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新薬の開発について。製薬会社の薬剤師の仕事内容とは

新薬開発

新薬の誕生、とくに研究や開発に携わる仕事に対して、憧れや興味を持っている方の中には、

「でも実は、どんな仕事をしているのかイマイチ理解できていない…」
「高学歴じゃないと就職できない業界だと聞いたことがある…」
「興味はあるけど、私には無縁の世界カモ…」

といった疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?

ここでは、薬剤師の転職先として注目されている、新薬の誕生に携わる仕事の中から、「製薬会社」や「開発職」というキーワードに焦点を当てて、わかりやすく解説します。

調剤薬局やドラッグストアー、病院だけではない、薬剤師の多様な選択肢を知る事で、ぜひ今後の仕事選びをより有意義なものに変えてみてはいかがでしょうか。

新薬の生まれ方について知ろう!

まずは、私たちが普段取り扱っている薬が、世の中へ誕生するまでのステップを紹介します。

  • step1:基礎研究
  • step2:非臨床試験(動物実験)
  • step3:臨床試験(治験)
  • step4:承認申請・審査
  • step5:承認後の評価

基礎研究

基礎研究とは、将来的に薬として使用される可能性を秘めた成分を見つけ出したり、化学的に生み出す研究を行う段階です。

薬として使用されるカモしれない成分や物質は、植物や動物などの天然素材から発見されたり、いくつかの成分を合わせる事で誕生したり…という具合に、多岐にわたる化学技術のもとで発見されています。

このように見つけ出された新物質についてをリサーチし、選別を行い、薬として使用できそうなものを見つけ出すのが「基礎研究」という段階です。

このステップでは一般的に、2年から3年の月日が費やされています。

非臨床試験

非臨床試験とは、前段階の基礎研究で見つけ出された物質をさらに調べ進めるため、動物や培養細胞などを使用して行われる試験のことです。これは薬の持つ有効性や安全性についてを調べ、製品として開発する価値があるかを確認する段階です。

非臨床試験をパスした成分や物質は、その後人体を使用した臨床試験(治験)へコマを進める事になるので、より信頼性の高い結果が求められます。そのため、安全性試験の実施・記録については「GLP」と言う実施基準が設けられています。

このステップでは一般的に、3年から5年の月日が費やされています。

臨床試験(治験)

非臨床試験で安全性や有効性についてをパスした薬が、実際に人体へ使用した際、本当に安全で効果的であるのかをチェックする最終段階です。

一口に治験と言っても、さらに細かく以下の3段階に分かれています。

  • フェーズ1(第1相試験)…少人数の健康成人を対象に、少しづつ薬(治験薬)の投与量を増やしていき、安全性についてをチェックする。
  • フェーズ2(第2相試験)…治験薬が効果を表すと予測される患者さんを対象に、安全性や有効性、使用方法についてを調べる。
  • フェーズ3(第3相試験)…フェーズ1や2よりも多数の患者さんを対象に、治験薬の安全性や有効性を調べる。

(ちなみに、この前の段階である非臨床試験は「フェーズ0」とも呼ばれています。)

人体への試験なので、あらゆる段階で定められた法律(GCP)に則り、様々な専門家による検討や審査のもと厳正に行われています。また、臨床試験(治験)に参加してもら方々からの同意を得ることも必要です。

このステップでは一般的に、3年から7年の月日が費やされています。

承認申請・審査

治験までのステップで、有効性や安全性などが明らかになった治験薬について、製薬会社は厚生労働省へ対し製造承認を求める申請を行います。

長い年月をかけて研究・開発された薬は、この後何段階にも及ぶ審査を通過することで、はじめて市場に出ることが許されるのです。

なんと、上記で紹介したstep1の「基礎研究」を通過した成分や物質のうち、承認申請まで進むことのできる薬の割合は1万分の1だと言われているのだとか…。

現在市場で流通している薬は、まさに砂漠の砂粒の中からダイヤモンドを見つけ出すような工程を経て、患者さんの手元に届けられているのですね。

販売された後の評価

実際に多くの患者さんたちが薬を使用していく中で、研究・開発のステップでは明らかにならなかった副作用や、正しい使用情報などが報告されることも珍しくはありません。

これらのデータは収集され、医薬品の改善点や副作用、相互作用、使用上の注意などの格好で、薬を使用する医療現場や、開発部門へフィードバックされるとともに、薬の再審査・再評価のための資料として国に報告されます。

研究職、開発職、MR職…製薬会社で分類される3つの仕事内容を理解しよう!

