質が高い介護施設の評価は、“介護施設が組織化されているか?”がポイントであると言われています。
しかし、介護の世界では古くから働いているベテラン職員のやり方が根付き、なんとなく同じやり方をずっと続けてきて、しっかりとした組織化を作りづらいのが現状です。
先輩のやり方を見て覚えて自分のやり方を見つける教えはもう古いのです。
そのようなやり方をすれば、ひとりひとりのサービス提供がバラバラになり、利用者や家族、そして働く職員の混乱を招いてしまい、組織として成り立たなくなってしまいます。
近頃は、施設を管理する都道府県や市町村の指導により様々な業務に関するマニュアルの作成・履行が指導されています。
これはマニュアルを徹底し、新人職員もベテラン職員も統一感をもって仕事に励み、サービスの質が日々変化してしまわないように一定の水準を保てるようにすることが大切であるという考え方によるものです。
今回は、そもそも介護施設の組織化ってどんなものなのか?なぜ組織化が必要なのか、介護の組織力を高めるメリットやデメリット、どのような取り組みがされているのかをご紹介していきます。
そもそも介護施設の組織化とは
介護施設の組織化とは、施設職員がマニュアルなどの規律を徹底し、上司・部下の教育・評価体制が明確であり、一人一人がモチベーション高く、責任を持って仕事ができる施設です。
また、介護業界は女性が多い職場です。
結婚・出産・育児・介護などで家庭と仕事の両立、つまりワークライフバランスの実行が求められる職場でもあります。
介護施設の組織力を高めると、社員一人一人の仕事と家庭のバランスを整えて、働きやすい環境を作ることができます。
産休・育休を施設内に浸透させるのも組織化にとっては重要なことなのです。
組織化されるメリット・組織化されていない施設のデメリット
組織化されていない施設のデメリットはどういったものがあるのか、また組織化されることによって生まれるメリットについてお話しします。
組織化されていない施設のデメリット
組織化されていない施設の場合、マニュアルや職員の教育体制が不十分になり、仕事ができない職員ができる職員に頼ってしまう傾向があります。
「○○さんがやってくれるからいいか」と、簡単にできる人に任せてしまうため、できない職員はずっとできないまま、スキルの向上が見られません。
当然できる職員の負担も増え、いずれは不満につながるでしょう。
また、仕事ができない職員は、そのままでも務めていられるため仕事への意欲もなくなり、それ以上のレベルを求めるのが難しくなります。
組織化されるメリット
組織化されている介護施設は、職員ひとりひとりのレベルが高いため、統一感があるサービス提供ができます。
誰が関わっても同等の質のサービス提供を行うことができれば、利用者や家族の安心感に繋がり、施設の評価全体にも好印象を与えます。
一人一人の役割が平等になるため負担が軽く、不平不満を言う職員が少ないため、職場の雰囲気も明るくなります。
しっかりとしたマニュアルにそって新人教育が徹底され、それを評価する職員が確実にいるため、職員のレベルアップ=サービスの質の向上につながります。
利用者満足やサービスの質の担保が出来れば、その評判は必ず地域に広まっていきます。
その口コミが利用者数の増加に繋がります。それが施設の収入を増やし、職員の待遇改善に発展します。
さらにはそういった評判は、確実に介護の仕事を目指す人の耳にも入り、より良い人材が集まる施設となるのです。
まさに組織化・マニュアルの作成運用がもたらす好循環と言えます。
質の悪い職員を生んでいるのは教育体制が整っていない施設の責任。
新人だけではなく、全体の介護士レベルの底上げが最重要です。
組織化される場合にぶち当たる“壁”とは?
