「○○のおばあちゃんがデイサービスに行き始めたみたい」なんて言葉を、親や近所の人から耳にしたり、高齢者同士の会話にも「デイサービス」という言葉がよく出てきたりするようになってきました。
高齢者福祉サービスの中でも一般的である「デイサービス」ですが、どのようなサービスが提供されているのか、ご存じでしょうか?
デイサービスとは?利用目的やサービス内容を知っておこう
デイサービスの目的・概要
利用者が自宅から施設等に通い、レクリエーションを受けながら、食事や入浴などの生活援助を受けることのできるサービスです。
デイサービスの対象は
デイサービスにおけるレクリエーション
身体介護だけでなく、「通う楽しみ」であるレクリエーションを提供します。
利用者のなかには、希望してデイサービスに通う方がいれば、介護者である家族の休息や仕事のために、嫌々ながら通っている方がいます。
よって、デイサービスに通い始めた時は「どうして私がこんな所にこなきゃいけないの」「家にいたい」という方も多くみえます。
そんな方たちにレクリエーションを提供して、楽しい時間を過ごしてもらう。通う楽しみを感じてもらうように支援することが重要です。
デイサービスの利用開始までの流れ、一日の流れについて
デイサービス利用にあたって
いざ、デイサービスの利用したいと思っても、(よほどの緊急的な理由が無ければ)制度上すぐには利用ができない仕組みです。
まずは利用の目的が何なのか?を十分に考えて、近くで利用できるサービスが無いか調べてみましょう。
- 地域包括支援センター
- 市役所の福祉課・介護保険課など
利用開始までの流れ
次の流れでデイサービスを利用することになります。大切なことは何のためにデイサービスを利用するのか、どういう状態になることが狙いで利用するのかを明確にしておくことです。
- 利用目的・成功の形など、本人や家族を交えて話し合う
- ケアマネージャーがプランを立てる
- 個人の目標や希望、好みを考慮し、実際に見学をしてもらう
- 体験利用をし、デイサービスとはどういった所かを知ってもらう
- 本利用(一般的利用の開始)
※利用開始後、目的あっているか等を確認して、利用の時間や日数を調整していく事も重要です。
デイサービス、1日の流れは?
デイサービスと一言でいっても、各施設が提供するサービスには特徴があります。
ここでは、一般的なデイサービスの1日のおおまかな流れについて説明します。
利用されるデイサービスによっても違いがありますが、主に、5~7時間の利用と、7~9時間の利用があります。入浴(希望者のみ)、昼食、レクリエーション(制作やゲーム等)をして、おやつを食べて、帰るといった流れが一般的です。
タイムスケジュール(あくまで目安です)
時間 | 流れ |
---|---|
10:00~ | 来所 |
11:00~ | 体操(午前入浴) |
12:00~ | 昼食 |
13:00~ | 休憩:読書:自由時間 |
13:30~ | レクリエーション(みんなで取り組むもの:製作物:ゲーム) |
入浴 | |
15:00~ | おやつ |
15:30~ | お帰り前体操 |
16:00~ | 送迎 |
デイサービスについては、季節・曜日によって外部からボランティアが来て、手芸や音楽療法、健康体操といったものがプログラムされている場合があります。
また、季節の催事や、園外へ出て買い物したり、年間のイベントとして組み込まれている場合があります。
施設の規模によって利用者の数が違いますので、それに対応する職員の人数も違いがあります。多くの利用者がいれば、その分職員数も多くなります。
大きな施設であれば、一度に複数の利用者を入浴させる事が出来るため、午前と午後に分けて入浴を行います。
また機械を使用しての入浴もあるため、歩行の不自由な利用者や車いす利用の方でも無理なく入浴ができます。但し、小規模で家庭的な雰囲気が特徴の施設では、利用者の障害程度によっては入浴が困難な場合があります。
デイサービスを利用するメリット・デメリット
デイサービスの利用目的や、内容が分かったところで、利用に関するメリット・デメリットを整理します。
デイサービスを利用するメリット