製薬会社からの求人案件は、一般的に以下の3種類に分けて募集がかけられます。

  • 研究
  • 開発
  • MR

上記(『薬剤師が携われるのはどの段階?新薬の生まれ方について知ろう!』)でお話ししたステップごとに紹介すれば、基礎研究〜非臨床試験(動物実験)までの段階は「研究」が、そして臨床試験(治験)の段階には「開発」が携わっていることになります。

以下では、それぞれの仕事内容や違いについて分かり安く見比べてみましょう。

研究職

学問上の新たな発見を目指して、実験を行っている部門です。簡単に説明すれば、まだ世界に存在していない新薬の開発に取り組む事が仕事だとも言えるでしょう。

業務は、多くが研究所での実験で、時々、学会や会議のため出張に出かけることもある様子です。研究職では研究する範囲ごとに班が分かれていて、それぞれのジャンルでの実験を行うことで研究成果を挙げています。

開発職

新薬の開発に向けた、臨床試験を行っている部門です。簡単に説明すれば、会社の利益となる新商品を考え出す仕事をしているとも言えるでしょう。

臨床試験とは、薬の有効性や安全性などをチェックするための実験のことで、人体に対して行われます。研究部門とは異なり、開発部門はさらに細かな部署に分かれて、それぞれが異なる業務に携わっています。例えば…、

  • 試験の企画を行う「プランニング」
  • 試験を行っている医療機関へ赴き、データを回収する「モニタリング」
  • モニタリングが持ち帰った情報をもとに統計分析を行う「データマネジメント」
  • 収集されたデータをもとに書類作成を行う「メディカルライティング」
  • などなど…

このように、一口に臨床試験と言っても、開発部門の関わり方は多岐に渡ります。

薬剤師の転職先として近年注目を集めている「治験」も臨床試験のひとつなので、治験に携わる仕事に憧れているのであれば開発職を目指すことになるでしょう。

MR職

研究職や開発職とくらべて、比較的に仕事内容の知名度が高いのがMRです。製薬会社の営業職であり、高収入が期待できる職業としても非常に人気の集まりやすい仕事だと言えるでしょう。

「Medical Representative」の略称で、和訳すると「医薬情報担当者」となります。自社製品に関係する情報(薬の品質や有効性、安全性など)を、医師や薬剤師の方々へ提供する事が仕事内容です。

文系・理系に関わらずエントリーが可能な選択肢なので、薬剤師の免許を持たない方も多く在籍しています。

新薬を扱う仕事へのつき方〜製薬会社の開発部門につくには〜

上記(『開発職』)でも触れたとおり、最近では薬剤師による治験業界への転職が注目されていて、製薬会社の開発部門の採用を勝ち取るケースも珍しくはありません。採用情報や目指し方について興味をお持ちであれば、一度転職エージェントのコンサルタントへ相談してみる事をオススメします。

しかし、同じ製薬会社への挑戦でも、「研究職」や「開発研究」となれば話は違ってくるでしょう。

開発研究職での就職シーンは、薬剤師というよりも、分子生物学や医学、薬理学、有機化学、サイエンステクノロジーなどの知識に長けた方々が集まるステージであり、そういった優秀な人材と肩を並べる事ができるだけのスペックがなくては、太刀打ちできません。

とくに大手メーカーへの就職ともなれば、ますますハードルは高くなります。必須ではありませんが、少なくとも国立大学の医学部、薬学部、理学部などを卒業する必要があると言っても過言ではないでしょう。

中途採用される場合は、ほとんどが前職も研究職に取り組んだ人材へのヘッドハンティングであり、未経験者や別業種からの転職はほとんど可能性がありません。

開発職への転職を目指す場合…

それでは、研究職よりも比較的ハードルが低いと言われている開発職への転職へ、さらに焦点を当ててお話ししていきます。

「開発職=製薬会社」だとイメージされる方も多いでしょうが、実際には就職先・転職先として、

  • 化学メーカー
  • 食品メーカー
  • 化粧品メーカー

などの選択肢も挙げられます。また治験への関与にこだわって求人を探すのであれば、製薬会社からの委託を受けて臨床試験を行うCRC(受託臨床試験機関)という道もあります。

研究職よりは難易度が低い…と紹介していますが、それでも開発職への転職活動は簡単なことではありません。やはり未経験者では採用を勝ち取れる可能性はグッと低くなるでしょう。

同じ開発の中でも「よりハードルの低い(未経験者でも転職しやすい)選択肢」を望んでいるのでれば、メーカーよりCRCがオススメです。製薬会社やメーカーよりも収入面では劣りますが、年齢が若ければ経験・未経験に関わらず転職を叶えるケースも存在しています。

新薬に携わるなら、CRC、開発職、研究職などの選択肢があります

ここまででお話しした内容から、「新薬の誕生に携わりたい!」という薬剤師の選択肢には

  • CRCへの転職
  • 製薬会社の開発職への転職
  • 製薬会社の研究職への転職

という3つの選択肢が存在していることが見えてきました。とはいえ、研究職への転職は非常にハードルが高く現実味がないので、CRCや開発職を目指す方が堅実カモしれませんね。

いずれにしても、調剤薬局やドラッグストアー、病院などといったオーソドックスな求人と比較して、圧倒的に案件数が少ないという問題が存在しています。あったとしても人気が高く、応募の殺到が予測されるでしょう。

治験業界や新薬に携わる転職先をお考えなのであれば、より多くの情報を集めて少ないチャンスを逃さない工夫が必須だと言えるのではないでしょうか。