スムーズに独立起業するためには、綿密な下準備が重要のため、在職中から準備を進めることが重要です。
独立しようと思えば、独立すると決めた時点から、在職中でもあなたの行動は違うものになっている筈です。
独立を決めているのに「まだ働いているから」と動かないようでは、根本部分を見つめ直して再考した方が良いでしょう。
では、介護士の独立に関する事をもう少し掘り下げてお話したいと思います。
独立する前に抑えておきたい基本情報
2025年問題など、少子高齢化社会の中で注目を集めているのが介護サービスです。
そこで、独立をして介護サービスを始める前に、押さえておいてほしい情報があるのでご紹介します。
成長が期待されている業界の一つである
団魂の世代が高齢者になる2025年には、約20兆円もの介護給付費が必要とされています。
高齢者が増えると必然的に介護業界の需要は増えます。
今後高齢者が今後急増するのは必須のため、必然的に介護施設の需要も高くなり、他の業種と比べても確実に急成長をすると期待される業界です。
行政から指定を受ける必要がある
介護サービスを展開したくても、勝手に事業を始めることはできません。
ただでさえ、介護費の負担は大きく家計を苦しめるケースも多くあります。
そのため、できるだけ介護給付を受けることができる施設を利用したいという方がほとんどです。
しかし、介護給付を受けることができるのは、介護事業者として都道府県・市区町村から指定された場合に限られます。
介護事業を始めるのであれば、都道府県や市区町村からの指定を受けましょう。
他業種からも参入しやすい
介護事業に目をつけているのは、介護事業一本でやっていこうとする人ばかりではありません。
これら成長していくとされる介護事業は、政府も管轄する事業でもあるので、他の業種からの参入であってもリスクも少なく済みます。
また、介護ビジネスは基本的には業務形態もフォーマットがある程度決まっているので、きちんとした経営をしていれば、参入しやすいという面もあります。
そのため、他の業種と並行して運営していくケースも多いのです。
事業規模を拡大することが利益を増やす
ただ、参入しやすい、これからますます需要が増えるとしても、事業規模が小さいと利益も小さいのが介護業界の特徴です。
複数の事業所を展開し、事業規模を広げることによって利益が増えていきます。
1つの小さな事業所のみを展開しようと思っているのであれば、利益としては少ないので幅広く、複数の事業所を手掛けるのを目的として独立した方がいいでしょう。
倒産・消滅数が増えているのも事実
これから高齢者もますます増え、介護施設も必要とされる中でも、介護事業の倒産などが増えています。
その理由としては、
- 人手不足で施設が回らない
- 資金不足
といったものがほとんどです。
人手不足な上に、経営をするには十分な介護報酬を受け取ることができないため、経営が成り立たずに、設立から5年以内に倒産する施設も数多くあります。
これから伸びていくとされる介護業界ですが、やはり倒産もあると肝に命じておきましょう。
独立に必要な資金とは?~イニシャルコスト編~
介護業界の現状を確認したところで、独立には資金が必要です。
そこでここでは、独立のためにはどれほど資金を必要とするのか、気になる費用を見ていきましょう。
法人の設立に関する費用
介護事業を始めるには、法人として設立する必要があります。
医療法人などといったものではなく、営利法人でも問題ありませんが法人の資格取得には、登録費など25~30万円程度かかります。
物件を取得するための費用
訪問・通所型などいずれの介護サービスを提供する場合でも、事業所の確保が必要です。
そのため、物件にかかる費用が必要になります。
例えば、訪問看護であればビルの一角を借りる、入所型であれば物件を建てるもしくは、既存の施設を買い取るといったケースもあります。
まずは、開業する地域の物件相場などを確認し、予算を組むようにしましょう。
施設要件を満たすように物件を改修するための費用
ビルの一角をレンタルする、すでにある建物を購入するといった場合でも、施設に合った事業所にすべくリフォーム費用も必要になります。
行う介護事業によってリフォーム内容は異なりますが、水回りの改装やバリアフリー化など行うリフォーム費用はさまざまです。