- 在宅で過ごす上で社交の場ができ、活動の幅が広がる
- 在宅では難しい入浴をすることができる
- 規則正しい生活で、日常のリズムができる
- 家族の負担軽減効果がある
- 客観的に健康管理ができる
デイサービスを利用するデメリット
- 介護保険利用しているが費用がかかる
- 行きたくないデイサービスに嫌々参加で精神的負担に
- 介護保険を利用することで、他のサービスとの調整が必要になることがある
やはり、一番のメリットは、利用者の方の自立した生活を維持につながることです。
デイサーサービスを利用する事で、日常的な生活リズムが出来てきます。在宅で動かないでじっとしているといった事がなく、身体機能の維持といった効果にも大きく働きかけます。
また、他の人と会って話したり楽しみを持つことで、精神的な充足感を味わう事ができます。これによって、不安な気持ちが安定するといった事も多くあります。
さらに、利用される本人以外にも、家族の方の負担軽減効果といった大きい役割があります。
24時間、一緒に暮らす事によるストレス等が家族の方にもある為、こういったデイサースに行っている時間が、家族の方の休息の時間になります。
様々な工夫が大切!利用者を楽しませるレクリエーション
利用者にとって、デイサービスでの最もの楽しみは「レクリエーション」です。では、施設ではどのようなレクリエーションが提供されているのか、具体的な内容を紹介します。
デイサービスによっては、全体で行うレクリエーションだけではなく、利用者が自分で選んで参加する「クラブ活動」(ペン字、カラオケ、アロマなど)を実施している所があります。
また、外出支援を目的としたレクリエーション(お花見、お彼岸、買い物など)を行う所があります。喫茶店が併設されていたり、売店が併設されていたり、季節ごとの行事に力を入れているデイサービスもあります。
現在ではデイサービス自体が多く、各施設はいかに利用者を増やしていくか努力しています。提供する介護だけではなく、趣向を凝らしてレクリエーションを企画し、実施するのが好きな方にはおすすめな仕事ですね。
「どんなレクリエーションが喜ばれましたか?」現場の声を調査
予めB4サイズくらいの大きなトランプを画用紙で作っていました。そして、利用者さん7,8人に輪になってもらい、その真ん中にトランプを積み上げ、スタッフがシャッフルしてから1枚いちばん上のトランプをピックアップし、利用者さんにみせます。そして順番に利用者さんに次の1枚のトランプが最初のトランプの数字より大きいか、それとも小さいかあててもらうレクです。
やはり単純なゲームなので初めての利用者さんもすんなりとルールが頭に入ってきたようで、よかったです。1回外れるとそれで終わり、当たったなら連続して回答できるのですが偶然の要素もあり思考の要素もあるので興味深いゲームだったようです。以前にもやったことがあるのですが、同じ利用者さんばかり勝つということもなく、白熱していました。 利用者さんによって性格がでるのも個性的でした。慎重な利用者さんは1回当たってもそれでおしまいにして手堅くポイントを獲得していました。一方冒険というかチャレンジ気質の利用者さんは何度もチャレンジして時にはたくさんのポイントを得ていました。 途中めくっていて次のトランプの絵柄も見えてしまったりするハプニングもあるのですが、きちんとスタッフがシャッフルしなおしたりしてスムーズにレクが完了しました。
チラシを準備して、チラシの内容を見たあとにビリビリに破いたり丸めたりするレクリエーションをしました。まずはそのチラシの中から一番安い商品を探して、次に高い商品を見つけてもらいます。 終わったら、「こんな高いの買えない!」と言いながらビリビリに破り、その後丸め固めてボールにして遊んでもらい、ゴミ箱にシュートするレクリエーションを行いました。
