科学捜査研究所では、科学的で専門的な知識を活かしつつ、活躍をしている薬剤師が存在していることをご存知ですか?
「そもそも科学捜査研究所で薬剤師として働く方法は?」
「科学捜査研究所の薬剤師の仕事内容や給料について知りたい?」
そう不思議に思った方も多いはず。
ここでは、科学捜査研究所で活躍する薬剤師について、仕事内容ややりがい、年収、また目指し方などの基本的な情報をまとめて紹介します。
薬剤師としての知識やスキルを、事件・事故の解明のために活かすことのできる素晴らしい職業なので、ぜひ今後の参考としてご覧ください。
科学捜査研究所とは警察の科学捜査を支える警視庁附属機関
科学捜査研究所とは、警察署などと連携して事件現場の残された様々な痕跡からDNA型を採取し、それをDNA型鑑定を行って、被疑者の特定を進める高度なオペレーションを行う研究機関です。
警視庁あるいは各道府県警察本部の付属機関のことを指しています。
科学捜査研究所、と聞くと耳馴染みの無い印象ですが、「科捜研(かそうけん)」という通称は、中にはご存知な方がいるのではないでしょうか。
テレビドラマの有名なタイトルをイメージする方も多いはずです。
ドラマ『科捜研の女』では、警察科捜研を舞台に、最新鋭の科学技術や道具を駆使して、様々な事件の謎を解き明かす女性研究員が描かれていました。
そんな姿に「カッコイイ!」と憧れた方も多いでしょう。
科学捜査研究所で活躍する薬剤師の仕事内容
科捜研では、科学や物理、法医学など、様々な分野の専門家たち(科学捜査官)が、それぞれの科学的観点から犯罪捜査に協力しています。
科学や法医学のプロフェッショナルである薬剤師も、その一角を担っているのです。
たとえば法医学分野に精通した薬剤師の場合は、現場に残された犯人や被害者の毛髪や体液などから、DNAや血液型などを鑑定することになるでしょう。
また、科学的な領域に明るい薬剤師であれば、犯人や被害者の血液中に残された違法薬物やドラッグ、薬剤などの検出を行う…といった科学的なアプローチで、事件解決や冤罪の防止に一役を買っています。
このように、一口に「薬剤師」といっても、得意とする領域によって、事件・事故の解決へむけた関与の仕方も少しづつ異なるでしょう。
とはいえ、いずれにしても根底にあるのは「犯罪現場で鑑識官が採取した証拠品を、専門的目線から分析する」という使命です。
さらに、上記のような捜査協力だけではなく、
・新たな分析方法の開発・研究
科捜研のやりがい
科捜研の研究員である薬剤師が手がけた分析結果は、証拠として捜査現場や裁判所に提出されます。
つまり自分の仕事によって、犯罪が立証されたり、悪が裁かれたりすることになるのです。
科学捜査官の仕事は、今のようにドラマで取り上げられない限り、なかなか日の目を見ることのない存在でした。
しかし、自らのスキルやノウハウを活かして真相を究明する業務内容は、まさに物語そのものだといって過言ではありません。
専門家として事件・事故の解決をサポートする科捜研の薬剤師の存在は、社会的な意義も大きく、素晴らしいやりがいを得ることのできる仕事なのではないでしょうか。
科捜研の給料・年収
科捜研の立場は「研究員」であり捜査権を持っているわけではありません。
業務内容や事件・事故への関わり方は警察と密接に関係していることなどから、給料や年収、待遇なども、地方公務員の俸給表に則って決定されます。
地方公務員の収入については、多くの方がイメージする通り「初任給が安い」というデメリットがあるものの、年功序列で徐々に収入がアップしていくことは周知の事実です。
公務員ならではの収入の安定感は抜群で、総合的には好待遇が期待できます。
推定月収・年収の相場
初任給の月収相場は20万円代が一般的で、その後30代ごろには推定月収が約37万円までアップします。
各年代や地域ごとに収入が異なってくるので一概には言えませんが、トータルでの平均年収は550万円から600万円ほど、転職した際の年収は350万円から600万円ほどが相場だと言われています。
【メリットばかりではない】科捜研の仕事の大変な部分
ここまでをご覧になって、「科捜研で働いてみたい!」と魅力を感じ始めた皆様。