備品を調達するための費用
介護にはさまざまな器具を使います。
車いすや歩行器、ベッドだけではなく、職員が使う机やイスなどさまざまな備品が必要になり、数えたらキリがありませんし、あれもこれもとそろえると膨大な費用がかかります。
まず、開業するにあたって必要な最低限のものをそろえ、状況に合わせて増やしていくというのがいいでしょう。
独立に必要な資金とは?~ランニングコスト編~
ここまでご紹介してきたのは、独立し開業するにあたって、土台の部分の費用です。
しかし、開業にはランニングコストも発生します。
そこで、人材費など独立までにかかる費用についてお話しします。
人材獲得に関する費用
介護事業は、業務形態に応じて必要最低人数や、必要資格が定められています。
まずは、始める事業に関した必要人材を確認しましょう。
そして、人材を獲得するべく求人を始めます。
雑誌などの求人広告が主に利用されますが、中には派遣会社を通して人材を確保するというケースも増えています。
派遣会社を通す分、人件費はかかってしまいますが、人材を確保できるといった面などを考慮して利用する人も多いです。
また、派遣会社から紹介された人材を直接雇用するといったケースもあります。
利用者獲得に関する費用
介護サービスを利用してくれる人がいなければ、事業として収入がありません。
高齢者やその家族に新規開業するということを知ってもらい、利用を促す必要があります。
そのため、広告や街中の看板、チラシなどさまざまな広告宣伝費が発生します。
当面の運転資金
開業当初から利用者や人材を確保できたとしても、人件費や水道光熱費などコストがかかります。
しかも、すぐに収入があるわけではないため、当面の運転資金も必要になります。
まだ収入として入金されていなくても、人件費や各リース代、賃料などは支払わなくてはいけません。
安定するまで、数カ月分の運転資金があるのが理想です。
その他
ここまでにご紹介したもののほかにも、申請手続きの費用や代行手数料などといったコストもかかります。
目に見える大きな費用よりも、目に見えづらい費用負担の方が積み重なって高額になるケースも少なくありません。
運転資金を準備する際の注意点
一般的に介護事業を始めるにあたって、初期投資が500万円以上になることはよくあります。
そして、覚えておいてほしいのが、介護報酬は発生した2ヶ月後に入金されます。
つまり、開業してから2カ月後にならないと収入がないということです。
そのため、運転資金はギリギリの予算を組んで用意するよりも、余裕をもっておくようにしましょう。
独立する際によくある事業形態とは
個人が独立して介護事業を行うには、用意できる資金面の問題などもあり、どんな事業展開をするのか、見当する必要があります。
そこで、独立するときによくある事業についてお話ししましょう。
単独のサービス
訪問介護サービス、通所介護サービスなど各介護サービスのうち、いずれか1つの事業を行う形態もあります。
サービス内容を絞れることで、用意する施設の規模や備品などが少なく、人材も必要人数が少ないため、集めやすいという面があります。
一方で、前に「事業規模を拡大することが利益を増やす」でお話ししたように、単独のサービスでは事業規模も少ないため、利益としては少なくなってしまいます。
ゆくゆくは、複数のサービスを提供するような計画が必要です。
在宅三本柱を中心とした展開
在宅を中心に、次の3つの事業を中心に行う事業形態もあります。
- 訪問介護
- 通所介護
- 短期入所生活介護
基本的には、自宅で生活をすることしている高齢者を対象に、最も高いニーズの事業を組み合わせています。
サービス自体もホームヘルパーによるものであり、職員間でシフトを組みやすいのが特徴です。
ただし、通所や短期入所も行うため、そのための施設や備品などをそろえる必要があるので、資金がかかります。
ケアマネを中心とした展開
ケアマネージャーを中心に、利用者からの相談や要望に応じてケアプランを作成、介護サービスの事業者との調整などを図る居宅介護支援を展開する形態もあります。
居宅介護支援は、さまざまなサービスを提供できるよう、橋渡しをする事業なので運営コストがかからないのが特徴です。
しかし、人材としてケアマネージャーの確保が必須になります。
居宅介護支援事業と訪問介護や通所介護事業を、組み合わせて展開する事業所も多いです。
