高齢化社会が進み、2065年には40%が高齢者ともいわれ、超高齢化社会に向けて高齢者向け施設が近年増え続けています。
高齢者向け施設には、介護サービスを受けられる施設や、介護サービスはないものの生活支援を受けることができる施設があり、またその中でも自治体が運営する公的施設と民間が経営する民間施設があり細かく細分化されています。
そして今問題視されているのが、自治体から無認可で営業をする高齢者施設も増えているということです。
そこで今回は、高齢者施設の種類やどうして無認可施設が増え続けるのかなど、お話ししていきましょう。
入所系高齢者の施設~要介護状態の方向け施設~
要介護認定を受け介護の必要性が高く、自立した生活を送るのが難しい、常にだれかのケアが必要といった場合、入居型の介護施設を検討する方も多いでしょう。
入居型介護施設は、公的施設と民間施設に分かれています。
まずは、以下の表を確認していくださいね。
運営 | 入居型高齢者施設 | |
---|---|---|
公的施設 | 社会福祉法人、または自治体 |
・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 |
民間施設 | 民間企業 |
・介護付き有料老人ホーム ・住宅型有料老人ホーム ・グループホーム |
介護の状況や医療ケアの必要性などに応じて、利用できる施設が異なります。
そこで、それぞれの施設の役割や特徴について確認していきましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
特養とも呼ばれることが多いく、特別養護老人ホームの入居基準としては、要介護3以上の方が対象です。
ただ、看護師は夜間常駐していない施設がほとんどで、常時医療ケアが必要だという方は、入居が難しいケースも多くあります。
昔からある施設は個室や多床室の造りが多いですが、新しい特養は原則としてユニット型個室です。
公的施設なので、入居に関しては先着順ではなく、介護や家族状況も考え必要性に応じて決められます。
老健(介護老人保健施設)
老健と呼ばれる介護老人保健施設も公的施設になります。
病気などで要介護1以上になった場合、病院から退院してすぐ自立した生活を送るのが難しい場合に利用することができます。
基本的に、在宅で自立した生活を送るためのステップを目的とした施設なので、例外を除いて3ヶ月から6ヶ月程度で退居しなくてはいけません。
老健では身体介護からリハビリなどを受け、看護師などによる医療的な管理も受けることが可能です。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、要介護1以上の方で、医学的な管理を必要とする方が利用できる施設です。
医師が配置されているため、たん吸引からカテーテル、経鼻経管栄養も行うことができます。
身体介護はもちろん、リハビリも受けることが可能です。
介護付き有料老人ホーム(特定施設入所者生活介護)
介護付き有料老人ホームは、都道府県より特定施設入居者生活介護の認可を受けて初めて運営することができる施設です。
介護付き宇有料老人ホームは主に2種類に分かれ、入居対象者としては次のようになります。
介護専用型 | 要介護1~5までのいずれかを認定 |
---|---|
混合型 | 自立・要支援・要介護 |
24時間介護職員が常駐し、入浴や排せつ・身の回りの世話などを行い、民間企業が多く運営しています。
そのため、入居費用も施設によってさまざまなのも特徴です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、主に自立・要支援の方が入居することを目的とした施設です。
食事のサービス、洗濯などの身の回りの世話、レクレーションなどを受けることができ、医療機関提携や緊急時対応などの健康に関したサービスもあります。
ただ近年では、要介護者でも受け入れている施設も多いです。
そのため介護が必要な場合は、訪問介護・通所介護といった受けたいサービスごとに、別の事業所と入居者自身が契約をして利用するような流れになります。
在宅型有料老人ホームでは要介護者でも入居は可能ですが、介護サービスは提供していないので覚えておきましょう。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、次の3つの条件を満たした方が入居できる施設です。
- 要支援2以上の認定
- 65歳以上の認知症を患わっている人
- 施設の所在地に住民票がある
認知症に特化した施設のため、日常生活を送りながら上手に病気と付き合っていくことを目的としています。
ただ、グループホームでは医療的なケアが行えないため、重度の介護支援が必要、医療ケアが必要となった場合は、介護つき有料老人ホームなどといった違う施設へ移ることになります。
入所系高齢者の施設~要介護状態でない方向け施設~
介護を必要としないが一人で暮らすには心配といった高齢者も多くいますよね。
