保健薬局にお勤めに薬剤師の方にとって、恐ろしいものの1つが保健所による薬局監査ではないでしょうか。
昨今、大手の調剤薬局チェーン薬局の不正が、保健所による薬局監査で発見されています。いつご自身が勤める薬局に保健所の監査が入るのではないかと、ビクビクしていませんか?
保健所の監査=税務署のマルサのようなイメージを持っていませんか?
税務署のマルサとは、「国税局査察部」のことです。このマルサの役割は、「通常の査察活動では摘発出来ないような複雑で、かつ巧妙な脱税を暴くこと」です。
したがって、何らかのリークやタレコミがあり、それの裏づけ捜査をして、その後実地にて、その証拠をつかむために行うのです。
保健所による薬局監査も、これと同じと思っていませんか?そもそもの意味を考えると共に、関連することを考えてみましょう。
保健薬局監査の意味とは?
まず大前提としてご理解いただく必要があることとして、保健所による薬局監査は、不正などの悪いことをしているなどの情報が保健所にもたらされたために、行われるものではありません。
保健薬局の開設許可を申請する際、及び開設後は6年に一度の保健薬局の開設許可の更新のために保健所による監査が必須とされています。
したがって悪いことをしていても、していなくても時期が来れば必ず監査を受けなければならないのです。
次に保健所の監査の概略を簡単にご紹介します。一言で言うと「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」にしたがって、業務を行っているかを確認するだけです。
例えば、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」に以下の記載があります。
(健康保険事業の健全な運営の確保)
第二条の三 保険薬局は、その担当する療養の給付に関し、次の各号に掲げる行為を行つてはならない。
一 保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行うこと。
「保険医療機関と一体的な構造」とありますが、例えば同じ敷地内に何の区切りもなく、病院と薬局があると、アウトとなります。
もちろん、これは新規で薬局を開設する際にも確認されます。1つの区切りとなるフェンスがあるだけで問題ないとされています。
しかし、患者さんにとっては、このフェンスがあることによって、最短距離(一直線)で薬局に行くことができないため、取り払っているケースもしばしば見受けられます。
この行為は患者さんの利便性向上のために行ったものであるため、問題ないように思われるかもしれません。
しかし、異なる方向から見た場合、利便性を良くすることで患者さんをその薬局に誘導している、つまり薬局の利益を誘導しているという見方をされてしまいます。
このようなことは「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」から逸脱していますので、是正や指導の対象となります。
保健所の監査とは、あくまでも「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」に則ってできているかを確認するものであり、何か不正を探すために行うものではありません。
したがって、不正なことをしていないのであれば、何も怖がる必要はないのです。
何か指摘されたとしても、それを是正すれば問題なく、同じことを繰り返さなければよいだけなのです。
適切な業務運営のために、色々なことを指導してくれる味方だと認識してほしいカモ。
薬局監査が入りやすい保健薬局とは?
6年に1回の定期監査以外にも、保健所による監査は行われます。ほぼ必ず行われるものとして、重大な調剤ミスや事故があった場合です。筆者の私が勤めていた薬局でも一度重大な事故がありました。
それはフェノバール原末とフェノバール散10%の補充ミスによる調剤ミス・事故でした。
ご存知の方も多いと思いますが、フェノバール原末は白色、フェノバール散10%はピンク色に着色されています。そのことが頭に入っており、監査したのであれば監査の際に気付くことができました。
この薬局では、散剤を調剤する際バーコードで管理され、スキャンしたものが印字されます。監査者はその印字されたものが、正しかったために見逃していました。
もちろん、散在を補充する際には、良く確認することが決められていたため、まさか補充ミスがあったとは思いもしませんでした。
服薬指導をする際にも、薬は確認するものの、色の違いに気がつくことができませんでした。以上がすべて重なって発生した調剤ミス・事故でした。
それが発覚した際、会社に報告し、管轄の保健所に連絡が入り、翌日に監査が実施されました。また、その監査の半年後に適切に是正予防策が実施されているかを確認する意味も含めて、改めて監査が実施されました。
この他にも、麻薬、覚醒剤原料のように出納管理が求められている薬剤の出荷数が多い場合も、監査の対象になりやすいです。重大な事件や事故につながる恐れがあるためです。
あの事件では薬局でも偽造品に気がつく必要はあったが、保健所はその他の原因を探り、製薬メーカーに対して偽造品に対する予防措置が提案されているのだカモ。
まとめ
保健所による監査は、マルサのように違法性を探すためのものではありません。「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」に則って実施されているかを確認し、必要に応じて是正措置を促すためのものです。
したがって、中小の薬局だから入らないということはありません。何か悪いことをしていないのであれば全く怖がる必要はありません。
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