当然ですが、科捜研で働く事はいいことばかりではありません。
目指すにあたってぜひ覚えおきたい大変なところは、以下の3つです。
- 科捜研を目指す難易度の高さ
- 科学捜査官が出した分析結果の責任の大きさ
- 人の生き死にに直面する仕事でもある点
上記でも触れたドラマの影響からか、近年では科捜研への就職・転職を希望する方が多く、応募も殺到する傾向があると言われています。
そもそも、募集人員がかなり少ないので競争率も高く、目指す方にとっては大変狭き門となっている様子です。
科捜研を目指す以前に、まずは難易度の高さが一つのデメリットになっている事は否めません。
重い責任やストレスを抱える業務
また、やりがいの大きい仕事である反面、重たい責任やストレスを抱える職業である事も理解しておきましょう。
科学捜査官が導き出した分析結果は、人々の命や財産、延いては人生そもののを左右しかねない証拠となります。
もしも科捜研の鑑定や分析に間違いがあった場合には、
- 真犯人を逃してしまう
- 冤罪を招いてしまう
ということにもなりかねません。
ケースによっては罪のない方を死刑にしてしまうリスクも孕んでいるのです。
人の生死に向き合うハードな職業
さらに、科学捜査官は人の生死に直面するシーンも多々有る職業です。
そんな時も、冷静かつ的確に、証拠品の分析を行なわなければいけません。
やりがいや楽しさなど、ポジティブな要素ばかりに惹かれるのではなく、このようなデメリットや大変さを十分に把握しておくことも、大切なのではないでしょうか。
科捜研で活躍する薬剤師を目指す方法
薬剤師の就職・転職先といえば、調剤薬局やドラッグストアー、病院などが一般的です。
「科捜研という選択肢自体を知らなかった!」という方も多いカモしれませんね。
そこで以下では、科捜研を目指すための方法や、必要な資格、転職できる可能性などについてをお話しします。
科捜研の薬剤師に必要な資格
じつは、科学捜査官を目指すにあたって必須となる資格は存在していません。
したがって国家資格を持っていない方でも、挑戦すること自体は可能です。
とはいえ、それで採用がもらえるか否かは別の話で、実際には、理系大学院において修士課程や博士課程を修了した応募者が優先される傾向があるでしょう。
また競争率が大変高いので、難関私立大学などを卒業していれば、なお可能性は広がります。
このことから、結果的に採用される方には、国家資格を持っている方や、学生時代に分析科学や生化学などを先行していた方が多くなる様子です。
【転職はNG】ほぼ新卒のみ採用している
科捜研へのステップとして、理系大学院修了後に研究職として就職してしまうケースが多い様子です。
基本的に転職はやっておらず、新卒での入社のみである…と認識している方も珍しくありません。
しかし、必ずしも「新卒でなければ不可能だ」と言い切る事はできません。
欠員が出た場合は不定期に募集が行われる
科捜研は各47都道府県すべてに設置されている機関で、応募要件はエリアごとに異なるのですが、それぞれの道府県で欠員が発生した際などには、不定期に募集が行われている事があります。
募集人数は極めて少なく(1人など)、加えて希望者が殺到することが予測されます。
採用を勝ち取るのは簡単なことではありませんが、薬剤師が科捜研への転職を叶えるチャンスは存在する様子です。
募集は各県警、あるいは各県庁ホームページの「職員採用情報」で募集要項が公開されています。
数少ないチャンスを掴むためにも、目星の県警のサイトをこまめに確認する事が重要です。
まとめ
科学捜査研究所で働く薬剤師は、そのほかの一般的な薬剤師とは全く異なる特殊な世界で活躍しています。
昨今ではテレビドラマによって科捜研の存在が広く知られるようになり、そんな「カッコイイ」世界に憧れを抱く方も珍しくはありません。
高い学歴や高度な専門性などが問われる理科系捜査員は狭き門ではありますが、意外にも「新卒でなければならない…」という訳ではなく、自身のスキルや運次第では今からでもチャレンジできる選択肢である様子です。
「専門性を活かして、事件・事故の解明に役立ちたい!」
と、高い志を持っているのであれば、ぜひ科捜研を今後の目標に設定してみてはいかがでしょうか。