さまざまな職業の中でも年収が高いという印象の強い医師ですが、勤務医になった場合、具体的に平均年収はいくらなのでしょうか。
今回は勤務医の平均年収を年代別、勤務先別、地域別などで比較して検証してみました。
この記事を読むことで、勤務医として働いた場合の年収目安がわかるようになるので、ぜひ最後まで読み進めてください。
勤務医の平均年収
勤務医の平均年収は、厚生労働省の「第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)」による調査だと、一般病院で約1,468万円、一般診療所で約1,083万円超と記載されています。
これは、常勤の勤務医としての報酬分だけを計算した平均年収です。
勤務医の多くは、これに加えて非常勤医としても勤務しているため、アルバイトなどの非常勤医分の報酬を加えると、得ている年収はアップすることになります。
また、年齢や勤務先によっても平均年収に違いが生じます。
詳しく見ていきましょう。
【年代別】勤務医の平均年収
勤務医の平均的な年収は、毎年厚生省から発表されている職業・年齢・性別などに区分された賃金資料によってある程度のものを把握することができます。
医療機関の規模などによって差も大きいのであくまで参考になりますが、年代別でその傾向を見ていきましょう。
20代・勤務医の平均年収
20代は医大を卒業してまずは研修医として過ごすため、そのほとんどの時期であまり高い収入にはなりません。
20代前半の男性で約470万円、女性で430万円程度になります。
後半になるとやや上がり、男性で約750万円、女性で650万円ほどになります。
ただしこれはあくまで勤務医としての収入なので、アルバイトなどもしているともう少し高くなるでしょう。
30代・勤務医の平均年収
30代は仕事にも慣れてきて、実績も積み上がっていくので男女ともに年収は1,000万円を超えるようになってきます。
30代前半は男性の場合で約950万円、女性で約1,000万円。
後半になると男性で約1,200万円、女性はほぼ同じ、約1,000万円です。
この頃になると管理職業務も増えてくるので、将来のことを考えて開業なども視野に入ってくるでしょう。
40代・勤務医の平均年収
40代は管理職業務や若手医師の指導だけでなく、役職に就いて人脈なども広がってくるようになります。
男性医師は40代前半で約1,350万円、後半で約1,600万円。
女性は前半で約1,200万円、後半で1,300万円ほどが平均です。
この頃には実際に開業に踏み切る医師も増え、開業がうまくいくと2,000万円から3,000万円程度の収入になると言われています。
50代・勤務医の平均年収
50代には将来の道もほぼ決められており、勤務医として病院に残っている場合には、そこから開業を考えるといった医師の数は少なくなります。
病院に残っている場合には役職や、経営に関わることもあり、男性の場合で50代前半は1,800万円程度、女性は1,300万円程度。
後半になると男性が1,900万円程度、一方の女性は1,150万円ほどに下がります。
60代・勤務医の平均年収
60代になると定年も見えてくるため、特別な役職などに就いていない場合には、年収の上昇もやや落ち着いてきます。
50代後半の女性が下がっているのもそのためと思われ、実働時間なども年齢によって少なくなっていくと考えられます。
60代前半は男性が約1,900万円、女性が1,300万円程度です。
ただしこの辺りで女性は退職も増え、大規模な病院では年収のデータがあまりなくなっていきます。
70代・勤務医の平均年収
70代は多くの医師が定年を迎えるか、また高収入を求める医師はすでに開業しているため、病院などで勤務医として続ける医師の平均年収は下降傾向になります。
男性の場合で1,200万円程度、女性の場合で700万円程度です。
この男女の差は、実働できるか否かによって違いが出ていると考えられます。
【勤務先別】勤務医の平均年収
ここでは、勤務先別の平均年収を解説します。
傾向として、一般的に社会的名誉があると言われる大学病院や、都市部の大病院ほど平均年収自体は低い傾向にあるのが大きな特徴です。
民間病院の平均年収
民間病院の平均年収は、一般的な医師で1,100万円から1,200万円前後となっており、病院長クラスになると2,000万円超にもなります。
このように民間病院の医師の年収は、平均より高めになっているのが特徴です。
大学病院の平均年収
大学病院の平均年収は、助教授で500万円超程度、教授であっても900万円前後程度となっており、民間病院や勤務医全体の平均年収よりも低くなっています。
その一方で、大学病院は医療技術の環境が最先端であり、また社会的にも名誉が高いというのが特徴です。
国立病院(国立病院機構)の平均年収
国立病院の平均年収は1,300万円超が平均年収となっていますが、勤務する地方によって違いがあります。
これも民間病院と大学病院の年収の相関と同じ様に、東京23区などの都市部の大病院であれば、逆に平均年収が低くなる傾向にあるのが特徴です。
【地域別】医師の平均年収
ここでは、医師の平均年収を都道府県別で見た場合の数値を紹介していきます。
どの都道府県の医師が高年収を得ているのか知りたい方は、ぜひチェックしましょう。
