先読みしにくい社会的な情勢の変化に伴って、子育ての環境もまた大きな変化の時期を迎えています。たとえば、子どもを保育してもらいたい保護者にとって、「保活」は大きなストレスの原因となります。
また、はじめての子育てなどでは、日々子どもと接するなかで、わからないことがたくさん出てくることでしょう。悩みを相談できる人がいればいいのですが、子育て中に適切なサポートを得られないことは、不安でしかありません。
そのストレスや不安は、子どもとママの関係に悪影響をもたらすことがあります。子育て中のママが子どもと優しい気持ちで触れ合えるように、子どもにストレスや不安をぶつけないように、ネガティブな気持ちを開放するためにサポートするのが「ベビーセラピスト」です。
今回は、子育て中の不安やストレスから子どもやママを助けたい場面で役立つ「ベビーセラピスト」を紹介します。
ベビーセラピストってどういう資格なの?
日常的なストレス、子育て中の孤独や不安を抱えた状態では、虐待や育児放棄の原因となることがあります。少しでいいから話を聴いてほしい、愚痴をこぼしたい、アドバイスを受けたい、たったそれだけのことができずに、子育てに苦しむ母親が非常に多くいます。
ベビーセラピストの役割
ベビーセラピストは、乳幼児と保護者、とくに母親の幸せを願い、その絆や愛情を深める時間や場所を提供する仕事です。親子をストレスから解放し、リラックスしながら楽しい時間を過ごせるようにサポートを行います。最近になって、その認知度が高まってきました。
母親がしまい込んでいるネガティブな感情を受け止め、ときに的確な助言を行うのがベビーセラピストです。慌ただしい子育て中に、ホッと一息つける時間と場所を提供することで、もやもやしている母親と子どもの心を癒す「カウンセラー的な存在」でもあります。
ベビーマッサージ、ベビーヨガ、ベビーリトミックなどを通して、母親と子どもが深いコミュニケーションを図れるようにしていきます。保育士のように、直接的に子どもを保育するわけではありませんが、子育てそのものを外側からサポートすることができます。
日本では、ベビーセラピストは国家資格ではありません。民間団体が認定する講座を受講し、試験に合格すると「認定資格」として取得することができます。団体によっては、開業資格やインストラクター資格など多種多様であり、それぞれ難易度も異なります。
また開講されている講座の多くは、母親や女性保育士などを対象にしています。ただ、最近少しずつではありますが、週末などに父親や男性保育士を対象にした講座も開かれているようです。父親の積極的な育児参加が増え、「イクメン」のスキルアップにも一役買っています。
ベビーセラピストが保育現場で役立つ場面は?
ベビーセラピストの資格取得をとおして、子どもとのかかわり方に悩む保護者への接し方が変わります。悩みを受け止めたり、それに対して適切な助言を行ったりしながら、保護者との緊密な関係づくりに役立ちます。
乳幼児クラスを担当しているケースでは、ベビーセラピストとしての知識や技術を活用して、子どもと深いコミュニケーションをとることができます。さらに、その方法を保護者に教えることで、家庭でも子どもが愛情たっぷりのコミュニケーションを受けられるようになります。
そのためベビーセラピストの資格を持っていると、乳幼児クラスに力を入れている保育園などで重用されます。親子を不安やストレスから解放し、愛情でつなぐ専門家として、深い知識や高い技術を活かしていきましょう。
ベビーセラピストは保育現場以外でも役立つの?
ベビーセラピストは、元々親子のコミュニケーションをサポートする仕事です。そのため、自らの子育てにベビーセラピストとして学んだ知識や技術を活かすことができます。実際に、受講者のなかには、一般の母親が自らの子育てのために学ぶケースも少なくありません。
保育現場や家庭以外での主な活躍の場としては、ベビーサロンがあります。ベビーサロンは、出産後の母親が一人で子育ての悩みや不安を抱え込まないように、赤ちゃんとリラックスして楽しめる場所です。親子サロンという言い方をすることもあります。
赤ちゃんと母親が楽しくスキンシップをすることによって、ストレスを発散することができます。育児に関する不安を話してもらったり、悩みに対する助言を行ったりします。さらに、「ママ友」との出会いの場としても、ベビーサロンは大きな役割を果たしています。
独立もできるの?
取得した認定資格によっては、自らベビーサロンを立ち上げ、独立することも可能です。ただ、子どもを直接的に保育する保育園や、保護者から直接預かるベビーシッターなどとは異なり、あくまでも「子育てのサポート」が中心となります。
独立にあたっては「経営的要素」が求められます。受講する講座によっては、「経営的要素」も合わせて学ぶことができます。独立を考えているのであれば、資格取得の勉強と並行して、集客戦略や顧客ニーズのトレンドも幅広く学んでおくといいでしょう。
ベビーセラピストを取得するためには?
