「○○さんは介護施設に入ったからもう安心ですね」との会話を聞いたことがありますが本当に安心なのでしょうか。
介護業界のことを知らない人達は実際の介護施設での生活の様子まではわからないため介護施設に入れば誰でも安全で快適な生活を送れていると思うでしょう。
ですが実際に介護施設で生活している高齢者は果たして本当に幸せと言えるのでしょうか?
何十年も自分の住み慣れた家で生活してきたのに、加齢と共に介護が必要となり施設での生活を余儀なくされる高齢者達は日々どのような思いで生活しているのでしょう。
介護施設の役割は高齢者の生活をお手伝いすることですが、その人の今までしてきた生活リズムを把握してその人に合った生活を提供することが一番の役目です。
高齢者の生活を守ることが我々の仕事であり社会貢献なのです。
ですが介護施設はひとつ屋根の下で複数の人が共同生活をするため中にはできないことや制限が出てきます。
これこそが介護士の一番の悩みです。
又言語障害や認知症の人は自分の思いを上手く伝えることが難しいので、いかに介護士の人達がその人のことを把握して思いを察するか…ということが幸せな生活を提供するために重要なポイントとなります。
介護施設に入所して安心した生活が送れていると本当に言われるようになるためにも既に介護士として頑張っている人やこれから介護の仕事に就こと考えている人が正しい知識を持って介護という仕事に取り組めるようになってほしいと願います。
起床介助の具体的方法!モーニングケアについて考える
病院や介護施設において早朝に提供されるケアサービスにモーニングケアがあります。
このモーニングケアは非常に重要な役割があるのですが、イマイチわかってない方も多いです。
そこでここからは、モーニングケアが如何に重要性があるかということについて詳しく紹介します。
モーニングケアとは
最初にそもそもモーニングケアとは何なのかについて紹介します。
モーニングケアとは、利用者が起床して朝食を口にするまでに提供される一連のケアのことを言います。
「おはようございます」の挨拶に始まり、利用者の着替え、歯磨き、トイレへの誘導などケアが提供されます。
これらがモーニングケアが適切に行われるからこそ利用者は、気持ちのいい1日を迎えることができるのです。
モーニングケアの内容
モーニングケアでは朝の挨拶に始まり、以下のようなケアが提供されます。
- 環境整備
- ベッドメーキング
- ゴミ捨て
- 花の水かえ
- ブラインドやカーテンをあける
- 室内灯の調整
- 口腔ケア
- 歯磨き
- うがい
- 義歯のケア
- 整髪・結髪
- 髭剃り
- 着替え
- 排泄ケア
- トイレ誘導
- 尿失禁に対するケア
- オムツ交換
- カテーテルケア
- ストーマケア
- 車椅子移乗
上記の他にも様々なケアがあります。
利用者の状態にもよるので上記全てを行うわけではありませんが、モーニングケアにはたくさんの項目があり看護師や介護士の業務がいかに多忙かがわかりますね。
イブニングケアとの違い
モーニングケアに似たイブニングケアという言葉があります。
こちらは利用者が就寝される前に提供される一連のケアを言います。
主に以下の内容を行います。
- 口腔ケア
- トイレ誘導
- オムツ交換
- 寝衣への着替え
- ベッドへの誘導
などをおこないます。
内容的にはモーニングケアと似てますが目的が異なります。
利用者が快適な起床を環境づくりを行なうのが目的なのに対し、イブニングケアでは快適な睡眠が取れる環境を作ることを目的としています。
イブニングケアによる快適な睡眠環境、モーニングケアによる翌朝の快適な起床環境作り、どちらのケアも翌日の生活に影響を与える重要なケアとなっています。
モーニングケアに関する課題
上記で解説してきた通りモーニングケアは、一日の生活環境を整えるとても重要なケアです。
しかしながら介護や医療の現場において軽視されてきた傾向があります。
その理由は朝の時間帯において看護師や介護士の業務があまりに多忙であり、検査など優先されているという現状があるからです。
結果、モーニングケアは簡素化され、一杯の水におしぼりが出されるだけの施設も少なくありません。起床と同時におしぼりで顔を拭きすぐに朝食へというケースもあったりします。
残念ながらこのような状態では快適な起床環境とは程遠いでしょう。
モーニングケアに関する教育ができてないのであれば、モーニングケアが重要と思ってるスタッフもいないでしょう。
現状でこのような問題があるからこそ今後はモーニングケアの重要性をもっと周知し、介護サービスを行うスタッフにしっかりした教育が行なわれる改善が行われることに期待されています。
モーニングケアの質は施設選びの基準となる
モーニングケアは重要性の高いケアながら、満足いく提供がされていないという現状を上記で解説しました。
しかしながら、逆を言うなら未だにモーニングケアがしっかりと提供されている施設は、利用者のことを大切にしており、利用者自身も満足できている介護サービスと判断することもできます。
施設の良いポイントを探したいならモーニングケアがしっかりと行われているかどうかということに注目してみるのが良いでしょう。
現在、在宅での介護をなされているご家族様はモーニングケアの重要性を今一度認識していただき、要介護者にあったモーニングケアを実現してあげてください。
人間の一日は起床介助で決まる
介護施設での生活は毎朝の起床介助から一日が始まります。
朝食が始まる時間帯までに高齢者に起床して頂き食堂にお連れしている姿を皆さん想像するはずです。
この起床介助は介助する側にとってはとても大変な仕事(明け方は介護士の人数は少なく複数の対応に追われて過酷な時間帯)です。
ですが中には朝食ができた頃には既に食堂でぐったりしている高齢者も居て食べるどころではないといった場面も多々あります。
頑張って起床介助をしているのに思うようにいかないのはどうしてでしょう。
実際のところ介助された高齢者はどのような気持ちで食堂に連れて来られているかを考えてみてください。
自分の生活を振り返ってみよう
視点を変えてみて皆さんの休みの日の起床の仕方はどうでしょうか?