※この章で紹介する表は厚生労働省が「賃金構造基本統計調査」で公表している令和2年(2020年)の年収数値を基に株式会社シフィットが作成しています。
【都道府県別】医師の平均年収ランキング10選(男女計)
以下は都道府県別の医師の平均年収を高い順に並べた表です。
男性・女性の医師を合わせた平均年収の数値で、平均年齢と平均勤続年数も記載しています。
都道府県 | 平均年収 | 年齢【歳】 | 勤続年数【年】 |
---|---|---|---|
山梨県 | 1,863万1,100円 | 46.5 | 8.9 |
群馬県 | 1,819万4,000円 | 56.7 | 15.3 |
愛媛県 | 1,800万8,000円 | 49.1 | 7.4 |
岐阜県 | 1,787万3,800円 | 44.5 | 7.3 |
石川県 | 1,780万8,500円 | 46.2 | 8.3 |
佐賀県 | 1,761万4,000円 | 46.3 | 9.3 |
香川県 | 1,707万5,900円 | 48.0 | 7.6 |
広島県 | 1,666万3,100円 | 46.2 | 6.7 |
滋賀県 | 1,622万9,600円 | 45.7 | 6.1 |
埼玉県 | 1,601万9,600円 | 43.7 | 4.8 |
都市部というよりは地方の方が年収が高いですね。
これは、診療科や二次医療圏によって地方には人口あたり医師が少ないため、需要があるのに供給量の少ない地方の医師の方が年収が上がりやすいです。
医療圏の種類については以下を参照してください。
出典:2次医療圏|きょうのことばセレクション|日経をヨクヨムためのナビサイト
人口あたりの医師数が多い都市部では年収が低く、医師の少ない地方では年収が高い傾向があるのです。
一番年収が高い平均年齢は40代半ばから50歳にかけてで、平均勤続年数は6年~9年あたりがボリュームゾーンとなっています。
男性医師の平均年収が高い都道府県ランキング10選
以下の表は都道府県別の「男性医師の平均年収」を高い順に並べたものです。
地域 | 平均年収 | 年齢【歳】 | 勤続年数【年】 |
---|---|---|---|
山梨県 | 2,052万8,000円 | 48.8 | 9.8 |
愛媛県 | 1,920万4,400円 | 51.8 | 8.1 |
佐賀県 | 1,856万9,700円 | 48.4 | 10.6 |
石川県 | 1,849万8,200円 | 47.4 | 8.5 |
群馬県 | 1,832万5,000円 | 57.3 | 15.0 |
岐阜県 | 1,830万6,300円 | 45.4 | 7.7 |
埼玉県 | 1,802万1,300円 | 46.9 | 5.5 |
滋賀県 | 1,781万1,300円 | 48.4 | 6.8 |
香川県 | 1,740万6,400円 | 48.6 | 8.1 |
広島県 | 1,722万3,700円 | 44.7 | 7.4 |
やはり地方の方が医師の年収が高い傾向にあるのが見て取れます。
一番年収が高い平均年齢は40代後半で、平均勤続年数は5.5年~10年の医師が多いです。
女性医師の平均年収が高い都道府県ランキング10選
以下の表は都道府県別の「女性医師の平均年収」を高い順に並べたものです。
地域 | 平均年収 | 年齢【歳】 | 勤続年数【年】 |
---|---|---|---|
群馬県 | 1,710万5,700円 | 51.1 | 17.8 |
福島県 | 1,619万0,900円 | 48.5 | 7.5 |
富山県 | 1,586万5,500円 | 55.9 | 9.6 |
広島県 | 1,541万7,500円 | 49.4 | 5.3 |
石川県 | 1,527万2,800円 | 41.8 | 7.6 |
香川県 | 1,446万9,000円 | 43.3 | 3.5 |
北海道 | 1,444万9,600円 | 43.6 | 4.0 |
大分県 | 1,429万4,800円 | 45.8 | 6.5 |
宮城県 | 1,405万4,800円 | 41.0 | 7.4 |
愛知県 | 1,403万1,700円 | 39.9 | 7.4 |
女性医師も地方の方が年収が高いですね。
平均年齢は40歳~50歳で、平均勤続年数は3.5年~7.5年くらいが多いです。
男女ともに群馬県だけは、平均年齢と平均勤続年数の数値が群を抜いて高いというのがわかります。
【勤務医以外】高年収を得られる働き方と給与相場
勤務医以外で高年収を得られる働き方として挙げられるのが、全て非常勤医として働くフリーランス医師と、開業医です。
ここでは、それぞれの平均年収と働き方を解説します。
アルバイト・フリーランス医師の平均年収
アルバイト・フリーランス医師の平均年収は、基本的に勤務医と同程度が高くなる傾向にあります。
特に、常勤をせず全て非常勤医師として働くフリーランス医師の場合は、勤務医と比較して年収がかなり高くなるのが特徴です。
例えば、週5日フリーランス医師として勤務する場合、日給を8万円超としても年収は2,000万円前後となります。
