社会的な批判にさらされたみずほ銀行暴力団融資事件
みずほ銀行暴力団融資事件をご存知の方も多いでしょう。
マスコミに当時かなり取り上げられた問題です。概要を簡単に説明すると、2013年の週刊誌のスクープによって発覚したみずほ銀行が暴力団に融資を行った不祥事のことです。
みずほ銀行が暴力団に対して自動車ローンの融資をみずほフィナンシャルグループ傘下のオリエントコーポレーション(オリコ)を通じて行い、放置していた問題です。
みずほ銀行暴力団融資事件が大事になったのは、反社会的勢力にメガバンクが融資を行っていたことのほかに、みずほ銀行の対応のまずさもありました。
当初みずほ銀行は、「当該の問題融資について、経営陣には一切報告がなかった」と説明していました。
ところがそれが後になって虚偽だったことが発覚しました。
そのほかにも記者会見などで事実関係の開示を先延ばしに行っている形に結果的になってしまったことも批判の対象とされました。
10月28日には、みずほ銀行は金融庁に対して業務改善計画を提出しました。
みずほ銀行暴力団融資事件ですがみずほ銀行の対応のまずさのほかにも、みずほ銀行とオリコが特異な関係にあることが白日の下にさらされました。
オリコのような信販会社でも自動車ローンを取り扱っているところは、ほかにもたくさんあります。しかし信販会社が自動車ローンなどの融資を行う場合には、信販会社の有する資金を使って実行されるのが一般的です。
ところが今回の融資を見てみると、購入希望者がディーラーを通じてローンの申し込みを行って、まずオリコがその審査を担当しました。
そして審査通過でローン実行されたのですが、その資金がオリコからではなくみずほ銀行がオリコに対して融資をして、オリコが貸し出すというスタイルをとっていました。
事実上、みずほ銀行とオリコの提携ローンという形で融資されていたのです。
オリコとみずほ銀行の深い関係
オリコとみずほ銀行は本来同じグループ傘下でも、別々にローン商品を販売すべきです。
ところが上で紹介した自動車ローンの顛末などを見てみると、オリコとみずほ銀行は一体になっているといっても過言ではありません。
なぜここまで両社が密接な関係にあるのかですが、それぞれの企業の成り立ちに深く関係しているとされています。
みずほ銀行ですが、第一勧業銀行と日本興業銀行、富士銀行という当時の金融業界大手3行が合併することで誕生しました。当初は出身銀行の派閥争いが熾烈といううわさもありましたが、今でもメガバンクの一角を担っています。
一方オリコですが、もともとは広島県の信販会社でした。しかしそのころから第一勧業銀行との関係が深いといわれてきました。実際第一勧銀の幹部行員の天下り先として、オリコが活用されていたこともあったようです。
ところがこのオリコですが、1990年代に発生した金融危機によって経営不振の状況に陥ります。そして2000年代に突入すると、倒産してもおかしくないような危機的状況を迎えるようになります。
このときにオリコのテコ入れを必死になって行っていたのが、先ほど紹介した第一勧銀といわれています。
2010年には筆頭株主になって、銀行管理の形をとるようになりました。そして現在のみずほフィナンシャルグループの傘下の信販会社となったわけです。
このようにオリコはもともと、みずほ銀行の一角である第一勧銀との関係が深く、おのずとみずほ銀行とオリコとの間に関係性が生まれるようになっていきました。
実際オリコの歴代の役員を見てみると、旧第一勧銀の出身者がずらりと並びます。
2016年に社長に就任した河野雅明氏も、もともとは第一勧銀の出身です。
バブル時代に流行った迂回融資の可能性
みずほ銀行暴力団融資事件で問題になったのは、オリコの審査では申し込んだ人が反社会的勢力の関係者であることは判明しませんでした。
ところがその後みずほ銀行が半年に1回のペースで実施している属性確認を行ったところ、反社会的勢力の関係者であることは判明したことです。
ところがわかっているにもかかわらず、そのまま放置したことが問題になりました。
このように金融機関と信販会社とでは、審査するにあたっての情報にかなりの違いがあります。金融庁関係者の話によると、みずほ銀行では金融界でもトップクラスの反社会的勢力のリストを有しているといわれているほどです。
このため、みずほ銀行は見落としていたのではなくわざとこの情報を放置したのではないかとみる向きもあるのです。
反社会的勢力のリストが充実していると、おのずと審査も厳しくなります。言い方を変えると、融資可能な顧客の数を減らしていることになるわけです。
そこでオリコを隠れ蓑にして、一種の迂回融資を行っていたのではないかというのです。
実はこのような迂回融資で暴力団に銀行の資金の流れることは、以前にもありました。バブル経済の時代には、表向き銀行から暴力団に融資をすることはできなかったのです。
そこで銀行がまずノンバンクに融資をして、そして舎弟企業に融資するスタイルです。
この形をとっていれば、もし後になって判明をしても銀行は「融資はノンバンクが行ったことで暴力団にお金が渡っているとは知らなかった」と言い逃れができるわけです。
しかも縦割り行政で、問題は発覚しにくくなっていることも問題点の一つです。今回もマスコミ報道が端緒になっています。というのも銀行は金融庁・信販会社は経済産業省の書簡になるので行政のチェックがなかなか入りにくいという現実があるからです。