介護事務という仕事があるのをご存じですか?
介護施設や居宅介護支援事業所などで介護請求業務をしたり、利用者や職員の情報を管理するお仕事です。
施設以外の外部のお客様への対応もしなければならず、柔軟な対応が求められるため、介護事務の質が施設の評価を左右するといってもいいでしょう。
しかしそれが故に業務や責任の重さ、人間関係などが理由で『辛くて辞めたくなる』ケースがあり、まだまだ万全な体制が整っていない施設があるのが現状です。
今介護事務のお仕事に就職や転職を考え、このサイトにたどりついたみなさん。
もしかすると、自分にあった就職先を見つけるチャンスが訪れたのかもしれません。
主な介護事務の業務4つとは?
介護事務といっても、具体的にどんな業務を行うのか知りたいという方もいますよね。
そこで、介護事務の主な業務は次の4つになります。
- 介護報酬請求事務
- 管理業務
- 電話応対
- 来客応対
それぞれについて説明しましょう。
介護報酬請求事務
利用者の介護給付費用明細書を作成することで、介護サービス費を国・市町村に請求する業務のことを言います。
これは、施設にとっては収入源なので、入力ミスや計算ミスなどがあると、それだけ損失してしまうため、とても重要な仕事です。
そこで、介護事務が請求するレセプト(介護報酬)と利用者への利用料請求についてご紹介します。
レセプト(介護報酬)請求
レセプト請求とは、介護サービスの請求をするときの介護給付費明細書になります。
利用者が介護サービスを受けたとき、自己負担は1割です。
残りの9割は、介護給付費単数表をもとにレセプトを作成して、国や市町村に請求することで事業所は収入を得ることになります。
つまり、事業所の収入の要を、介護事務が担っているということです。
レセプトは、前月の末日までの分を翌月10日までに指定機関に提出しなくてはいけません。
この10日間が、介護事務の業務の中でも最も忙しい期間といえます。
利用者に対する利用料徴収業務
利用した介護サービスの9割を、国や市町村に請求するので、残りの1割は利用者へ請求しなくてはいけませんね。
請求書の作成を行い、利用者に収めてもらうよう、徴収業務も介護事務の仕事です。
寝たきりなどといった利用者の場合、支払いを代わりに行っているのが家族というケースも少なくありません。
病院のように当日に支払うといったことも難しいので、請求してからすぐに徴収するのは難しい面もあります。
管理業務
介護事務は、管理業務も担っている事業所もあります。
事業所の経営面などを把握し、予算や物品の管理を任されることもあるので、ふれていいきましょう。
労務管理
給料計算や、シフトの管理などといった労務管理を任されることもあります。
職員の休み希望を聞いてシフトを組む、夜勤や残業など給料の計算など、間違えてしまうと職員の生活に大きく関わります。
また、新しく入社した人の労働条件通知書の作成など、労働基準法に関わることを担うこともあるので覚えておきましょう。
正確な作業が求められるので、少々重圧に感じる方も少なくないです。
予算管理
毎年組まれる予算について、検討し補正するなどといった経理業務を行うこともあります。
利用者に介護サービス費を請求し、事業所の備品管理などを担う介護事務だからこそ、年間の収支を把握しやすく、適任といえますね。
物品管理
セロハンテープや封筒などの事務用品から、タオルやゴム手袋などといった介護用品などの在庫をチェックして、発注管理をします。
備品がたりなくなってしまうと、業務に支障が出るので重要な業務です。
修繕や営繕
設備の管理を任されるケースもあります。
電球が切れたなどといった場合は交換、設備が壊れたなどといった場合は、業者に連絡して修理を依頼するなど、介護事務が対応します。
電話対応
電話対応は基本的に、介護事務が行います。
市役所や利用者の家族からの電話連絡が多く、多くの場合担当者や利用者など取り次ぐことが主です。
