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敷地内薬局という不安。敷地内薬局のメリット・デメリットとは?

敷地内薬局

規制緩和によってどんどん増えている敷地内薬局。

「はなぜ増えているの?」
「敷地内薬局は誰にどのような点でお得なの?」

と敷地内薬局に関して色んな疑問を持っている方もいるはずです。

そこで今回は、

  • 敷地内薬局とは
  • 敷地内薬局が解禁された経緯
  • 敷地内薬局のメリット・デメリット

などについて詳しく紹介していきます。

この記事を読めば、病院側や患者側、薬剤師側からみた敷地内薬局の良し悪しがわかるようになるので、ぜひ最後まで読み進めてください。

敷地内薬局とは

敷地内薬局とは、「病院の敷地内に立地している薬局」のことです。

総合病院や大学病院といった大規模な病院の前に立地しているのが「門前薬局」、反対に敷地内薬局は「門内薬局」と言われることもあります。

また、医療機関内に薬局があっても、以下の場合等は敷地内薬局とは認められません。

  • 薬局の存在や出入口を公道等から容易に確認できない場合
  • 病院等医療機関の休診日に、公道等から敷地内薬局に行き来できなくなる場合
  • その病院を受診した患者の来局しか想定できない場合
出典:「保険薬局の構造規制の見直しについて」(PDF)

敷地内薬局が解禁された経緯

2016年10月1日より、敷地内薬局が解禁となりました。

これまで調剤薬局は病院の敷地内に開設することはできませんでした。

なぜなら、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則に次の記載があるためです。

(健康保険事業の健全な運営の確保)
第二条の三  保険薬局は、その担当する療養の給付に関し、次の各号に掲げる行為を行つてはならない。
一  保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行うこと。

出典:厚生労働省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」

ことの発端は、2014年10月に総務省が行政相談を受けたことのようです。

「フェンスなどで、調剤薬局と病院とが隔てられていることで、車椅子や高齢者、子供などにとって非常に不便である」という内容だったようです。

総務省から厚生労働省に改善要請が出され、2015年の政府の規制改革会議が規制の見直しを答申し、最終的には規制緩和へとつながったようです。

規制緩和はされましたが、それでも一定の基準はありますので、後ほどご紹介いたします。

敷地内薬局と聞くと、良いことばかりが思い浮かぶかもしれませんが、実際にはメリットだけでなく、デメリットもあるようです。

そのあたりを一緒に考えていければと思います。

どのように規制緩和されたのか?

これまでは、公道を通じてのみ往来ができるような構造としている必要がりました。

例えば、隣り合っていたとしても敷地内で往来ができないようにフェンスで囲いをして、公道でのみ往来ができるようにする必要がありました。

また、同じ敷地内に調剤薬局を開設できませんでしたが、これが解禁されました。

しかし、同じ敷地内が解禁されたといっても、一定の条件はあるようです。

例えば、病院内に調剤薬局が存在する、病院と調剤薬局が専用の通路でつながっているという場合です。

つまり、同じ建物という場合は、認められないとのことです。

ただし、上記以外であれば、何でも良いのかというとそうではなく、実際には調剤薬局の開設を申請した際に、地方厚生局が可否を判断するようです。

この規制緩和は、患者さんにとって非常に良いもののはずです。

当初は利益を呼び込むために「不可」としたようですが、医薬分業が進み、患者さんが薬局を選ぶ時代になっているのでしょう。

近いという理由だけで薬局を選ぶ時代ではないのです。

そう考えると、当然の規制緩和だと思います。

患者における敷地内薬局の5つのメリット

敷地内薬局は患者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、5つのメリットについて詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