独立開業の流れ
独立を考えたときに、独立するまでの流れも把握しておくことは大切です。
どんな順序で事業を展開すればいいのか把握することで、段取りよく開業することができます。
開業するまでの流れについてお話ししましょう。
地域ニーズの把握・分析
介護事業は、地域に密着して行われることがほとんどですので、その地域のニーズを把握して開設する必要があります。
次の4つのような情報を分析し見極めるといいでしょう。
- 高齢者の人口
- 要支援や要介護者数の把握
- 今後の高齢者の増加見込み
- 他の介護施設との競合具合
特に、高齢者の増加や他の介護施設がどのような事業を展開しているかなどのリサーチは必要です。
事業形態の決定
地域の分析をした後は、どんな事業を展開するのか決めます。
他の介護施設が行っていないような介護サービスを提供するなど、他の施設にはないニーズを考え始める事業を決めましょう。
始める事業によっては、開業資金なども大きく変わるため、独立にはとても重要です。
事業計画の作成・広告
事業内容を決めたら、まずは収支計画を立てます。
収支計画の中では、資金繰りの計画はとても重要です。
先にお話ししたように、開業早々に利用者が満員の状態であっても、介護報酬が入金されるのは、約2ヶ月後です。
その間の資金繰りはとても重要になります。
特に職員への給与の支払いは現金での振込が多いため、現金も必要になるので、よく考慮して計画を立てるようにしてくださいね。
その後、立地条件などよく考慮し事業所を構える貸店舗などを検討します。
近くに競合施設はないか、家族など訪問しやすい立地にあるかなどさまざまな条件を考えるようにしましょう。
事前協議
介護事業は、人員条件などが整えばすぐに始められるものではありません。
事業の中には、各自治体と事前協議が必要なケースもあります。
デイサービスやグループホームなどを行う場合は、施設の改築や新築へ着工する前に、地域の自治体と協議を行ってください。
各要件の確認
介護事業には、事業ごとに必要人員や設備、必要資格の有無など、人材に対しての条件があります。
事業を決めるには、人材の条件や施設・設備の条件などの確認が大切です。
申請書類の作成・提出
事業の指定要件を満たした後は、介護事業者指定申請に必要な書類を作成し、都道府県に提出します。
提出から認可されるまで、長くて2ヶ月程度かかることがあります。
また、提出書類は多く複雑、それでいて不備があると認可が下りません。
そのため、行政書士など専門家に依頼して作成すると確実です。
関連施設への挨拶まわり
都道府県からの認可が下りたら、周辺の医療施設や介護施設、関連事業者などに挨拶をしましょう。
挨拶といえど、営業が含まれます。身だしなみや第一印象を大切に、挨拶をするようにしてくださいね。
もし近くにすぐ住居があるようであれば、住民への挨拶も必要です。
介護施設では、急に体調が悪くなる人や、車の出入りが多いなど周辺住民に何らかの迷惑をかけることも多くあります。
そういった理解などを得るためにも、挨拶へ赴くようにしましょう。
独立のメリット
ここまでのお話しで独立をするためには、さまざまな条件をクリアしなくてはいけないと理解していただけたと思います。
では、そういった手間や苦労をしてまで独立するメリットはどこにあるのでしょうか。
“理想の介護”を追求
介護士が独立すると得られる良い点は、自分の理想とする介護事業を作れる事です。
雇われの身では事業所のやり方に従わなければならず、自分の介護感に沿った介護は難しいです。
全く出来ないという事はないでしょうが、ある程度の根回しが必要になります。
どういうことかと言うと、やり方や取り組みに関わる職員全員の同意を得て、チームなりユニットなりのリーダーに相談或いはプレゼンし、更に介護課長(名称は事業所によって異なりますが、部門を統括している人。
但し小さな事業所だとおらず、リーダーの上が施設長の場合もあり、その場合は事業所によって異なる)の決済を得なければなりません。
「そんな事をしなくても良い取り組みだから自分は行えば良いのでは」という意見もあるかもしれませんね。
でもこの意見はマイナスの転職に追い込まれる危険をはらんでいます。
