薬剤師のみなさんはすでに「公認スポーツファーマシスト」という資格をご存知の方も多いでしょう。
2009年に始まった資格ではありますが、薬剤師資格を必要とする職種として、ここ数年間の間にさらに注目を集めています。
公認スポーツファーマシストとは何か?自分も転職する際の職種として検討できるのか?といったように、気になっている薬剤師も多いはずです。
そこで今回は、公認スポーツファーマシストに薬剤師が転職するための方法を中心にお話しします。
公認スポーツファーマシストって何?
「公認スポーツファーマシスト」とは、スポーツ界の公平さを保つため、最低年一回(1月1日)のペースで最新版へと更新されるアンチ・ドーピング規則に対して、正確な情報や知識を持った薬剤師のことを指しています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会開催へ向け、公益社団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)による認定薬剤師制度の資格として、ドーピングを食い止めることを目的に創設されました。
スポーツを専門にした薬剤師の認定制度が誕生したのは、なんと世界で初めて…!とのことですが、比較的新しい資格であるにもかかわらず、その存在の重要性や、今後ニーズが増えて行くと予測されるポイントなどから、さらなる活躍が期待されている様子です。
2009年の創設以降は年々認定者の数を増やし続け、2017年4月の段階で7,894名ものスポーツファーマシストが誕生しています。この増加具合からも、認定資格の注目度の高さが伺えますね。
なぜ、「アンチ・ドーピング規則」に精通した薬剤師が必要なの?
2005年、日本でも国際アンチ・ドーピング条約が批准されました。これはオリンピックをはじめとする世界大会で、ドーピングの選手が続出し、アンチ・ドーピングの流れが世界中に広がったことによります。
それを受けて2009年に日本で開始された資格制度が「公認スポーツファーマシスト」なのです。
ドーピングとはいえ、確信犯的に使用するものだけではありません。薬局やドラッグストアで購入可能な市販薬、栄養剤、サプリメントに禁止物質が含まれていることもあるのです。
アスリートのなかには、このような禁止物質に気がつくことなく「うっかりドーピング」を犯してしまうケースも珍しくはありません。
故意ではなかったとしても、ドーピングをした選手として扱われてしまい、不本意な結果に陥ってしまうリスクも十分にあり得るのです。
ですが、一般消費者にはそれを見分けられるだけ、薬に関する知識はないのです。
そこで期待されるのが、薬剤師です。薬の専門家である薬剤師がドーピングに関する知識を持つことで、違反を水際で防げる可能性が高いからです。
活動内容について…
また、公認スポーツファーマシストの仕事は薬に関する知識を駆使して服用を止めることだけではありません。
トップレベルの競技者や指導者だけでなく、一般のスポーツマンに対しても、情報提供や啓発活動を行っています。
また学校教育の場で正しい薬の使用方法うや、ドーピング防止の講演会を行うなど、多岐にわたる活躍が期待されています。
公認スポーツファーマシストとして活躍する薬剤師の具体的な活動内容には、以下のようなものが挙げられます。
- 国民体育大会に向けて、都道府県選手団へ対し情報提供や啓発活動を行う
- 学校教育として、アンチ・ドーピング情報を通じ医薬品使用にまつわる情報提供や啓発活動を行う
- 「公認スポーツファーマシスト」の存在やアンチ・ドーピング活動などの認知を広げる
などなど…
このほかにも、調剤薬局やドラッグストアーなどで活躍する薬剤師であれば、患者さんやお客さんへの指導やアドバイスの内容をより有意義なものにレベルアップさせることにもつながります。
認定資格をもつことの肩書きや知識は、スポーツに取り組む全ての方々にとっての身近なアドバイザーとして活躍するうえで、頼もしい武器となるでしょう。
またスポーツファーマシストの存在は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、アスリートを支えるコーチやトレーナーの方々と連携を取り活躍をすることも期待されています。
国を挙げての大きなイベントで専門家として参加するという経験は、今後の薬剤師人生での財産になるカモ知れません。ぜひこのチャンスを目指して、資格取得を志してみてはいかがでしょうか。
収入面には影響ナシ!?どんなメリットがあるの?