そういった方々が入居し自立した生活を送ることができる施設として、次の表のようなものがあります。
公共型 |
・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・ケアハウス |
---|---|
民間型 |
・サービス付き高齢者向け住宅 ・健康型有料老人ホーム ・高齢者専用賃貸住宅 ・高齢者向け有料賃貸住宅 ・シニア向け分譲マンション |
それぞれの特徴についてご紹介していきましょう。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、さまざまな理由で生活が困窮し、自宅で自立した生活を送るのが難しい方が利用することができる施設です。
社会復帰を目的とした施設であり、介護施設ではないので介護を必要とする方の入居が難しいケースもあります。
また、身寄りもなく住む家もない高齢者の入居も受け入れていることから、「最後の砦」とも呼ばれています。
軽費老人ホーム
住む場所はあるものの、自立した生活を送ることが難しく身寄りのない方が入居できる施設として経費老人ホームがあります。
自治体の助成を受けることができるので、低価格で入居できるのが特徴です。
また、軽費老人ホームは次の3つのタイプに分かれています。
- A型・・・食事の提供あり
- B型・・・食事の提供なし
- ケアハウス
ケアハウスについては、次の項を参考にしてくださいね。
入居条件としては、A・Bともに次の3つの条件を満たさなくてはいけません。
- 60歳以上(夫婦の場合、どちらか一方)
- 自分で身の回りの世話が可能
- 月収が34万円以下
入居している間に介護が必要になった場合は、在宅サービスを利用することになります。
ケアハウス
ケアハウスは、60歳以上で自立した生活に不安があり、家族の援助が難しいといった方が入居できる施設です。
先に紹介した、軽費老人ホームのA・Bとは異なり月収の制限などはありません。
その代わり、家賃などの支払いがありますが、一般の賃貸住宅に比べ低価格で入居できます。
ケアハウスは、
- 一般型・・・食事サービス、安否確認などのサービスあり
- 介護型・・・介護1以上の方が対象で介護サービスを受けることができる
といた2種類に分かれます。
一般型に入居している方でも、介護が必要になった場合は在宅サービスを利用することも可能です。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、医療・介護の有資格者が日中常駐し、生活相談や安否確認などといったサービスを受けることができます。
施設はバリアフリー構造になっていて、賃貸契約によって利用することが可能です。
対象者としては、
- 60歳以上
- 介護認定を受けた60歳未満の方
といった2つがあり、独居の方や夫婦での入居に人気があります。
また、特定施設入居者生活介護の指定を受けているサービス付き高齢者向け住宅は、入居中に介護が必要になった場合、介護サービスや生活支援サポートを受けることが可能です。
健康型有料老人ホーム
自立した生活を送ることができる方を対象とした施設として、健康型有料老人ホームがあります。
食事のサービスがついていて、中には温泉やスポーツジムなどの設備が入っている施設もあるため、充実した日常を送ることができますね。
ただ、健康の維持を目的とした施設のため、入居中に介護が必要になった場合は退居しなくてはいけません。
高齢者専用賃貸住宅
住宅の構造や設備等の基準をクリアし、高齢者のみに賃貸契約をする高齢者専用賃貸住宅もあります。
ただ、「高齢者住まい法」の改正によって、今まであった高齢者専用賃貸住宅は「サービス付き高齢者向け住宅」へ切り替えが進んでいます。
そのため、家事の支援サービスが行われる施設もあれば、サービス自体を行っていない施設もあり、月額利用料にバラつきがあるのが特徴です。
高齢者向け優良賃貸住宅
高齢者向け優良賃貸住宅は、
- 民間業者もしくは公団で設置・運営
- 都道府県より認定
といった、2つの条件をクリアした高齢者向けの賃貸住宅です。
60歳以上の方が対象になり、緊急時対応サービスや安否確認サービスを受けることができます。
世帯収入によって、国や自治体から家賃の補助を受けることが可能です。
高齢者専用賃貸住宅と同様に、「サービス付き高齢者向け住宅」へ登録が切り替わっています。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、その名の通り高齢者を対象にした分譲マンションで、入居者の資産になります。
マンションによっては、家事支援サービスや温泉・プールなどといった共用設備が備わっているものもあります。
シニア世帯向けに作られたというだけで、資産になることや今後介護が必要になった場合に、在宅サービスの利用や介護施設への転居を考える必要もあります。
なぜ、高齢者向け施設は届出が必要なのか?
