オールラウンドプレーヤーの信販会社
信販会社は個人向けの各種サービスを提供しています。個人をはじめとした小口取引のことを、金融業界では「リテール」と呼びます。そこで信販会社のことを「リテールのオールラウンドプレーヤー」と呼ばれることも多いです。そのように呼ばれる理由は、信販会社の取り扱っている商品を見ればよくわかります。
クレジットカードのほかにも割賦契約、キャッシング、信用保証などの各種融資を行っています。しかも会員数や加盟店数も大手になると、かなりの数になります。数千万人という会員数を誇る信販会社もあります。
近年メガバンクの中には傘下に信販会社を取り入れるとか、保証会社になってもらうなど密接な関係を図っています。なぜメガバンクが信販会社ン急接近しているかですが、このリテール部門の強さにあります。
リテールに力を入れてきているメガバンク
メガバンクはバブル経済が崩壊したときに、多額の不良債権を抱えました。このため、この数十年間は不良債権の処理をどう進めるかが大きな課題になっていました。しかし最近になって、不良債権比率の半減目標をほぼ達成しつつあります。経営健全化計画が順調に推移している中で、外に打って出る方策を模索しています。
その中で力を入れているのがリテール戦略です。メガバンクを見てみると、個人向けの住宅ローンやカードローンなどの商品を充実させています。
これまで銀行、特にメガバンクは企業に対する融資が主流でした。しかし長らく続く景気停滞などの影響もあって、なかなか企業融資が順調に伸びない状況が続いています。そこで他の収益源を求めるということで、リテール戦略に注目が集まるようになりました。
個人情報の活用に弱点のある銀行
メガバンクはこれまであまり重視してこなかったリテール事業に今後本格的に力を入れようとしています。しかし自力でリテール事業の拡大をするには、ネックがあります。それは個人情報の活用力に乏しい点が大きく関係しています。
メガバンクになると、日本中に数多くの口座を抱えています。数千万という口座を抱えているにもかかわらず、ここから預金者の購買動向や消費行動などを把握できない状態のままです。これが信販会社と協力関係を構築することで、リテール戦略を効率的に進められるようになります。
信販会社であれば、個人情報をベースにして、いろいろなマーケティングを実施しています。このノウハウを生かせば、よりそれぞれの預金者に合ったサービスなどの案内ができます。信販会社は分割払いを行ったお客さんに対して、請求書を送付します。
この請求書の中にはダイレクトメールの入っている場合が多いです。信販会社のダイレクトメールですが、購入した商品や相手の年齢、性別などによって分けて送付しています。このような信販会社のマーケティングのノウハウをメガバンクでもうまく生かしたいのです。
もう一つメガバンクが信販会社を取り込むメリットとして、今までできなかったサービスができるようになる点もあります。たとえば定期預金の満期日がくれば、預金者に対して通知書を送付します。このとき例えば顧客に対する勧誘として、ショッピングのクーポン券などを入れることはできません。銀行には他業禁止規定があるためです。
もしグループに信販会社を取り込んだとしたら、その傘下の信販会社を活用すれば、上で紹介したクーポン券などを出して勧誘することもできます。信販会社が営業して新規顧客を獲得して、振替口座としてメガバンクに指定するといった戦略を練ることも可能です。
信販会社としてもメガバンクの傘下に入ることにメリットが
信販会社としても、メガバンクと組むことにはメリットがあります。信販会社を含めノンバンクは厳しい環境に立たされています。ノンバンクが厳しい環境にある原因として、貸金業法の改正があります。
貸金業法が改正されて、いわゆるグレーゾーン金利の撤廃にあります。貸金業法改正する前は、利息制限法を超え出資法の範囲内で金利設定するノンバンクがほとんどでした。利息制限法を超えた段階で違法ではあります。
しかし利息制限法にはこれまで罰則規定がなく、一方出資法は罰則規定があります。
ですから利息制限法を超え出資法以内の利率であれば、違法ではあるけれども罰則のないまさにグレーゾーン金利でした。
しかし最高裁判所の判決によって、いかなる場合でも利息制限法を超えたら違法であると判断されました。
その結果、今まで利息制限法を超える金利で利息支払いをしてきた顧客から過払い金の返還を求める手続きが日本全国で行われるようになりました。
しかも改正貸金業法で、出資法の上限を利息制限法の上限と一緒になりました。出資法はこれまで年29.2%が上限でした。これが利息制限法の上限である年20%にまで引き下げられたので、キャッシングによる利息収入はダウンします。
出ていくお金が増え、入ってくるお金が減ったので、経営状態が悪化してしまいました。
信販会社の中には、経営の厳しいところも出てきています。そこで銀行の傘下に入って、金融機関の豊富な資金力がほしいと考えます。またメガバンクの保証会社になることで、そこから利益を得る業態に変化して生き残りを図る信販会社も見られます。