多くの方がご存知の通り、我が国は今後、未曾有の超高齢社会を迎えようとしています。
高齢社会で懸念されるテーマは様々ですが、加齢によって誰しもが抱える事になる「不調や病気のリスク」に関しては、医療に携わる私たち薬剤師にも無視できる問題ではありません。
患者さんの傾向や需要も高齢化を辿る中で、薬剤師に求められるものもそれに応じた変化を遂げている様子…。ここでは、高齢社会において薬剤師に求められるものについて以下の3つに区別し、それぞれを詳しく説明します。
- 患者さんのQOLを高めるため、患者さん目線のニーズに応える
- 患者さん自身によるセルフメディケーションを支える
- 医薬品の実用化を推し進め、患者さんが受けられる医療のレベルを高める
患者さんのQOLを高めるため、患者さん目線のニーズに応える
患者さんのQOLを改善させること、あるいは患者さんの利益になることを中心とした薬剤師業務のありかたを「フアーマシューティカルケア」と言います。
病棟へ入院している、または在宅医療を受けているなど、高齢の患者さんはケースや状態が様々。
薬剤師はそんな患者さん一人一人に対して、これまで以上に患者さん目線の需要や医療のありかた(フアーマシューティカルケア)と向き合う必要があるでしょう。
高齢社会では、薬剤師による在宅医療での活躍も不可欠カモ!
これまで多く見受けられた《決まった医療機関で患者さんを診るスタイル》は、高齢社会の到来とともに《そのエリア全体で連携をとりながら患者さんを診る》という体制へとシフトしています。
在宅医療を必要とする多くの高齢者は慢性疾患を抱えており、現場ではしばしば薬物による治療が行われているでしょう。また、在宅で緩和ケアやターミナルケアを行うこともあり、その際にも薬物治療は不可欠です。
したがってそこで活躍するのは、医師や看護師だけでなく、薬のプロフェッショナルである薬剤師の存在も必要不可欠なのです。
医師や看護師、介護スタッフらと連携をとりながら、薬や患者さんにまつわる情報を提供・共有し、チーム医療の一員として在宅医療に携わることが求められるでしょう。
現場では様々な立場の方と接することになるので、コミュニケーション能力が必要カモ。加えて、薬剤師としての知識や技術など総合的なスキルが問われます。
患者さん自身によるセルフメディケーションを支える
平成29年1月より「セルフメディケーション税制」での所得控除が可能になった事などから、ますます注目度の上がったセルフメディケーション。セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機構(WHO) では定義されています。
これまでの生活習慣の乱れが疾患につながりやすい高齢者であれば、なおさら生活の中で自身の健康管理に取り組む事が大切になってくるでしょう。
以下では、患者さん自身によるセルフメディケーションにおいて、薬剤師が担う様々な役割をわかりやすく紹介します。
OTC医薬品を使ったセルフメディケーション
一口に「セルフメディケーション」と言っても、日頃の運動や、食生活・睡眠の改善、定期的な健康診断など、様々な取り組みが存在しています。
しかし、その中でも専門家による指導や助言が最も重要になるセルフメディケーションといえば、OTC医薬品などをはじめとする医薬品の活用なのではないでしょうか。
たしかに昨今では、病気や医薬品に関する情報をネットで入手する事もできます。
とはいえ、高齢者や患者さんが個人で行う薬物治療を、より安全で効果的なものにするためには薬剤師によるサポートが不可欠であると言っても過言ではありません。
「症状が出てから」ではなく、予防医療としてのセルフメディケーション
「軽度の不調が現れてから…」ではなく、病気を予防する事も、大切なセルフメディケーションです。
薬剤師は医薬品にまつわる助言だけでなく、患者さんの状態や現在服薬している治療薬などからリスクを想定し、不調や病気を回避させるための指導やアドバイスを積極的に進めるべきカモ。
高齢社会での薬剤師は予防医療の中核を担う存在として、薬のみにとどまらず幅広い商品知識を培い、日頃から患者さんとの良好な信頼関係を築いておく事が求められるでしょう。
医薬品の実用化を推し進め、患者さんが受けられる医療のレベルを高める
これは主に、医薬品シーズに携わる薬剤師が担う役割カモ。
科学技術立国である日本では、近年もめまぐるしくバイオテクノロジーなどの最先端技術が発展しています。
これらの恩恵をいち早く実用化させ、患者さんが受けることのできる医療のレベルをより高くする事も、高齢社会で薬剤師が担う重要な役割だといえるでしょう。
ますます進む高齢化社会…薬剤師が取り組むべきポイントは?
高齢社会において薬剤師が注目しておくべきポイントとして、「フアーマシューティカルケア」、「セルフメディケーション」などが挙げられました。
いずれも患者さんや医療関係者など、人とのつながりが重要で、これまで以上に高いコミュニケーション能力が問われる事になるでしょう。
また、単に「薬剤師である」というだけでは需要に追いつけない時代が到来しつつあることも伺えます。より専門的な知識を身につけることで、自身に付加価値をプラスする事も検討してみてはいかがでしょうか。
こう聞けば「薬剤師として働き続けるためのハードルが高くなってくるカモ…!」とネガティブに受け取る方も多いでしょうが、実際には薬剤師の需要がますます高まっているのが現状。
期待される活躍のシーンが多いからこそ、一歩踏み込んだ技術や知識が求められているのです。ぜひ積極的に学び続け、時代の需要にマッチした薬剤師を目指してください。