1.薬局の選択肢が増える

敷地内薬局だと、患者にとってはかなり薬局の選択肢が増えるのがメリットです。

敷地内薬局に対して不満があれば、敷地外の違う薬局に通えばいいわけです。

時には怪我をして遠くに行けない場合も、近くの薬局に行ったり、買い物でよく行くスーパーの近くに行きたいときもありますよね。

敷地内薬局とそれ以外の選択肢ができるのは利便性も高くなってありがたいと言えます。

2.移動距離が減って行くのが楽になる

敷地内薬局の3つ目のメリットは、移動距離が減って行くのが楽になる点です。

患者の中には高齢者の方々もたくさんいるので、遠い場所だと移動するのも非常に大変です。

敷地内薬局ならば、病院で受診後、薬を処方してもらう際にそのような心配がないので楽です。

3.薬代が安くなる

敷地内薬局のメリット3つ目は、薬代が安くなることです。

これは、敷地内薬局に対し調剤報酬点数引き下げによって、経済的負担が軽減できるためです。

薬代が安ければ、患者の負担も大きく減らせるので通院もしやすくなります。

4.待ち時間が短縮され薬をすぐにもらええる

敷地内薬局のメリット4つ目は、待ち時間が短縮され薬をすぐにもらえる点です。

距離的な短縮だけでなく、病院との連携強化で効率的な服薬管理ができるため、業務効率化に繋がります。

疑義照会への対応業務が軽減されることから、待ち時間が短縮されるのです。

疑義照会とは
処方箋の記載内容に不明点や疑問点があった際に、処方箋を出した医師(処方医)や処方箋を受け取った患者に対して処方箋の内容を確認する業務のこと。

患者さんの安心確保にもつながって一石二鳥と言えます。

5.院外処方における二度手間を軽減できる

5つ目のメリットは、院外処方による二度手間を減らせる点です。

敷地内薬局ではない場合、患者が病院で話したことをもう1度薬局で話さなければいけないケースがよくあります。

なぜなら薬局には、処方せんの情報だけしかないからです。

そのため患者は薬剤師にあれこれと情報を伝えますが、同じことを2回話すケースも多々生じるので二度手間感があります。

病院内にある敷地内薬局なら、二度手間にはなりません。

患者における敷地内薬局のデメリット

一方で、患者側からみて敷地内薬局に対するデメリットは何なのでしょうか?

簡単に解説していきます。

「かかりつけ薬局」の意義が薄れてしまう

敷地内薬局はこれまで医療業界が推進してきた「かかりつけ薬局」の方針・方向性と異なるため、患者が不安に感じやすいというデメリットがあります。

今まで自分の服薬事情を知っている地元の薬剤師と築き上げてきた関係性が崩れる可能性があります。

もしも患者のことをよく知る薬剤師がいれば問題ありませんが、そうでない場合は出された薬に対して不透明な印象を抱いたり不安感を覚えやすいです。

つまり、かかりつけ薬局の意識が自然と薄れてしまいやすいのが難点です。

病院側における敷地内薬局の2つのメリット

病院側には、敷地内薬局にするメリットが主に2点あります。

病院側にとってどんな点がメリットなのかを紹介します。

1.家賃収入を得ることができる

病院側は敷地内の土地を薬局側に貸し出すことで、定期的に家賃収入を得ることができます。

家賃収入があることで、その分病院経営が楽になります。

また、院外処方箋を発行すれば、診療報酬の処方箋料(原則68点=680円)と家賃収入を二重に受け取れるため、余裕を持った経営をしやすくなります(報酬の二重受け取りに関しては一部批判がありますが…)。

家賃収入を得ることが病院の主目的ではないものの、もしも敷地内薬局を誘致できるスペースがあるなら、有効活用するのは合理的な考え方です。

2.薬薬連携を効率化できる

薬薬連携の効率化を見込めるのも、病院側における敷地内薬局のメリットの1つです。

たとえば敷地内薬局と薬剤部、敷地内薬局と地域薬局などの連携強化に期待できます。

敷地内薬局と薬剤部や地域薬局との風通しが良くなれば、患者に対してスピーディーかつ正確に対応できるようになります。

それぞれが患者の情報を連携することで、対応や業務を効率化できます。

病院側における敷地内薬局の2つのデメリット

入院病床を持つ病院を開設している場合、病院の敷地内にある敷地内薬局が存在することでいくつか不都合なことが起こるとされています。

ここでは、病院側からみた敷地内薬局のデメリットについて言及していますので、ぜひご参考ください。

1.クリニックでの受診で済むような身体の不調でも病院を訪れるようになる

本来は入院が必要な重篤な患者を診療するはずの病院が、敷地内薬局を開設することによって、その機能を低下させる恐れがあります。

例えば、クリニックでの受診で済むような身体の不調でも、病院を利用してしまうケースが出てしまい、敷地内薬局がかかりつけ薬局になってしまう恐れが出てしまうのです。

公益社団法人・日本薬剤師会では「患者の薬物療法を安全でより効果的に確保するためには、処方箋の確認と調剤は処方箋を交付する医療機関から独立した薬局において実施されなければならないものである。
」とあるように病院の機能だけでなく敷地内薬局の機能も低下してしまう恐れもあるのです。

2.かかりつけ医、かかりつけ薬剤師の機能が低下する

病院内の敷地内薬局は、時代に逆行するものでもあります。

かかりつけ機能の阻害になるのが一番の理由であり、推進されてきた「地域包括ケアシステム」によって地域に患者さんを戻すつもりが、病院の敷地内薬局の存在によって病院を優先して受診してしまい、地域に戻るのが阻害されてしまうのです。

