私たち薬剤師は、4年制ないしは6年制の薬学部を卒業してから、国家試験を受験した上で薬剤師になりました。
この薬剤師免許という制度は、国によって大きく異なります。今回の例のオーストラリアでは、薬学部は基本的に4年制です。
その後1年間のインターンシップ期間を経て、薬剤師国家試験を受験します。
そのインターンシップは、日本の6年制薬学部の長期実務実習に当たるものです。日本の大学では実務実習先は大学と施設側の交渉で決定されますが、オーストラリアのインターンシップでは学生が自ら決める必要があります。
インターンシップの受け入れ先が少ない影響か、インターンシップ自体の倍率がタイトルの通り20倍以上に跳ね上がることもあるようです。
日本とオーストラリアでは実習にどのような違いがあるのか、また受け入れ側の薬局業務の違いについて解説させていただきます。
オーストラリアのインターンシップ制度は日本の実習とどう異なるの?
冒頭で述べた通り、オーストラリアの薬学生は、大学を卒業した後にインターンシップを行います。1824時間、週に40時間とした場合丸1年間の実習となります。
インターンシップの途中にそれぞれ口頭試問と筆記試験を行うので、日本で言う実務実習と国家試験が同年にあるような感覚です。
常勤薬剤師1人につき1人のインターンシップ生を受け入れることが出来ます。日本のように、指導にあたっての認定などは不要です。
また、実習中のカリキュラムは、日本では大学の決めた方針や、モデル・コアカリキュラムなどをもとに進められますが、オーストラリアでは薬剤師会が作成します。
この辺りは日本とオーストラリアの大きな違いになります。
カナダでは病院でもインターンシップ生を受け入れることができますが、その枠は薬局と比べてとても少ないため、薬局に応募が殺到するようです。
あれは日本全国どこで実習を受けても差が出ないようにするための方針カモ。
日本とオーストラリアの薬局業務の違い
日本の薬局業務は、皆さんもご存知の通りです。薬品を処方せん通りに取り出し、輪ゴムでまとめ、処方・調剤監査してから投薬を行います。
日本では一般的に添付文書や錠剤の外箱などは取り外してのお薬のお渡しですが、オーストラリアでは箱ごとのお渡しをすることが多いです。
処方せんに準じますが、日本よりも時短で調剤出来ることが多いです。
また一包化調剤も、日本のように分包紙を用いて行うほか、Webster-Pakと言われる特有の入れ物にまとめることもあります。
これはオーストラリアだけでなくカナダなどの欧米諸国でも使われる一包化方法です。
その他オーストラリア含む諸外国では、テクニシャンと呼ばれるいわゆる調剤補助員が配置されていることが多く、ピッキングなどの簡単な調剤は彼らに任せることができます。
実習生を受け入れるにあたって
以上が日本とカナダの実習制度や薬局機能の違いです。日本と大きく違う点としては、基本的にテクニシャンが調剤を手伝うことです。
それにより配置する薬剤師の数が少なくて済み、その分実習生の受け入れ可能数が少なくなるため、人気の施設は応募が殺到すると考えられます。
日本で勤務薬剤師に実務実習認定制度を取得させるということは、その企業・薬局単位で実習生受け入れに対して前向きに検討しているということです。
筆者も6年制学部卒ですが、自身や同級生、後輩の例を取っても実習先が決まらないと困ることはありませんでした。
しかし、実習生を受け入れるということは、指導薬剤師だけの責任ではありません。薬局全体で学生のフォローを行わなければならない場合もあります。
そのため認定制度含め、実習生を受け入れる施設の薬剤師は積極的に学生教育に参画し、普段から学生や指導薬剤師と密接にコミュニケーションを取っておくことをお勧めします。
そうでない日本の実習生は施設についての知識も薄い可能性が高いカモ。みんなで協力してフォローするカモ。
まとめ
以上、オーストラリアのインターンシップを例に取り、日本の実習制度との違いについて解説させていただきました。数百倍の倍率のインターンシップというのは、まるで就職氷河期の日本を思わせます。
それだけ意識の高い学生を選別することは可能かと考えますが、実習はあくまでも薬剤師となるためのステップで、そして学生が将来働く職場を考える機会でもあります。
どんな学生でも受け入れ、彼らが将来困らないように幅広く知識を与え、また勤務施設のメリット・デメリットを伝えてあげていただきたいです。
まだ取得していない薬剤師は。認定指導薬剤師の認定を取るのも良いと考えます。後輩のため私たち薬剤師はみんなで協力して、実務実習生を受け入れやすい環境を作っていきましょう。