高齢者介護を行う上で重要なのが、利用者家族とのコミュニケーションです。
皆さんの施設では意識して取り組んでいますか?
介護職員の中には、利用者とは話せるのに家族と話すのは難しいと感じている方もいますよね。
中には、
「利用者の家族とうまくコミュニケーションを取る必要ってある?」
「どう接すれば、信頼関係を築ける?」
などといった方もいます。
そこで今回は、介護職員が利用者家族に対しての接遇や、信頼関係を築く方法など詳しくご紹介しましょう。
これを読めば、利用者家族と信頼関係を築き、より上質の介護ケアを提供することができます。ぜひ読みす進めてくださいね。
なぜ家族との信頼関係が重要なのか?
介護をする上で、介護士や施設と利用者は信頼関を築くことは大切だと理解できますね。
しかし、利用者だけではなくその家族との信頼関係を築くことも、とても重要になります。そもそも、信頼できない介護士や施設には、大切な家族をあずけることはできないですよね。
そこで、利用者の家族と信頼関係を築くことの重要性についてお話しします。
家族と連携することで介護の質が上がる
介護をする上で、利用者の家族と信頼関係を築くことで介護の質が向上します。
例えば次の3つのように、必要に応じて家族への協力を求めることもあります。
- 利用者に必要なものを購入してもらう
- さまざまな手続きを行ってもらう
- 今まで一緒に過ごしてきた家族にしか気づけない点などを、知ることができる
しかし、よい信頼関係かできていないと、家族からの協力が期待できないといったことも起こるのです。
また、ケアの仕方など相談をしたくてもスムーズに行えないといったこともあります。
利用者との信頼関係は当然ですが、利用者の家族との信頼関係を築くことでより上質な介護を提供することが可能です。
施設の評価に直結する
介護職員はいわば施設の顔です。家族の要望を聞き入れることも大切ですが、ただ家族の言いなりになるのではなく、施設として「できる・できない」をはっきりと区別し、理由まで全て説明することが重要になってきます。
「自分の家族にきちんとした対応をしてくれる」と利用者の家族が思うことができれば、おのずと家族との距離は縮まり、信頼関係が生まれてきます。
その結果、「この施設は、しっかりと理念と信念をもって運営している。安心して任せられる」といった評価にもつながるのです。
つまり、家族と信頼関係を築くことができれば、介護職員の評価にもつながり、そして施設の評価にもなるということになります。
今はSNSを利用しての口コミは、とても重要なアピールポイントになります。
施設や介護職員が体験として評価されることによって、より施設の繁栄にもつながり、利用者へのケアの質も上げることができるでしょう。
信頼される接遇のポイント
「家族に信頼してもらうにはどうしたらいいのか」考えても思い浮かばないという方も多いですよね。
介護職員として、家族との信頼関係の築き方として重要なのは、“接遇”です。
目を見て会話をする、電話越しで会話をするからこそ、接遇をきちんとすることによって今よりも好印象に、そして信頼関係を築くことにもつながるのでご紹介します。
あいさつ
まず認識してほしいのが、介護はサービス業ということです。
そのため、あいさつは基本中の基本であり、コミュニケーションとしても重要なポイントになります。
あいさつはいつも相手の目を見てできているでしょうか。
家族がいると認識しながらも、気がつけば目を見てあいさつができてないなんてことはないですか?
