必ず治る病気と言われている老人性うつ病!間違われやすい認知症との違いを理解し正しい対策法や予防法を知りましょう!
うつ病は子供から高齢者まで、どの年代でも発症する確率が高い病気です。
その中でも、年を重ねて心身の状態が低下することに伴い、高齢者はうつ病になってしまうリスクが高くなると言われています。
これが、“老人性うつ病”と言われるものです。
高齢者のうつ病は周りの人が気づきにくく、知らないうちに症状が進行してしまう可能性があります。
高齢者に関わるご家族や、介護の仕事に従事する人は、この病気について知っておくことが大切です。
ここでは、老人性うつ病の原因とは?認知症との違いや接し方の注意点などお伝えします。
そもそも、老人性うつとは
気づかぬうちに発症していることが多い老人性うつ病は、実は誰もが起こりうる病気でもあります。
1日中ボーっとしている、元気がない日が多いといった高齢者は身近にいないでしょうか。
この様な高齢者を見ると、認知症では?と思われることが多いのですが、老人性うつ病の可能性も考えられます。
まずは、老人性うつとはどういったものなのか、認識を深めましょう。
老人性うつの症状
老人性うつ病の場合、多くの方が
- めまいや頭痛、耳鳴り
- 吐き気、食欲不振
- しびれ
- 肩こり
体の不調を訴えるため、家族や施設では内科など病院を訪れ検査を受けます。
しかし、老人性うつ病の場合は問題がなく、原因がわからない状態が続いてしまうことが多いです。
もし、次の4つのような症状も併発しているようであれば、老人性うつ病も疑いましょう。
- 不安や焦燥感がある
- 好きなことに対して興味がなくなる
- 人と関わらないようになる
- 落ち着きがない
老人性うつ病は、早期治療で治る病気です。
早めの対処が大切になります。
老人性うつの原因
老人性うつ病の原因として考えられるのは、自身がおかれた立場、環境、心理的なものが影響していると言われています。
主にどのような出来事が引き金となっているのでしょうか?
次にまとめてみました。
- 会社を定年退職し、自分の立場ややりがいを失った
- 仕事を失ってやるべきことが見つからない
- 引っ越しで環境が変わった(子供と同居になる等)
- 家族や友人と会う機会が減った
- 子供が独立
- 脳機能の低下
- 配偶者や友人との死別
- 病気が治らない
- 重い病気になった
- 家族や友人と関係が悪くなった
- 夫婦間のコミュニケーションの減少
見た目は軽症だとしても、一度発症すると回復するまでに時間がかかったり、回復しても再発する恐れがあります。
老人性うつ病と認知症との違い
老人性うつ病と見分けがつきにくい病気とされるのが“認知症”です。
認知症とうつ病の違いを把握することが、正しい治療・回復に繋がります。
では、どのような違いがあるのでしょうか?
脳細胞の違い
認知症患者の脳は、記憶を司る海馬の細胞が死滅してしまうことで症状が進行します。
しかし老人性うつ病の段階では、細胞は死滅していません。
老人性うつ病は脳の機能は侵されていないのに、環境・心理的な出来事が原因でふさぎ込んでしまい、それによって、認知症を似たような症状を引き起こしてしまうのです。
自覚症状の違い
認知症患者は軽度の症状に対しては自覚が現れますが、病気が進行すると病気に対して自覚がなくなり無関心になります。
老人性うつ病は病気への自覚を感じると、またいつ同じ症状があるのか…と不安が大きくなりますので、病気への自覚がハッキリしていることが特徴です。
症状の進行速度の違い(
認知症は、徐々にゆっくりむしばむように進行するため、気がついたときにはだいぶ進んでいるということも少なくありません。
しかし、老人性うつ病の場合は進行スピードは比較的早く、短いスパンで症状が複数見られるようになります。
そのため、早期発見という点では老人性うつ病の方が見つけやすくなります。
物忘れ、記憶の消失の有無
実は、老人性うつ病も認知症と同様に記憶障害の症状もあります。
認知症は軽度から徐々に重くなるため、不安や焦りを覚えることが少ないです。