レクリエーションの内容がマンネリ化していたので、そばにあったチラシをまずは読んでもらうことにしました。始めは値段を見て頭の体操をと思ったのですが、みなさんチラシを見ただけでお買いもの気分になっている様子を見ても、このレクリエーションは好評だと実感しました。 しかし、あっという間にみなさんチラシの値段を探してしまったので、時間が余り、偶然私が持っていたチラシが車のチラシだったので「こんな高いの買えない!」と言いながら破ってみると、皆さん爆笑して同じ様に破り始めたのです。 それを見て丸めてボールの様にしたのですが、力が弱い人は丸めるのが足りなくて刻んだチラシがボロっと落ちてそれを見てまたしても爆笑、最後は玉入れのようにゴミ箱にシュートするのも、入れることができない人も出てきたりと、小さな運動会気分を味わえ、今では皆さんのお気に入りのレクリエーションとなっています。
利用者さまの中にどうしても笑わない方(仮にAさん)がいました。次のリクリエーションでは特にその人を笑わせることを目標としました。そこで開催したのが、職員たちによる劇です。 Aさんは昔教師の仕事をしていました。それをヒントに学校での一日を劇にしようと考えたのです。題名は「○○学校の一日」。学校で笑えそうなことをまとめたコメディ劇です。
最初は職員たちだけの劇を演じました。学校でのトラブルや失敗談など、利用者さまにも共感できる内容だったと思います。 後半は職員たちが先生役になり、利用者さんたちを生徒役に見立てたコメディは皆さんの笑いを誘う事ができたと思います。利用者さんを「ハイ○○さん!」と生徒のように呼んだり、「○○さんは給食を残しましたね」など、実際に食事を残すことの多かった人を題材にしたりした部分は皆さんに大ウケだったと思います。 しかし、Aさんは中々笑いませんでした。そこで私たちはAさんを先生役にすることにしたのです。そして、私たちが生徒に扮し、質問したりおかしなことを言ったりしました。徐々にAさんの顔はほころんでいき、最後に「先生ありがとう」と言ったときには涙をながして喜んでいましたね。
家庭用ゲーム機のWii・WiiUを使って、ダンス・歌・テニス・ボウリング・アーチェリー・ゴルフ・フリスビーなどの体を使って行うレクリエーションをしたり、寄付された3DSを使ってクイズやすごろくなどの脳トレ系の頭を使うゲームをスタッフが高齢者の人について教えながらレクリエーションの一環として行うことです。皆で一斉に行うのではなく、交代で行うレクリエーションです。
当たり前に現代の人にはお馴染みな家庭用ゲーム機でも、デイサービスに通う高齢者は70代後半から90代前半の方が多いので、画面越しにゲームを楽しむことに新鮮さを感じるのか、皆楽しそうに笑顔が絶えなかったことです。 例えば、ペットボトルを使ったボウリングや風船を使ったバレーだと、単純すぎて馬鹿馬鹿しいと思って楽しんでいない高齢者の方も一部いるのですが、現代のテレビゲームはリアルさと新鮮さを体感できるので、実際に体験しているかのように真剣にプレイすることができます。 WiiやWiiUなどはテレビ画面を通して行うので、高齢者が画面を見ながらオシイとか頑張れと言って、熱中して楽しんでいることが目で見てとれるため、つまらなさそうに暇そうにしている方は見かけなかったので成功したと感じています。
「うまく行かなかったレクリエーションについて」現場の声を調査
だいたい人数は6,7人の利用者さんだったのですが、その頃年末だったのでよく京都のお寺で毎年恒例でやられているその年1年を感じ1文字で表すという行事をまねして利用者さん皆さんに大きな画用紙にマジックでその1年を感じ文字で表してもらうというレクリエーションをしました。 その後それぞれの利用者さんにその漢字を選んだ理由などを聞きました。
まず漢字1文字で表すというのはなかなか難しいことで悩まれて画用紙をグシャグシャにしてしまわれる方もいました。そばで簡単にアドバイスさせてもらい、何か楽しかったことがあったなら「楽」「嬉」はどうですかとお声かけしたのですが納得いかれてないご様子でした。 また利用者さんの中には家族を亡くした方もいらっしゃり、漢字は「亡」という漢字を書かれていました。その時点で少しまずかったなという思いがあったのですが、一応理由をお聞きしないわけにはいかず、お聞きするとどうしても家族を亡くした辛い体験、しかもなかなか生々しい直近の体験を話させてしまうことになり、その利用者さんにも、周りで聞いている利用者さんにも辛い時間にしてしまった。その点で失敗だったと思いました。
デイサービスってお昼のお仕事だけ? 残業は? お給料は?