敷地内薬局は特定の病院に依存するため、「医薬分業の主旨に反している」との声もあがっているほどです。

医療機能の分化・強化をはじめ、機能分化した後のかかりつけ医、薬剤師の職能への影響は決して良いものではありません。

さらに医療計画や、診療報酬改定を含め、国を挙げて進んでいこうとする地域へ患者さんを戻す流れに逆行するのは確実です。

敷地内薬局で働く薬剤師の3つのメリット

敷地内薬局は働く薬剤師にとってのメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。

詳しく解説いたします。

1.処方内容について病院と情報交換できるようになる

処方箋を取り扱う薬局が病院の敷地内にあることで、病院と薬局は連携が取りやすく、患者に関する情報交換を円滑におこなうことが出来ます。

物理的にコミュニケーションが密接に取りやすい距離にあることで、薬局側は病院側の治療方針を理解しやすくなり、それによって薬剤師は患者へのより効果的な服薬指導が可能になります。

投薬治療における重要な要素と言えます。

2.人員不足の際、病院・薬局双方で応援を頼みやすくなる

昨今の医療現場は、常に人手不足に悩まされています。

病院と敷地内薬局はひとつのチームと考えられるようになり、双方の業務を人員不足に応じてサポートし合うことが可能になります。

具体的には、病院薬剤師の業務の一部を薬局薬剤師に担当してもらうことなどが挙げられます。

その反対もしかりです。

これらの取り組みは人手不足による医療の質の低下を防ぐことに繋がり、患者に貢献されます。

3.患者の服薬情報が管理しやすくなる

多剤や重複投薬など、患者への不適切な投薬を防ぐために、医師と薬剤師は患者からの聞き取り、あるいはお薬手帳によって記録された患者の服薬情報(過去の服用歴、現在服用中の薬、それらの効果確認・副作用、ICT活用など全ての情報)を継続的に把握する必要があります。

また、服薬情報の一元管理・継続的管理(副作用・効果確認、重複投薬等抑制・ICT活用 ほか)がしやすくなるために、そこもメリットと言えるのではないでしょうか。

敷地内薬局があることによって双方の連携をより円滑にすることが可能になります。

敷地内薬局で働く薬剤師のデメリット

一方で、敷地内薬局で働く薬剤師に関してのデメリットは何なのでしょうか。

ここまでは地域の医療システムへの悪影響や薬局の機能低下を解説しましたが、薬剤師自身に及ぶデメリットについて紹介します。

病院側の意思とは違う指導をしてしまった場合、病院との関係悪化を招くことになる

敷地内薬局は、完全に独立した薬局でもなければ、完全に病院と一体化した薬局でもありません。

この立ち位置が深刻なデメリットをもたらします。

それは病院の方針とは違った指導をするリスクです。

病院側の良しに反した指導を患者さんにしてしまうと、病院側の治療方針と齟齬が生じ軋轢を生むのです。

そうなると、勤務する薬剤師としては非常に立場が悪くなるのは確かであり、薬剤師自身にも良い影響はありません。

敷地内薬局ができたら病院薬剤師はどうなる?