常勤医の平均年収に週1日の非常勤医収入を加えた年収が約1600万円前後ですので、フリーランス医師とは約400万円の年収差があるのがわかります。
開業医の平均年収
開業医は、医師の中でも特に平均年収が高いのが特徴です。
厚生労働省の調査によると、開業医の平均年収は2,700万円から2,800万円となっており、勤務医の約2倍以上にもなる高い平均年収であることがわかります。
このように、医師としてより高収入を実現したいのであれば、開業医を目指すのが一つの目標となります。
ただ、開業時には個人で多額の初期投資が必要であるという高いハードルがあり、経営者の立場としてのマネジメント能力も必要です。
そのため、高収入である反面、開業するには決して小さくないリスクを覚悟しなければなりません。
勤務医が年収2,000万円超を目指す7つの方法
医師の収入は一般的に1,000万円から1,500万円程度と言われています。
給与としてはその辺りで頭打ちになり、もしも年収2,000万円以上を目指すならば他の方法も模索していく必要があります。
ここでは、その7つの方法について紹介していきましょう。
1.当直・残業を増やす
もっともオーソドックスなのは、現在働いている医療機関において当直や残業の量を増やすということでしょう。
働いた分だけ収入が増えることはもちろん、手当てによって通常の勤務よりも割が良くなることは少なくありません。
スキルもそれに比例して上がっていくので、特に体力のある若いうちには試してみるのもいいでしょう。
2.バイトをする
医師の資格はアルバイトにおいても活かされるものであり、学生のアルバイトとは収入の桁も違います。
医局などに相談したり、転職サイトを利用すれば求人も数多く、常勤の隙間を見つけてこまめに働くことも可能です。
そのぶん自由な時間などは削られてしまいますが、そこでしっかりと働けば500万円以上は十分に稼げる額です。
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3.フリーランス医になる
フリーランスというと不安定な印象も受けますが、原則的に全てを賄う個人事業主となるため、そのぶん収入は通常の勤務医よりも大きいものとなります。
経費や福利厚生なども自身の収入から支出することになりますが、同じ業務でも一般的な勤務医より相場は高く、またスケジュールも自由に組みやすいため、より自由と収入を求めてフリーランスに転向する医師も少なくありません。
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4.副業や投資をする
医師には他の医療現場で働くというアルバイトの形もありますが、そうした直接的な医療とは別の副業で収入を得ている医師もいます。
自身の経験や知識を活かすならば、講演や執筆活動といったものも需要があれば成立します。
また他にもSNSやYoutuberとしても、医療に関係しないものももちろん、医学知識を活かした発信により収入を得ることも可能でしょう。
他にも全く別の方法として、株式投資や不動産投資によって収入を得ている医師もいます。
5.出世して一定以上の役職に就く
こちらも当直やバイトなどと同じく勤務医としてオーソドックスな方法ですが、よりスケールを大きく、真面目に働いて出世を目指すというのももちろん収入増加への道です。
勤務している病院などで評価されて一定以上の役職に就けば、給与が上がることはもちろん、様々な手当や人脈の広がりによって副業に近いこともでき、より収入アップを見込むことができます。
6.医師需要の高い地方や離島で働く
地域によっては医者不足に悩まされているところは未だ多くあり、そうしたところでは実は、都市部よりも高い収入が見込める求人が出ていることは珍しくありません。
それだけに環境的には難しい部分もあるので人によってはまったく視野に入らないかもしれませんが、地方の暮らしに抵抗感がなく、たとえば高齢化の進む地方の助けになりたいといった気持ちを持っている場合には、向いている方法の一つと言えるでしょう。
7.美容外科・美容皮膚科へ転科する
主に美容に関わる、いわゆる保険外の治療も含む自由診療の分野では、単なる治療だけでなく需要に応じてかなりの収入を得ているクリニックが多く存在します。
そうした科に転職できれば、医師としても多くの収入を得ることができます。
ただし接客などサービス業としての要素も強く、また先端の技術を常に追う必要があるので、できれば若いうちが良いとされるなど適性が限られる部分もあります。
まとめ
今回は勤務医の平均年収をいろいろな観点から分析して紹介しました。
勤務している地域や施設によって平均年収が大きく変わってくることがわかりましたね。
ただ、平均年収だけを基準に職場を選んでしまうと、想像以上に過酷な仕事内容だったり、人間関係が合わなかったり…。
高年収でも割に合わないと感じている医師が多いのも事実です。
職務内容や年収に妥協したくないという方は、この記事の年収情報を参考にしながらもご自身のキャリアプランに合う職場を見つけてみてくださいね。
参考文献:
厚生労働省「第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)」
厚生労働省が「賃金構造基本統計調査」
政府統計の総合窓口