にしてくださいね。
介護施設での役割をお互い理解することで、柔軟に動き利用者のケアをすることができますよ。
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