デイサービスの勤務時間・残業の有無
デイサービスと聞くと、やはり昼間施設に通って夕方帰るイメージが強いと思います。
実際昼間だけのデイサービスは多く、仕事も昼間だけというパートタイムで勤務をすることができます。子どもがいる主婦には便利で、時間を整理したうえで働けます。
一般的なデイサービスの場合は夜勤がありませんので、1日あたり8時間の労働になります。また、残業が少ないのも特徴です。
デイサービスで夜勤? お泊りデイサービスとは
一般的なデイサービスは入所施設ではなく、通所施設であるため夜勤帯の勤務はありません。
但し、「お泊りデイサービス」を実施している事業所では夜勤帯での勤務が発生しますので注意が必要です。
お泊りデイサービスとは…
気になるお給料
夜勤帯での勤務が発生しないため、基本的には介護老人福祉施設などの入所施設と比べると安い傾向にあります。
私の知り合いAさんは、独身女性でバリバリ働いて稼ぎたいので、入所施設である介護老人福祉施設に勤務し、月に4回程度夜勤に入っています。
一方Bさんは結婚してお子さんがいるので、夜勤ができない。旦那も働いているし、入所施設ほどの給料は必要ではないのでと、割り切ってデイサービスに勤務しています。
このように、自分の都合に合わせて入所施設を選ぶのか、通所施設を選びましょう。デイサービスでも役職が付けば、手当が給料に加算されるはずです。
デイサービスと一言でいっても種類は様々!
一言にデイサービスといっても、大規模型、中規模、小規模、民家型、リハビリに力を入れているリハビリ型、認知症の方限定の認知症対応型と、沢山の種類があります。
大規模~中規模型デイサービス
たくさんの利用者と関わって自分のスキルを上げたい人におすすめ
民家型デイサービス
ゆっくりと利用者と関わっていきたい人におすすめ
リハビリ型デイサービス
利用者が元気になっていくお手伝いをしたい人におすすめ
認知症対応型デイサービス
認知症を学んでいきたい人におすすめ
介護士カモの勘違いしやすい要注意ポイント!
規模が小さいからといって利用者が絶対に少ないわけではありません。
例えば10名規模のデイサービスだからといって、利用者が必ずしも10名というわけではありません。例えば30名いる利用者が、月曜日と木曜日に10名、火曜日と金曜日に10名、水曜日と土曜日に10名と日々入れ替わっていく状況ですので、実際はかなりの人数を対象にするので、入れ替わりが激しい所は向いてないと思う方には、難しい現場かもしれません。
沢山の要望に応える「対応力」が試されます
サービスをあれこれと企画して、利用者がこんな所なら通いたいと思えるようなサービスを作っていくことは、デイサービスの介護職としての務めです。
利用者とコミュニケーションをとるのが好き、レクリエーションを考えるのが好き、何より利用者が楽しいと思う現場を作りたいという方は、一度デイサービスを経験してみるのはいかがでしょうか。
デイサービスについてのまとめ
高齢者の方が自分の住み慣れた所で自分らしく暮らしていくために、社交の場として提供されているデイサービス。
心のゆとり以外にも身体機能の維持、精神的な不安の解消、そして介護者の支援といった大きな役割があります。
デイサービスでは、血圧や体温などのバイタルチェックを行います。体調について本人や忙しいご家族の方が気が付かない事でも、デイサービスを利用する事で早期発見に繋がることがあります。
また、家族とずっと24時間過ごす事でお互いにストレスを感じてしまい、関係性が悪化する恐れがあるため、適度な距離・時間を分けるために使われます。
精神的にストレスが続くと、持病が悪化したり、認知症を発症する恐れがあります。こういった家族の方のストレスを減らす意味でもデイサービスは重要な役割を担っています。
高齢者の方がデイサービスに通っている間に、ご家族の方は必要とされる所に出かけることができますし、その時間の一部で休息をとったりすることもできるようになります。