高齢者施設を運営するためには、都道府県もしくは市区町村への届け出・認可が必要になります。
それは、届け出・認可を必要とすることによって、行政として施設の状況や住宅の状況を把握することができる、また法律に基づいた運営を促すことができるなどといった面があるためです。
例えるなら監視役として市区町村や都道府県からのチェックを受け、認可されることによって、安全な施設やサービスを利用者に提供することができます。
無届けホーム(無認可施設)とは?
どんな高齢者へのサービスでも、生活支援サービスや介護サービスを運営している業者は、「有料老人ホーム」もしくは「サービス付き高齢者向け住宅」の登録が必要です。
しかし、実際には届出を行わない「無認可施設」は存在します。
登録の申請を行うと、各法律が示す規則に従い条件をクリアしなくては営業ができません。
また規則的に行政の指導や監査も受けなくてはいけないため、届出を行わないのです。
そのため、行政の目が行き届かず、その施設独自の方針で営業されているため、次の項でご紹介するように、トラブルも数多く報告されています。
無届けホームの3つの問題点
「どの施設も空き待ちだし、無認可でも対応してくれる業者がいると助かるのでは?」
といった考えを持っている方もいるでしょう。
しかし、誰も監視・確認する機関がないからこそ、無認可施設というのは時に恐ろしい問題点も浮き彫りにされています。
そこで、無認可施設を利用する場合の問題点についてご紹介していきましょう。
基準を満たしておらず、入居者の安全性が担保されない
以前、認可されていない有料老人ホームが火災を起こし、基準としてクリアするべき火災報知器の設置、部屋面積の広さなどが満たされていないばかりに、入居者が亡くなってしまうといった事故が起きました。
この施設は、認可施設として申請するためには、施設基準を満たすための改修費用もかさむため、「入居者は高齢者だけではないため、老人ホームに該当しない」とし、無認可施設として運営していたのです。
また別の施設では、無認可のため行政の目が行き届かず、職員による入居者への虐待など劣悪な環境であるといった問題も起こっています。
このように、無認可施設では安全設備の不備や、行政や自治体などといった第三者からの監視のない環境での虐待・介護放棄といった問題は後を絶ちません。
認可を受けるということは、それだけ安全性が守られているという証拠でもあるのです。
保険者(市区町村)に大きな財政負担がかかる
無認可施設に限らず、介護施設が増加し介護サービスを利用する方が増えると、請求される介護報酬は比例して増えます。
認可介護施設であれば、補助金や税制優遇などといった支援制度が利用でき、自治体が財政負担をコントロールすることが可能です。
しかし、無認可可能では優遇処置の対象外であるだけではなく、自治体のコントロールが行き届かず、介護報酬を抑えることができません。
また、認可介護施設ではその施設所在地に住所がある方が対象となりますが、無認可の場合はどこに住所があっても転居することが可能です。
その結果、他の自治体に介護保険を支払っている方を、施設所在地の自治体が介護報酬を支払わなくてはいけないため、市区町村で抱える財政負担が大きくなってしまいます。
認可を受けないことで、保険者である自治体の負担は増すばかりなのです。
貧困ビジネスの温床になっている
無認可で高齢者向け施設を運営することによって問題視されているのが、貧困ビジネスの対象になってしまうという点です。
高齢になり一人での生活が難しくなった場合、財力があって認可された高齢者施設へ入居できる方は、問題はないでしょう。
しかし、誰もが入居できるわけではありません。
その日の生活にも困るという方もいれば、認可施設へ入居するだけの財力がないといった方も多いです。
近年では、そういった経済的に余裕がない人をターゲットにし、「他の施設よりも安く介護サービスを提供している」といった言葉とともに呼び込む「貧困ビジネス」が横行しています。
実際に藁にもすがる気持ちで入居を決めたところ、
「食事も満足に提供されない」
「部屋に何人も同居させられる」
「満足な介護サービスを受けることができない」
などといった声も多くあるのです。
生活保護を受けている方であれば、生活保護費をそのまま施設に収め、その中からおこずかいとして毎月2万円程度受け取り、後は施設に回収されてしまうといった話しもあります。
このように無認可施設では、経済的に余裕がなく本当に困っている方の足元を見るように運営する施設もあるので、十分な注意が必要です。
無届けホームは、なぜ増えるのか?