介護施設が組織化するには、マニュアル作りが必須です。
しかし、長く務めてきた職員からは必ず反発が起こってしまいます。
彼らは今までのやり方と違う風を起こされるのは面倒に感じてしまうからです。
ただ、教育面において、組織化すると必ず効果を発揮します。
新人職員にとって、マニュアルにそって業務をすることは安心につながり、心にゆとりをもって仕事をすることができるからです。
今までのように、それぞれ違う先輩から口頭で指導され、何が一番正しいのか?と混乱しながら業務を続けていれば、施設の統一感が失われます。
やがてその新人職員が教育をする立場になっても、指導内容があいまいになってしまうのです。
そこで、マニュアルが役に立ちます。
統一感があるマニュアルは、サービスの統一にも繋がり、職員の安心こそが、利用者の安心に繋がっていくのです。
組織化の最低条件は各種“マニュアル”の作成にある
組織化には、マニュアルが必要不可欠です。
どうしてマニュアルが必要なのか、マニュアルによって同施設が成長できるのか、お話しましょう。
施設がマニュアル化できていない理由
マニュアルが存在しない施設は多いです。
その理由として次の3つがあります。
- マニュアル通りに動いても、利用者に合った介護ができない
- マニュアルがあると臨機応変に対応できない
- 職員の個性が無くなる
介護職は対人の職業のため、マニュアル化を懸念する声が多いのです。
マニュアルの必要性
マニュアルを導入していない施設では、先輩が後輩に口頭で仕事を教えるという施設も少なくありません。
しかし、口頭教育は伝言ゲームと一緒で、一人が間違った解釈をしただけで、後々の後輩職員も間違った形で覚えることになる可能性が大きいです。
そこでマニュアルさえあれば、統一されたケアを利用者に提供することができます。
利用者からの「○○さんではよくて、どうして私はダメなんだ?」といった不公平感もなくなりますし、職員によっておこるケアのムラを軽減することも可能です。
安全でかつ統一された介護ケアを行うためには、マニュアルはとても重要になります。
マニュアルと共に組織が“成長”する
施設には、ベテランもいれば新人もいます。
転職などでただ資格だけを持ち、実務経験が乏しい職員もいます。
能力に幅のある職員をどう統一させるかは、やはりマニュアルの力が必要です。
また、介護職を始めたばかりの職員にとって、マニュアルがあると肯定感が生まれ安心して仕事ができます。
そういったこと積み重ねをしていくうちに、仕事に対し自身を持つことにつながるのです。
同時に教育をする先輩職員の負担も軽減することができ、全体的にスムーズな介護ケアを利用者に提供することができるでしょう。
マニュアルひとつで職員が成長し、その結果施設が成長することにつながります。
それだけでは命を預かる介護の仕事は難しいです。
基礎からしっかり学べるマニュアル作りが必須です。
組織化に向けての3つの取り組み
施設の組織化を図ることが、評価の高い施設を作ることがわかりました。
では、どのようなことに取り組んでいけばいいのでしょうか?
そのポイントをまとめてみました。
1.基本となる介護技術の徹底
介護施設にはさまざまな状態の利用者がいます。
認知症・胃ろう・身体が不自由な人・皮膚の弱い人などです。
基本的な介護技術を学校などの座学で学んできた新人職員や介護未経験者がいる中で、正しい介護技術を教育していかなければなりません。
まずは職員全員が介護技術の再確認を行い、レベルの底上げを実施します。
そして、新人職員に正しい教育をする必要があるのです。
2.組織全体の規律を維持“褒めるべき人を褒める“
褒める人を褒める、規律を乱す人を改めることが必要ですが、実際介護現場はどんな状況でしょうか。
自己中心的な職員の意見が主張され、その職員の思うままに現場が動いている状況が多く、声を大きく訴えることができないのが現状です。
そのような状況が続けば、規律を忠実に守る人が退職に追い込まれ、ますます優秀な人材を失ってしまいます。
褒めるべき人は褒めて育てること、乱す人を改めることで、全体の規律を維持できる強力な組織を作ります。
これは管理者や生活相談員、介護主任等が人材育成的な観点で中心的な役割を担うことになるでしょう。
3.仕事と家庭のバランスが取れる組織
せっかく育てた人材が、結婚・妊娠・育児などが理由で退職せざるを得ないのは、施設にとってももったいないこと言えるでしょう。
これまで培ってきた経験が蓄積され、育休明けにはさらなる飛躍ができることが理想です。
そのためには、“これからもこの施設で仕事を続けて行きたい”と思える環境を作ることが大切です。
産休・育休から復帰しても、お互いが気持ち良く、効率が良い環境で仕事をするために、業務改善を行うように意識を向けるのです。
時間の使い方や業務の無駄を省き、一人一人が効率よく仕事を取り組む必要があるため、その相乗効果で組織力がアップします。
まとめ
今回は、介護施設における組織化のメリットや、マニュアル化の必要性などご紹介しました。
重要なポイントは次の3つです。
- 組織化することでモチベーションを保って良質な仕事ができる
- 組織化されないと、個々の能力にばらつきが生まれ良質なケアができない
- 組織化には介護技術のスキルアップや、仕事と家庭のバランスが必要
「施設全体のレベルアップを目指したい」
「職員の能力の底上げをしたい」
といった場合、施設自体の組織化を図りましょう。
今よりももっと職員のモチベーションが上がり、利用者にも職員にも環境のいい施設に生まれ変わるはずです。