レセプトについてや、費用などの問い合わせについてなどといった内容であれば、介護事務が答えます。
来客対応
来客対応に関しては、窓口として介護事務が対応します。
利用者の家族が訪問した場合はお部屋への案内、来客の場合は応接室などへ案内しお茶出しなどを行います。
そのため、応接室や会議室といった場所の管理や、接遇マナーも必要です。
介護事務を辞めたくなる理由
介護事務が行う業務を見ていると、「やりがいのある仕事では?」と思う方も多いです。
しかしその反面、実際に職に就いてみると、辞めたいという声も少なくありません。
介護事務をやめたくなる理由はどこにあるのでしょうか。
人間関係
介護事務で働く人数は、一般事務より少ないと言われていますが、人数が少ないほど関係が密になります。
また、職場全体にも女性が多く人間関係のトラブルになりやすいです。
事務の職員以外にもケアマネジャーや施設内の職員に対しても柔軟に対応しなければなりません。
介護士や看護師、栄養士など、施設内にはいろいろな職員が在籍しており、事務所以外の人間関係に巻き込まれる可能性があるため、辞めたくなるケースがあります。
人間関係をとりまく環境は、就職しなければ分からないケースが多いため、就職する前にどのような雰囲気の施設なのか、あらかじめ調べておきましょう。
介護職と兼任させられることも
介護施設は人手不足であることが多く、特に感染症などが流行すると、職員の欠席や利用者の体調不良が重なり、介護事務員が介護職の補助として兼務するケースがあります。
しかし、食事の配膳や片付けなどを手伝うことがあるくらいで、直接的に介護をするケースはまれです。
しかし、介護をするつもりが無いはずなのに、就職したら急に介護職と兼務をさせられ、介護の資格を取るように促されるケースがあることも。
あくまでも介護事務として勤務したいのに、介護士と兼務になり、『こんなつもりでは無かったのに…』と気持ちがモヤモヤして辞めたくなるケースがあります。
トラブルにならないように、就職する前に担当者に確認しましょう。
給料が安い
介護事務は、残念ながら給料に恵まれていない職種といえます。それは、介護事務は処遇改善加算の対象の職種であるというのも、一つの要因でしょう。
処遇改善加算は、介護サービス事業で働く介護職員に対し、キャリアップに力を入れたり、職場環境の改善を行った事業所に対し、賃金改善のために支給されるものになります。
しかし、介護事務はこの処遇改善加算の対象外のため、なかなか給与が上がりにくいのが現状です。
仕事内容の種類が多く濃いものもあるのに対し、それに見合った収入を得ることができないと感じる人も少なくありません。
多忙な業務内容
介護事務で多く言われているのが、多忙な業務内容と業務量の多さです。
介護報酬請求業務は国の定めで月の10日までにデータを伝送することになっています。
そのため、利用実績をまとめ、請求を確認する作業で月末・月初めは特に多忙を極めます。
また、利用実績データを失敗することは許されません。
ミスがあると、その月は請求報酬が施設側に入らなくなってしまい、施設側に大変な損害があります。
そのため、とても神経を使うので、慣れるまでは精神的負担が大きいです。
請求業務以外では、利用者の情報管理業務があります。
近年情報管理が厳しくなっているため、行政の目が厳しくなっています。
常に書類の管理をしっかりしておかなければなりません。そのため、業務量の負担が大きく、辞めたくなるケースが多いです。
何でも屋扱いされることも
先にお話ししたように、介護事務の仕事は多岐にわたります。
そのため、「あれ手伝って」と雑用を頼まることもしばしばです。
時には、職務を逸脱した介護まで手伝うといったことも多く、「なんでも屋」扱いされてしまうことも。
そうしているうちに、自分の仕事にプライドを持てなくなるという方も少なくありません。
行動に移す前に改めて考えよう。介護事務のやりがいとは?