それに対し老人性うつ病は、ある日突然記憶障害が発症するケースが多く、自分がどうなっていくのかなど不安や焦燥感を感じる方が多くいます。
そのため老人性うつ病はでは症状として、不安や焦りを訴える方もいるのです。
自責の念の有無
老人性うつ病の特徴として、自責の念が強いという面があります。
自分の病気のせいで周囲に迷惑をかけてしまう、自分がいるから誰も幸せになれないなどといった思考を持つようになり、その結果“死”を口に出す方も少なくありません。
認知症の方は、多少の気分が下がったり、意欲が無くなるといったことがありますが、ケロッと過ごしている方が多いです。
質問に対する受け答えの違い
認知症の方は、質問をしても的外れな回答をすることがほとんどですが、老人性うつ病の方の場合は、考えた結果答えられないことが多いです。
認知症の方は、自分の答えを慎重に考えることが少なく、的外れな回答をしているといった認識がありません。
しかし老人性うつ病の方は、間違わないよう正確に回答するためよく考える傾向にあります。
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老人性うつ病と一般的なうつ病の違い
では、老人性うつ病と、一般的なうつ病の違いに何があるのでしょうか。
それは、うつ病になる原因にあります。
一般的に言われるうつ病は、対人・仕事などのストレスが起因であることが多いです。
しかし老人性うつ病の多くは、配偶者との死別などといった「喪失感」や、定年後自宅にいることが増えたり、年齢にともなう子供との同居などといった「環境の変化」が引き金になることがほとんどになります。
一般的なうつ病にも、喪失感や環境の変化が起因で発症することもありますが、圧倒的に老人性うつ病の発症のきっかけであることの方が多いです。
老人性うつ病と遺伝との関係性は?
老人性うつ病は遺伝との関係はあるのでしょうか?
研究データでは、50歳以上で発症したうつ病と家族の病歴と関係性は薄かったことに対し、若いときに発症したうつ病と、家族との病歴との関係性はそれより2倍も高かったと言われています。
よって、高齢になった時のうつ病は遺伝との関係性が低く、環境や心理的な要因が大きいことが分かります。
周りが気づき発見し、気にかけることで環境を整えれば、老人性うつ病の発症は防げるのです。
老人性うつ病の治療法とは
老人性うつ病とはどういったものなのか理解を深めたところで、次は治療方法についてお話ししましょう。
老人性うつ病の治療法は、3つあるので詳しくお話ししていきます。
薬物療法
一般的なうつ病と同様に、抗うつ剤などを使用して治療をします。
ただ、抗うつ剤の中には、血圧や尿に副作用があるものや、緑内障患者には使用できない薬もあるので注意が必要です。
高齢者は緑内障の患者であることも多いので、薬を選ぶのが大変といった難点もあります。
精神療法
精神科医のセラピーを受ける、病院に通って医師や看護師など人と話をすることで、症状が改善することもあります。
喪失感が強くうつ病になってしまった場合、人と話をして孤独感などを紛らわせると症状が改善されることも多いのです。
環境調整
本人が安心して暮らせる環境を整えてあげることで、症状が改善し治療できることがあります。
一人で暮らしている場合は、家族や周囲の人が頻繁にかかわることで孤独感がまぎれ気力が出て、結果治療に役立つといったことも少なくありません。
人と関り、散歩など体を動かすようにするなど、一人で過ごす時間を減らすことが大切です。
老人性うつ病の予防法とは
老人性うつ病は、誰もがかかる可能性のある病気ですが、予防することも大切です。
そこで、老人性うつ病にならないためにも、予防法についてお話ししましょう。
社会との関わりを持たせよう)
定年退職した後など大きな役割を終え、特に仕事以外で趣味活動をしていない場合、何をしていいのか分からなくなります。
そして、“自分は社会で必要とされていないのか”とふさぎ込んでしまうのです。
何か新しく仕事を探したり、趣味を見つけてみたりなど、自発的に外出して社会と交流を持つことで、うつ病を予防できます。
自分で見つけるのは難しい…という人には、周りの家族が気にかけるなどして、孤独にさせないようにしましょう。