敷地内薬局ができた場合、病院薬剤師の業務や立場になにか変化はあるのでしょうか。

詳しく説明していきますので、ぜひ知っておいてください。

院外処方になるため業務量が減る

敷地内薬局ができれば、院外処方になるため業務量が減るのがメリットです。

これまで院外処方だったとしても、敷地内薬局に処方箋が行く可能性が高まることから、疑義照会の手間が減ることが期待できます。

そのために、病院薬剤師からしてもこれは非常に助かるのではないでしょうか。

有給休暇や産休・育児休暇の取得がしやすくなる

有給休暇や産休・育児休暇の取得がしやすくなるのも、大きなメリットとなるでしょう。

その理由は、人手不足の際には応援を頼めるためです。

日本調剤が病院薬剤師の産休、育休中に薬剤師を派遣する事業を始めたことにより、病院薬剤師は産休・育休をかなり取得しやすくなりました。

薬局側に雇用される可能性がある

病院の薬剤部の業務が、敷地内薬局に委譲される可能性が高いため、病院薬剤師は最終的に薬局側に雇用されることが考えられます。

病院研修も積極的に実施していて、病院・薬局の互いの薬剤師間の交流も増える分、病院薬剤部と敷地内薬局の垣根がボーダーレス化していくのではないでしょうか。

薬局側からみた敷地内薬局の2つのメリット

1.処方箋応需枚数が増える

敷地内薬局の最大のメリットは、なんと言っても処方箋応需枚数が増えることです。

医薬分業が90%以上進んだ現在においても、やはり門前薬局に処方箋を持ち込む人は非常に多いです。

それが敷地内薬局ともなれば、発行する処方箋のほとんどを独占することも可能なケースもあると思います。

その当然の結果ですが、売上が上がるため、経営状態が良くなることが想像できます。

2.医師や薬剤師など病院スタッフとの良好な関係が構築しやすい

日本人特有の考え・心の持ち方かもしれませんが、同じ場所で働くことで、仲間意識が芽生えることが良くあります。

病院の敷地内の薬局であるため、病院スタッフは敷地内薬局スタッフを仲間と考えるようになり、お互いに良い関係を構築しやすくなります。

良好な関係があれば、多少のミスやトラブルが起こった場合でも、許してもらえることも多いです。

また、働きやすい雰囲気もできると思います。

薬局側からみた敷地内薬局の2つのデメリット

反対に、薬局側からみた敷地内薬局のデメリットとは何なのでしょうか。

2つあるのでそれぞれポイントを押さえておきましょう。

1.高い家賃を支払う必要がある

病院の敷地内に薬局を開設するということは、その土地を病院から借り受ける必要があり、そのためには費用、つまり家賃を支払う必要があります。

一般的に家賃というと、家の広さや近隣の家賃相場などから、空き部屋ができるだけ少なくなるように(稼働率を上げるため)、設定します。

しかし、敷地内薬局の場合、そのような形で設定はなされないはずです。

おそらく、その病院が1日に発行する処方箋枚数から、敷地内薬局が応需すると推測される処方箋枚数を計算し、そこから月の家賃を設定しているはずです。

これにはかなり高い家賃が設定されていると考えられます。

そのため、敷地内薬局として処方箋応需枚数が増えたとしても、高い家賃を支払う必要があるため、必ずしも売上が伸びるというわけではないということです。

もちろん、100%高い家賃が設定されるわけではないですが、病院側としても安定した家賃収入とすることができるため、相応の金額を提示してくるはずです。

2.無理なお願いが多くなる

病院の医師と仲良くなるほど、いろいろなお願いをされやすくなります。

多いお願いの1つとして、採用していない医薬品を処方したいため、準備してくれないかというものではないでしょうか。

この医薬品をそれ以降も継続して処方してくれれば何も問題ないのですが、1回だけの処方で終わるということも多々あります。

すると、その医薬品は不良在庫となり、薬局の経営を圧迫することになります。

このような場合、チェーン展開している薬局であれば、薬局間で医薬品の移動を行い、不良在庫解消に努めることができますが、個人薬局や規模の小さい薬局では非常に大きな問題となります。

この事例だけでなく、他にもいろいろな無理なお願いがあると思います。

また、1つそれを聞くと次から次に依頼され、エスカレートすることも考えられます。

敷地内薬局を勝ち取れるのは、大手のチェーンの薬局

デメリットの1と2を総合しますと、高い家賃を払うことができ、不良在庫の処理が可能な薬局に限定されることになります。

そうなると、必然的に大手のチェーン薬局が敷地内薬局を開設する機会が多くなるのではないでしょうか。

このようなことを見越してか、公募条件の中には「薬剤師会の会員であること」という項目を設けている病院もあります。

大手チェーン薬局の場合、薬剤師会には加盟していないことも多いため、必ずしも大手チェーン薬局が、敷地内薬局を独占できるような状況ではないようです。

メリットとデメリットを考えると、薬局にとって大きなメリットがあるのかというと、それもまた難しいところです。

しかし、やはりロケーションのメリットは大きく、処方箋の応需枚数が増えることは間違いないでしょう。

本当に優先することは、患者さんのことです

敷地内薬局のメリットやデメリットをご紹介しましたが、われわれ調剤薬局が本当に優先しないといけないことは、患者さんのことです。

敷地内薬局になると、公道にでることもなく安全に薬局にくることができます。

備蓄する医薬品は病院の採用医薬品に準じるため、その薬がないということで患者さんを待たせるということもありません。

この規制緩和によって患者さんの利便性が向上するように、やっていくことが重要ではないでしょうか。

付随するも問題は随時議論し、解決していけばよいと思います。

まとめ

今回は敷地内薬局についての現状や、関係者からみたメリット・デメリットについて紹介しました。

最後にもう一度、敷地内薬局が増えるとどうなるかをおさらいすると

  • 患者にとってはメリットが多い
  • 「かかりつけ薬局」の意義が薄れる
  • 病院経営にとっては都合が良い

ということが挙げられます。

「敷地内薬局の問題点を知っておきたい」
「医療界の見解はどうなんだろうか?」

という問題意識を持っている方は、ぜひこの記事の内容を隈なくチェックしてみてくださいね。