突然ですが質問です。
「みなさんは学生の頃、どんな薬剤師になりたいと考えていましたか?」
「そんな漠然と聞かれても…。良い薬剤師にはなりたいと思っているよ。」
「そういえば、実務実習の時の指導薬剤師はカッコよく思えたな!」
きっといきなり聞かれても、寝耳に水な話かもしれません。しかし、この質問ならいかがでしょう。
「みなさんは、どんな薬剤師になりたくないですか?」
「新人のころいじめてきたあいつみたいにはなりたくないな。技術や知識があっても、あれは悪い薬剤師だよ。医療人としてどうかと思った。」
「患者さんの質問にぱっと答えられないのは少しカッコ悪いかもしれない。」
薬剤師として働くうえで、誰でもいい薬剤師になりたいと考えるものですよね。
今回はどんな薬剤師が素敵な薬剤師で、どんな薬剤師がお手本にはしたくない薬剤師なのか、新人教育の目線から紹介していきたいと思います。
反面教師にしたい薬剤師
新人の時、皆さんはどんな薬剤師に仕事を教えてもらいましたか?
新人教育に携わる薬剤師は、大きな企業は「シスターブラザー制度」と言われる、年の近い薬剤師が教育担当になることが多いので、そのような教育制度にお世話になった方も多いかもしれません。
新人薬剤師から見ると、どんな先輩もみんな仕事ができるように見えますが、いちばん教えなければならないのはまず「社会人としてのマナー」です。
あいさつや言葉遣いなど、基本的なことはもうみなさんご存知だと思います。
しかし考えていただきたいのですが、みなさんの職場にきちんと顔を見て、挨拶してくださる方はどのくらいいますか?
新人の時は先輩の顔色が怖いものです。慣れ親しんだ関係ならまだしも、先輩がそっぽを向きながら挨拶も返さないなんて「自分は何か気分を損ねることをしてしまったかなあ」と悩む原因になります。
患者さんに礼儀を尽くすのは当然ですが、職場にいる仲間にも同じくらい礼を尽くせるようになりたいものです。
また、薬剤師としての職能で大事なのは、「知ったかぶりをしないこと」です。
患者さんから質問されたり、また新人から質問されたりすることは業務の中で多々あると思いますが、あいまいなまま回答したり、適当に答えるのはタブーです。
わからないことは上司に聞いたり調べたりすることが大切です。その知識を共有する人まで巻き込んで誤認すべきではないです。
そんな薬剤師は新人から見てカッコ良くないですし、背中を見て育っている新人に悪影響です。
お手本にしたい薬剤師
お手本と言っても、特に身構える必要はないです。薬剤師の職能は、患者さんにより良い薬物治療を行うことにあります。
それなので、私たち薬剤師の先輩は患者さんに寄り添った姿勢を新人に見せれば良いのです。
患者さんの前ではニコニコしたり心配したりするふりをしていても、いざ調剤室に戻ると悪口を言っている薬剤師はあまり尊敬できません。
口先だけでなく、きちんと心から患者さんに寄り添って医療に向き合う背中を見せてあげたほうが、新人に響くと考えます。
また薬剤師の技術として、用法や用量をよく覚えておいてあげたほうが良いでしょう。
配属されたばかりの新人薬剤師はピッキングや混合で頭がいっぱいになってしまうことが多く、適正量や添付文書通りに処方が出ているかまで目が届かないものです。
処方の安全性などを保証するためにも、側につく薬剤師が目の届かないところまでチェックしてあげることはとても重要なことです。
新人薬剤師が気付けなかった場合、落ち着いた時にフィードバックしてあげることができればなお良いです。
より良い薬剤師になるために
今回は新人教育の目線で、良い薬剤師・悪い薬剤師について解説させていただきました。筆者は就職して2年目に新人教育を任され、新人たちと一緒に成長した思い出があります。
最初はまだ自分も新人とそう変わらないのにとんでもないと思っていました。
しかし注意することや、人に指示を出すことが苦手だった筆者への、上司からの試練だったのではないかと今となって思います。
いい薬剤師、悪い薬剤師はどんなものなのか?という問いに正確な答えはありません。
しかし、新人たちは確実に「真似したいこと」「あれは自分が先輩になったらやりたくないこと」を考えています。
反面教師は大切ですが、新人たちが自分の背中を見てすくすく育ってくれたほうが、より良い関係性を築くことができます。
新人教育に携わる方で、自分が新人から見て恥ずかしくない行動が出来ているのか、今一度考え直してみましょう。
新人時代のあなたが、今のあなたみたいな先輩についていきたいと思えたでしょうか?
社会人の年数を重ねると、考え方が変わったりできることが増えたりしますが、初心に帰って考えてみると、新たな発見があるかもしれませんね。