辞表を書く前に、まず改めて考えてみましょう。
介護事務は、忘れがちですがとてもやりがいのある仕事です。
縁の下の力持ち
介護事務は一見目立ちません。
しかし、介護事務がいなくては介護サービスが回らないのも事実です。
他の職員が円滑に仕事をできるよう、備品の補充や設備の修繕などを行い、事業所の収入を管理、シフトや給与の計算なども行うので、まさに円の下の力持ちと言えます。
介護職全般のイメージからすると、中心的職業に感じない人も多いですが、間違いなく介護事務がいなければ、職員が自分の仕事に専念することができないでしょう。
様々な知識や情報に触れ、自分磨きにもなる
介護事務の仕事は、多岐にわたります。
そのため次の3つのような知識も必要です。
- 介護技術や知識
- 医療知識
- 社会保障制度
社会的な知識も増えるので、自分のスキルにもつながります。
少数精鋭で工夫のし甲斐がある
介護事務員を多く雇っている事業所は少ないです。
そのため、仕事に慣れると自分だけのペースでそれぞれ仕事をすることができます。
事業所に1~2人といった場合も多く、自分の裁量によってその日の仕事を調節することも可能です。
飽きない多様な業務
ここまでに何度かお話ししているように、介護事務はただ座ってデスクワークをこなしているわけではありません。
電話・来客の応対から備品の管理、時には介護職の手伝いまで行います。
さまざまな仕事をこなすことで、単調になりにくく飽きないのも魅力の一つです。
法人そのものの運営や経営に関わることができる
一般事務であれば、運営や経営に加わっているという実感は持ちづらいです。
しかし、介護事務であれば、予算や給与などの管理業務も行っているので、運営や経営に関わることができます。
事務だけではなく、事業所全体の運営に加わることができるのは、事務職と言われる職業ではなかなかないでしょう。
自分が施設を回している”と感じる醍醐味
極端な話をすると、運営や経営に加わる、職員のシフトや備品の補充・修繕などといった職務は、日常的な業務を“回している”と言っても過言ではありません。
シフトを上手に組めなくては、業務が滞り利用者に十分なケアを行うことができませんね。
備品の補充や修繕を行わなくては、場合によっては他の職員が業務自体できなくなります。
介護事務は、介護サービスという職業の中では目立たない印象ですが、実は裏のドンともいえほど、施設運営に大きく貢献しているのです。
辞める前のもうひと踏ん張り!スキルアップを考えよう
介護事務をやめたいといった場合、現状を打破すべくもうひと踏ん張りをしてキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。
介護事務の資格の中でも知名度が高い、それでいてスキルアップにつながるのは次の3つの資格です。
資格 | スキル |
---|---|
ケアクラーク | 介護事務の知能・技術 高齢者・障害者の心理学 医学一般の知識 |
介護事務管理士 | 施設の受付・会計 レセプト業務 介護保険制度の知識 |
介護事務実務士 | 介護報酬請求事務での能力を示す |
介護事務管理士の資格を持つことで、ケアマネージャーの補佐を行える知識を得ることが可能です。
またケアクラークは、利用者やその家族とのコミュニケーション能力や、利用者の心理への配慮などといった、心のケアも行います。
そのため、介護事務管理士や介護事務実務士よりも、もっと幅広い範囲を対象に学ぶ必要があります。
どの資格であっても、取得することによって、待遇や業務内容に変化があるでしょう。
また、資格を取得したことによって、もし転職先を望む場合でも有利に働くので、キャリアアップしてから退職するという方法もありますよ。
『辞めたい』は変革のチャンス!
介護事務の職員がどのようなことで辞めたくなるのか、主なケースをまとめてご紹介しました。
みなさん「人間関係のトラブル」「残業が多い」など、どの職場でもある理由が多かったですね。
ですが一番とまどうことは、介護職との兼務をすることです。
事務として就職したはずなのに、体力・技術を必要とする介護の仕事をしなければならないのは負担だと言えます。
自分にとってより良い環境で働くためには、事前に採用側の担当者に確認しましょう。
実際に退職する前に考えてほしいこと、やってみてほしいことにも触れました。ですが、それでもどうしてもこの仕事を続けるのが困難と感じることもあるでしょう。
その時は、思い切ってキレイさっぱり行動するのも手です。