しかしその反面、無認可施設は年々増加傾向にあります。
どうして無認可施設が増え続けるのか、お話ししていきましょう。
施設入所希望者の受け皿になっている
無認可の介護施設に関して、不安を感じつつも利用している方は後を絶ちません。
それは、認可介護施設に限界があるためです。
「認可介護施設に空きがない」
「身寄りがなく、認可介護施設に入居するのが難しい」
「費用が高すぎて認可介護施設に入居できない」
など、認可介護施設を利用したいものの、どうしても断念せざるを得ないといった方も多く、中には入居させてもらえるだけでありがたいと、無認可施設を利用する方もいます。
本当に困っている利用者から見ると、無認可であっても救いの手に見えてしまい、利用する方が後を絶たないのです。
認可施設の基準を満たすことができない
ただ、無認可施設が全て悪いというわけではありません。
スプリンクラーなど、施設基準を満たすことが難しいがために無認可ではあるものの、健全に真摯に利用者に向き合い、介護サービスなどを提供している無認可施設があります。
本当は認可を受けたくとも、認可されるための施設改修として高額な費用に対応することができず、やむを得ず無認可のまま運営している介護施設も多いのです。
一方では、先にお話ししたように、残念ながら悪質で困っている人を獲物にするような無認可施設があることも事実であり、どうしても悪目立ちしてしまっているため、無認可という言葉に、マイナスな印象を持ってしまうのでしょう。
無届けホームの見分け方
では、その施設がどうしたら無届けであるとわかるのか。
認可された施設であれば、パンフレットやホームぺージなどに掲載されているケースも多いです。
しかし、掲載されていないからと言って無認可であるとは限りません。
有料老人ホームである場合、その施設の所在地の自治体ホームページで情報を確認することが可能です。
ホームぺージに記載がないようであれば、自治体の担当部署へ連絡すると確認ができます。
また、サービス付き高齢者向け住宅の場合は、下記のサイトにて登録の有無が確認できるので利用してみましょう。
まとめ
基本的に行政機関としては表向きは認めているわけではありません。
しかし、現状は認めなければ、介護福祉としての対応ができないので、生活に困っている人や金銭的に余裕がない場合は紹介しているのが現状なのかもしれません。
また、現在国の政策としては、高齢者はできる限り自分の住み慣れたとことで済み続けるように、そして在宅で維持できるように政策を取られています。
地域包括ケアシステムの強化といった所がありますが、なかなか思うように勧められていないのが現状でしょう。
また重度の障害や介護状態が重度の場合や認知症の症状が進んでいる場合などは在宅での対応も難しく、家族だけでは成り立たないといったこともあり、そういった場合は施設入所を希望するケースが多くなります。
こういった現状と介護政策が少しずれている状態なので、無届ホームのニーズがなくならないと言えるのではないでしょうか。