皆さんの職場では、坐剤はどのようなものが置いてありますか。小児用の解熱、嘔吐、けいれん用のものから大人の激痛の際に用いる坐剤など、坐剤はいくつかの種類があります。
経験したことのある方は少ないと思いますが、坐剤を調製(主薬を基材に加えてコンテナに充填する、という作業です)という調剤を依頼されることが実際あります。
院内製剤が多く、薬局ですと実施可能な設備が整っていない場合がまだ多いです。
医療機関によっては、例えば小児科の門前では今後求められることがあるかもしれません。吐き気があるときに、独特の味がある散剤の服用は辛いものがありますし、もし坐剤で投与できれば患者さんも保護者さんも助かります。
普段粉で服用している小児の薬用量の場合、坐剤の基材に溶かしても容易に投与できる場合が多いです。
では、もし初めて院内製剤の相談があった、また処方せんに坐剤調製の指示があった場合どのように対応するのが良いのでしょうか。
坐剤の調製方法
そもそもどのように作るのか、概要をご紹介します。大学の実習で行ったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
坐剤は主薬と基材で成り立っています。基材は肛門に入った際に体温で溶けて主薬を吸収させる脂溶性のものや、水溶性のものがあります。
体温以上の温度で基材を溶かし、主薬を粉末状などできる限り細かいサイズにして混合します。そうしてコンテナ(坐剤を直接包装しているパッケージです)に注入して、冷却します。
取り扱えるくらいまで固くなれば完成です。
坐剤を調製する用具を準備しましょう
もし定期的に坐剤の調製の依頼が来るのなら、予製をしてしまうことも一つの手段です。
処方にもよりますが、必ず使用するものは
- 主薬
- 基材
- コンテナ
- コンテナに注入するための注射器またはスポイト
- 必要時主薬を粉砕するミキサーまたは乳鉢・乳棒
- 基材を溶解するビーカー
- 基材の溶解のための熱源(電子レンジや湯せん)
- 温度計
でしょうか。
コンテナに注入する際に不安定にならないよう、支えになるものを用意した方が便利かもしれません。
作り方もよく来るものはマニュアル化しておくと便利です。
キットを用意しておくことで、時間があるときに予製することができますし、後輩薬剤師への作製指導にも役立ちます。
またキットを置いていつでも対応することができれば、医師は気兼ねなく院外に坐剤の調製処方を出すことができます。
患者さんが来ない中抜けの時間帯とか、やる仕事ができて嬉しいカモ。
薬局で受けた場合の自家製剤加算
坐剤を調製すると、自家製加算を取ることが出来ます。1調剤につき90点が取れます。(ただし予製剤の場合1/5になります。)
なかなか受けることが無いため、坐剤調製の処方せんを受け取った際は処方入力の際も取り忘れないよう注意が必要です。
ほかにも点眼剤の調製なんかも自家製剤加算なのカモ。
注意点
処方を受け取る前例が無いため、もし医師から依頼を受けたら、まずはしっかり坐剤にすることの可否を確認することをお勧めします。
例えば適応外なのではないか、内服を坐剤に変更して有効性は問題ないかなどです。
また適正な作製温度も基材や主薬によって違います。初回依頼を受けた際は製薬メーカーなどに確認した方が安全と思います。
自家製剤は既製薬と比較して保管が難しい製剤です。保管期限も既存薬に比べるとシビアなものが多いです。基材や主薬の性質をよく確認して、患者さんの自宅でも適切に保管が出来るよう薬品ごとのしっかりとしたフォローが必要です。
作成時の注意点としては、大量に作る際や手慣れていない場合は溶かした基材が時間と温度で固まってしまう可能性があります。作製中は近くに湯せんを用意しておいた方が良いでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。坐剤を調製するという機会は多くの薬剤師は経験したことが無いと思います。しかし、坐剤として市場に出回っている薬品はそう多くは有りません。
坐剤という剤型を取ることで、内服できず困っている患者さんを助けることができます。医師も坐剤調整に対応できる設備が整った薬剤部・薬局はありがたいと思います。
ニーズのありそうな施設ならば、前例が無くともすぐ対応できるよう坐剤を作るために最低限基材・コンテナなどを常備することを是非検討していただきたいです。
坐剤だけに限らず、いつでも医師や患者さんの求めに対応できるように、自家製剤について薬剤師の皆さんは広く知識をつけ、とっさの対応ができるようにしていきましょう。