あいさつのポイントは次の3つです。
- 相手の目を見て
- 笑顔で
- 聞き取りやすい声で
これらのポイントを抑えたうえで自分からあいさつしましょう。
おじぎの仕方
おじぎの仕方も注意ポイントです。
おじぎをするときは、両足をそろえで腰から頭を下げるようにしましょう。
あいさつであれば、軽くおじぎをするだけでもいいですが、何かを謝罪するときは姿勢正しく腰から頭を下げることが重要です。
おじぎの仕方一つで、相手への誠意の伝わり方も違うので覚えておいてくださいね。
言葉遣い
言葉遣いも注意したい点です。
「早くして」など乱暴な言葉を使って利用者と接するのを見た家族が、いい気持ちをするでしょうか。
また、専門用語を並べて説明をされても、家族としては理解できずに困惑してしまいます。
利用者や家族と接するときは、
- 乱暴な言葉遣い
- 慣れ慣れしすぎる言葉遣い
- 専門用語
などといった3つに気を付けて、接するようにしましょう。
特に、高齢者とお話しするときは、話のスピードやトーンにも気をつけるといいですね。
身だしなみ
身だしなみは、その人の第一印象を決めます。
いくら完璧な介護ができる人であっても、第一印象が悪いとどうしても悪い評価が払拭できないこともあります。
プライベートでは何を着ても個人の自由ですが、介護の現場では、清潔感がある身だしなみを心がけてください。
特に、爪の長さなど利用者に触れる部分は注意が必要です。利用者を爪で傷つけてしまうこともあるので、気をつけましょう。
話を聞く姿勢
コミュニケーションの一歩は挨拶から始まり、次に会話があります。
利用者の家族は、家族にしかわからない悩みを持っています。そういった悩みを聞くことも重要なサービスです。
相手の意見などを肯定しながら話を聞き、対応することが大切になります。
時には、「無理せず何かあればおっしゃってくださいね」など、気づかう言葉かけましょう。
仕事をしながらなど、“ながら対応”で話を聞くのはやめてくださいね。
信頼関係構築のための対応具体例
実際に接遇としてどうすればいいのか、迷うこともありますよね。
そこで、シーン別に具体的な応対例などをご紹介していきましょう。
サービス利用契約につながったとき
介護サービスを利用すると決断するまで、利用者を含め家族はそれぞれ思い悩み、検討を繰り返してきた方が多いです。
まずは、「お身体は大丈夫ですか?」など気づかいの言葉をかけましょう。
介護サービスへ自分の親をあずけることに負い目を感じている人もおり、中には、介護サービスを受けること自体、申し訳なく思っている場合もあります。
そういった方には、「私たちの仕事ですから、大丈夫ですよ」など心の負担が軽くなるような声をかけてあげれるといいですね。
連絡しなければならないとき
利用者の状況に応じて、家族に電話で連絡を入れなくてはいけない状況がどうしても出てきます。
そういった場合、まず要件から伝えるのではなく、
「今、お電話大丈夫でしょうか。」
「お忙しい時間に申し訳ございません」
など、相手の状況を気づかう言葉をかけましょう。
施設からの電話ということで、何かあったのでは?と構えてしまう家族が多く、緊急ではない場合、端的に「○○の件でお電話しました」など要件を伝えることも大切になります。
クレームを受けたとき
クレームと聞くと、誰でも嫌な気持ちになるものです。
クレームを言われて逆に攻撃的に構えてしまう人もいますが、クレームを言うということはそれだけ家族が気分を害するようなことがあったということです。
決して攻撃的にならず、気分を害させてしまったことを謝罪し、話を聞くようにしましょう。
時には、「そのようなことがあったんですね。」など理解を示すことも大切です。
しかし、理解を示してもその場で決断し、クレームに対しての回答をするのは控えましょう。
まずは、上司に相談することが重要です。
「上司に相談し、お答えしてもよろしいでしょうか。」
などといったように、時間を置くことと相談をすることを伝えてください。時間を置くことで相手も冷静になりますし、同時に何があったのか調査することもできます。
家族との連絡方法について
離れて住んでいる場合や仕事で忙しく細かく連絡手段が取れない場合、介護施設との連絡手段とはどういったものがあるのでしょうか。
高齢者の方にとっての連絡しやすいものと言えば電話になりますが、その家族の方が入居されている家族の方に対する連絡となると、その連絡内容に応じて使いわけをされている事が多いようです。
施設側からご家族の連絡手段として緊急性の高い物については電話連絡をすることが多く、緊急性がない場合のものについては、メールにての連絡といったものになるようです。
一方家族の方が施設に連絡する手段については、電話そしてメールといったものになるようです。
電話で連絡することのメリット・デメリット
