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終末期の看護で家族ができることや医療関係の役割について

患者・家族親族・医療関係者の三者が満足する終末期がある

米国56.0%、英国54.0%、フランス58.1%、スウェーデン42.0%、オランダ35.5%…これは病院で亡くなる人の割合を示した数字。つまり、アメリカもイギリスも2人に1人弱は病院以外で亡くなっているのです。

それに対して日本では82.4%が病院やクリニックで亡くなっています(2005年)。

※参照 ダイヤモンドオンライン

なぜ日本は8割もの人が病院で亡くなるのか…その理由は様々ですが、はっきりしているのは老人医療費が安いことに尽きます。

今でこそ後期高齢者医療負担が1割負担から2割へとアップされましたが、身寄りのないお年寄りが病院に搬送され死亡しても医療費は長らくゼロの状態でした。

健康保険でも埋葬料が5万円、10万円と賄えることもあり、看取り専門の看護師長や担当医師には葬儀社からの付け届けが切れない…という話もまんざらではないようです。

そして昨今は核家族化が定着して終末期を迎えた「本人」の意志かどうかがはっきりしないまま病院で荼毘に付される患者が後を絶ちません。

そして遺族となった親族が終末期患者を前にモメるのもありふれた光景となってしまいました。

いったい何がどうモメる原因のでしょうか?

延命治療でモメる

弁護士が抱える終末期問題の多くは相続です。特に土地家屋を所有している当事者が寝たきりとなり、自分の意志で署名捺印できないケースや、自己表現が叶わないケースも出てくるでしょう。

相続権を有する親族は、自分に割り当てられる財産や自分には不要な土地、財産価値の低い極小家屋などで分配方法で多いにモメるのは予想しやすいところです。

ここに相続人本人が当事者能力のない状態の場合、問題は一層複雑化します。延命治療する方がいいのかしない方がよいのか…それによって相続面でのメリットのある人とそうではない人。

単純に相続人の人格を考えて延命させるのか否かを思い悩む親族…人は、無情にも静かに旅立つ人よりも目の前の金銭欲には勝てません。

だからこそ、看取りの場面に遭遇「しそうな」病院関係者は、アドバンス・ケア・プランニングに非常な関心を持っているのカモ。

これは当事者(親族)が交渉能力を失い、たとえ争乱状態になっていても、病院は一定の倫理観を持って適切に果断に処置するというものカモ。

ゆりかごから墓場まで、はまさに日本の医療制度そのものになっているのカモ!

アドバンス・ケア・プランニングとは何か

「平穏死」という言葉があります。末期ガン患者の中には疼痛がひどく、治療というよりも看取りまでの疼痛ケアになることがよくあります。

中には最後まで鼻からチューブを入れられる状態の患者もあり、患者本人の苦しそうな容態を見る家族の複雑な心境はなかなか言い表せないものだ、と言います。

平穏死はまさにこうした”尊厳のない死に様”(と言う人もいる)からの解放を表現した言葉ですが、医療の世界では存命中はギリギリまで抗がん剤投与で看取るケースも正常なのです。

ただ、人の死は本人だけでなく家族にも重要です。ですから、医療方針としてのアドバンス・ケア・プランニングが必要となるのです。

アドバンス・ケア・プランニングとは、末期患者の「どう逝きたいか」を看取りの日まで計画的に実行すること。

自分で話すことも意志を伝えることも出来なくなった患者にふさわしい看取りにするための、タイムスケジュールは治療・食事・入浴・口腔ケア・手足のマッサージ・トイレなど担当するプロが家族に寄り添って実行に移して行きます。

看取りの仕方、という冊子を病院が作成して患者の家族に提供することも有効。家族の平穏さがなければ、このターミナルケアは成功しないからです。

これは人間が本来生まれてくるときの妊娠期、出産期を計画性を持って管理することと同じカモ。時間軸と対象者への尊厳をシステム化するという意味で、優れた方法カモ。

本人の意志だけを尊重しない必要性も

生前に「延命治療はしないこと」と書き置きした終末期患者。その書き置きを法的根拠として、加療せずに苦しむままの患者をただ眺めながら看取る家族…そういった状況があります。

医師は医療人の立場で精一杯の治療を行うでしょうが、そこには患者の意思が受け入れられるものでなければ、死後に家族から訴えられる危険性も出てくるからです。

医療訴訟で最も多いのは誤診ですが、中には「延命すれば助かったはずが、放置された」と家族が憤るケースも実際にあります。

そのために、故人の意思尊重というアドバルーンを挙げる必要が出てくるのです。ただ、それも家族の考え方とは相容れないケースもあるでしょう。

自宅で看取りたいという家族と、家族に迷惑を掛けたくないと病院死を望む当事者。その辺りをじっくりと判断するのが病院のチーム医療になります。

しっかりした「看取り図」があれば、家族親族は全面的に信頼して任せるのです。

看取りは精一杯行うことで、全てが報われる行為

どう逝きたいか…これは当事者が思い描く終末期。ただ、突然この世を去らなければならない人も少なくない現実があります。

医療が高度に発達している日本だからこそ、突然死に対する手厚いターミナルケアがなければなりません。

その理由は当事者のため、家族親族のため、そして医療関係者のためにあります。

しっかりしたシステムがあり、全員が参加したターミナルケアと看取りならば、全ての人に満足が与えられるはず。