ベビーセラピストの資格を取得するためには、それを認定する団体の講座を受講し、試験に合格する必要があります。合格率は公表されていないケースが多いですが、一般的には80~90%といわれ、平均合格率約20%の保育士と比較しても、取得しやすい資格といえます。
講座の受講方法
多くの場合、認定を行う団体の教室に通う「通学」で学びます。受講期間は団体によって異なりますが、基礎的な講座では1日~1週間、実践的な講座では週1回で1~6か月です。団体によっては、短期集中型で受講できるコースもあります。
講座を受講するために必要な資格は、基本的に誰でも受講することができます。ただし、ベビーセラピストを取得するための受験資格は、年齢などによって制限されることがあります。未成年で受験される方は、各団体の受験資格を確認しておきましょう。
試験内容
試験内容には、各団体の講座で学んだことが出題されます。受講したカリキュラムに沿って、その内容を正しく理解しているかを確認するような問題が出される傾向があります。団体によっては、科目別にケーススタディにおける理解度を問われることもあります。
試験対策
試験対策のコツとしては、各講座のカリキュラムに従い、その範囲をしっかりと学習しておくことが、合格への近道になります。とくに、実技試験が大きなウェイトをしめるので、手技などの正しい手順、それを行う理由などを繰り返し復習しておきましょう。
試験では、ほとんどの団体で実技試験は必須で、それに筆記試験やレポート提出などがあります。実技試験以外の試験は、web上での筆記試験となるケースもあります。試験時間は、団体によって異なるため、受験前に確認しておきましょう。
他の保育にかんする資格との違いとして、「セラピストとしての資質」が試験結果を左右します。試験時は当然ですが、講座を受講するときから保育に相応しくない華美な服装は避け、言葉遣いや立ち振る舞いにも配慮する必要があります。
ベビーセラピスト認定団体の問い合わせ先は?
気になる方、取得を検討している方に向けて、ベビーセラピストを認定している主な団体の問い合わせ先を紹介します。
株式会社エクセレントホールディングス
株式会社エクセレントホールディングスでは、JBA公認ベビーセラピストインストラクター資格などを取得できます。スクーリングと通信教育があり、将来的に独立開業を視野に入れた講座を受講することができます。
受講期間 2日(12時間)
受講費用 180,000円(税込、別途入学金20,000円)
受講条件 JBA会員、JBA公認ベビーセラピストインストラクター有資格者
アプリケアカレッジ
アプリケアカレッジでは、アプリケアカレッジ認定ベビーセラピスト資格を取得できます。ベビーマッサージセラピスト資格などのオプション資格として、ベビーセラピストコーチングなどを専門的に学ぶことができます。
受講期間 任意期間(通信教育受講後、web筆記試験またはペーパータイプの筆記試験)
受講費用 30,000円(web申込では20,000円)
受講条件 アプリケアカレッジのベビーマッサージ・ベビーヨガ等の講座受講者
日本コミュニケーション育児協会
日本コミュニケーション育児協会では、JCCRA認定ベビーセラピストを取得できます。東洋式ベビータッチについての知識や技術、理論を学びます。資格取得後の教室開設も可能で、開設前のノウハウ講義や開設後のフォローも行っています。
受講期間 2日間(講習時間7時間)
受講費用 70,200円(税別)
受講条件 日本コミュニケーション育児協会 ホームベビーセラピスト養成講座修了者で、パソコンを所持しインターネットの使用ができる方
ベビーセラピストを取得して「親子の絆」を重視した保育を
ベビーセラピストは、不安やストレスが原因で子育てに悩む母親と子どもを、深いコミュニケーションで結び付けるスペシャリストです。ベビーマッサージやベビーヨガなどによって、りらっくして楽しい親子の時間づくりのお手伝いをします。
保育現場においては、とくに乳幼児クラスなどで、専門的な知識や技術を活かすことができます。さらに、孤独や不安を抱えがちな母親に対して、身近な子育てのカウンセラー的な役割をとおして、ストレスフリーな親子関係をサポートすることができます。
ベビーセラピストは、比較的短期間で取得できます。また、保育士として働きながら、通信教育を活用して取得することもできます。乳幼児の保育でスキルアップを考えている保育士は、取得して損の少ない資格といえます。
また、ベビーサロンなどを開業して独立することもできます。親と子の関係づくりにくわえて、地域に住む親と親の関係づくりへの役割も期待されています。直接的に保育するのではなく、間接的に保育をサポートしたい方に向いています。