ほかの多くの薬剤師認定制度にも言えることですが、公認スポーツファーマシストの資格を取得したということが、ダイレクトに年収へ好影響を与える…というケースは少ないでしょう。
とくに、スポーツファーマシストの場合、認定資格をフルに活かせるシーンはまだまだ少なく、くわえて保険制度にはドーピング防止に関する加算も施されていません。
これらの原因から、ほかの認定資格を持った薬剤師よりも「働き方」や「収入」に大きな変化をもたらすほどの影響力が追いついていないのが現状です。
したがって、公認スポーツファーマシストとして活躍することで得られる現段階でのメリットは、患者さんやお客さんへの対応をより濃いものに変えることができる、あるいは、アスリートへ向けた専門的な相談に乗ることができる…というポイントです。
また、認定資格を持っていることは、自己研磨を欠かさない勉強熱心な薬剤師である!ということをアピールする武器にもなるでしょう。
がんばって勉強したという自負は、自分自身を信じる力にもつながるので、日々の業務や患者さんへの助言にも自信をもつことができる利点も考えられます。
これらのポイントから、公認スポーツファーマシストを目指すことは、収入面への好影響よりも、やりがやスキルアップに関心を持つ方へ向いた選択肢だと言えるでしょう。
公認スポーツファーマシストの認定制度とは
2015年には、公認スポーツファーマシストが6,359名にのぼり、その数はますます増加傾向にあります。
実際に身近にスポーツ選手がいて、公認スポーツファーマシストとして専門に活躍する薬剤師は少ないですが、薬局やドラッグストアで仕事をする上でも、十分に役立つ知識です。
そのため、有利な転職活動を行うために公認スポーツファーマシストの資格を取得する薬剤師も増えています。
公認スポーツファーマシストになるためには、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構の認定を受けなければなりません。
資格取得のためには基礎講習会に参加しなければなりませんが、その時点で薬剤師の資格が不可欠です。
基礎講習会を修了すると実務講習会を受講し、その後に七期到達度確認試験を行います。
所定の成績を収めた受講者は、認定証を受け取ることができます。認定期間は認定証発行日から4年間となっていますが、資格を維持するためには毎年都道府県が開催する実務講習会を受講しなければなりません。
認定資格取得までのステップを紹介!
公認スポーツファーマシストは、日本の薬剤師免許を持っている方であれば受講が可能です。以下では、受講者募集受付から認定までのステップについて、それぞれの期間と料金を合わせて紹介します。
- step1:受講者募集受付(毎年4月から5月ごろ。募集の告知は3月に行われます。受講料はテキスト代として7,400円が必要です。)
- step2:基礎講習会開催(毎年6月から7月ごろ。)
- step3:実務講習申し込み受付(毎年11月から12月ごろ。)
- step4:実務講習、知識到達度確認試験、認定申請(毎年12月から翌年の1月ごろ。認定申請には認定料として20,500円が必要です。)
- step5:認定
また、上記(『公認スポーツファーマシストの認定制度とは』)でも触れたとおり、認定資格を維持するためには4年ごとの更新が必須です。e-ラーニングでの基礎講習や実務講習を受講し、再度、試験を受けなくてはいけません。
資格更新は、常に最新の情報や知識を持ったスポーツファーマシストであり続けるための重要なシステムです。
ドーピング防止に務める専門家として長く活躍するためには、定期的で継続的な勉強を欠かすことはできません。したがって、スポーツファーマシストであり続けるためには、努力や勉強を継続させる姿勢が求められることになるでしょう。
まずは資格を取得して、転職エージェントを活用しよう
公認スポーツファーマシストになるためには、まず認定資格を得ることが重要です。そして、公認スポーツファーマシスト専任で転職先を探すのは難しいと思いますので、資格を役立てる可能性がある求人を探す必要があります。
学校や競技現場など、実際にスポーツをする人と関わる仕事に就きたいと考えているなら、まず薬剤師専門の転職エージェントに登録することをおすすめします。
企業の中にも、社会貢献や地域貢献活動の一環として、公認スポーツファーマシストの資格を生かせる場を用意しているところがあるからです。
転職にあたっては希望条件の優先順位を決めておく必要があります。プロのサポートを受けて納得できる転職を実現してくださいね。