事業所のやり方に従わずに自分のやりたいようにするという事ですから、同僚からはヒンシュクを買い、上司から見てもやり方は評価してもらえるかもしれません。
改善の意見を出す職員として向上の勤務態度は買ってもらえても、職員間に波風を立てるとして、場合によってはやり方の改善と向上の勤務態度でプラス評価された分を考慮しても総合的にはマイナスの評価になる事もあります。
同僚と違うやり方をすると、介護を受けている高齢者に統一ケアを提供できずに迷惑を掛ける事にも繋がり、認知症を患っている場合は周辺症状を増悪させてしまう事にもなります。
こういった点も含めて多人数の同意を得る交渉術と人心掌握術、いわゆる根回しは重要という実例です。
報酬体系を決定できる
仕事の進め方以外の事に関しては、報酬体系を決定できる事が挙げられます。
事業を軌道に乗せると高収入も見込める事を指しており、リスクを背負った分リターンも大きいという事ですね。
従事していない人の耳に入る程介護業界は低収入ですが、経営手腕によっては高収入も夢ではなく実現できるという事で、介護士が独立するメリットの中で大きな比重を占める事柄だと言えます。
但しこれも注意が必要です。事業所の収入=自分の収入では無いという事で、ここから経費を差し引かなければなりません。
事業所の電気などの光熱費・事業を立ち上げる時の借入金の返済・従業員の給料・厚生年金保険や健康保険、加入する場合は介護事業者向けの退職金共済等の事業者分の負担金・1カ月だけというような短期事業ではないので、内部保留のお金も必要です。
内部保留が無いと、修繕改築費や退職金を出せないので、大変な事になりますね。
「退職金は出さないから積み立てずに自分の取り分にまわす」という考えは危険ですよ。
より良い労働条件を求めて介護士は動きますから。
実際、この記事を読まれている読者自身も(金銭面も含め)良い環境の為に独立しようか迷って読まれていると思います。
自分だったら退職金が有る方と無い方でそれ以外の条件が全て同じであれば退職金が有る方に行くでしょう。他の人も同じで退職金が有る方に行きます。
つまり、自分の事業所に優秀な人材を繋ぎ止めるためには退職金は用意する必要があり、自分の取り分に回して内部保留に回さず退職金が払えないと離職率の高い事業所になってしまいます。
事業の安定の為にも、毎月の自分の取り分も金額を決めておいて、残りは内部保留に回すのが良いでしょう。
働き続けられる
雇われている場合は、再雇用の制度はあっても報酬がかなり減るのと、定年があり働き続ける事は出来ません。
収入を維持する方法はいくつかありますが、働いて維持する場合に限って言えば、可能なのはフリーランスか事業主くらいです。
独立すればこれに該当し、働き続ける事が出来るので老後の貴重な安定収入を見込めます。
また、働いているので生活が手持無沙汰になる事無くハリのある生活を期待できる側面もあります。
責任を負う
雇われの、いち介護士とは違い事業主は経営最高責任者です。
事業に関する全ての事柄に対する責任を負います。
例えば、独立した後の事業を株式会社で行っていれば、事業が軌道に乗らず倒産(ちなみに手形の不渡りを2回出すと倒産です)してしまうと、事業主は資本金分の借金を負います。
株式だろうが何だろうが法人内の人間の勤務時間中の行動に対しては、使用者責任として事業主にも責が及びます。
矢面に立つ
社会的に許されない不祥事があった時に矢面に立つのは責任者です。
「知らなかった」では済まされないので、万が一の時には多大なストレスを抱えるでしょう。
まとめ
介護業界はこれからますます需要が伸び、発展するであろうといわれる業種です。
しかしその反面、年々廃業に追い込まれている施設も増えているのも現状としてあります。
小さな事業所では利益も少ないため、安定して収入を得るためには複数の介護事業を組み合わせて行う必要もあり、そのためには人員も必要です。
- 人員の確保
- 資金の確保
- 利用者の確保
といった3つをクリアすることができれば、独立しても成功を収める確率は高いでしょう。
独立には、地域のニーズを把握し、各事業の運営条件などを理解して進める必要があります。
自分の理想の介護施設を運営できるなどといった夢がある独立ですが、その前には申請や資金・人材面などさまざまな壁をクリアすることが求められます。
開業までの段取りを把握し、着実に進めていきましょう。