バランスのいい食事を食べよう
老人性うつ病を改善したいときは、食事を見直してみましょう。
タンパク質や糖質、ビタミン・ミネラルなどをバランスよく食べることが大切です。
特に効果的なものは“タンパク質” 老人性うつ病は、脳内ホルモンの減少が原因であると言われており、脳内ホルモンの生成に効果的なのがタンパク質なのです。
特にうつ症状が心配であるときは、正常の人よりもタンパク質をしっかり摂取するように意識して、手軽に補える納豆や豆腐などの植物性タンパク質と、肉や魚などの動物性タンパク質をバランスよく食べましょう。
また、脳内の神経伝達物質である“セロトニン”は、精神状態を安定させる効果があります。
セロトニンの元となるトリプトファンが豊富に含まれている、牛乳、ヨーグルト、まぐろ、大豆、バナナ、卵黄を意識して食べるようにしましょう。
太陽の光を浴びよう
うつ病は、太陽の光浴びたり運動することで分泌される「セロトニン」という神経伝達物質が関係していると言われています。
セロトニンは、精神を安定させる働きがあるので、太陽の光を浴びながら運動ができるウォーキングをするよう心がけましょう。
難しいようであれば、散歩やラジオ体操でも構いません。
ストレスを発散しよう
ストレスを溜め込まず、健康な心を保つことも大切です。
散歩や軽い運動など、その人なりのリラックス法、リフレッシュ法を見つけてみてください。
また心配ごとがあるときは誰かに相談したりすることも良い方法です。
一人で抱え込まず、人に話すだけで心が楽になることもあります。
老人性うつになってしまったとき、本人・家族ができるケアとは
気をつけてはいても、老人性うつ病になってしまう方もいます。
そこで、家族や本人ができるケアについてお話ししましょう。
休ませすぎないこと
一般的なうつ病の場合、ストレスを除去することから始め、休養をすすめられます。
しかし、老人性うつ病の場合は休養を取りすぎるととかえって逆効果になってしまうことがあるので注意しましょう。
そのまま寝たきりになってしまったり、認知症になってしまうこともあります。
自然の中を一緒に散歩する
老人性うつ病の場合、体力を維持することも大きなポイントです。
日帰りできる景色がきれいな場所に連れていく、近くの緑が多い公園へ散歩に行くなど、休憩を取りながら体を動かすことが大切になります。
先にお話ししたように、体を動かし太陽の光を浴びることで効果的と言われるセロトニンも分泌されるので、一石二鳥ですね。
無理なく続けられる趣味を一緒に探す
趣味を一緒に探すこともおすすめです。
特に、次の3つのうちどれかに当てはまる趣味であれば、なおおすすめです。
- パズルゲームなど頭を使う趣味
- 歌を歌うといった声を出す趣味
- 人と交流がある趣味
頭を使えば、脳の活性化につながりますし、声を出すことで積極的な気持ちへ切り替えやすくなります。
また、人と接することで楽しい・うれしいといった感情を受け、孤独感が減少します。
近くにサークルなどがあれば、一緒に参加するなど工夫をして趣味を見つけるようにするといいですね。
社会とのつながりを断ち切らない
老人性うつ病になってしまうと、家に閉じこもり社会とのつながりを切りがちです。
家に閉じこもってしまうと、セロトニンが分泌されにくく、体力も衰え、生きがいを感じる機会も少なくなってしまいます。
友人や社会との関係が切れないよう、家族が工夫をして関係を持たせるように努めることが大切です。
まとめ~老人性うつは治ります~
老人性うつ病は環境の変化、心の変化などで、誰でもかかる可能性のある病気です。
老人性うつ病が進行してしまえば、活力が失われて自殺願望や認知症、寝たきりを招く可能性があるのです。
そうならないためにも予防することが大切です。
積極的に外に出て活動し、バランスの良い食事を食べるように心がけましょう。
適切な対応をとれば、必ず治る病気です。
周りの人やサポート側が前向きに関わりを持ちながら、日ごろから気に掛けるようにしてあげると本人も気持ちが和らぎます。
何か最近様子が変だと感じたら、すみやかに専門医に相談しましょう。