2016年4月、日立システムズとクラリオンは、茨城県笠間市の協力の下、「服薬支援クラウドサービス」の試験導入を開始しました。
服薬支援クラウドサービスの大きな注目ポイントは2つあります。
1つ目の注目ポイントはクラウドサービスであるため、インターネットを介して、患者さんの服薬状況を管理するというものです。
つまり、患者さんの自宅に訪問しなくても、服薬状況を確認することができるため、もし何か間違いがあった場合にだけ訪問や電話などで連絡することで良くなり、非常に利便性が高いものです。
2つ目の注目ポイントとして、服薬支援ロボットというものがあります。
ロボットといっても、人型をしたロボットではなく、30センチメートル四方の四角の箱型のロボットで、重量9kgとコンパクトなものです。部屋の隅においても邪魔にならない程度のものです。
茨城県笠間市で実施されている「服薬支援クラウドサービス」は、この2つを両輪としたものですが、ここではまず服薬支援ロボットの機能についてご紹介させていただき、そのメリットやデメリットについて考えてみましょう。
服薬支援ロボットの機能とは?
服薬支援ロボットには、3つの特徴的な機能があります。
飲み忘れ予防や、薬の間違いを予防
患者さん自身、患者さんの家族、薬剤師などの医療スタッフが、その時間に服用するべき医薬品を専用のカセットケースに入れて服薬する時間を指定します。
その指定した時間になると、服薬支援ロボットから音声が発せられ患者さんに服薬を促します。
そして患者さんは、ご自身で医薬品の「取り出し」ボタンを押して、服用します。これで飲み忘れの予防、薬の間違いを防止することができます。
薬の飲みすぎを予防
特に高齢者などで多いものとして、薬の飲みすぎ問題です。服薬支援ロボットでは指摘された時間以外に薬を取り出すことができません。
もし、指定された時間以外に「取り出し」ボタンを押した場合「お薬を飲む時間ではありません」という音声が発信され、医薬品を取り出すことができず、重複服用(飲みすぎ)を予防することができます。
服薬履歴を管理
服薬した記録、厳密にいうと取り出しボタンを押して、カセットケースを取り出すことで服薬とカウントされます。それを「服薬した」とカウントします。
この服薬履歴を4週間分本体内に記録することができ、USBポートにデータを移動することもできます。
もちろん、服薬したカセットケースは本体内に戻すことがその時点ではできないため、カセットケースをカウントすれば服薬状況を確認することはできます。
しかし、その方法では計時的なデータまでは管理できないため、データ管理は非常に有用なものになります。
それをロボットが代わりにやってくれるため、薬剤師の業務を減らすことができる。ひいてはその時間を患者さんの時間に充てることができるため、とても良いと思うのだカモ。
服薬支援ロボットのメリットとは?
ロボットが管理するため、例外がない
例えば、高齢者や在宅支援を必要とするような患者さんのケースを考えてみましょう。このような患者さんの場合、例えば家族の方が薬の管理をしていることが多々あります。
管理されている方にも都合があるので、必ずしも同じ時間に服用させることができるわけではありません。
その点、ロボットは時間に正確です。必ずその時間に教えてくれます。
医薬品の中には、血中濃度の管理の必要なものもあり、1回の服用忘れ(時間のズレだけではそんなに影響はないものも多いですが)が、健康を脅かすこともあります。
そういう観点で考えると、時間に間違いがないことは非常に有用です。
薬を間違えて取り出すことがない
薬剤師として勤務していると、患者さんから「薬が足りなかった」というクレームはほとんどの人が経験されていると思います。
そのような人に対しては、服薬指導時に数量を一緒に確認してもらうなどして、薬剤師側としてミスがないようにしていると思います。
しかし、そのようなことを実施しても、「薬が足りなかった」というクレームが発生しているという現状はあります。
個人的な意見といわれるかもしれませんが、このような方策を実施しても薬が足りないということは、患者さん側に原因があるといわざるを得ないです。
その原因の多くは、飲みすぎだと思われます。飲みすぎを防止するという意味では、服薬支援ロボットは非常に有用なものとなりえます。
薬剤師側にとっても、患者さん側にとっても大きなメリットがあることは間違いないのだカモ。
服薬支援ロボットのデメリットやリスクとは?
患者さんの思考能力を低下させてします
ロボットで管理することは時間に正確であり非常に良いと思います。しかし、高齢者のように時間を持て余すようになると、ご自身で時間を管理し医薬品を服薬するということが、患者さんにとって良い刺激となります。
服薬支援ロボットに頼ってしまうと、このような機会を奪ってしまうことになります。
その結果、思考能力の低下をきたし、認知症などを発症させ、加速させてしまう可能性もないとは言えないと思われます。
カセットケースに薬剤を入れ間違えることもある
服薬支援ロボットを使用される人は、何らかの理由のために、ご自身で服薬の管理が難しい人だと思います。そのため、ご家族や薬剤師、介護士などがカセットケースに医薬品をセットする必要がでてきます。
この作業は人間の手が加わりますので、ここでミスが発生する可能性があります。
サービス付高齢者住宅や老人ホームなどの施設であれば、複数人の人で確認することも可能ですが、独居の場合は一人で管理されることが多いため、複数人でのチェックができません。
したがって、カセットケースへの補充を間違えてしまう可能性もないとは言い切れません。
デメリットやリスクはあるものの、それは使い方次第
どんなものにも、見方を変えるとデメリットやリスクは存在します。服薬支援ロボットでも同様です。
しかし、核化社会などが進んでいる現在においては、服薬支援ロボットは非常に有用なものとなりえますので、普及を進めていく必要があると思います。
デメリットやリスクについては、薬剤師やその他スタッフが埋めていけば問題ありません。その労力は服薬支援ロボット導入前と比較すると、格段に少ないはずだと思います。