例えばまだ寝ていたいのに家族や知人からの電話で無理やり起こされたらどのような思いになるでしょうか。
おそらく機嫌を損ねているに違いないですし起きても頭がぼーっとして身体は重く朝食は欲しくないし気分も優れないことでしょう。
逆に誰にも邪魔されず自然に目覚めたらどうでしょう。
スッキリして気持ちよく朝を迎えられおいしく朝食をいただけるはずです。
このように起床の仕方によって皆さんの休みの日は有意義な日かどうかが決まるのです。
介護施設の高齢者達も結局のところ皆さんと同じなのです。
気持ちよく朝を迎えられた人は頭もスッキリしており朝食も頂くし有意義な一日が待っているのです。
ただ介護施設での介護士は常に目まぐるしい業務に追われているので起床介助をいかに大切にしないといけないかまで考える余裕がないのが現実です。
朝食後は口腔ケアや排泄、そして朝入浴、10時の水分補給、そうしているとすぐに昼食というふうに時間とも戦っている介護士の皆さん。
休む間もないため介護士側の都合で起床してもらっていることが多いのです。
このため介護士同士の会話は「○○さんもう起こしているから・・」「ありがとう」となるのです。
この会話は正しいのでしょうか。忙しいを理由にしていたら今より質の高いケアは望めません。
せっかく自分達の介護施設を選んで入所してくれている方々に、少しでもその人らしい生活を提供しようと考えることが現在の介護施設には必要です。
そのためには介護士不足という問題もありますが、まず起床介助の見直しをしなければいけません。
長年の生活リズムは人によって異なる
見直し案として第一に自宅で暮らしていた時の高齢者一人一人の生活リズムを調べるのです。
これは入所前に窓口となる生活相談員等が調べておくことが基本なのですがデータがあれば再度チェックするのです。
無ければ一から調査します。その人が入所する前にしていた生活で何時に寝て何時に起きて朝食はどんな物を食べていて・・等情報量はあるだけチェックしたほうが良いです。
中には朝食は食べていなかった人、牛乳一杯だけの人、朝食は9時頃食べていた人など様々な情報が出てくるはずです。
その人達を施設の朝食時間に間に合わせるために朝早くから起床してもらっても当人はストレスを感じていてつらい日々を過ごしていることに気づくはずです。
何十年もしてきた自分の生活リズムは続けたいですね。家族の人との情報交換も常日頃から意識して行う必要がありますね。
明け方の居室訪問に違いがでる
また、明け方に介護士が訪室するさいにも大きな問題があります。
朝食時間に間に合わせるために時間を逆算して起床介助をする人は、高齢者のことを見ていない介護士さんといえます。
寝ていようが目覚めていようが時間通りに起床介助するために訪室しているので、訪室と同時に起こして更衣等を作業的にこなして順番に食堂へ連れて行くでしょう。
この状態で経験を積んでいくと作業は慣れて手早くなりそれを自信に持つようになります。
大事な所を見る経験をしていないため後輩も同じように作業が上手い介護士へ成長してしまいます。
また、起床介助を理解している介護士さんの明け方の訪問の仕方は違います。目覚めているかの確認のために訪室するのです。
そのためまだ寝ている人は後に回します。覚醒した人から起床介助に入ります。
このため訪室回数は増えて自分は大変になりますが、高齢者一人一人をきちんと見ている素敵な介護士です。
起床介助の理解の仕方一つでこのようなズレが生じています。前者の介護士さんに当たった高齢者は気の毒で仕方がないですね。
専門職としての知恵を出そう
起床介助を理解していても、まだ寝ているからといっていつまでも寝ていただくことは介護士としてまた問題です。
過度に寝すぎるのは疲労を伴い昼夜逆転にも繋がります。適度なところで目覚めて頂く必要もあります。
その対応法としては部屋のカーテンを開けて光を入れさせていただく。または電気などの灯りをつけさせていただき、その後必要なら声もかけをさせていただく。
できるだけ自分で目覚めていただけるような工夫をしておけば介護士として質の高い起床介助に繋がるはずです。
介護施設全体で取り組もう
起床介助の見直しをするには、介護士一人一人がなぜ起床介助が大切なのかをきちんと理解しておかないといけません。
特に介護施設では主任やリーダーといった人がいるのでその人達が先頭に立って質の高い起床介助を提供していただけたら、そこの施設に入所して良かったと思えるはずです。
起床介助で一日が決まります。高齢者の介護施設で始まる第二の人生の幸せを考えると、起床介助はとっても重要なのです。
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