では、施設が家族へ連絡をするときに、電話を利用することによって考えられるメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか。
それぞれ詳しくお話しします。
メリット
電話を利用して連絡することへのメリットは、次の3つです。
- コミュニケーションがとりやすい
- 伝えたいことを伝えやすい
- 声のトーンなどで相手の様子をうかがえる
文章のやり取りでは、相手の口調などが伝わらず誤解を招くこともあります。
文章によって間違った受取り方をされると、トラブルの元になりなりやすいですが、電話であれば相手の声の抑揚や調子などによって察することも可能です。
また電話で連絡をした方が、簡単に要件を相手に伝えられるというメリットも大きいですね。
デメリット
電話で連絡することのデメリットのほとんどは、受け手にあります。
- 言った言わないの水掛け論になる
- 作業を中断して対応することもある
- 必ず連絡がつくとは限らない
電話での会話のため、文書のように証拠が残らないのでトラブルになった場合、言った言わないの論争に発展しやすいです。
また、何か作業を中断して電話に出た場合、そのまま対応しなくてはいけないので、手間がかかることもあります。
そして、必ず連絡を取って伝えたいことでも、電話に出てくれなくては伝えることができません。
再度かけ直すなど手間がかかるのも、デメリットでしょう。
効率的な連絡・情報共有のポイント
電話だけでの連絡手段では、効率的な方法とは言えません。
そこで、電話以外でも効率よく連絡ができる手段についてお話しします。
ハガキによる挨拶も有効
介護施設によっては、ハガキを使って担当者の変更や施設行事のご連絡といったものをお伝えすることもあります。
メールをあまり使用しない人でも郵便物には目を通すということもあるでしょう。
また、改まった感じで印象に残るといった効果があります。家族の方から手紙でお礼といった形での連絡といったものもあります。
特に感謝やお礼の意味を込めて手紙を送ることで気持が伝わる良さがあります。
スマートフォンやパソコンを活用しよう
確認したい事項が多い場合や、メモとして残しておく方がお互いのためになるなどといった場合、スマートフォンやパソコンのメールを利用して連絡を取るのも有効です。
文章を作成するという手間がありますが、メールであれば家族の都合に合わせて確認し返信してもらうことも可能ですし、お互いのメモ代わりとして確認しながら介護を続けることもできます。
また、伝えたいことをモレずに確認できるといったメリットもあります。
ただ、すぐに返信が来るとは限らないので、急いでいる場合は電話で連絡するなど使い分けるといいですね。
連絡すべきポイント
どのような内容を連絡するべきか、迷うこともありますよね。
基本的に家族に連絡する場合は、次の4つの情報を確認したいときに行うといいでしょう。
- 介護方法の変更
- 施設内でのけがや事故
- 身体的な変化
- 利用者の近況
例えば、おむつ替えの方法を変更した場合、今まで通りだと思っている家族から見ると、なんか変だなと元の交換方法に変えてしまうこともあります。
理由があって変更しているのであれば、その主旨を伝えるようにするといいですね。
また、施設内でのケガや身体的な変化などもしっかりの報告しましょう。
家族がアザなどを見つけて虐待では?と思われるケースもあります。
場合によっては、ケガの瞬間は大事にならなくても、後から倒れてしまうといった可能性もあるので注意が必要です。
そして、特にあまり施設に訪ねて来ることができない家族の場合、意思の疎通が難しくトラブルに発展することもあります。
利用者の状況や様子を定期的に伝えることで、お互いのコミュニケーションを図るようにするといいですね。
まとめ
利用者家族との信頼関係を築くことが、サービスの質の向上や事業所の評価に直結します。
信頼関係を築くためのポイントは、好印象を与える接遇や適切な連絡方法による情報の共有です。
介護サービス事業所と利用者家族の連絡には、電話を使用することが多く、そして家族によってはメールも合わせて活用している事業所があります。
特に家族と入居者、利用者の方が遠方の場合、遠距離介護で行っている場合はすぐに家族が対応できないケースも多く、事前連絡の為にメールなどを利用して行い、細かく様子が分からない、対応できない場合は、ケアマネジャーや職員にお願いをしておくといったケースもあるようです。
結果や普段の様子の連絡などはメールで行うことも多くあるため、可能な限り様子と写真といった目で見えるものも添えることで相手に現状を知ってもらうことができます。
お互いの誤解がないように普段から連絡などは細かく入れることで遠方にいる家族でも安心して介護施設での生活を送ることができるのではないでしょうか。